美しいのは樹々の緑だけではなく、そこかしこに咲き乱れる花々も然り。
桜散る春はもちろんのこと、小雪舞う冬の最中でも、首都の花々は枯れることがない。
それは、首都を造りし遙か昔の人々が残した守護の魔法なのか、
それとも、樹々をいたわり花々を愛でる森の人々の真心の賜物か、
いずれにしても、仕事と修行に明け暮れる日々の疲れを癒してくれる美しいものたちを、
多くの冒険者たちと同様にリュークもまた、愛しているのだった。
花の名前には詳しくないリュークだったが、フェロルではありふれている美しい青バラが、
余所の王国では決して咲かないことは知っている。
難しいことはよく判らないが、
青バラを愛するひとびとの笑顔を、
自分が守らねばならない事は判っている。
樹々の緑も、可憐な花々も、
美しい女性の笑顔があればこそ、
いっそう輝いて見えるというものだから…
精歴１３８年金月９日