コトキタウン〜なにかが かすかに はじまる ところ I


 「へーえ、こんな小さな機械でそんなことまでできるんですか」

シズクは博士から手渡された、レンズのついた赤い電子手帳のような機械を見つめる。

 「それで、ここをこうすれば…」

シズクは図鑑の中身を見ようとしてあちこち操作してみた。何も動かない。
仕方ないので、そうっと博士の顔を見上げて告げる。

 「博士、この図鑑壊れてます。何も出てきません…」

 「んっ、ああ、その図鑑にはまだ何も記録されていないからな」

 「ええ!?」

 「シズクちゃんは、今ミズゴロウを持っているかい?」

 「はい」

 「じゃあ、出してごらん」


連載26話目にして、ようやくポケモン図鑑をもらうところまで来ました………(笑)

ちなみに、今日(2004/09/16 (木))はポケモンエメラルドの発売日なわけですが、
始めて1時間足らずのうちに、すでにポケモン図鑑をゲットしてますですよ。^0^;

いやー、ゲーム内の出来事をていねいに描くと、こんなに長くなっちゃうんですねぇ。


 「はい。ラムサール出ておいで」

ラムサールが、ボールから出てくる。

 「それじゃあ、図鑑のレンズをラムサールに向けて赤いボタンを押す」

 「こうですか」

 「そうだ。それでラムサールというかミズゴロウが記録されたから、ミズゴロウのデータは見れるはずだ」

シズクは、図鑑を見てみる。

ミズゴロウ−ぬまうおポケモン、頭のひれは、とても敏感なレーダー。
水や空気の動きから、目を使わずに回りの様子をキャッチすることができる。

 「あっ、出てきた。じゃあ、この図鑑は、記録したポケモンのデータしか見られないんですか?」

 「そうなんだよ」

 「普通、図鑑は分類で引けたり、名前で引けたりしますよね」

 「索引ということかい。それは最初は付いていないんだ」

 「えー、それで役に立つの?」

少々がっかりしたようなシズクに、オダマキ博士は何故か嬉しげな声で話を続けた。

 「私も、オーキド博士に理由を聞いてみたんだ。その答は、

  『じゃがな、オダマキくん。クリスマスプレゼントの中身を事前に知りたいかね。
  ワシが図鑑に索引を付けなかったのは、未知のポケモンとの遭遇、その驚きと喜び、それをトレーナーから取り上げたくは無いからじゃ。
  遭ったことの無いポケモンのデータなど、先に見るもんじゃないぞい。
  ここで一句。図鑑より先に見つけろ気付かんか。では、みんなもポケモンゲットじゃゾ』

 だった」

 「なにそれ。ああ、そうか。気付かんかと図鑑が掛けてあるのか…。う〜ん75…、いや音は一緒だけど『ず』と『づ』が違っているから60点だ」

と、話に割り込むユウキ。


 「お前、相変わらず点数が辛いな」

 「あたりまえだ。俺は、オーキド博士が目標だからな。必ずいつかオーキド博士を越える研究者になるんだ」

ユウキは、こぶしを天に向かって突き上げて叫ぶ。
博士は、盛り上がっているユウキを無視してシズクと話を続けた。

 「そういうわけで、この図鑑には索引は付いていないんだよ。そして、ユウキもその図鑑を持っていてあちこちに遊びに行くんだな。
 で、珍しいポケモンを捕まえて図鑑に記録できるとだね、フィールドワークをしている私を探し出しては見せてくれるんだよ」

 「珍しいポケモンを捕まえるより、フィールドワークをしている父さんを探す方が難しいんだぜ」

ユウキは、自分の世界から帰ってきたようだ。

 「ふうん、シズクもポケモン図鑑もらったのか。じゃあ俺は、これやるよ」

 「あっ、モンスターボール」

 「ショップに行ったら、丁度入荷したところでお金もあったし多めに買ったんだ」

 「あっ、だからあたしが勝ったとき、賞金が少なかったんだ」

 「ああ、だからさ、ちょっと心苦しくてな。まあ、遠慮なくもらってくれ」

シズクは、モンスターボールを5個手に入れた。
そして、モンスターボールをボールポケットにしまった。

 「ポケモンがたくさんいると楽しいからな。俺、いろんなポケモン探すため、いろんなところに行くんだ。
 そしてかっこいいポケモンがいたら、モンスターボールで捕まえるんだ。今度はどこにポケモン探しに行こうかな…」

 「シズクちゃん、ユウキなんてほっといていいぞ。君のゆくてにはたくさんのポケモンが待っているよ。あー、早くフィールドワークに行きたくなってきたぞ」

やっぱりこの二人は親子なんだわ。シズクは、小さくため息をついた。

 「あのー、そろそろ私、家に戻ろうかと思うのですが…」

博士が時計を見て答えた。

 「おお、もうこんな時間か。じゃあ図鑑のことよろしく頼む」

 「はい。では、失礼します」

シズクは、研究所を出て家に向かった。


 「ただいま、ママ」

 「あら、シズク。お帰り。でも、今日戻ってくるとは思っていなかったわ。ねぇ、ニナ」

 「ジ、ジ、パリッ、バリ」

ニナは、警戒して威嚇の放電をしながらシズクをにらんでいる。

 「ニナ、これはあたしの娘よ。シズクと言うのよ」

 「ちゃ?」

ミツコに止められて、不思議そうに振り返るニナ。

 「ママ、いくらなんでも『これ』はないでしょ」

ニナは再び、ママを守ろうとでもするようにシズクに対峙する。

 「あら、ごめんなさい。ニナもこの家の探索を終えて、やっと落ち着いたところなのよ。刺激しないでね」

 「そうなの。あたしは、まだなのに…」

 「ぴぃー」

ニナから威嚇的な声が聞こえる。

 「どうやら、あなたを侵入者だと思っているみたいね」

 「えー、あたしのうちなのに…」

シズクが、ふくれる。

 「シズク、ふくれるのは止めたほうがいいわよ。ニナが、戦闘準備だと思うから」