関西学院大学 リーグ戦7試合平均 |
法政大学 リーグ戦6試合平均 |
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(関西学院) | (**) | (法政大学) | (**) | |
39.2 | 1.9 | 点数 | 42.8 | 12.6 |
5.14 | 0.29 | TD | 6.00 | 1.63 |
1.57 | 0.15 | FG試行回数 | 0.75 | 0.88 |
1.14 | 0.00 | FG成功回数 | 0.37 | 0.50 |
19.5 | 6.9 | FD | 18.5 | 14.3 |
140.7 | 55.6 | パス獲得距離 | 80.8 | 152.4 |
16.5 | 14.5 | パス試投 | 14.1 | 26.8 |
9.85 | 5.29 | パス成功 | 7.00 | 13.0 |
0.29 | 0.86 | インターセプト | 0.50 | 1.75 |
242.8 | 62.9 | ラン獲得距離 | 318.5 | 110.2 |
41.2 | 33.6 | ラン回数 | 48.1 | 38.3 |
383.5 | 118.5 | 攻撃獲得距離 | 413.0 | 214.9 |
57.8 | 48.0 | 攻撃回数 | 62.2 | 112.3 |
27.9 | 32.0 | 反則罰退距離 | 58.0 | 46.3 |
3.72 | 5.71 | 反則回数 | 6.63 | 6.25 |
1.00 | 2.28 | ファンブル回数 | 1.25 | 1.62 |
0.58 | 1.00 | ファンブル喪失回数 | 0.25 | 0.50 |
0.87 | 1.86 | TO回数 | 0.75 | 2.25 |
上記のスタッツをもとに両校の戦力分析をしてみよう。ただ、対戦相手がまったく違うので数値を深追いしてもあまり意味を持たない。 数値を眺めていて一番最初に目に付くのが、ディフェンスの差だろう。「失点」「被TD数」「被FG試行回数」「被FD数」「喪失距離」いずれを見ても、法政大学に比べて関西学院大学が相手を抑え込んでいるようだ。相手にロングドライブを許すか否かが数値から読み取れる。 一方で、オフェンス数値は似通った値が並んでいる。関西学院大学のラン:パスが3.5:1に対して、法政大学は3:1である。関東大学選手権で見た法政大学と異なったパス比率の高さだが、リーグ戦全試合の平均数値という数字上のマジックなのだろう。 ちなみに、日本体育大学戦では、パス22回試投ラン29回、日本大学戦ではパス7回試投ラン65回である。 したがって、スタッツからの結論は、法政大学ディフェンスに若干の不安があるが、オフェンスは均衡状態と言えそうだ。 もっとも、スタッツ数値を眺めていただけでは、本当の戦力分析にはならない。そもそもスタッツというのは、結果を現しているだけである。ここから、「なぜこのような数値になったのか」を読み取ることは不可能である。 たとえば、中央突破のドローを捨てプレーにして2回連続1ヤードのゲインに留まってラン数値をあ悪くしても、次のポストパターンパスを通すための布石として役に立てば、試合には勝利できる。 しかし、スタッツからは戦略面の組み立てがされたか否か、あるいは、有効な戦略を立案したか否かは判断できない。スタッツから読み取れるのは、パワースピードなどの運動能力面がほとんどである。 それでは、スタッツを離れて、戦略立案能力を比較するとどうなるか。 関西学院大学は、パスディフェンスの甘い京都大学戦ではTEパスをメインプレーにした。ディフェンスのリアクションが速い立命館大学ディフェンス相手には、Tからのクロスで惑わした。また3−4ディフェンスでRBのビッグゲインを防いだ。それぞれの試合用の戦略を組み立てて臨むことができる。 一方の法政大学だが、関東大学選手権決勝を見た限りでは相手に合わせた「戦略」は、なかったのでは??中央ドローが容易に通るというのは準決勝の時点で明らかだったし、決勝戦第1Qでも実際に体験したはず。ところが、実際に中央突破をメインプレーに据えたのは第3Q中盤からだった。 また、甘いパスデイフェンスも試合全般を通して修正されることがなかった。10回のクイックパスを10回とも通されてしまうのだが、「5回通された時点で、なんらかの修正があってもいいのに」とか「相手は日本大学ショットガンとわかっているのに、何の対策もないままに試合に臨んだの??」という思いがあったのは確かである。 つまり、相手に合わせた対策立案能力・遂行能力という点では、今年も関西学院大学が数段上回るだろう。 この結果を踏まえて、甲子園ボウルの「展望」なのだが、それは、数日後に・・・・。 |
