コトキタウン〜なにかが かすかに はじまる ところ K


シズクは、ポケモン図鑑で確かめてみる。

 「『たいあたり』はノーマルタイプで『どろかけ』は地面タイプ…、えー、水タイプの技
がないの?」

どうして?と思っても、無いものは仕方がない。
取りあえずシズクは荷物をリュックに収めると、コトキタウンに向かって出発した。

 「ガサッ」

目の前の草むらが揺れる。
シズクは、ラムサールのボールを取り出すと立ち止まり身構えた。

 「ウー」

あ、野生のポチエナが飛び出してきた。

 「行け、ラムサール」

シズクは、ラムサールをポチエナに向かわせるとポケモン図鑑を取り出した。
図鑑のレンズをポチエナに向け、ポケモン登録のボタンを押す。

 「これでいいはずね。ラムサール、『どろかけ』よ」

ラムサールが、ポチエナに泥を跳ね上げる。
ポチエナの周囲に泥がまき散らされる。
飛びかかろうとしていたポチエナは、泥に足を取られた。

 「ラムサール、『たいあたり』」

どんっ。ラムサールの攻撃がポチエナに命中する。

 「ウー」

泥まみれで転がりながら、それでも唸るポチエナ。

 「ラムサール、もう一度」

どどんっ。又しても命中。
ポチエナはきゅーん、と啼いてその場にくずおれた。
ラムサールは勝った。
ラムサールはLv.7になった。

 「よくやったわ、ラムサール」

シズクは、ラムサールをボールに戻す。

 「今ので図鑑にはポチエナが登録されたはずよね」

さっそくポケモン図鑑を見てみる。

ポチエナ−?????ポケモン                   
 

図鑑には、ポチエナの名前は記録されているが技などのデータは空白のままだ。

 「えー、どうしてラムサールのデータは見れるのにポチエナはダメなの?」

シズクはオダマキ博士との会話を思い出そうとした。

 「博士は、捕まえて記録したポケモンって言っていたわ。とすると捕まえないとダメってこと?」

 ─だとしたら、オーキド博士は随分徹底した人なんだわ。

それにしても、図鑑を一杯にするには、モンスターボールがいくつ要るんだろう、と妙なところで心配になるシズクだった。

 「とにかく、今度ポケモンに出遭ったら捕まえてみることね」


ポケモン図鑑の機能について、あまり真剣に考え始めると収拾がつかなくなると言うか…^-^;
実はすべてのデータは入っていて、ポケモンゲットでプロダクトキーが外れる、とかね…
まあ、白地図の機械版、自動情報収集能力付き………凄いよね、実は。
ポケモンの転送システムも何気にスーパーテクノロジーだし…^0^


 「ガサ、ゴソ」

再び草むらが揺れる。

 「また、ポチエナかしら」

シズクは、いつでもボールを投げられるように準備した。
しかし、先程とはどこか、様子が違う。
丈の高い草がゆっくりと倒れ、やがて現れたものを見て、シズクは思わず悲鳴をあげてしまった。

出てきたのは、30cmはありそうな芋虫であった。
頭に一本の角、お尻には二本のとげがあり、頭の左右に黒く丸い大きな目がある。
体のほとんどは、赤い色をしている。
もそもそと動いており、あまり素早そうには見えない。

シズクは、この手の虫をあまり得意とはしていなかった。
嫌々ながらもとりあえず、図鑑を向けてみる。

ケムッソ−?????ポケモン                   
 

 「名前は、ケムッソね」

やはり、図鑑は名前しか教えてくれない。

 「行け、モンスターボール」

シズクは、ケムッソに向かってモンスターボールを投げつけた。
ボールは、ケムッソに当たってケムッソを中に取り込んだ。
が、次の瞬間ケムッソは、ボールから出てしまった。

 「あれー、博士はボールを投げて捕まえるって言ってなかったっけ」


シズクは、博士がポケモンを弱らせてからボールを投げるように言っていたのを思い出した。
そういえば眠らせたり凍らせたりすると、もっといいよ、とも聞いたように思う。

 「ようし、ラムサール、出てきて。『たいあたり』」

ボールから出てきたラムサールが素早く体当たり!
草むらでのたくたと動いているケムッソに、その攻撃がまともに当たる。
ぼてん。
ひっくり返ったケムッソは、のたくたと起き上がり白い糸を吐きだした。

 「ラムサール、避けて」

難なく避ける、ラムサール。

 「もう一度、『たいあたり』」

どんっ!
ぼってん!

ラムサールの攻撃を受けたケムッソは、そのままのびてしまった。

 「これで大丈夫かしら」

シズクがモンスターボールを投げると、ボールはケムッソを取り込んで地面に落ちた。

2回。
3回。
左右に転がる。

すっ、と止まったモンスターボールをシズカは拾い上げた。
ポケモン図鑑を調べてみる。

ケムッソ−いもむしポケモン、おしりのトゲで木の皮をはがして、
しみだした樹液を食料にする。吸盤の足はガラスでも滑らない。

今度は、確かにデータも取り出せるようになっていた。

 「はあ、やっぱり…」

 「きゅい」

思いっきり脱力したシズクを励ますように、ラムサールがシズクの足をかむ。

 「そうよね、ラムサール。あたし、負けないもん」

シズクは、すくっと立ち上がるとラムサールを再びボールに戻し、コトキタウン目指してダッシュで歩き始めた。
勢いよく進むシズクの目の前に、また野生のポケモンが顔を出す。

 「今度は、何!?」