注:サークルメーカーとは「ミステリーサークル作成者」というほどの意味。このページでは、イタズラなどの目的でそれを作成している人間を指してこの用語を使います。
はじめに
ミステリーサークルは超自然的現象、プラズマ現象、あるいは宇宙人、米軍が作ったという誤った信念を持った人達が未だに大勢いる状況を憂慮し、簡単なFAQを残しておきたいと思います。主に参考にしたのは『ミステリーサークル黙示録』(かもがわ出版、1997)ですが、この本について「ネタバレ」なことを書くのがためらわれるほど面白く、また考えさせられる内容なので、ぜひご一読をお勧めします。
ミステリーサークルは80年代後半から90年代初頭にかけて世界中の注目を集めましたが、今では一部を除いて関心を集めなくなりました。それは、ミステリーサークルはいたずらで人間が作ったと暴露されたからです。日本のテレビ局も参加した1990年の「ブラックバード計画」では、サークルが出現したものの、その中心には星占い盤が置いてありました。この事件で、イギリス人はサークルの信憑性を疑うようになりましたが、日本のマスコミはこの事件を取り上げて報じることはありませんでした(少なくとも筆者の記憶にはありません)。今日、このサークルを作ったのは「メン・イン・ブラック」というグループであったことが知られています。
そして、ミステリーサークルの信憑性に止めをさしたのが、翌1991年のダグ・バウワーとデビッド(デイブ)・チョーリ―による、ミステリーサークル騒動を起こした本人達による暴露です。二人はUFOの着陸跡をまねて、1978年からサークルを作り初めたそうです。1985年までのサークルは全て金曜日の夜に作られていますが、それは二人の都合のつくのが金曜日だけだったからです。
二人の老人はマスコミの前でサークルを作ってみせ、その作り方も解説しました。作り方は単純で、板で麦を踏みつけながら歩くだけです。二人の方法では、中心から伸ばした紐を使ったりはせずに、ある場所を中心にして回りながら円を大きくします。ある撮影では、12メートルのサークルを作るのに8分しかかかりませんでした。サークルの周囲を囲むリングも、サークルの外周に沿って歩くだけです。直線を作る時は簡単な測量を行ないます。「グレイプショット」と呼ばれる小さな円の場合、長いポールで棒高跳びして移動し、その間の麦に跡を残しません。
そんな方法で正確な円が作れるか疑問を持つかもしれませんが、本物とされたサークルも微妙に歪んでおり、またそれが本物のサークルの特徴とされていたのです。後に現れたサークルメーカーはダグとデイブの方法を発展させ、中心から紐を伸ばして正確な円を作ったりして、幾何学的なミステリーサークルを作成しています。ダグとデイブのライバル達は1987年から現れ、1992年には20団体以上が確認されています。
1992年のサークル製作競技会では、ダグとデイブは参加しませんでしたが、12組のサークルが作られました。
こうして、世間的にはミステリーサークル騒動は収まりました。しかし、ミステリーサークル信奉者達は、ダグとデイブの証言を信じようとはせず、彼らを嘘つきと呼んだり、政府の陰謀だと主張する人も現れました。ダグとデイブは自分達の証言を証明しようとマスコミの協力の下でサークルを作り続けましたが、真相を知らされていない研究家達は、その度にそのサークルが本物だと騙されています。ダグはこう語っています。
「私を悩ませたことは、サークルでお金を儲けたり、人をだます人たちがいることだったね。一三年間やってきたことに対して、望んでいることは、われわれの話を本当のこととして受け入れて欲しいことだね。いわゆるサークルの『権威』と呼ばれる人がここにやって来て、『そうか、やっぱり君たちがやったのか』と言って欲しいんだ」
(『ミステリーサークル黙示録』P140)
ある講演会では、“研究家たちは真面目に研究していたのに、あなた方は悪意をもって彼らを失墜させ、損害を与えた”と言った参加者がいましたが、ダグはこう答えています。
「もちろん、私の心も彼らのために血を流していますよ。二日前の雑誌に、彼らは、今や本を五〇万部売ったと書いていますよ。『トゥデイ』の見出しのように、世間をだましたのはわれわれではないですよ。彼らなんですよ」
(同P152)
このミステリーサークル騒動に何らかの意義があったとすれば、それはしばらくの間、人々にちょっとしたミステリーを提供して楽しませてくれたことでしょう。しかし、もはやタネは明かされています。
ミステリーサークル最後のミステリー、それは「なぜ人はこんなにも物事を信じやすいのか」、それだけではないでしょうか。
|