102番道路〜コトキタウンからトウカシティまで A


 「すごいわ。あなた、拾い物の天才ね。これショップで売れるのよ。あなたがいればモンスターボールの問題も解決ね」

多いとは言えない所持金を思うと、この能力は素晴らしく魅力的だ。
家計を預かるママの気持ちが、判ったような気分になるシズクであった。


そろそろトウカシティにたどり着く頃かなと思っていた頃、一人の少女が現れた。

 「ほっほほほ、あなたトレーナーね」

 「まあ、ルーラを連れているからそう見えても仕方ないわね」

 「あたくしは、チカ、ミニスカートのチカ」

 「そう、私はシズク。えーと何か付けなきゃいけないのかしら。ミシロタウンのシズク」

 「そう、ミシロタウンのシズクね。あたくしとポケモン勝負をするのよ」

 「はい、はい。どうせあなたも、あたしの話なんて聞いてくれないのよね」

 「あたくしは、どんどん勝ち抜いて、最強のトレーナーを目指すのよ。あなたにも協力させてあげるわ。ほっほっほ……
 ……いけない、また女王様モードになっちゃったわ。あなたも協力してね」

ミニスカートのチカが勝負を仕掛けてきた。
ミニスカートのチカは、ジグザグマを繰り出した。

 「あたしのルーラ、あなたの力を見せてあげて」

ジグザグマ対決となった。
チカは、ジグザグマを真直ぐ突っ込ませようとする。
ジグザグマは、一所懸命反応しようとするが、動きがぎこちない。
シズクは、ルーラをいつものように斜めに導く。こちらは、動きが滑らかだ。
当然の結果としてルーラが勝った。

 「よくやったわ、ジグザグマ。休んでいて」

ミニスカートのチカは、別のジグザグマを繰り出した。
しかし、結果は同じであった。
ルーラのレベルは一つ上がって7になった。

 「あたくしが、あなたに協力しちゃったみたいね…」

チカは、握手を求め、シズクは、それに応じた。
シズクは賞金として64円手に入れた。

 「どんどん勝ち抜くには、もっとたくさんポケモンを捕まえないといけないみたいね」

 「私は、そうは思わないわ。ポケモンのことをよくわかってあげたほうが戦いやすいと思うの。
 あまりたくさんのポケモンのことを、わかってあげるのは大変だと思うわ」

 「あたくしよりもあなたのほうがジグザグマのことをわかっているっておっしゃるの…。
 まあ、あたくしのほうが負けたんだから、そうかもね。また、会ったらバトルしましょう」

チカは、手を振って去って行った。

 「ちょっと偉そうだったかしら。でも、ルーラのこと、わかりたいって思っているのよ」

シズクは、ルーラの頭をぽんぽんとたたく。
ルーラは、シズクに何かを押し付けた。

 「ルーラ、また拾ったの。今度はボールね、でもなんだかモンスターボールとは違うわ」

シズクは、ボールをボールポケットに入れた。

 「あはっ、ルーラが一番偉いわね」


このボールは何なんでしょ。スーパーボールかな?
ポケモンのLvが1でも、ハイパーボールを拾うことはあるみたいですね。

シズクは、スクールでボールの種類とか、教えてもらわなかったのかなー。^^;
そういえば、ポケモントレーナーの課程は取ってなかったんだっけ??


先を急ぐシズクの目に、町らしい景色が見えてきた。

 「あれが、トウカシティね」

急ぎ足になるシズクの服を、ルーラがくわえて引き戻す。

 「どうしたの? ルーラ」

振り向いてみると、そこに奇妙な生き物がいた。

 「ポケモンよね…」

そのポケモンには、緑色のヘルメットのような頭の前後に赤い楕円の板を半分に切ったような突起らしきものが生えていた。
目も隠れているらしく確認することはできない。顔の見える部分と体は白く、足はあるのかないのかわからない。
全体としては人形のように見えなくは無いが、身長はシズクの1/3位であった。

シズクは、図鑑を出すのも忘れて見とれていた。今までシズクが見たポケモンは、ほとんどが人には似ていなかった。
唯一似ていたポケモンはゴーリキーだったが、これは人に酷似している。
今、目の前にいるポケモンはそのどちらでもなかった。
機械的とさえ見え、強いて言えばシズクが想像していた宇宙人によく似ていた。

 「あ、図鑑」

シズクは、図鑑を取り出す。

ラルトス−?????ポケモン                   
 

 「ラルトス…」

ラルトスは、草の上をつーっと滑るように移動した。

 「待って」 シズクが一歩踏み出す。

ラルトスは、赤いツノを震わせるとスーッと止まった。そしてゆっくりと振り返る。
ルーラが体を低く沈め、シズクの指示にいつでも反応できるように身構える。
だが、シズクには、戦闘するつもりは無かった。
見た目は可愛いと思えるこのポケモンに、シズクは畏れを感じていた。しかし、まだ去って欲しくは無かった。
むしろ、もっと一緒にいたいと思う。

 「あたしは、シズク。あなたを傷つけるつもりは無いから、そばに来てくれない?」

ラルトスは、ルーラのほうに顔を向ける。

 「このコは、ジグザグマのルーラ。ルーラ、おとなしくしていて」

ルーラは、シズクの顔を見るとシズクの足元にうずくまった。
シズクが顔を上げると、ラルトスはすぐ目の前まで来ていた。

 「ラルトス、あなたって近くで見ると余計に不思議なポケモンね」

ラルトスは、また頭のツノを振るわせる。
なにか戸惑っているらしい。

 「あなたのツノは、ラムサールのひれと同じ役目をしているの?」

 「…」

 「ラムサールみたいに、あなたの気持ちがわかるといいのにね」

シズクは、ため息をつく。

ラルトスは、頷く。どうやら頭のツノでシズクの気持ちを感じ取っているらしい。
シズクにも、自分の気持ちはラルトスに通じているらしいことは判った。