ミシロタウン〜どんな いろにも そまらない まち E
ポケモンより、モンスターボールの方がはるかに小さい。
しかし例え、博士から仕組みを説明してもらったとしても、シズクには理解できなかっただろう。
たくさんのトレーナーに使用されているモンスターボールではあるが、
その仕組みまで理解している人は極わずか、ほとんどが科学者か製作者である。
「ミズゴロウは 『ぬまうおポケモン』。水タイプだよ」
「水タイプ、ぬまうおポケモン…。 えーと、あなたの名前は、ラムサール…、ラムサールにするわ」
「ラムサール。聞いたことがある…、外国の町の名前だな。
確か湿地と水鳥の保護に関する会議が行われた場所だ。
いい名だ。ミズゴロウにはぴったりだな」
「はい」
シズクは博士が自分の付けた名前の由来を知っていてくれたことが嬉しかった。
オダマキ博士はシズクにモンスターボールの使い方を教えると、ミズゴロウを出してみるように言った。
「ミズゴロウ、出ておいで」
シズクは教わったとおりにモンスターボールを操作した。
中から出てきたミズゴロウは、落ちつかなげに辺りを見回し、シズクを見つけると尻尾を振って近づいてきた。
シズクの心を不安、驚き、歓びの感情が通り過ぎた。 ─やっぱりこの気持ちはあなたの気持ちなのね。
「ミズゴロウ、あなたの名前はラムサールよ」
ミズゴロウの動きが止まり、じっとシズクの目を見上げる。シズクも笑みを浮かべしゃがみこむ。
シズクの言葉を理解したのか、ふいにラムサールはシズクに跳びついた。
両腕で受けとめるシズク。ラムサールはシズクの頬に自分の頬を擦り付ける。
オレンジの突起が少し痛い。
「こら、ラムサール。やめ…やめて」
シズクの心の中は歓喜で一杯である。 ─これは私の気持ちなの、それとも…。
「ミズゴロウは水中ではその頬の鰓で呼吸するんだ」
「え、ラムサールは水の中も潜れるの、すごい」
シズクはラムサールを抱きしめる。ラムサールは水音のような鳴き声をあげた。
「かあいいっ」
「おお、ミズゴロウが、もうこんなになついている。
これから更に経験をつんでいけば、シズクはいいトレーナーになれそうだ」
シズクは尾をしぱたしぱたするラムサールを床において頭をなぜた。名残惜しそうに唱える。
「戻れ、ラムサール」
ラムサールはシズクが持つモンスターボールに、吸い込まれるようにして床から消えた。
博士が満足そうにうなずく。
「ボールの使い方も大丈夫だね。後は…トレーナーの登録か。
シズクはラムサールと一緒にポケモンバトルをするつもりはあるかね?
そうならばトレーナーの登録をしなければならない」
「トレーナーの登録?」
「ああ。 そうだその前に、シズクのママにポケモンを見せてきたほうがいいか。
もし、シズクがポケモンを持つことにママが反対するなら、私に相談しなさい。」
「ありがとうございます。でも、もうラムサールを手放すなんて出来ない。私がママを説得します」
ママは反対するかしら。でも、以前はママもポケモンを持っていたんだし…。
そういえばママはどうして今はポケモンを持っていないんだろう。こんなに可愛いのに…。
今回ちょっと短いです。
諸事情により………というほどのものではなく、単に1回分の行数を間違えただけ…^-^;
でも切れ目の都合もあるのでこのままで。
ところで、「ラムサール」というのは実在する地名です。
場所はイランのカスピ海沿岸で、1971年に「湿地及び水鳥の保全のための国際会議」が開かれました。
沼沢地や湿原に生息する多くの水鳥が渡り鳥であることから、湿地とそこに暮らす動植物を保護するために、
国を越えて協力しあおうよ、というのが趣旨で、日本も1980年から参加しています。
ミズゴロウは「ぬまうおポケモン」なので、沼沢地を保護する条約が作られた地名はピッタリだと、
博士は言ってくれたんだねー。
それにしても、シズクは変な知識を持っているなぁ?^-^;
ポケモンのタイプについて、ちょっとミスがありまして訂正しました。
ご指摘ありがとうございます。 >サトチさま