No.56 沼津中学跡の香陵文学碑

所在地 静岡県沼津市御幸町、香陵公園
建立 2010年11月20日
建立者 沼津北ロータリークラブ
補記

沼津中学の門柱のイメージです。

沼津北ロータリークラブ創立50周年記念事業です。

画像 碑外観(101KB) 碑文(122KB) ※徳山さんが提供してくれました。
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碑文

井上靖 沼津中学と香陵の地

井上靖(一九〇七〜一九九一)は静岡県立沼津中学校(沼津東高等学校の前身)で大正十一(一九二二)年から大正十五(一九二六)年まで学んだ。ここが学びの地、香貫山の麓「香陵」である。

「香陵」とは沼津中学校のことである。井上は香陵で生涯の友に出会い、眩しいばかりの奔放な青春時代を謳歌し文学への道を踏み出した。自伝的小説『夏草冬濤』(なつぐさふゆなみ)は中学生の主人公・洪作がこの地を舞台にして学友らと胸深く呼吸している。

校庭には早くも秋を思わせる風が吹き渡っており、校舎は青く澄み渡った静かな空を背景にして置かれてある。生徒たちは、少し気恥ずかしい思いで校門をはいって行く。校門をくぐりながら、校舎や校庭は、夏休みの間に幾らか縮まってしまったのではないかと、まじめにそんなことを考える。校舎はもっと大きかった筈だし、校庭はもっと広かった筈である。しかし、そうした疑念も長くは少年たちの頭に留まっていない。そんなことにかかずらわっていられないほど、小さい魅力ある事件がいっぱい待っている。恐ろしくまっ黒な顔をした友達もいれば、反対にまっ白な顔をした友達もいる。みんな夏休み前とは少しずつどこか違っている。

(『夏草冬濤』より)

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