「首トン」のひみつ


 「首トン」と言っても、別に打ち首とかじゃありません(^^;)。
 ゆうみさんからの質問で、

「鬼宿と雄飛が、敵の首(後ろの所)を「トン」と突いて、気絶させたシーンがあったと思うんですけど、  あれって、ツボかなにかあるんでしょうか・・・。」

 と、いうものがあったので、気絶の謎を、本業(鍼灸師)の方の視点から解説を試みることにしました。


 下が問題のシーンですが、シーン1では鬼宿が小石を暴漢の首筋に投げつけて、暴漢を気絶させています。
 シーン2では雄飛が菜箸にて適役の首筋を突いて気絶させています。

シーン1 シーン2
ふしぎ遊戯1巻 P55より 妖しのセレス1巻 P67より 妖しのセレス1巻 P68より
ふしぎ遊戯1巻 P55より 妖しのセレス1巻 P67〜P68より

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 両者共に狙っている部位は首筋の中央、髪の生え際から考えて、 第3〜5頸椎(首の骨)位の高さの部位に衝撃を与えています。

 まず、この位置には、現在の治療で用いられる経穴(ツボ)には該当する物がありません。
 ただし、背面の中央で、背骨と背骨の間にあたる所は、名前はなくとも全てツボとして 利用できますので、この箇所もツボと呼んでさしつかえないと思いますし、間違いなく人体の急 所ではあります。

 また、ツボは「スイッチ」ではありませんから、 そこを押した途端に気絶するというような物ではありません

 では、なぜ気絶してしまうのか?
 それにはいくつか仮説を上げることが出来ます。

 まず、純医学的に考えると、

仮説1:  首の骨は、元々前に弓なりになっているので、首を強く前方へ押すことによって、脊髄を引っ張り、 脳へ直接的に衝撃を打ち込まれた結果、意識を失った。
 
仮説2:  首の骨には、脳へ向かう血管も通っているので、首に後方から強い力を与えることによって、 一時的に血管を圧迫し、脳への血流を阻害して脳貧血の状態に陥れた結果、意識を失った。

 と、いう2つの理由が考えられます。

 また、東洋医学的な「気の概念」で考えた場合、

仮説3:  一時的に、首の部位で気の循環を断ち切られた結果、気絶(気が途絶える)した。

 とも考えられます。

 仮説1・2などは、テレビドラマなどでも、「手刀で首筋を叩く」というシーンがありますが、 それに該当すると思います。
 この場合はシーン2の雄飛の場合がそれに相当します。

 仮説1ですが、脳と脊髄というのは、いわばスーパーで売っている「パック入りのとうふ」の様なも ので、脳と脊髄(とうふ)は、頭蓋骨から脊椎(背骨)という器(パック)の中に満たされた脳脊髄液 (水)の中に浮いているような感じなのです。
 脳と脊髄と言っていますが、これは分離した存在ではなく、脳から伸びた神経の線維が束になったもの が脊髄なんです。
 ですから、脊髄が引っ張られれば、自然に脳も引っ張られるわけです。ちなみに深いお辞儀をするだけでも 脳に脊髄が引っ張られて少し上にあがるんですよ(^^)。
 ですから、首に後ろから強い衝撃を与えると、頸椎(首の骨)が前へ大きく湾曲して、脊髄を引っ張って しまい、脳にも急激なショックが伝わってしまうということです。

 次に仮説2ですが、脳へ向かう血管は頸動脈(首でパクパクしてるあれです)と椎骨動脈の二種類があり、 椎骨動脈は頸椎にある穴の中を通って脳へ向かうので、急激に仮説1と同様の衝撃が加わると血管が圧迫さ れて、一時的に血行が阻害されて脳貧血(脳への血液が足りない状態)を起こして意識を失う可能性が考え られます。

 と、ここまではなんとなく説明が付くんですが、問題はシーン1の鬼宿の例です。
 鬼宿が使ったのが野球のボールサイズの大きな石なら気絶しても当然なんですが、ゴルフボールサイズもない ような小石でしたから、あれでは少々正確に狙った程度ではちょっと気絶しそうにありません。

 そこで仮説3ですが、東洋医学的には、人体は「気」が循環する事によって正常に働くとされています。
 ですから、首に気を送り込んで、自然な気の流れ絶ってしまうと、意識をうしなう可能性があります。
 鬼宿は後に気功術で戦うようにもなりますし、古代人は現代人よりも「気」を自在に操っていたようなの で、無意識的に小石に「気」を込めて投げつけたと言うところではないでしょうか。(ちょっと苦しいなぁ^^;)

 最後に、危険なので良い子はマネしないで下さいね(^^;)。



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