国家安全保障局 NSA


用語解説


NSAとは飛鳥氏がUFO情報をリークされたと主張している情報機関だが、そのNSAについても多くのダウトが見られる。
まず、飛鳥氏はこの組織をペンタゴンに属する軍部直轄の機関だとしている。『人類最終兵器プラズナー』では、こう書かれている。

「大統領直轄の組織にして、アメリカ国防総省、通称『ペンタゴン』に属する機関だ」(P19)
「NSAは軍部直轄の機関なのだ。極端なことをいえば、アメリカ大統領よりも軍部の主張を反映する機関なのだ。ここを忘れないでほしい」
「表向きの軍の諜報機関というのでさえ、方便にすぎない。NSAは、ずばりシークレット・ガバメントの機関なのだ」(P62)
「NSAはアメリカ軍のトップである。CIAやFBIの上に君臨する」(P240)

しかし、NSAがペンタゴンに属すというのは、間違いとは言えないものの不正確な情報である。政府便覧には「ペンタゴンの一部門」とあるが、元NSA長官カーター中将は「ペンタゴンの下にあるが、その一部ではない」と指摘する。
そもそもNSAが設立されたのは、軍部による暗号機関の独占体制を改め、各情報機関が情報を利用、目標設定に参加可能にするためだった。

NSAが設立されたのは1952年10月だが、この時にいきなり現われたわけではない。NSAの前身はAFSA(三軍安全保障局)だが、この機関は三軍の管轄下に置かれた。
それ以前は陸海空軍それぞれのコミント機関が別々に暗号業務を行っていたが、不効率極まりなく、各軍は他機関に協力しようとはしなかった。
そこで1949年にAFSAが設立され、三軍の暗号業務を統合して統合参謀本部の監督下に置いたわけだが、ほどなくして再び三軍に権限をもぎ取られ、三軍の縄張り争いの場と化してしまった。

このような中、1950年に朝鮮戦争が勃発する。CIAなど各情報機関は北朝鮮軍の南進を懸念していたが、不効率な体制のために、AFSAでは開戦まで朝鮮の優先順位は低いままに置かれた。
朝鮮戦争におけるAFSAのコミント活動は手不足状態で、不満が大きかった。それに対し、トルーマン大統領はブラウネル委員会を組織し、コミント機構の改善に乗り出す。ブラウネル委員会はAFSA長官に全米のコミント活動への全権を与えるべきだとする報告書を提出する。そしてその勧告に従い、トルーマン大統領が大統領メモランダムに署名し、NSAが設立されたのである。NSAとは冷戦体制の中、朝鮮戦争が生んだコミント機関なのである。

こうして誕生したNSAは、統合参謀本部ではなく国防長官の直轄下に置かれ、目標設定、管理にはNSC(国家安全保障会議)コミント特別委員会(大統領、国防長官、国務長官が構成員)とUSIB(合衆国情報評議会。CIA長官が議長で、国防長官、国務長官、FBI、統合参謀本部の各代理、NSA長官が構成員)があたる事になった。

このような機構となっているため、NSAをペンタゴンの機関とみなす事はできない。NSAは統合参謀本部ではなく、文官である国防長官の下に置かれているのである。個々の作戦では軍が主体になったりもするが、その運営には軍はUSIBを通じて意見できるのみである(このような機構は、そもそも軍のコミント支配を打ち破るために作られた)。シギントに関する限り、NSAは米三軍と海兵隊を統率する立場にあるのだ。軍部の意向など、いくらでも無視する事が可能である。

飛鳥氏はNSAを軍の諜報機関だとしているが、NSAは軍の指揮系統にはないのである。
『UFO&シークレット・ガバメント』では、さらに詳しくこう述べている。

「NSAは、国防総省の情報収集機関でペンタゴンの建物の中に部署を持つ」(P178)
「なぜ国防総省に、CIAとバッティングするような諜報機関が存在するのか?
 それは、軍事上の諜報活動だけを専門に行なう部署だからである」(P182)

しかし、軍事上の諜報活動を行なっているのは三軍それぞれの情報機関であり、それを統合する国防総省の情報機関はDIA(国防情報局)である。国防総省に同じような役割を持つ情報機関が二つもある理由はない。
また、NSAがペンタゴンに置かれていた事はない。AFSAの頃はヴァージニア州アーリントン・ホールとネブラスカ通りの海軍保安部で活動しており、NSA設立後もそれを引き継ぎ、1957年からはメリーランド州フォート・ミードに本部が移されたのである。
ただし、『人類最終兵器プラズナー』では修正されているが、ムーではこう述べていた。

「NSAはペンタゴン(国防総省)内に設置されたアメリカ最高の諜報機関で、陸軍・海軍・空軍の3軍を一手に直轄管理する」(『ムー』206号P32)

飛鳥氏はNSAから情報を入手していると主張している割に、NSAのなんたるかも知らないのだ。
NSAはプラズナー隠蔽のための組織で、MIBもNSAの諜報員だというが、軍の指揮系統にもないNSAが、なぜ軍の秘密兵器の隠蔽工作にあたっているのだろうか。それに、NSA職員の半分以上は民間人で、残りの軍人も通信傍受員なのだ。CIAや陸軍情報部とは役割が違う。
飛鳥氏も『人類最終兵器プラズナー』ではNSAの任務には通信傍受があると認めているが(それ以前は全くそんな話も出なかった)、通信傍受とUFOの隠蔽工作という関連の無い仕事を一つの機関があたっている事を、変だとは思わないのだろうか。

飛鳥氏は通信傍受について、「それとても、全体から見れば、ほんの一部。」と述べる(同書P20)。しかし、世界中の信号情報を傍受し、暗号の解読をするというのは大変な仕事である。NSAは世界中に2000箇所以上ある24時間体制の通信傍受局を運営し、世界中の膨大な電波を監視し、50か国語以上もの外国語を翻訳、年々複雑化する暗号を解読している(どこら辺がほんの一部なのか?)。NSAはこの作業により、単一機関としては合衆国最大の情報源となっているのである。
さらに、NSAは通信傍受のためのコンピュータを含むあらゆる技術を開発し、合衆国政府機関全体の通信保安に責任を負っている。

UFO隠蔽工作などというたわけた仕事のために、約10万人と年間80億ドル(約八千億円)もの予算を費やすはずがないのである。




Update/1999.11.11
Renewal/2000.2.27



参考文献
UFO&シークレット・ガバメント 飛鳥昭雄 KKベストセラーズ 1997
人類最終兵器プラズナー 飛鳥昭雄/三神たける 学研 1999
『ムー』1998年1月号(206号)
エイリアンUFO 驚愕の真実
飛鳥昭雄/三神たける 学研 1997
アメリカの宇宙戦略 井芹浩文 教育社 1986
兵器最先端(2)原子力潜水艦 読売新聞社/編 読売新聞社 1985
パズル・パレス ジェイムズ・バムフォード 早川書房 1986
超スパイ機関 アンドリュー・タリー 早川書房 1971
NTTが核攻撃される日 浅井隆 フットワーク出版社 1990
在日米軍 小川和久 講談社文庫 初版
1985



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