今回は『ふしぎ遊戯』でたびたび登場してきた「房中術」を取り上げようと思います。 「房中術」といえば、青龍七星士の1人「房宿」の特技として作中で語られましたが、これは渡瀬先生
の創作物ではなく、実際に古代中国で創設され、日本にも伝わっていた医術の一種です。
Copyright(C)1997.Yuu Watase シーン1では、氏宿の幻覚で作られた偽太一君が
Copyright(C)1997.Yuu Watase シーン2は、古典的な濡れ場表現ですが、心宿と房宿が愛し合ってるシーンではなく、傷ついた房宿
が心宿と房中術を行い、心宿から「気」分け与えてもらっているシーンです。 そこで、下の図を見て下さい。
Copyright(C)1996. 至文堂 上の図は、房宿と心宿の行っている房中術の方法に一番似ていると思われる図です。 この図は、『医心方』という、現存する日本最古の医学書と言われているものの訳本から抜粋した物です。 図2は、図1を元に平成元年に書き起こされたイラストですが、図1は『医心方』もしくはそれ以前の、 『医心方』を編纂するにあたって用いられた中国古代の医学書にあったと思われる、房中術の一法を示した図です。 ここに示した図の方法は、七損と呼ばれる方法の第六番目『百閉』と呼ばれる行為で、消耗した男性が、 女性から気を取り入れる方法ですので、心宿と房宿の目的(房宿の治療)からは外れます。 ただし、基本的に房中術は皇帝や貴族など、位の高い男性がたしなむもので、特に中国では、皇帝の不老不死の 一方として考えられていた物もあり、男性が如何に女性から気を受けて元気になるか?というような事を追求していた 節があるので、記載されている内容は男性よりの内容になっています。 もちろん中には婦人科疾患の治療に効果的とされるものもありますがそれは少数であり、上で紹介した七損にいた っては、全て消耗した男性に対する方法で統一されているほどですから。 そういう事から考えても、男性の為と書かれている方法でも、女性の為に利用できる要素を多く残していると
考えられます。 古代中国では家を護ることが第一でした。古代中国では、地位や役職も相続によって受け継がれていたからです。 その為に、その家に伝わる秘伝や秘法は門外不出であって、広く万人に 知らしめる事を嫌った為に、文章にする事を嫌った傾向があり、医学書の類でも、出来るだけその神髄を隠すように 書かれていることが多く、極端な数字や易学に対応したこじつけの数字が使われることが多いので、中国の古代書物 をそのまま鵜呑みにすることは出来ないのが普通です。 恐らく、房宿は七星士としての強い気の力を使って独自の房中術を編み出していたと考えられますし、心宿 にしても、気を武器として扱えるほどの手練れですから、二人にとっては、どのような姿勢・方法を用いても、 交わりを持つことが出来れば、思うような効果を導き出せたと考えられます。 ● 上で紹介した『医心方』ですが、これはその中でも房中術についてまとめた『房内』と呼ばれる巻
のお話で、『医心方』そのものは漢方・鍼灸などの貴重な古典医学書で、房中術の専門書ではありません。 この中には、性交渉の体位や、男女の取るべき姿勢、果ては腰を動かす回数まで、細かく
書かれていますが、そこに示される数字は、実現が不可能と思われる数字もあります。中には一日に十回
以上の交わりを持つことを義務づけられている術式も書かれている程です。 ちなみに江戸時代まで『医心方』は重要な医学書とされて大切に管理され、安政七年には版木(印刷す
るために文字を彫り込んだ板)を国家的な計画として掘り起こし、印刷されました。 その後、『医心方』は中国の研究者の目に留まり、その中に、すでに散逸している、『医心方』を 編纂するために引用された、中国の貴重な医学書の補足・修繕に使われ、特に古代房中術の復刻に役だった とされています。それは『医心方・房内』には、中国で散逸していた数多くの房中術関連の医学書の内容が収録さ れていたからです。 ですが日本では、『医心方』のなかでも房中術を記した『房内』は、性交渉の具体的な方法が書かれて
いたため、政府が公序良俗に反するとして、発禁処分にしたという経緯を持つために、その噂だけが
ちまたに広がってしまい、好色本マニアの悪趣味の対象とされてしまいした。 ちなみに「房」とは寝室を意味する言葉で、漢方用語で「房事」・「房に入る」とは「性交渉を行う」 という意味を示し、房中術とは「房中」つまり「性交渉の最中」の「術」という意味を成します。 そうなると、「房宿」って名前は、まさに「そのままんま」を示しているんですねぇ。 ● それから、これは体験談になりますが、私は3年ほど気功をやっていた経験があり、多少ですが、自分の 身体を巡る「気」に関しては敏感に感じる事ができます。そういう感覚を持ったうえで、同棲していたパー トナーとの交わりの中で、疲労だけでなく、「気」のふくらむ感覚と言う物を感じました。 また、気功をしている最中にも、男女でペアになって気を操作し合う「陰陽導引術」という物を行っていましたが、
それは師匠の話では「房中術」と同じ系列のもので、いわば房中術の前段階にあたるものだたそうですが、それを
行うだけでも、全身が活性化されて、非常に身体が軽くなる感覚を体験したことがあります。 以上の事から考えてみて、陳腐な台詞ですが「愛のないHはするものじゃない。」と言われますが、それは
事実だと思います。 房中術しかり、インドのカーマスートラしかり、古代から人間はその生殖行為について研究を深めていた
事がうかがえます。 最近はセックスレス夫婦という言葉も生まれていますが、人と人のつながりのなかで、スキンシップと言うのもが
欠かせない以上は、夫婦の間で性交渉がもたれなくなるのは、その事実以上に問題が深刻な気がします。 性交渉(セックス)は日本では「いけないこと」や「不浄なもの」のように扱われますが、性交渉は、 食事と同じくらい人間にとっては大切な行為であり、人間からは切り離すことのできない問題ですから、 経験の浅い若い人には、その大切さを理解して、「下世話な噂話」や「誤った知識」に振り回され、肉体的な 遊戯として性交渉を行い、身体を内側から傷つけることなく、掛け替えのないパートナーとの絆を深めるた めの方法としてのみ行ってもらいたいと思っています。 房中術は、道教などに取り込まれる中で仙人・不老長寿を実現する為の方法して広まりましたが、元々は
健康法であったと思われます。
※18歳未満の閲覧を禁止しなかった理由 |