関西学生アメリカンフットボール Div.1 シーズン展望

Last updated, 1999 Aug. 15 at 00:28 JST.



春総括へ  リーグ戦表へ 



立命館大学・京都大学・関西学院大学・近畿大学・関西大学

神戸大学・大阪産業大学・甲南大学




 今年の関西学生Div.1リーグ戦勝敗表は白黒入り乱れて、例年と違った順位結果に終わるかもしれない。上位3校と言えども、残り5校との対決で気が抜けなくなってきた。近畿大学・関西大学の台頭がその大きな要因なのだが、甲南大学の春の勢いも侮れないし、神戸大学・大阪産業大学は夏を越えて成長してくるはず。おそらく、戦前から勝敗が予想できるような試合は、全28試合中でごく僅かになるだろう。


 立命館大学

 オフェンスはRB#36川田のドローがラインの押しだけでゲインする。これが、今年のメインプレーだろう。上位校相手ではこれだけでは無理だが、下位校相手に取りこぼしはない、というぐらい堅実である。他にもRB#22高橋・エビ沢など、相変わらずRB王国である。

 課題は、やはり、パスオフェンスであろう。ターゲットはWR#1松本、TE#18宮崎といるので、後はQB#17川嵜との呼吸の関係だけと思うのだが。ラン主体で攻撃が組み立てられるのでパス自体の回数は少なくなるだろうが、試合展開によってはパスが欲しいときもある。この1本の正否が明暗を分けることもあるだろう。

 ディフェンスは、昨年とほ同一メンバーで完成の域に入ったDL#58三輪・#56小堀・#94高間舘・#93宮原・#57山中、そして2、3列もLB#99小西、DB#31元野、#2古庄と関西を代表するような選手ばかりで、ここを抜けるのは至難の技。しかし、ディフェンス全体を見ると、穴がないわけでもなさそう。

 まず、パスディフェンスが若干甘いか。空間に跳んでくる/入ってくるレシーバーに撹乱されるかも。さらに、オプションでHBがリバース気味に右往左往するとLBDBのスピードが逆に災いすることも。
 試合を通しては、崩壊することはないと思う。ただ、何かがきっかけとなって、一時的に完全マヒ状態に陥ることがある。もしかしたら、崩れた瞬間の失点が試合を決めてしまうことがあるかもしれない。

 最後にキッカー#14松本は、昨年の甲子園ボウル以降成功率が高くなったようだ。今春は、長浜・フラッシュ・ヨコハマ・平成ボウルで、FG4/4、PAT10/10と、100%の成功率を納めている(TouchDown掲載のスタッツから集計)。今年は安心してみていられそう。


 京都大学

 QBは、春の時点で、ほぼ固定だっただけに、やはり#12竹下になるのだろう。そして、ギャングボーンの中核をなすFBにはパワフルな#32秋原、HBには#22秋本・#40山田・・などが控えている。
 レシーバーはアスリートWR#82岸田がメイン。しかし、続く2,3番手のターゲットがいない。したがって、岸田へのマークが厳しくなるだろう。それでも、おそらく岸田ならマークをはずすはず。それだけ「華」のあるレシーバーである。その1本がいつ出るか、岸田対DBの争いは、別の意味で楽しみ。

 ディフェンスもDL#86仙波、DB#20河合ともに、「ポイント」には、リーグを代表するような選手もいるのだが、「次」とのギャップが大きすぎる。オフェンスは個人プレーでも形になるが、全体に網を掛けなければならないディフェンスは、ほころぶと苦しい。

 とりあえず、春、散見されたタックルミスが、どこまで改善されたか。どのチームにもバランスの良いRBがいるだけに、安心できない。春の結果を単純に比較すると、京都大学の失点が上位4校の中で最も多い。

 京都大学=大型ラインというのが過去のイメージだったが、少しサイズが小さくなってきたように思う。さらに、「シーズンが深まるにつれて化けてくる」というのも、ここ数年感じない。もっとも、いつまでも過去の成功例にならって同じ成長過程をたどる必要もないし、「新しい時代」なりの方法でリーグ戦を勝ち抜けばいい。そういう意味で、年を追う毎に京都大学のイメージが少しずつ変わってきているような感じがするのだが。


