大赤斑 (Great Red Spot) についての反論



大赤斑が巨大火山の噴煙であるという説、そして木星が固体惑星だという説は、飛鳥説の急所中の急所である。なぜなら、それがあり得ないとすればヤハウェも誕生せず、月が地球に大接近してノアの大洪水を起こす事もないからである。さらに、末日において大赤斑から惑星が誕生して天変地異を起こすというのも、内惑星全てが木星から誕生したという太陽系形成説も、根拠を失うのである。

しかし、基本的な惑星データだけを見ても、木星が固体惑星ではあり得ないことは明白である。木星の体積は地球の約1316倍なのに、質量は約318倍しかない。密度では、地球の4分の1以下である。このため、木星はほとんどが軽い元素で構成されていることになり、候補としては水素とヘリウムが考えられている(というか、それしか候補がない)。そして、そのほとんどは、高圧力のために液体として存在していると考えられる(液体化せざるを得ない)。
木星の大気の下が液体である事は、重力場の測定で確かめられている。固体としては、小さな核が推定されているのみである。言い換えれば、構成要素のほとんどを最も軽い元素の水素、ヘリウムだと想定しても、固体として考えられ得るのは小さな核だけなのである。

では、飛鳥氏は何を根拠として、木星が固体惑星だと言っているのだろうか? その著作を見ても、根拠らしい根拠がない(『恐竜絶滅の謎と木星ネメシス』、『アスカ・ファイル1』より)。

まず、「NASAは知っていた」というヤツである。これは考慮するまでもなく却下である。「NASAは知っていた! 木星が固体惑星である事を知っていた! 大赤斑の下に巨大火山クロノスがある事を知っていた!!」などといくら叫んでみても、何の根拠にもならない。却下。

次に、木星写真にクレーターが写っているというもの。これは、水島保男氏が『あなたの学んだ太陽系情報は間違っている!』(たま出版、旧題『新・第3の選択』)に書いた情報だが、上層部の雲層に穴が空いて、下の雲層が見えているというだけである。木星表面にそうした穴がある事はよく知られており、ガリレオ衛星のプローブも、雲に開いた穴(ホット・スポット)に投下されている。雲層のすぐ下に地殻があるものなら、プローブはすぐに地表と激突してしまっていたし、木星の質量は今の数倍になってしまう。

それから、リトルリンという天文学者が木星から全ての内惑星が誕生したと“定量的に”証明したと主張している(詳細が述べられていないので、木星が固体惑星かどうかまで述べられているかは不明)。しかし、その事自体疑問だが、例え数式の上で誤りがなかったとしてもそれだけでは仮説にすぎない。その数式は誰も打ち破れていないというが、リトルリン理論の基になったという木星からの金星誕生を語るヴェリコフスキー説は、セーガンらが「定量的に」覆しており、その反論はリトルリン理論にも適用されるはずである。
(リトルリン、ヴェリコフスキーについては、こちらを参照してほしい)

その他に、木星で水や一酸化炭素が観測されたとか、木星と地球の大気構造の類似点が挙げられているが、そうしたものは固体惑星かどうかには結びつかない。

――根拠と呼べそうなものは、これだけである。
あまりにも貧弱な根拠と言わねばなるまい。

この点は重要なので、再び言っておこう。木星が固体惑星ではあり得ないということは、飛鳥説の半分以上が崩壊したも同然なのである。ヤハウェは誕生せず、ノアの大洪水は起こらず、惑星ケツアルコアトルによる世の終りも起こらない
このたった一点だけを取ってみても、飛鳥説は成り立たないのである。仮に木星に巨大火山があったとしても(仮にである)、惑星を宇宙に撃ち出すような噴火は考えられないのだが。

さて、上記のような主張の他に、大赤斑が火山によるものだとも述べられている。固体惑星だと証明もせずに、いきなり火山の話である(苦笑)。ちなみに、この火山からは地球などの固体惑星のみならず、のような(飛鳥説では)液体惑星も誕生したというから不思議である。

しかし、大赤斑が火山によるものというのはあり得ない。なぜなら、大赤斑は木星本体と一緒に自転せず、横方向に漂っているからである。現在では、大赤斑はソリトン(孤立波)という、形を変えずに存続する波の一種と考えられている。

