ミシロタウン〜どんな いろにも そまらない まち I


 「わあ〜、アチャモもキモリも可愛い」

でも一番かわいいのはラムサールだと、シズクは思った。既にメロメロ状態である。
博士は言葉を続ける。

 「初心者用と言っても大切に育てれば、十分主力として通用するくらいに成長する。まあ、育て方にもよるがな」

 「育て方…」

 「その辺は、私よりトレーナーに訊いた方がいいだろう。それからポケモン協会についてだが…」

博士は、アチャモとキモリをボールに戻した。

 「ポケモン協会についてはママに少し教えてもらいました」

 「おお、そうか。ではトレーナーの登録もしたのかね」

 「いいえ、まだです。ここで出来るのですか?」

 「ああ、君の家の電話でも出来るけれど、ここには専用の機械があるから、やってあげよう」

博士は、シズクを電話の前に座らせ、端末を操作した。
電話といっても画面があって相手の顔も映るし、転送装置なども付いていて買い物も出来る、とても便利なシロモノである。

 「はい。これが、君のトレーナーカードだよ」

博士から渡されたカードは名刺サイズで色は薄緑色。IDナンバー、シズクの名前と写真、それにお小遣いの額が載っていた。
シズクは、カードの裏も見てみたが何も書かれていなかった。
そんなシズクを見て博士が言った。

 「今は何も書いていないが、君が色々な経験をしていけば、裏の記載も増えるさ」

 「ふ〜ん、そうなんだ」

シズクはもう一度カードを見つめてみた。

 ─これでパパに会いに行く準備ができたんだわ…。ママはトレーナーとしての経験が必要って言っていたけど…

シズクはふと視線を感じて顔を上げた。

 「あ、博士。ありがとうございました」

シズクはカードを大事そうにウエストポーチにしまう。

 「後、何か質問はあるかね?」博士はニコニコしている。

 「あの、トレーナーとしての経験って何ですか?」


 「トレーナーの経験といったらポケモンバトルだ。
 ああ、そうだ、それなら丁度うちのユウキが103番道路でポケモンの調査をしているから、会いにいったらどうだろう。
 ユウキは、私よりもポケモンの扱いが上手いから、トレーナーとしてのアドバイスが受けられるだろう」

 「ええ?!、でも…、103番道路には、野生のポケモンもいるんですよね。
 それにいきなりバトルなんて、私とラムサールにはまだ無理だわ」

 「野生のポケモンはいるが、あのポチエナとのバトルからすれば大丈夫だろう。
 そんなこと言わずに会いにいったらどうだろう。きっと役に立つよ」

シズクはポチエナとのバトルを思い出してみた。もう一度戦っても上手くできるだろうか。
ラムサールが怪我をするのはどうしても嫌だった。
その時、シズクの腰のあたりがほんのりと暖かくなった。
ウエストポーチの中のモンスターボールのようだ。

 ─ラムサール。あなたも大丈夫だって言っているのね。

シズクは、決めた。

 「はい。分かりました。行ってみます」

 「そうか。最近は同じ人とばかりバトルしていてつまらないと言っていたから、それはユウキも喜ぶぞ。
 トレーナーがどんなものか教えてもらうといいぞ」

博士は、とても嬉しそうに言った。

 「103番道路は、コトキタウンの向こう側だ。コトキまでは歩いて半日くらいかな。
 途中には案内板があるから道から外れなければ、迷うことも無いはずだ。
 ユウキは、今日出かけたばかりだから、あと2、3日は向こうにいるだろう。
 君は今日、越してきたばかりだから、出かけるのは明日にするといい」

そういえば、シズクは今日引っ越してきたのだ。色々なことがあったので、そんなことはすっかり忘れていた。
ママにもすぐ戻ると言って出て来たのを思い出した。

 「そうですね。明日行ってみます」

博士は部屋の扉を開けてくれた。シズクを早く送り出したいらしい。仕事が溜まっているのか。
それとも、博士は何かを期待しているのだろうか。
シズクは博士の目を見てみたが、瞳にはシズクが映っているだけだった。

 「ああ、そうそう。もしも、君のポケモンが傷ついたら自分の家で休むといいぞ。
 君のママのアロマは人だけでなく、ポケモンにも効き目があるからね」

博士は、シズクの背中に向かって言った。
シズクは振り返ってお辞儀をすると部屋を後にした。
廊下の途中で青年と会った。シズクが話しかける。

 「あの…」

 「え〜と、シズクちゃんだったね」

 「はい。あなたも、ここの研究者なのですか」

 「ああ。カントーから修行に来て、今はオダマキ博士の助手をしている。マサラタウンのシゲルだ」

前髪をかきあげるしぐさが少々気障っぽい。


う、わー、シゲルが出てきちゃったよ?^0^;

いやでも、アニメのシゲルはポケモン研究者を目指して旅に出たし、
ホウエン地方で研究所破り─もとい、研究所巡りをして修行してる、っていうのもありそうな話だよね。

ピカナがシゲっち好きなんで、ちょいっと出してくれたのかも(笑)
彼はいずれ故郷に帰って、オーキド博士と呼ばれるようになるんだよ、きっとね♪


 「あの、オダマキ博士はポケモンのどんな研究をしているんですか?」

シズクは、忙しそうな博士に直接きくのは気がひけたので、このシゲルと名乗る青年にきいてみた。

 「オダマキ博士はポケモンがどこに住んでいるのか、分布の調査をなさっているんだ。
 ユウキくんは、好きなお父さんのお手伝いをしているのさ」

 「え?!、どの種類のポケモンがどこにいるか判っちゃうんですか?!」

 「ああ。だがそれだけではない。どのポケモンがどこにどれだけ住んでいて、
 そのポケモンが増えているのか減っているのかを調査している。
 保護が必要なポケモンがあれば、ポケモン協会に警告している。それで保護区が設定されることもある」

 「研究といっても色々なことがあるんですね。私、実験をするのが研究だと思ってました」シズクはとても感心した。

 「世界は限りなく広い。色々なことに出会いたければ、旅をするといい」

シゲルは遠くを見つめた。視線の先にあるのはマサラタウンかそれともまだ見ぬ町か…。

 「あの、呼び止めて済みませんでした」