短  歌  集
 2 0 0 8 年
9 月
初めての室の障子を張り替えて眩しき白さに心がなごむ 08.09.30
パクパクと何をうたうか錦鯉水面に顔出し宇宙を見ている 08.09.29
髪切りに動くハサミがシャキシャキと耳に囁く虫の音に似て 08.09.28
陽が昇り鱗のような川面から太公望の竿のみ見える 08.09.27
遠方の山を背にして虹の帯自然のなせる性が嬉しき 08.09.26
寂しいかな王監督の退任に完全に終えるかON時代 08.09.25
寝床から見上げる空に秋雲の色と形を変えつつ流れる 08.09.24
今日一日(ひとひ)秋の風吹く青空に蔵王の山に白雲たなびく 08.09.23
大地震(おおない)に三月の時を経てもなお気持が癒えずに小地震(しょうない)続く 08.09.22
大空を見方に飛び立つ鳥人間コンテストの風琵琶湖の園に 08.09.21
一人身につらさがあろうか人世にて楽しきことのみ多かりき 08.09.20
今朝もまた妻が入れたるコーヒーを飲む幸せに時が流れる 08.09.19
蝋燭の炎が揺らぎ赤々とじっと見ている一生(ひとよ)のことを 08.09.18
こりこりと歯と歯に噛み合う松茸の香りかぐわし秋の夕暮れ 08.09.17
木漏れ日に青葉茂れる細き道この道過ぎれば何処へゆくやら 08.09.16
日本初パンダの双子が誕生し人形のように手玉に取る親 08.09.15
ジャズファンの期待が膨らむフェスティバル杜の都にジャズの音色が 08.09.14
ジャズフェスの音が繰り出す定禅寺リズムをとって人波動く 08.09.13
遠方に稲妻の音轟きてあっという間に大雨となり 08.09.12
うな重の切り身が三つ鎮座して箸の動きをじっと止めいる 08.09.11
ふと見れば川面に顔出す石のうえ亀さん座って何を思うか 08.09.10
夕闇に迫る遠山ながみれば何とはなしに淋しさ募る 08.09.09
老松の斜めの幹が太くしてしっかり根をはる人生のように 08.09.08
キャンパスの銀杏の木々に実がなりてちさき木の実が落ちてこぼれる 08.09.07
キャンパスのフェンスに絡まる朝顔の濃い紫に若さを覚える 08.09.06
庭先の畑が花に埋められて野菜とともに共存している 08.09.05
夕されば秋の気配が身にしみて家路に急ぐ土手の細道 08.09.04
日の暮に夕陽を背にして烏らは影絵のように群れて飛び去り 08.09.03
今年もまた巡り合えたね初秋刀魚大根おろしの白さが嬉しく 08.09.02
長月の秋の夜長を友にして読書にふけるひと月になり 08.09.01