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[ ジョイス ]
シャープなリズムに鋭い視点、ハード・ボッサの知性派

< 00/8/17 New !! >

Who's who?
 ジョイスの音楽

 5ヶ国語を操る才女、ジョイス。 頭の回転も早く、フェミニズムの視点に立った歌詞も鋭く、ハード・ボッサという言葉がピッタリなサウンドもシャープ。 言い忘れたが、1948年生まれのカリオカ、コパカバーナ育ちなのだ。 そしてあまり意味はないが、水瓶座なのだそうだ。

 1968年、若干20歳にしてデビューアルバムを発表。 軍事政権と戦いながらしばらく活動を続け、結婚後、70年代前半は家庭にこもっていたが、やはり音楽家の血が騒ぐ。 76年、かのヴィニシウス・ヂ・モライスに誘われ、南米、ヨーロッパとツアーに出るのでありました。 79年にはエリス・レジーナがジョイスの 「或る女」 を歌い(大ヒットした!)、ジョイスは作家としても注目を集めることに。

 翌80年に発表したアルバム、「フェミニーナ」 が大ヒット、一気にジョイスの知名度が上がることになる。 ジョイスのただ者でないところは、その後、レコード会社に振り回されるのを嫌い、自主レーベルからアルバムを発表したりしているところである。 いまだにひとつの大手レーベルにどっぷりということがない。 自分の作りたいアルバムを必要なところから出すという態度を貫いている。 エライ! 音楽に対してシニカルかつストイックなのだ、本当に。

 ジョイスの音楽は、デビュー以来一貫している。 自らの弾くヴィオランを中心とした、アコースティックな音楽である。 しかし、そのリズムが独特で、シンプル&スピーディというか、ちょっと聴くだけで ”ああ、ジョイスだな” と分かるオリジナリティを持っている。 そして歌い方に演歌でいうコブシというのか、粘りというかうねりがあって、そこもまた魅力的なのだ。 ルーツ的にはトム・ジョビンやルイス・エサを敬愛していたというからボサノヴァだけれど、MPB世代共通のビートルズ体験などの影響で、独自の音楽が花開くのである。

 ハード・ボッサともいうべきグルーヴは数年前に世界のクラブシーンで注目され(ジョイスの80年代の音楽である)、もてはやされたが、本人は ”一過性で終わるリスクもあるのであまり気にしていない” といたってクール。 オリジナルや、ジョビンやスタンダードのカヴァーなど、さまざまな方向性をチャレンジしている。 フェミニズムの視点に立ったクールでクレヴァーな歌詞も定評のあるところである。 来日公演もほぼ毎年行っているので、一度は聴いてみるべきアーティスト。

Joyce image


What's best!
   勝手に選ぶこの1枚!
CD image
ILHA BRASIL (1996)
オーマガトキ OMCX-1002

−ジョイス節全開の傑作オリジナル−

 企画モノが続いたジョイス、当時、91年の 「ランゲージ・アンド・ラヴ」 以来、5年ぶりのオリジナル・アルバムがこれ。 すべてオリジナル、しかも新曲で固め、カヴァーは1曲もない。 しかも全曲90年代以降に作ったナンバーだそうで、気合の入り方が違う。

 パーソネルはジョイス(vo, g)の他、モザール・テラ(p)、テコ・カルドーゾ(fl, sax)、シザン・マシャード(b)、トゥッチ・モレーノ(ds)という当時のレギュラー・カルテットに、曲によってゲストが加わるという構成。 そのゲストも、エルメート・パスコアール、マルコス・スザーノにジャキス・モレレンバウムなどなど豪華絢爛。 ホーン・セクションには小野リサでおなじみ、城戸夕果も参加しているのだ。

 オープニングからジョイスなリズムが全開、そこにホーンが絶妙のタイミングで飛び込んでくる。 このジョイス流サンバの軽快なこと。 この疾走感こそジョイスなんだよなあ。 続くは一転してスロウ&メロウなナンバーでしっとり聴かせる。 緩急自在。 この2曲で完全にノックアウトだ。 そしてピアノがやけにジャジーだと思ったら、全体的にジャズ・フィーリングが濃厚。 続く 「O Chines E A Bicicleta」 ではジャズ・ギターのソロまで入り(ええっ!ジョイスが??と思ったらゲストが弾いてました(^^ゞ)、ジャジーさを盛り上げる。 もともとアコースティックなジョイスの音楽、ジャズな雰囲気もいい感じなのだ。

 このアルバム、全曲ジョイスが満喫できる傑作である。 音楽的にも、バイーア的パーカッションになんとラップを披露する曲まであるなど、新しい試みもいたるところに聞かれる。 そして、どんな曲をやろうがジョイスはジョイスなのがすごい。 あの独特のリズムを刻むヴィオランと声があれば、そこに広がるのはジョイスの世界なのだ。 息のピッタリ合ったバンド・サウンドも惚れ惚れする。 いまだにコンサートではこのアルバムからの曲をよく取り上げるようだし、ジョイス自身も相当納得できる仕上がりなのではあるまいか? 全曲ダレるところがまったくないし、ジョイス入門にもオススメできる1枚である。 なかばクラブ(語尾が上がるクラブね)御用達の 「フェミニーナ」 などから入るより、このアルバムを聴いて欲しいと思う。

 ところで、このアルバム、日本企画盤なのだ。 このアルバムに限らず、ジョイスのアルバムはブラジル以外で製作されたものが多い。 ジョイスいはく、ブラジルではオリジナル曲中心のアルバムの企画がまったくないそうで、ブラジルでもやはり ”売れるアルバムしか作らない” というレコード会社の思惑が見て取れる。 ブラジルは音楽は豊かだと思うけれど、それを取り巻く音楽ビジネスはいずこも同じということだろう。 ブラジル音楽に対しては、日本の方がよき理解者なのかもしれない。

Joyce illustration


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