第54回毎日甲子園ボウルは、2年ぶり3回目の関西学院大学と法政大学の対決になった。その2年前の対決は記憶に残っている人も多いだろう。第4Q残り1分14秒、法政大学TB池場のオープンランTDで凍りついた甲子園、そして、残り59秒で追いついた関西学院大学の緻密なドライブとその直後の交錯は、数ある甲子園ボウルの名勝負のなかでもトップレベルに位置するのは間違いない。 甲子園ボウルでの両者の対決は法政大学の1勝1分と、僅かだが関西学院大学をリードしている。そして今年の対決は、2年前の決着をつけるべく、再びの激闘を繰り広げてくれることだろう。 法政大学オフェンスは、関東大学選手権準決勝でQB#2井川が登場し、エース木目田の負傷具合が心配された。だが決勝戦ではフル出場したので、まずは一安心。ただ、TBは#29薄衣、#4井出、UB#40堀田からの伝統のオプションアタックには、決勝戦を見た限りではオープンへのスピードのキレが感じられなかった。 日本大学のオプションディフェンスが完璧に仕上がっていたからなのだろうか、一つの試合だけでは、なんとも判断できないのだが。 パスも関東大学選手権だけではあまり参考にならなかったのだが、日本大学戦で見せてた2インターセプトは、余裕のない状態から投じたパスだった。 そのかわりと言ってはなんだが、UB#40堀田のダイブ、TB#29薄衣のドローと中央突破には目を見張るものがある。OLがコジ空けた穴を突っ込むスピードは、関西とはレベルが違う。 一方のディフェンスだが、2,3列のパスカバーが甘いのが気になる。日本大学ショットガンに終始振り回されていたという印象は否めない。日本大学の後半のペースが落ちたのはDLラッシュによるパスコントロールミスが主原因であり、決してパスカバーが成功したからではない。ただ、LB・DBにはビッグネームが揃うだけに楽観もできないのだが。 関西学院大学は、春の神戸ボウルで転機を迎え、そのまま秋シーズンを突破して関西学生を制覇した。神戸ボウルで魅せてくれたQB有馬の復活劇がそのままリーグ戦でも披露してくれるならばという条件で、関西学生優勝候補に挙げたのだが、見事にそのまま突っ走っていってしまった。 QB#3有馬から繰り広げられるランパスは、RB・WR・TEともアスリートが揃い、多種多彩多様のプレーを展開する。RB猪狩、井岡、三井、生島・・TE榊原、高橋・・WR田富、山本・・・漏れている人がいたら、スイマセン。いっぱい。 ただし、これだけのバックフィールドが縦横無尽に活躍できるのもOL奮闘のたまものである。OLが時間を稼いでくれるからこそ「パラボリックパス」も通るし、冷静なプレーコールが続く。有馬の復活劇を演出したのは、まぎれもなくC#70奥田他OLの面々である。 ディフェンスは、立命館大学脅威のDLカルテットが話題の中心だったがが、関西学院大学DLも負けず劣らずの「とんでもない」集団である。リーグ戦7試合で2TD13失点という数値が怪物ぶりを物語っている。特にNG・DT・DEなんでもありの#90石田は、2人のブロックを交わしてオープンランするキャリアにタックルするというとても人間とは思えない能力をもつ。 #1富岡、#41榎原のLBに、#26北村、#21福田のDB陣も積極ディフェンスを披露する。ただ、あまり露呈しなったがパスディフェンスにもしかしたら難があるかも。 関西学院大学は、強敵の京都大学・立命館大学を相手に完勝した。一方で苦戦した相手が甲南大学と近畿大学だった。甲南大学戦はオフェンスのテンポが悪く波に乗れなかったことによる(観戦したのだが、あまり記憶に残っていない・・・)。近畿大学との試合では、RB平手の中央突破で連続ゲインを奪われ、結果としてタイムコントロールされてロースコアの展開になったことにある。 さて、両校のスタッツとその分析結果に基づく比較を別稿で行ったが、わずかだが関西学院大学が優勢だろうという結論に達した。そこで、甲子園ボウルの展望だが、優勢と予測された関西学院大学が敗戦するための条件は何かという見かたをしていこうと思う。 |
