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             [第二部 其の一] 平成10年7月30日発行 

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  ■謎の歴史書『日本書紀』■ 
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   『日本書紀』は、養老四年(720)に成立したものと言われている。 
  これは、『続日本紀』の養老四年五月癸酉の条の、次の一文によるもので 
  ある。 
   「是より先、一品舎人親王勅を奉りて日本紀を修す。是に至りて功成り 
  て奏上す。紀三十巻、系図一巻。」 
  これには、『日本紀』とあって、『日本書紀』ではないが、『日本紀』と 
  『日本書紀』を別の書物と考えるのは、まず不可能であろう。系図一巻は 
  現在に伝わっていない。 
   撰修が命ぜられた時期に関しては、諸説あって定かではないが、「天武 
  天皇」による勅命であろうことは、一般的に言われている。そのため『日 
  本書紀』は、「天武天皇」にとって、都合のいいように記述されていると 
  思われがちであるが、これは大きな間違いである。養老四年に天皇であっ 
  たのは、「元正女帝」であった。しかも先帝である「元明女帝」は健在で 
  ある。そして、この二人の女帝の時代に暗躍したのが、天才政治家「藤原 
  不比等」である。 
   梅原猛氏は、著書『神々の流竄』の中で、おおよそ次のように述べてい 
  る。 
  「成り上がり者の藤原不比等は、自らの永続性を天皇家の権威を借りて保 
  障しようとしたために、古代に遡って女帝統治の既成事実を作る必要があっ 
  た。」 
  まさに、その通りであると思う。それが、皇祖神で女神である「天照大神」 
  (あまてらすおおみかみ)であった。女帝の時代に生きた「藤原不比等」 
  は、皇祖を女神に求めたのは、むしろ当然であったと言えよう。 
   「天火明命」=「彦火火出見尊」=「神武天皇」を、皇統の一番最初に 
  位置づけながら、初代の天皇は「崇神天皇」としたり、「天照国照彦火明 
  命」(あまてるくにてるひこほあかりのみこと)を「瓊瓊杵尊」(ににぎ 
  のみこと)の兄のように記しながら、まったく無視したりなど、「元明天 
  皇」の頃の「藤原氏」の立場を暗示してるように思う。 
   後述することになるが、これらは、壬申の乱にて大活躍した元祖「尾張 
  氏」と本家「天皇家」との立場を考えた上での記述であり、この頃の「尾 
  張氏」の実力を伺い知ることができよう。 
   では、『日本書紀』はでたらめかと言うと、けっしてそんなことはない 
  と思う。これは、戦後になって皇国史観の呪縛から放たれた歴史学者が、 
  一斉に『記記』批判を始めたからであって、すべてを批判的に見るのは行 
  き過ぎではないのだろうか。 
   『古代史の真相』の著者、黒岩重吾氏は、韓国の忠清南道公州の宋山里 
  で百済二五代王、武寧王の陵が発掘されたが、その墓誌銘に記載された没 
  日から生年を逆算すると、『日本書紀』の雄略紀に記述されている武寧王 
  の生年と一致する事実を発見し、『日本書紀』の歴史的記述を見直した、 
  としているが、私も賛同する一人である。一国の歴史書がでたらめでは、 
  日本は世界から理解を得ることはとうていできず、ましてや、古代の日本 
  の歴史は、中国の歴史書に記載されていることから、でたらめを書くこと 
  はできない。 
   批判的に見なければならない記述とは、「藤原不比等」の創作である、  
  神代と、それに続く人皇の神話の部分、具体的に言えば、「応神天皇」あ  
  たりまでの神話の部分、そして、藤原氏存続の正当性に関わる部分、すな 
  わち、蘇我氏立脚から大化改新とそれ以降の王朝の姿であろう。しかし、 
  これとて、都合よく書かれているか、都合の悪い記述はされていないだけ 
  であって、よく読めばちゃんと真実を伝えているところは、「藤原不比等」 
  の天才たる所以である。ただし、その時代の流れはつじつま合わせに依る 
  ものであり、同時代を別代のように記したり、過去の遡って記してあった 
  りしているので、その点は、見極めが必要である。 
                          以下次号 
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