 関西学院大学

 今年のQBは#4有馬だろう。私は、6月の神戸ボウルで久しぶりに見たが見事な指揮ぶりを見て、失礼ながら唖然となったのが今でも忘れられない。そして、関関戦、西宮ボウルと、絶好調のまま春シーズンを終えた。特に、混成チームによる西宮ボウルでは、OLから漏れてくるLBのラッシュが厳しかったにもかかわらず、サックによるマイナスゲインが1度だけだった。たまたま絶好調の頂点だったのか、ステップアップなのか。当然、後者だろうが。

 バックアップQBになるであろう#19岡村は、どちらかと言えばオプションQBで、サウスポーでランパスマルチの有馬とは、少しタイプが違う。したがって、有馬と岡村の併用は、ライン・バックスともに負担が大きくなりそうで多くは望めないのではないか。結局、今年の関西学院大学はQB#4有馬に全てがかかっていると言っても良い。

 バックスは、今年もRB#34猪狩・#33井岡・#23小野、WR#87田富・#8堀口、TE#89榊原・#96尾崎・・・と人材豊富で、どんなプレーでもそつなくこなすだろう。そして、C&主将#70奥田率いるOLが、QB有馬の華麗なプレーを引き出している。春の試合では、相手ディフェンスをQB有馬に触れさせなかった・・・。

 一方のディフンスも、DL#57松浦#90石田、LB#1富岡、DB#25佐藤・#21福田と立命館大学に負けず劣らずの超豪華メンバーである。おそらく、中央・オープンともランでビッグゲインを許すことはないだろう。
 もし、春の時点での課題をあげるとすれば、パスディフェンスかも。ハラハラするポイントがあったのは事実だが、春のことである。きっとワンランクアップしたパフォーマンスを見せてくれるはず。だから、課題は、なし!?


 近畿大学

 はっきり言って昨年以上のことが期待できると思う。昨年は、注目を浴びながらも、結局は3強に3敗の4位。雨天の京都大学戦、気負いの関西学院戦だったが、最後の立命館大学戦は「歴史に残る」試合だった。そして、今年は、注目を浴びた昨年以上のレベルにあると思う。
 昨年の結果を踏まえて、すぐに修正して試みることができる・・気負わずに行けば、今年は本当の意味でチャンスである。お得意の立命館大学・関西学院大学あたりから、白星の可能性も・・・・

 QB#16綾部のパスはとても2年生とは思えない。コントロールも見事だが、ラッシュされてもそれを怖がるところがない。パスターゲットは、WR#81松永・#80伴・#7向井、TE#4洗井がピンポイントパスをキャッチする。RBもTB#32平手のオープンをメインにFB#45梅垣の中央プレイと多彩である。

 ディフェンスラインはサイズ的には大型とは思えないのだが、重量とスピードを感じる。また、LB#42小南、DB#25片山・#18谷原など昨年からの経験者も多い。

 まずは、関西大学戦、是が非でも白星スタートしたい。


 関西大学

 法政大学との定期戦で見せてくれた華やかなオフェンスで一気に惚れこんでしまった。甲南大学戦でも同様のバランス良いオフェンス展開は、見ていて楽しかった。関西学院大学戦では大差敗退だったが、メンバー構成が前2戦と少し違うような印象があったので、参考程度に留めておくべきか。

 QBは#10古澤・#12月野・#13一ツ橋の3人と人材豊富だが、同じようなプレースタイルのため誰が登場してもオフェンスシステムに与える影響は少ないだろう。
 RBはUB#31伊藤、TB#9大前・#4長岡・#21石野、WR#5堤・#8正垣・・・・と、こちらも人材豊富で、ランパスマルチオフェンスを展開する。

