麗しの金月、爽やかに吹く風に誘われて、微笑みの森を散策する、憩いのひととき。
…ところが、可憐な花びら以外にも風に乗って届けられたものがある。
助けを求める鋭い叫びだ。
「あんだぁゴルァ！ 邪魔なんだよ、向こういってろ…」
駆けつけたリュークに向かって歯を剥き出し、威嚇する緋色のオオカミ男。
襲われているのは小柄な白い幻獣だが、助けを求められて躊躇するリュークではない。
何よりも、オオカミ男には少なからず因縁がある…。
日頃から鍛練を積んでいたリュークにとって、
もはやオオカミ男は脅威ではなかった。
捨てぜりふを吐いて逃げ去る彼らを見送りながら、
リュークは助けたお礼にと幻獣からもらった可愛い人形を、
そっと背嚢に仕舞い込むのだった…。
精歴１１８年金月４５日