響板

響板いうまでもなく、響板はチェンバロの心臓部分。
響板材としてはスプルース(日本のアカエゾマツも同じトウヒ属に分類される)が一般的だが、師匠の奨めもあってヒノキを使っている。どちらがすぐれているかというより、これは好みの問題で、ヒノキのほうが存在感のある音になるように思う。
今回は、手持ちの材料が乏しくて木取りには苦労した。幅20cmほどの板を数枚はぎ合わせるのだが、木目がなるべく平行になるようにしながら、どんな目の部分をどの辺に持ってくるかを考える。
はぎ合わせて形を整えた後に、カンナで削って厚みを決めていく。この作業でチェンバロの音が決まるといっていい。そのためには、どこをどんな音にしたいかを考えながら削るのだが、これが難しい。
響板に限らず、スケーリングに始まって楽器の高さやボディーの厚み、プラッキングポイント、ブリッジの寸法など、あらゆる部分にどんな音にしたいかという意思を込めなければならないことを、今さらながら思い知らされている。
「意思を込める」というのは、こんな音になれと念ずるという意味ではもちろんない。ある部分の寸法を決めるにあたって、既存の楽器がそうだからというのではなく、こういう音がほしいからここはこの寸法を選ぶのだということを、常にはっきりさせていなければならないという意味なのだが、考え足りなかったところや考え違いをしていたところに後になって気づいて、あわててしまう。
響板を測るマイクロメーター響板の厚さを測る道具。先端にマイクロメーターがとりつけてある。

楽器づくりは、こんな音にしたいという意思をコンマ何ミリという作業の中に込めていくことにほかならず、その集積が楽器のキャラクターや個性となってあらわれるのとだ思う。どんな音にしたいかのイメージがはっきりしていなければならないことはもちろんだが、それをいかにして楽器の細部にわたって形にしていくか。師匠には、「わからないことは考えろ」といく度となく言われてきたが、いままで霧がかかったように曖昧模糊としていたことが、わずかながら見えてきたような気もしている。