 OLがライン戦を勝利する状況になれば、プレーアクションパスなど欲しいところでゲインできる展開に持ち込める。一度調子づかせると、恐ろしいほどのパワーを持つ脅威のオフェンスになるだろう。課題を挙げるとすれば、エンドゾーン際に到達したときの「決めての無さ」だろうか。

 初戦はウィークデイナイトゲームの近畿大学との闘い。なんとしても勝利したい一戦である。勢いにのって続く3強との3連戦、という展開を見てみたい。攻守ともその主力メンバーは3年生である。本当に面白いのは来年なのだろうが、今年でも充分に台風の目になりえるだけのものがある。


 神戸大学

 QB#18上岡は昨年後半から実戦に登場し、経験は豊富だろう。また、伝統のRB王国は今年も健在で#2仁科、#40朴木が控えている。ただこの人材を活用できるだけのライン力があるかどうか。バランスランでもスピードランでも、ラインが切り開く空間は必要だ。春の時点では、バックスの個人プレーという印象だったが、組織力として整備されたか??
 ディフェンスは、昨年の試合で後半に大崩れするスタミナの無さを露呈してしまったが、今年のディフェンスチームは??

 全体的には、春の時点でいい形が見られなかったが、そのままの姿でリーグ戦に登場することはないだろう。そういう意味でも、予想のしにくいチームである。


 大阪産業大学

 昨年の苦戦を乗り越えて成長を見せてくれると思っていたのだが、春は残念ながら苦戦続きだった。
 QB#14天野が率いるオフェンスはRB#20中岡・#31松岡・#40菅野によるオプションで展開を試みる。ディフェンスも2,3列には#5高嶋・#46一色などの強烈なメンバーが控えている。
 しかし、攻守ともにラインに若い学年が多いのが、今年の課題か。パスを投じようにも相手が漏れてくるシーンが度々あった。夏を経過してどのように変貌したか。Div.1で4年目のシーズンだが、定着したい。


 甲南大学

 Div.1復帰となったが、Div.1でも中位の実力はあるはず。2勝しながら入れ替え戦で敗退した一昨年の方が不思議ではある。QBは#11仲田・#12桜井など複数名いるが、プレースタイルはほぼ同じなので、併用してくるだろう。メインプレーはオプションで、RBは#21霜出、#33西山他、スピードあるランナーが控えている。
 ただ、春の関西大学戦では、オフェンスの全般に、例年以上に人材豊富で楽しみは大きいのだが、試合の組立がしっかり出来るか、とか、欲しいところでの粘り、など、実際のプレー以外のところで、はがゆさを感じることがある。



 今年のリーグ戦試合順は、例年と少し異なっている。第3節に前年3位校と前年4位校の対戦が組み込まれていたのが、今年は最終節に移行した。

 第3節という早い時期の対戦は、4位校が未完成の3強の一角を崩すチャンスだったのだが、過去にアップセットは起きなかった。最終節に移行した今年は、両校ともベストコンディションで対戦するはず。「今年の戦力」を完璧に把握した4位校が、3強を崩すかも知れないし、逆に大差がつくかも知れない。新しい試みであり、とても楽しみである。ちなみに、前年3位校は関西学院大学、前年4位校は近畿大学である。
 なお、あわせて、前年7位と8位の対決も後半に変更された。


 以上の戦力分析を踏まえての今年の関西学生予想は、充実の立命館大学・関西学院大学を、小粒ながらもやはり京都大学と進境著しい近畿大学が追いかける。そして、関西大学と甲南大学の春の勢いは序盤戦からアップセットを引き起こすはず。この6校の差は、数年前に比べて確実に縮まってきた。
 また、神戸大学と大阪産業大学には未知の魅力、ということで、久しぶりに大混戦のリーグ戦になるだろう。


 そこで、皆さんには5000円のシーズンパスを購入することをお勧めします。5試合観れば「元」は回収できますが、激闘混戦必至の今年の関西学生Div.1を追いかけようとすれば、5試合程度の観戦で済むはずがありません。一気に5000円の出費は「痛い」かも知れませんが、あとで後悔しても遅いですよ。