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閑話休題〜愛と誤解の聖ヴァレンタイン | |
差し出されたものを手にして、リュークは戸惑いを隠せなかった。 目の前では、ここのところ姿を見かけなかった盟主のルキアが嬉しそうに笑っている。 「あのぅ………どうして、これを私に?」 遠慮しがちにたずねたリュークに向かってルキアが不思議そうに答えた。 「だって、リュークさんって、お人形が好きなんでしょ?」 「ええっ?」 いったいどこから、そんな話が出たものやら。ルキアいわく、 『微笑みの森でサルから貰った人形を大事にしまっている』 『それ以外にもサルの人形を集めて、全部で8つも持っている』 『この前、マーケットで人形箱を買っているのを見た』 等々の理由が、これの原因であるらしい。 ↓ |
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「じゃ、これも、預かってくんないかなぁ?」 そう言ってラムダが差し出したのは、 目の前のそれとよく似た人形だったが、 よく見ると少し、作りが丁寧だ。 「ちょ、ちょっと待って…」 「あーっ! それひょっとして!」 リュークの言葉をさえぎるようにルキアが叫ぶ。 |
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「ねぇねぇ、それってやっぱり、噂の彼女さんから貰ったんでしょー?」 「な、なんだよ、ルキアは関係ないさ! おいらはリュークと話してるんだっ」 テーブルから身を乗り出してラムダの背嚢をのぞこうとするルキア。 「なによー、チョコは? ねぇ、チョコレートも、貰ったの? ちょっとー見せなさいよ〜♪」 「や、やめろってば、おい、何すんだよ! おまえこの頃、ちょっとうるさいさ!」 リュークそっちのけで、もみ合う二人。 「………はぁ…」 リュークが先日、マーケットで見つけた人形箱を買ったのは、本当のことだ。 普段の価格よりも、若干安かったからなのだが、しかしそれは、自分のためではない。 盟主であるルキアがことある事に、 「銀行が狭いよー;;」 と、ぼやくからだ。 |
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最近、彼女の姿を見かけないと思ったら、 先だってチェリー村と新しく交流を開いた、 ベーボという港町に入り浸っていたらしい。 今日も人形を取り出す前までは、 ウサギの幻獣について熱心に語っていたが、 彼女が一番気に入っているのは、 港の氷屋で出されるアイスクリームらしい… |
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そもそも、ここのところ銀行を圧迫しているのは、彼女が集めてくるトロピカルな果物や、 タマゴに小麦粉、牛乳といった、料理素材の山なのである。 その辺のところを、どう思っているのか、それとも何も考えていないのか、 見れば今度は、ラムダがルキアの背嚢をのぞこうとして騒いでいる。 「おいおい、この大量のチョコレートの山は、いったいなんなのさー。」 「別にいいじゃないよ、持ってたってー。とっても軽いんだし…」 「そっかー、それで最近、丸くなったんだな、おまえ。 お菓子の食い過ぎさ!」 リュークは、あっ! と思ったが、言ってしまった言葉はもう、取り消せない。 「し、失礼ねーーー、あたし、そんな、丸くなんかなってないよー!」 「わ、ば、ちょっとやめろ! ハサミや乳鉢を投げるんじゃねぇさっ!」 道具やチョコレートが飛び交うテーブル。 「………はぁ…」 リュークは、愛嬌があると言えなくもない二つの人形を、 こぼれたチョコレートで汚れないように、そっと自分の背嚢にしまい込むのだった…。 精歴153年木月8日 |