塗装

塗装中のボディー以前、チェンバロの塗料として天然素材を原料にしたものを薦める人がいた。ドイツのアウロというメーカーがよく知られているが、床のワックスなど口に入っても害のない原料を使っているとうたっている。
昨今のエコロジーブームで、天然素材・原料=いいものという思い込みがあるように思う。チェンバロの弦をはじく爪(プレクトラム)でも、プラスチックよりは昔から使われていた鳥の羽軸のほうが音がいいという思い込みがある。プラスチックというありふれた現代的素材よりは、歴史的楽器に使われていたと同じ鳥の羽根のほうがいい音がするように感じられるのも無理はないが、私の考えでは、それぞれ一長一短があって一概にどちらが上と決められるものではない。
そうはいいつつも、たしかに天然素材というのは魅力的ではある。イタリアンの塗装に漆が使えないかと試してみたことがある。漆をヒノキに塗ると色が濃くなり過ぎてこのときは使えなかったが。
また、人によっては歴史的な楽器に使われていた塗料を使う人もいる。これもひとつのこだわりだろう。

天然塗料にしろ歴史的塗料にしろ問題なのは、音がどうなるのかということ。その吟味抜きに天然素材だから、歴史的楽器に使われているからという理由だけで採用することはできない。子どものおもちゃではないのだから、舐めても大丈夫なチェンバロである必要もない。
一般的に言って塗膜は、厚くなると振動を妨げるので薄いほどいい。ヴァイオリンでもニスを塗る前のほうが音はいいといわれる。ボディーを鳴らすイタリアンでは、白木のままか最低限の汚れ止めの塗装にとどめる。反対にボディーを鳴らさないフレンチなどのタイプでは、塗膜はいくら厚くてもかまわないのかもしれないが。

前置きが長くなったが、薄い塗膜の塗料として、ありきたりだがラッカーを使っている。黒と朱色で塗ると一見して漆のように見えるのだが、「塗料はラッカーです」というと「なんだ」という顔をされる。
塗装の終わったボディー ふたの内側