たどり着くのは、本当に容易でした。しかし切符を買う段になって、途端に目の前に壁。と言うのは、私の出した高額紙幣に対しておつりが無いと係員は言うのです。イタリア旅行で一番困るのは、この「おつり」問題。開園したばかりでおつりが無いとのたまうのは、乏しいつり銭のストックを惜しんでということもありそう。だから、私は「これしかない」と言い張ったのです。するとそのお兄さんは、なんと釣を入れている引出しを抜き取って、私の目の前に突きつけて「ニエンテ(本当にないんだ)」と叫んだのでした。
係員が言うには、近くに銀行があるから、そこで両替をして出直してくれとのこと。日本では考えられないこと。でも、そうしなければ永遠に遺跡めぐりをできそうにないので、仕方なく銀行へ行くしかありませんでした。やれやれです。
そんな紆余曲折を経て、やっとエルコラーノの遺跡へと進んだのでした。
印象は「ポンペイの縮刷版、早分かり」。ポンペイは確かに凄いですが、東京ドームがいくつもいくつも入ってしまうほどのだだっ広さ。あっちを見て、こっちを見て、
(右上へススム)
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またポンペイと言うと、天井部分が失われているものが大半ですが、ここエルコラーノはきちんと屋根がのこっているので、眺めていると2000年前のものにはとても見えません。
建物の内部には三つのかまどが残っていて、まるでシステムキッチンさながらもの、また上の写真のように見事なフレスコ画もありました。(この絵に使われている赤は、まさに「ポンペイの赤」でした)
見学時間は一時間ほどでだいたいの全貌はつかめました。
ポンペイと違って遺跡内部には観光客向けのバールはありませんが、遺跡を出た目の前におみやげ屋さんがあり、ヴェスビィーオ山の美しい溶岩の詰め合わせ、リモンチェッロのかわいらしい小瓶など、この土地ならではの物が棚に所狭しと並べられていました。
見学を終えた私に、小柄な老人が近づき、「ビューティフルだろ?」と笑いかけました。私はイタリア語でとっても「ベッラ(美しい)」そして「インテレサンテ(興味深い)だった」と答えると、彼は「チェルト(もちろん)」と胸をはったものです。
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