もう〜今回は、このコーナーを始めるときからやりたかったネタです。
Copyright(C)1997.Yuu Watase 首筋にぶっすりと針が刺さっていますが、刺された人は、この後ばったりと倒れています。もう1人の
ガードマンさんが額を撃たれて死んでいるので、恐らく殺されたのでしょう。 で、鍼師の私の目から見ると、これは結構おかしいシーンだったんです。 と、いうのも、シーン1で刺している場所には基本的に厚い筋肉が存在するだけで、細い針を刺した 所で、生命を脅かすことが出来ないからです。 シーン1で刺している場所は、イラストから推し量って、大体頸椎の4・5番目くらいの高さ です。また、イラストには胸鎖乳突筋の盛り上がりと思われる線が描かれていますから、確実に胸鎖乳突筋より も後方に刺さっていると考えられます。 その場合、全く首の真横であれば、その奥には頸椎があって、脊髄までは針が届きませんし、位置が 多少後方なら僧坊筋の上部線維を貫いて板状筋に達し、場合によっては頸椎の後ろにある突起と突起の間を 貫いて、反対側に抜けてしまうので、重要な組織を破壊することはありません。 さらに、実際にこの場所は、私自身が授業で刺しっこしている場所なんです(^^;)。ついでに個人的に
友人に頼んで刺してもらってた場所でもあります。 ただし、アッサムの持っている針は、アッサムの手(子供の手の大きさと仮定)と比較しても太い物で
はありませんが、治療用の針にから考えるとかなり太めのものです。 ただし、ここでちょっと忘れていたことがありました。
Copyright(C)1997.Yuu Watase このシーンはアッサムが初めて登場し、沖縄で十夜を刺した時のシーンです。 勘のいい方はもうお気付きと思いますが、アッサムは暗殺者で、しかも針に毒を塗って刺してい
るんですよ。 つまり、上のシーン1は「アリ」なシーンなんですよ(^^;)。 ですが、転んでもタダじゃ起きません(^^;)。むしろ問題なのはシーン3の方なんです。 腰の位置や、シャツの位置から考えて、この場所は確実に胸部で、まだ肋骨のある部分か、或いは、
横隔膜に近いような、限りなく胸部に近い場所なんです。 横隔膜は皆さんご存じだと思いますが、横隔膜は一番下の肋骨に、お腹と胸を遮るような感じで張り付いて いるんです。そして、肋骨と横隔膜で囲まれた胸の中には、肺と心臓が入ってます。 で、大切なのが、人間は呼吸をしてますが、「肺には息を吸い込む機能は付いていない」と言うことです。 息を吸うには、横隔膜を動かすか、肋骨を動かさないと空気は肺の中に入ってきません。 ちょっと息を大きく吸ってみましょう。どうですか?胸があがってくるでしょ? ちょっと解りにくいですが、呼吸の概念図を下に上げておきます。
Copyright(C)1996.(株)西東社 もし、胸膜に針が刺さるとどうなるでしょう? なんと!胸膜に穴が空くと、肺がしぼんでしまうんです! で、肺には自分で膨らむ力はありませんから、呼吸が出来なくなります。 だから、アッサムがあんな刺し方をすると、確実に十夜の左の肺はしぼんで呼吸が通常の1/2になって
しまっている筈なんです。 ちなみに、あの太さの針だと出血もありそうですから、胸膜と肺の間に出血した血液がたまって、
さらに呼吸ができなくなります。 にも関わらず、「毒なんて効かないぜ」と言わんばかりに格闘戦始めちゃうんだから、やっぱり十夜 って普通の身体じゃないんですねぇ。 また、毒針を使いつつも、わざわざ危険性の高い胸部を狙うアッサムもプロだなぁと感心してしまいます。 渡瀬先生も、意識して描いてるとしたら、かなりの勉強家ってことになりますね(^^)。 う〜ん、今回はちょっと苦しかったかなぁ(^^;) |