モールディング-本体の完成

front viewイタリアンのデザイン的な特徴の一つに、楽器の外側に貼りつけられたモールディングがある。上の縁には薄いボディーの補強のために、下の縁には底板にボディーを貼りつけたときに仮止めした穴をかくすためにつけられている。
イタリアン・ジャーマンでは、ライナーより上はボディーの厚みを足しているので上部のモールディングは要らないが、底板の木端にボディーを貼るイタリアンの工法をとっているので、下部のモールディングは必要になる(タリアンの系統の薄いボディーは、底板の上面に貼りつけることができないため側面から貼る)。
back viewただ、イタリアンと違ってテールにもカーブがあり、しかも曲率が小さいので、モールディングの加工と貼りつけがやっかい。はじめは削りだしてから蒸気をあてて曲げたら、削った部分が開いてしまってどうにもならなかった。師匠に尋ねると、薄い板を貼り合わせて型に入れて曲げるとのこと。1.6ミリほどの薄板を3枚、ベントサイドを作った時の型に入れて接着し作った。
ベントサイドのカーブが一つ増えることによって、これだけ手間が余計にかかってしまう。たかがモールディングごときにと思うのだが、ここまできて面倒くさいと言ってられない。

チェンバロでは、ベントサイドをはじめとした「曲げ」の加工がいくつかあり、工法上のポイントにもなっている。イタリアンはベントサイドのカーブが深いものの、ボディーが薄いため曲げは比較的楽だ。フレミッシュやフレンチではカーブは浅くても板厚があるので、思ったようなカーブにするには熟練を要する。昔の楽器を補修すると、火であぶって曲げた時にできた焦げ跡が塗装の下から現われることもあるようだ。
難しいのは、木は曲げても元にもどろうとする「スプリングバック」があって、すこしきつめに曲げる必要があること。小さいものなら、電子レンジに入れるという方法もあり、これだとスプリングバックがほとんどない。今回は、低音部分のブリッジをこの方法で曲げた。
音のためには曲げた時にできる木材の内部応力をすこしでも少なくしたほうがいいので、設計の段階からブリッジのカーブをなるべく木を自然に曲げた形になるようにしておくことも必要になる。