その参考にするのが、甲南大学戦および近畿大学戦である。 甲南大学との試合では、オフェンスのテンポの悪さを見せた。まずパスコントロールを乱し、その後ランも低調になってロースコアゲームを展開した。甲南大学の健闘という見方もあるが、どちらかと言えば自滅したような印象だ。 今年のオフェンスはテンポよく前進するときはランパスとも絶好調なのだが、逆行しているモメンタムを奪い取るほどのパワーは、あまり、ない。ディフェンスがパスインターセプトやファンブルリカバーで奪い取った流れを、一気ロングゲインでダメ押し加勢するのは得意だが。 QB#3有馬が低迷していた時の印象に残っているシーンは、パスターゲットを探している間にDLLBのプレッシャーに負けて後ろに下がってしまうことだった。そして結果サックをもらってマイナスゲインが続く。しかし、今年は前に出るという意識があるのだろうサック回数が減っているのが昨年までとの大きな違いである。したがって、信頼できるOLなくてはこの復活劇は誕生しなかっただろう。 そして、リーグ戦で唯一その危険性があったのが、全勝対決立命館大学戦だったのだが、ディフェンスの強烈なサックを浴びての脳しんとうで第1Q終了と同時にベンチへ下がってしまった。プレーしていた第1Qだけでも数回ドロップバックしてのサックがある。だから、もし負傷していなかったらということを考えると、上述したように均衡した試合になっていたかもしれない。 したがって、(関西学院大学OL+QB#3有馬)対(法政大学DL+LB)の戦績が試合内容を左右するの間違いない。関西学院OL+QB側が勝利するなら、関西学生リーグで楽しませてくれたハデなランパスで圧勝大勝は間違いない。だが、もし法政大学側が勝利するようならば、立命館大学戦同様にQBを有馬と岡村併用でくる可能性はある。 ただ、QB#19岡村率いるランニングアタックでもダメとなると、選択肢が消えてしまった関西学院大学は、一気にパニックに陥る可能性は高い。 近畿大学戦ではオフェンス不調の兆しも覗かせている。RB#33井岡・#34猪狩の中央突破はある程度ゲインしたのだが、ヨリの速いLBのおかげでオープンへの展開に行き詰まった。結果、ロングドライブできず攻撃権放棄が続き、さらに、近畿大学もラン主体だったために時計が進むのが早くロースコアゲームとなった。 一方、関西学院大学ディフェンスは、近畿大学戦ではRB平手の1000ヤードを阻止できなかった。そのこと事態が問題なのではなく、キャリア平手の中央突破とわかってながらズルズルと前進を許したことは問題だろう。平手のドローで後退を余儀なくされたディフェンスが、UB#40堀田のダイブ、#29薄衣のドロー、QBキープと多彩な手段を持ち合わせている法政大学オフェンスを止めることができるか。 こうなると関西学院大学DLを支える大黒柱、中央で構える#90石田の動きは要注目である。ライン戦観戦苦手という人でも、彼の動きだけを追ってみると新しい楽しみが判るかもしれない。 ところで、QB#17木目田が指揮する法政大学オフェンスはランオンリーと言ってもいいかもしれない。しかし、#4井川のオフェンスはシングルバックからのパスも十分にありうる。タイプが違うだけに併用してくるとディフェンスが撹乱されてしまったりの可能性もある。 すべては関西学院大学OLがQB有馬をしっかりとカバーできるか否かにかかってくる。余裕でプレーできるならば関西学院大学の圧勝もありうる。しかし、法政大学のDLLBの侵攻を許すようなことがあれば勝敗の行方も混沌としてくるだろう。法政大学は「ノル」と怖いだけに数回のサック後退だけでモメンタム移動は十分に可能性がある。 この展開になるとラン主体のロースコアゲームとなって1点を争う試合が繰り広げられることだろう。ロースコアゲームでは関西学院P#89榊原と法政P#4井川のパントキックコントロールとカバーチームのスピード競争でフィールドポジションの奪い合いも焦点の一つになってくる。 さらには、関西学院K#17山路と法政K#4井川のTFP/FGの成否の差・・・・2年前と同様にキックの成功/失敗が明暗を分けるかも。 今年の甲子園ボウルは日曜日である。月曜日に「社会復帰」できなくなるような手に汗握る好試合・歴史に残る激闘を見せてくれるだろう。 世間一般の今年の甲子園ボウル前評判では、関西地区だけかもしれないが「関西学院大学有利」の声が圧倒的に多い。この「声」に従った「展望」では、あまりに面白くないし、それより以前に「本当に優位なのだろうか?」と冷静に考えてみたかった。 そこで、あえて「重箱のスミ」をつつくような事をしてみたのだが、上記したようにいくつもの「穴」は見えてくる。もっとも「最悪の状態」ばかりを考えれば不安が増幅されるだけなのかもしれない。 しかし、東京スーパーボウル「鹿島−アサヒビール」の結果からも判るように、試合前から結末の判っているような勝負事は、ない。やってみないとわからないことは多い。 (了) |