所在地 | 静岡県田方郡天城湯ヶ島町湯ヶ島、滑沢渓谷 |
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建立 | 1982年3月 |
管理 | 湯ヶ島町役場 |
素材 | コンクリート、御影石 |
補記 | 「猟銃」、詩集「北国」所収 |
画像 | 碑外観(56.7KB) 碑文(104KB) 解説(85.1KB) ※栗饅頭さんが提供してくれました。 |
地図 | ※国道414号線から林道に入って300mほど行った所にあります。 |
碑文 |
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猟銃 なぜかその中年男は村人の顰蹙をかい、彼に集まる不評判は子供の私の耳にさえも入っていた。ある冬の朝、私は、その人がかたく腰帯をしめ、コールテンの上衣の上に猟銃を重くくいこませ、長靴で霜柱を踏みしだきながら、天城への間道の叢をゆっくりと分け登ってゆくのを見たことがあった。それから二十余年、その人はとうに故人になったが、その時のその人のうしろ姿は今でも私の瞼から消えない。生き物の命断つ白い鋼鉄の器具で、あのように冷たく武装しなければならなかったものは何であったのか。私は今でも都会の雑踏の中にある時、ふと、あの猟人のように歩きたいと思うことがある。ゆっくりと、静かに、冷たく−。そして、人生の白い河床をのぞき見た中年の孤独なる精神と肉体の双方に、同時にしみ入るような重量感を捺印するものは、、やはりあの磨き光れる一個の猟銃をおいてはないかと思うのだ。 井上靖 |