井上文学碑 No.47 御成橋と狩野川の碑

所在地 静岡県沼津市魚町1、サンフロントビル
建立 2006年1月11日
建立者 沼津北ロータリークラブ
補記

『夏草冬濤』に登場する狩野川にかかる御成橋の側にあります。また、この文学碑のすぐ近くには、「大阪屋」「かみき」「ダルマ軒」それぞれの跡地があるそうです。

画像 碑外観(94.1KB) 碑文(93.8KB) ※八扇さんが提供してくれました。
地図 MapFan Web ロゴマーク ※サンフロントビル(静岡新聞社のビル)の敷地内北側にあるそうです。
碑文

井上靖 御成橋と狩野川

井上靖(明治四十年〜平成三年)は、天城山麓の湯ヶ島で幼少期を過した。大正十一年から旧制沼津中学で学び、友人たちとの出合いによって、文学に目覚めた。井上文学の礎は、ここ沼津で築かれたのである。

その様子は、自伝的小説「夏草冬濤」に描かれている。狩野川、そして御成橋とその周辺は、主人公である洪作少年と仲間たちの息づく青春の舞台である。


御成橋の上から見る眺めも、いかにも都会の川といった感じで、橋付近の両岸は人家や倉庫で埋められている。その人家や倉庫の列が切れると、上流の方は青草に覆われた堤になり、川筋はゆるやかに大きく身をくねらせて視野から消えている。そして下流の方は少しずつ川幅を広くし、河口らしい貫禄を示して来る。

しかし、洪作が狩野川を日本で有数の美しい川であると信じているのは、この沼津の街中を流れている狩野川のゆったりとした姿態の美しさのためではなかった。御成橋の上に立って、上流の方に目を遣る時、洪作はいつも天城山に源を発している狩野川という川の、その長い一本の川筋が目に浮かんで来るからであった。

(「夏草冬濤」より)

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