Visitor's Review

音楽観
雲竜 

ふと、思いつきで筆を取る。
音楽、音楽、音楽
音圧、洪水、歓声
ヘッドフォンをしたまま閉じる
なにを書くのかわからないまま思考が回転する
クラシック、レゲエ、パンク、ロック、ジャズ、スカ、ブルース、ファンク、メタル、ヒップホップ、ミクスチャー・・・
数え切れないジャンル(この言葉は余り好きではない)に
それこそ星の数ほどの偉大なる先人と
その何百・何千・何万倍の先人と呼ばれることなく生涯を終えた人たちの後に
今の音楽はできている

否定・肯定・困惑・悲哀・恐怖・怒り・快感
感情の間
政治・経済・宗教
戦争
その他のあらゆる人間を取り巻く状況の中で生まれ(あるいは取り巻き)
消費されている音楽
消費されるためには作られていない音楽
そのどちらでもない音楽

ありとあらゆる種類の全てのファクターを吸収し、限りなく増えた音楽

自分は少し前まで60年代を10代で過ごした人がうらやましかった
ダイレクトにあれだけ純度の高い音楽に出会えた彼らを
本当にうらやんだこともあった(偉大なるBの事)

それは単なる懐古かもしれないし
本当にそうあって欲しいと願ったのかもしれなかった
もう思い出せない

そんなことは本当にどうでもいい
ただ今音楽があって 目の前にあって 自分はその中に無限を見ることができる
それだけでいい

これだけ複雑を極め、盲目のまま、底へめがけて
落ちていきそうな世界の中で
何一つリアルな感触をつかめないまま過ぎていく日々
その中で

光るモノ

楽しいモノ

美しいモノ

芸術、芸術、芸術。
音楽
楽しむ音
音を楽しむ

慈しむ 全ての音を
狂える程 激しく 儚く 切なく
ココロの隙間を埋めたり
そっと、ただ隣に自然に存在できるもの
あるいは激しく掻き毟るもの
全ての矛盾を抱きかかえながら
世界の隙間に滑り込む瞬間
何もかもを粉々に打ち砕く感覚
スリル
あるいは充足

もしくは土曜日の夜
雪が降る中
帰ってくる父親
母親は穏やかに出迎え
娘は一片の曇りもなく笑顔を振り撒く
暖炉にあたりながら
取りとめもない話をする
ロッキンチェアーで揺れる母と娘
父親は二人の後ろで微笑む
そんな暖かさ

ひょっとしたら
親の顔も知らず 戦場で生まれ
哺乳瓶よりもナイフを先に持ち
人を殺すことでしか
恨むことでしか
生きられない
前に進めない
自分を表現できない15才の男の子
ある日彼は移り住んだ町で
はじめて聞いた音楽
知らないうちに涙を流して聞いた賛美歌
絶望と後悔に打ちひしがれる
暖かい歌を聴きながら

逼迫した現実に風を通してくれる
昔日に思いを馳せるような音
あるいは絶望という名だとしても
本能の赴くままに
生きる糧となりうるもの

自分にだけは嘘をつけないと気づかせてくれたもの


信じさせてくれる音楽
それだけでいい
残るものは 残すものは
選ぶものは
それだけでいい

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