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木取り


Materials of Harpsichord
ジャーマン・チェンバロの主な材料。左からアガチス(ボディ、底板、内部構造材)、マカバ(レストプランク、ジャックなど)、ヒノキ(響板、鍵盤)。
最初の行程は「木取り」。どの部材をどの板からどうやって切り出すか、材木とにらめっこをする。手持ちの材料の寸法や木目、年輪を見ながら、どの板がどの部材に一番ふさわしいか、一枚の板からどう切り出したら一番無駄が少ないか、パズルを解くように考える。
加工する過程の木材の変形も見込まなければならない。あまりぎりぎりに木取りをしても、切ったり削ったりした結果、木材が反ったりねじれたりして見込んだ寸法が取れないと、その材料は無駄になる。かといってあまり余裕を持って木取りをしても、やはり無駄が出る。この場合「無駄がでないように」というのは、経済的な観念ではない。捨てる部分をなるべく少なくしたいという、木にたいする愛情。

あるていど乾燥した木を使うといっても、楽器としての形ができて以後も木は変形し続ける。その変形を見込んだり、また抑えたり。読み間違えると思わぬしっぺ返しを食う。普通木製品は、木目が直行する方向に組み合わせることを極力避ける。例えばテーブルの甲板と脚部のように、どうしてもそのような組み合わせが避けられない場合は、木材の伸縮に対応できるよう「吸い付き桟」とよばれる特殊なほぞで固定する。
ところがチェンバロは、木目を直行する形で組み合わせて接着することで成り立っている。木工のセオリーからいえば、壊れて当然な構造なのだ。絶対に壊れないよう頑丈につくればそれだけ重量が増し、楽器としては不利になる。構造から考えれば、そもそもモンスーン気候地帯の日本で成り立つ楽器ではない。それを壊さないためには、よく乾燥した材料を適材適所で使い、できてからは湿度の管理を徹底する以外にない。
なんだか壊れて当然と、逃げを打っているようだが、実際そうなのである。とくに、湿度の高い日本海側で製作する者は、湿度と木材の変化に敏感にならざるを得Workshopない。仕事場に目貼をりし、除湿機をかけ、湿度計とにらめっこの毎日である。また、できあがる楽器が、どのような環境に置かれるかもあらかじめ見込んでおかなくてはならない。

木取りした材は、切ったり削ったりした結果出てくる変形がある程度収まるまでしばらく放置する(シーズニング)。


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