掲示板ログ 2005年11月


[1394] 大分前の「新人」さんへ。 投稿者:座禅草 投稿日:2005/11/10(Thu) 16:59
おしさしぶりです。時々訪ねてはいたのですが。
「氷壁」をどう読むか?

井上靖の作品には、いつも「自己の制御」という精神をかんじます。
代表作「あすなろ物語」に、主人公の少年がアスナロの大樹の下で、知った「克己」という言葉に感動する場面があるのですが、それを教えてくれた療養中の大学生が雪に埋もれて心中自殺してしまう。そこにある「己に克つ」と共通の精神ではないか、とおもいます。

登山は厳しい自然が相手であり常に冷静な判断と経験が必要。この厳しさにひかれて主人公は山に登るのですね。

最後の遭難場面では天候の悪化に元の道に戻るべきと判っているのに、朦朧とした頭で感情的に判断してしまった。

別れる決心をした既婚女性への愛と、婚約した若い女性への愛。主人公は、どれほど惹かれても不倫の愛を絶対に選ばないぞ、という道徳的な抑制心をもっていて、道を戻ることと、強く愛する女性に戻ることとを賭けて、登山の安全の判断の基準にしてしまったから、死につながっている。

克己、抑制、道徳。考えてみると、愛があれば全てが許されがちな、今日の気風であり、感情が生きる判断の基準である今日では、昔の気風になってしまいましたね。でもそれらが忘れ去られた今日、あらためて考えると、新鮮な精神かもしれない。



[1395] あすなろ物語を・・・ 投稿者:ぁすなろ 投稿日:2005/11/14(Mon) 12:13
みなさん、はじめまして。。。
私は北海道の中学生です。学校で「北海道に関係する文学」
という題材で、なにか本をよむことになりました。
私たちのグループは井上靖さんの『あすなろ物語』にしたのですが、、、
読んだ方がおりましたら、感想などをぜひ聞かせてくださぃ!

[1396] Re:[1395] あすなろ物語を・・・ 投稿者:はたはた 投稿日:2005/11/17(Thu) 15:19
みなさん、はじめまして。今回初めて書き込みさせていただきます。
早速ですが・・・・『あすなろ物語』を最近読み、その後すぐに『しろばんば』という著者の幼少期を書いた本を読んだのですが、『あすなろ物語』は『しろばんば』に比べて内容が少し暗いような印象を受けました。しかし、読み進めていくと物語の中に引き込まれあっという間に読み終わってしまいました。私は今まで読んできた小説の中で「これほど読みやすい小説はない」と思ったほどでした。最後は感動します。(「しろばんば」に比べて少し劣りますが・・・)
「あすなろ物語」だけでなく他の作品も呼んでみるといいと思いますよ。
> 私たちのグループは井上靖さんの『あすなろ物語』にしたのですが、、、
> 読んだ方がおりましたら、感想などをぜひ聞かせてくださぃ!

[1397] 南の島から 投稿者:ばりばり蟹座 投稿日:2005/11/24(Thu) 21:39
みなさん、お久しぶりです。
非常に長い期間、更新もレスも出来ず、申し訳ありませんでした。
今も出張で南国に来ているのですが、少し時間が出来たので、簡単ですが久々に更新しました。
レスの方も、時間を作って返したいと思いますので。

しかし、『風林火山』の大河ドラマ&スペシャル時代劇化、そして『氷壁』の連続ドラマ化と、賑やかになってきました。
2007年の井上靖の生誕100年に向かって盛り上がっていき、また井上靖が広く読まれていってほしいですね。


[1398] あすなろ物語、、 投稿者:座禅草 投稿日:2005/11/25(Fri) 12:48
「あすなろ物語」発表の当時は、まだ日本人の気持ちが戦争から完全に立ち直ったとは言えない時代でした。

 出版される多くの本は、戦争責任追求や戦争体験報告、戦前の反動のような民主主義賛歌、封建制度への軽蔑などなど、いずれにしても戦争の影響が色濃く関わる作品ばかりでした。

そこへ突然「あすなろ物語」が出版されたのです。
 昔ながらに繋がる村の生活や、家族の愛情、当たり前に平等な男女の交流など、戦争や封建制や、政治に関係ない、自然な人間の心を中心にストーリが展開していた作品でした。

 密閉された酸欠の空間に、いきなり窓が開いて涼風を流されたようで、多くの読者の共感を得たのですね。

井上靖の作品は読みやすいです。
それは、人間の性格や行動を、自然な理解で捕らえて表現しながらストーリを進めていくのが、この作者の才能の特徴だからではないでしょうか。作品の登場人物、話しの筋に、どこにも人工的で技巧的なワザとらしいさが無いのです。




[1399] 『氷壁』単行本 投稿者:はたはた 投稿日:2005/11/25(Fri) 16:42
12月(来月)に新潮社より文庫本ではなく単行本で新装版『氷壁』が発売されるようです。
詳しくはこちら・・・http://www.shinchosha.co.jp/shinkan/sokuho.html