‥‥と、このように『大真実』に書いたのだが、それに対して『ロマン・サイエンスの世界』で反論が述べられている。引用しよう。

木星の大赤班が自転より横にずれるので、火山の噴煙ではないとする、短絡的な素人判断には唖然とする。噴煙とは横に棚引くものである。それすら考えられない検証とは、科学以前の常識の問題であるP179,強調は筆者による)

これは、かなり失笑ものの反論である。
大赤斑は火山の噴煙ではあり得ない。大赤斑のデータを見れば、そう結論せざるを得ないのだ。それは――筆者の言いたい事を飛鳥氏自身が適切に表現してくれている――「科学以前の常識の問題である」。

『アスカ・ファイル1』では、こんな事が述べられている。

「しかし大赤斑だけは、大きさの変化はあっても、最初に観測された時代から少なくとも300年間は、その位置を全く変えていないのである」(P142)

だが、これは全くのデタラメである。大赤斑はここ100年間だけで、1200度以上も移動しているのである。惑星を3周以上棚引く噴煙というのは、ちょっと考えにくい(笑)。

『小惑星・木星のすべて』P15より


さらに1831年以来の大赤斑の経度変化を詳しく見てみると、1831年から1880年頃までは−1200度ほど移動、1880年頃から1910年頃は600度ほど移動、1910年頃から1930年頃は−200度以上移動、そして1930年頃から1980年頃までには、約1250度移動しているのである。
そして、現在も大赤斑は西に移動し続けている。

しかも、大赤斑と木星本体の自転速度にはズレがある。木星本体の自転速度は9時間55分30秒なのに対し、今の大赤斑の自転速度は9時間55分40秒ほどで、約10秒遅れているのである。この割合でいくと、地球の単位で言えば4年もすれば1周遅れる計算になる。
(なぜ厚い大気で覆われた木星本体の自転がわかるかというと、木星の自転軸と磁極にズレがあるので、磁極の自転周期を測定できるからである。磁極の自転周期は、木星深部を反映していると考えられる)

このような大赤斑の経度方向の変化により、大赤班が木星本体の固定された地形によるものという説は、否定されるに至った。
実は、大赤班が火山によるものという説も初期に考えられていた理論なのだが、真っ先に見捨てられている。
また、大赤斑と色や形がよく似た小赤斑も発見されており、大赤斑が木星唯一の特異な現象ではない事も判明している。

飛鳥氏はこうした事実を知っているのだろうか?
お決まりの反論はこうである。
「私はそうした事実を充分知った上で研究発表しているのである!」(迷言。)
もし知っているのなら、なぜそれを書かないのか。そればかりか、事実に反する記述があるのはなぜなのか。

あるいは、知っていても自分の理論しか目に入らず、都合の悪い事はNASAの情報操作だとかアカデミズムの戯言だという事にしてしまっているのかもしれない。実際、そのようにして現実から目をそらしでもしなければ、飛鳥説は成り立たないのである。
飛鳥説は夢があるという意見もあるが、それは、飛鳥説が夢の中にしか存在し得ない理論だからである。

「これから先、NASAが木星の火山を公表した場合、あの男は何と言って私に謝るつもりなのか?」(P179)

いやあ、ドリーマーですな。大赤斑にはまだまだわかっていない事も多いが、わかっている事もたくさんある。

大赤班が火山による現象ではないという事も、その一つである。



小赤斑。パイオニア10号により発見された。
『別冊サイエンス』P112





Update/2000.2.13


参考文献
図説 われらの太陽系 6
『小惑星・木星のすべて』
足原修、
寺沢敏夫(訳)
朝倉書店 1986
別冊サイエンス 
特集 太陽系の天文学 惑星の素顔
日本経済新聞社 1977
『飛鳥昭雄 ロマン・サイエンスの世界』 飛鳥昭雄 雷韻出版 1999
『アスカ・ファイル1』 飛鳥昭雄 アスキー 1997
『恐竜絶滅の謎と木星ネメシス』 飛鳥昭雄
三神たける
学研 1996


参考Webページ:衝突しない宇宙  



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