童話王国クエスト日記

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閑話休題〜真実は小説ほどに奇なり
 うららかな春のとある一日、「花散里」の面々は
連盟部屋(の代わりにしているリュークの下宿先)の一室で思い思いにくつろいでいた。
テーブルの上には、切り分けられ、すでに大半が食べつくされたアップルパイの皿と、
白磁の茶器が並べられているところを見ると、どうやらお茶の時間は終わってしまったようだ。

 「ごちそうさま。また、料理の腕を上げたんじゃない?」

 すっと立ち上がると、自分の食器を手際よく片付けだしたバラードが言った。

 「今日のパイは、ジェルシーさんのレシピを私なりにアレンジしてみたのですが・・・」

 ルキアのカップにお茶のお代わりを注いでいたリュークが、嬉しそうに語りだす。
しかし、始まったら長いリュークの料理話につかまりそうになったバラードと、
童話王国の新刊を夢中になって読みながらカップの中に指を突っ込みそうになっていたルキアは、
部屋の片隅で突如起こった、ざらざらざらっという大きな音に救われたのだった。
  
 「あっちゃー、原石ばら撒いちゃったさ;;」

 見れば、紫色や緑色、さまざまな種類の原石が、
床一面に散らばっている。

 「ちょっとちょっと、ラムダくん、
  ここは昨日掃除したばかりなんですよ〜」

 「わりぃ! すぐに片付けるからさっ」

 話の腰が折れたのをこれ幸いと、
バラードは洗い物をしに行ってしまった。
ルキアは片手でお茶をすすりながら、
その視線は本に向かっている。

 「んー、やっぱ、分けておきたいよなぁ・・・
  なあリュークぅ、ここに置いてある紙、使っていいかー?」

 「いいですよ。きちんと片付けてくださいね」

 掃除をしたときに、紙束なんか置いただろうか? 
とリュークは思ったが、テーブルのほうを振り返ったとたん、
その思いはどこかへ飛んでしまった。

 残っていたはずのアップルパイが消えている。
ルキアが指をなめなめ、本のページをめくった。
お茶のカップはすでに空になっている。
バレンタイン。べこ商人の周りは女のコ達で一杯♪

 「ルキアさん、パイの残り、全部食べちゃったんですかー??」
 「・・・ん〜、あれ、最後だったの〜? ごめんね、リュークさんも食べたかったー?」
 「違いますよ、私が言いたいのはですね、最近、お菓子食べ過ぎじゃないですか、ってことで・・・」

 「そうよねぇ、最近のルキアちゃん、ちょっと、ねぇ・・・」

 水音を立てながら、バラードも口を合わせる。

 「えぇー、そんなこと無いよぉ〜」 と、むくれるルキア。
 「そんなことありますよ。この間も、一人でこっそりチョコレート食べようとしていたじゃないですか」
 「こ、こっそりって……人聞き悪いこと、言わないでよー;; あれは自分で買った奴だもんっ」
 「お菓子の食べ過ぎは、お肌に悪いわよ?^^」

 二人がかりの攻撃に、旗色の悪いルキアである。するとその時、

 「うはははははははー@@ 」
 
ホワイトデー。男のコは、あんまり感心が無さそう…;;
 部屋中に響き渡る大声に、三人が驚いて
そちらに目をやると、散らばった原石の真ん中で
ラムダが紙片を手に大笑いをしている。

 「どうしたの?」
 「どうしたんですか、ラムくん」
 「…ああーっ、それ、あたしの原稿っ!」
  
 椅子を蹴倒して突進するルキアだったが、
ラムダは彼女をひょいっと軽くかわすと、
声を上げて原稿を読み始めた。
 
***1枚目の原稿

 「……@@」
 「……………」
 「………;;」

 思わず無言で顔を見合わせる面々。

 「なーなー、これって、アイツのことさ?」
 「……いけませんよ、ラムダくん、他人の日記を読んだりしたら…」
 「ちちち、違うのよー! 日記じゃないもんっ、小説だもん!;;」

 真っ赤になって力説するルキア。

 「…そうねぇ、事実としては、ちょっと格好良すぎだわね」
 「バラードさん、それはそれで、きつい意見です…」

***2枚目の原稿
   
 「おいらが聞いた話とずいぶん違うなー」
 「なによー、ラムちゃんの莫迦ぁ>< 何が違うっていうのー」
 「うーん、ルキアの前だと余裕みせてるけど、リュークの前だと妙に嬉しそうな顔してるとか?」
 「え、ちょっと、それって……^-^;」
 
 「そういえば、この前私が摘んだお花を差しあげた時、過分に喜んでおられたような…」
 「うわ@@ やっぱそれって」
 「ええ〜、あたしがカードあげた時には普通な感じで……って、ち〜が〜う〜;;」

 赤くなったり青くなったり百面相で忙しいルキア。

 「それはねぇ、ガルソン新人賞に応募しようと思った小説なのー」
 「ああ、童話王国を書いておられる有名作家の?」
 「そういえば、酒場にそんな張り紙があったかな?」
 「やあねぇ、ガルソン賞って、毎年やってるじゃない」
 「ふーん。ただの酒好き爺さんじゃなかったのかぁ」

***3枚目の原稿
 
 「だけど、恋愛小説部門ってあったかしら?」
 「一応、青春冒険ファンタジーになる予定なんだけど……」
 「○○愛部門になっちゃうのさー」

 「いいもんっ! あたしにはバラードが居るから〜…
  …って、ち〜が〜う〜;;」

 「わたしは御免だわ。−−」
 「バラードが、冷たいよー><」

 「……私はノーマルです;;」
この時期限定の天候「ハート」♪

***4枚目の原稿
 
 「でもまぁ、橋のくだりは結構いいんじゃない?」
 「まだまだ、続きがあるのさー」
 「もういーじゃない、返してよー;;」

 追いかけるルキアと逃げ回るラムダ。床の原石はさらに散らばり、リュークは頭を抱えて座り込む。
バラードはといえば、さっさと部屋の隅に避難して、愛用の鞭を磨きだした。仲裁に入る気は毛頭無いらしい。

 まだまだ当分の間、浮いた話には縁が無さそうですね…
…と、気を取り直してテーブルの上を片付け始めながら、リュークは思った…

                                                  精歴208年闇月20日

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   大変申し訳ございませんがエラーがでるかも知れません;;

注3)この物語はフィクションです(笑)