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わがままキティ | |
森と湖の国、美しいフェロル王国の首都、麗しのブルーバードに住まう者の多くは、心優しいエルフ族の人々だ。 争いを厭い、自然や隣人を大切にする住民の多くは、王宮を幾重にも取り巻いて広がる、深い森の奥津城、 古い樹々に囲まれたそこここの空間に、秘やかな住まいを築いて、その暮らしを営んでいる。 人間やドワーフ等に比べて寿命の長い彼らにとって、世俗の流行り廃りは特別の意味を持たないが、 仮に長い時間を持て余し、「永遠」に倦むことがあるとすれば、好まれる話題は何某かの「変化」について、に相違ない。 *************************** 穏やかな気性のエルフにとって、身内のかんしゃくほど日々耐え難いこともないだろう。 森の一角に住まう兄妹、キーサとキティを襲った不幸は、巷で噂になるほどの有名な出来事だった。 二人の優しい両親は、ドワーフの国を訪れる旅の途上で、あちあちガニの大群に出遭い、生命を落としたのだ。 フェロルからカラフへの旅路は遠く、あちあちガニは駆け出しの冒険者にとってさえ少々ツライ相手である。 まして、市井の人々には、どれほどの恐怖だったことか…。 父母を失った幼い娘が、心の病に陥ることになったのも、無理からぬ事と思われた。 妹の身を案じつつも、次第に疲れていく優しい兄。どうにかしなければ……… *************************** 磨き抜かれた美しい猫目石とサンゴをあしらった、二つの人形を手渡されたキティは、 それぞれを父母と思って暮らしていくわ、と、憑き物が取れたように安らかな笑顔でリュークに応えた。 |
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両親の旅の目的が、自分への贈り物の宝石を手に入れるため、 と知っていたら、キティの心は壊れて戻らなかったかも知れない。 しかし、兄のキーサはその事実を固く胸に秘して、 生涯、妹に語ることはなかった。 もちろんリュークも、告げることはない。 たとえ幾千の辛い思い出を抱えることになろうとも、 幾千の笑顔を守ることが出来れば、 それ以上の幸せは無い、と、リュークは思う…… 精歴149年木月1日 |