東西大学王座決定戦 毎日甲子園ボウル



甲子園ボウル 



12月20日(土) 阪神甲子園球場 13:10
TEAM 1Q2Q3Q4Q合計
関西学院 0071421
法政大学 0071421
(現地観戦)

 上記スコアを眺めれば、7点×3回だったのかと思うのが普通である。確かに
法政大学の得点はその通りだが、関西学院は7点+8点+6点である。この得点
経過が、両チーム各選手の悲喜こもごもを生みだした。そして、3万3千人の観
客に、改めてアメリカンフットボールの面白さと怖さとを認識させて、記憶に残
る試合にした。                             

 コイントスで権利を獲得した関西学院は後半の選択権をチョイス、法政大学の
レシーブで試合が開始された。                      

 この試合の注目ポイントは、なんと言っても法政大学TB#29池場のスピー
ドランを止められるかにある。さらにQB#4岡本によってオプション+パスの
マルチに変貌したオフェンスに、関西学院ディフェンスが対抗しうるか否かであ
る。TB#29池場、UB#20石川に、関西学院が翻弄されるようでは大差が
付いても仕方がない。                          

 法政大学自陣23ヤードからの最初のシリーズ。第一プレーは、意表をついた
パスであった。池場へのプレーアクションから左SE83水口へのミドルパスは
しかし、関西学院DB#17福田にあわやインターセプト、第2プレーは、QB
#4岡本キープの中央突破も2ヤード、さらに、次の左パスもフィールド外へ。

 一方の関西学院も、QB#7高橋キープ右OT2ヤード、RB#2花房右オー
プン4ヤード、右パス失敗でパントとなる。                
 両チームともディフェンスの踏ん張りが、相手を抑え込んだ立ち上がりだが、
なんと、このペースのまま前半が終了してしまった。            

 法政大学は予想以上にパスを多用するが、関西学院DBマークがきつくフリー
のレシーバーがいない。一方ランプレーは、UB#20石川のダイブを多用して
執拗に中央突破を試みる。しかし、関西学院のDLがスクリメージライン上でし
っかりとキャッチ、ゲインを許さない。                  

 関西学院オフェンスもパス中心に展開を試みるが、法政大学のラッシュが早く
LB#9志賀等のQBサックで後退。リーグ戦で多用した逆サイドTEへのスク
リーンぎみのパスも通じず、RB#2花房に加えて、#94大北#48渡辺の重
量級を投入もほとんど効果なしだった。                  

 結局前半のFD更新回数は両校とも2回ずつ(私のメモによる)という完全な
ディフェンスゲームとなった。どちらかと言えば関西学院のペースなのだろうが
しかし、第2Q中盤から法政大学#20石川のダイブ、#29池場のブラストが
5ヤードほど前進するようになる。一方の関西学院#2花房の中央オープンとも
徐々に可能性が見えてきて、後半のオフェンシブな展開を予測させた。    

 そして、第3Q、最初にチャンスをつかんだのは関西学院だった。     

 1回ずつパントの応酬後、関西学院自陣30ヤードからの攻撃で、オプション
ピッチを受けたRB#2花房が、右オープンをブロッカーとともに判断良く32
ヤードを駆け上がった。さらに#34猪狩の中央突破20ヤードで敵陣残り10
ヤードへ。                               

 しかし、法政大学ディフェンスの前に右OT2回とも進まず、QBキープも届
かずで第4Dボールオン3ヤードからのFGを試みる。だがボールは右へそれる
て、先制のチャンスを逸したかに見えた。                 
 だが、次の法政大学20ヤードからQB#4岡本の左アウトへのパスを、関西
学院DB#17福田がインターセプト。そのままサイドライン際20ヤードを駆
け上がり、再び敵陣14ヤードからの攻撃チャンスを迎える。        
 そして、RB#2花房の左オープン+セカンドサードエフォートで8ヤードを
獲得、最後は右TE#89中川へのTDパスで関西学院が先制した。     

 ここから、試合展開がオフェンシブな方向へ転換した。          

 法政大学自陣36ヤードからの攻撃で、今日始めて#29池場の中央突破が抜
け20ヤードのロングゲイン。その後、UB#20石川とともに中央突破が成功
してエンドゾーンまで残り5ヤードに迫った。               
 ここで法政大学が選択したプレーは、中央突破フェイクの左TE#84升田へ
のTDパス。中央ばかりをケアしていた関西学院ディフェンスの裏を見事につい
たプレーコールは、レシーバーを完璧にフリーにして同点となった。     

 第4Q、法政大学はダイブ・ブラストで怒涛の攻撃を開始。関西学院ディフェ
ンスがバタバタしてくる。そして、パスインターフェアの反則等で適陣10ヤー
ドまで侵攻、最後は中央の大きな穴を#34堀田が抜けて法政大学が逆転した。
関西学院ディフェンスに前半のリズムがなくなり、流れは完全に法政大学にあっ
た。                                  

 しかし、次の法政大学シリーズ後のパントで法政大学にレイトヒットの反則。
敵陣40ヤードからの攻撃開始というチャンスを手にした関西学院は、いきなり
WR#81塚崎へのポストパターンで残り5ヤードに到達。最後は#34猪狩の
右OTでTDを獲得した。                        
 残り時間2分55秒。ここで関西学院はTFPに2ポイントを選択する。引き
分けよりも勝ちを選択した結果だろうか、QB#7高橋のキープで右コーナーぎ
りぎりに駆けこんで関西学院15−14法政大学とした。          

 だが、法政大学の中央突破は止まらなくなっていた。着実に前進し、敵陣46
ヤードからの攻撃も、パスとQBキープでFD更新かとなってチェーンでの計測
のため時計がストップ。残り時間1分14秒。               

 計測の結果、FDまで数インチを残しての第3D。このインチをどう獲るかが
一つの分かれ目となった。中央突破1ヤードで確実に前進すると、エンドゾーン
まで到達する時間が残るだろうか。法政大学にはタイムアウトが残っていない。
そして選択したプレーは、中央フェイクの右オプションであった。ピッチを受け
たRB#29池場は、中央ケアの関西学院を尻目に独走のTDラン。     
法政大学21−15関西学院。残り時間59秒。関西学院残りタイムアウト1回
で勝負あったかと思われたが。                      

 ここからの関西学院のオフェンスには一つのミスも許されない。時間を使わず
時計を止めながら前進するためにはどうしたら良いか。一糸乱れぬ関西学院最後
のオフェンスが開始された。                       


 自陣24ヤードでボールを受けたリターナーは直ちに時計を止める。残り時間
59秒。ここから、55秒とタイムアウト1回を使って、パス成功4回、QBキ
ープ2回でなんとエンドゾーンまで10ヤードに到達した。残り時間4秒、最後
のオフェンスは左サイドWR#9竹部へのTDパス。DB2人との競い合いを制
して残り時間0秒同点となった。そして、TFPキックが左へ逸れる。    



 GAORAのフルタイム中継を2回も見た。1回目は当日深夜。見ながら観戦
記を書こうとしたが、見入ってしまって、終わったのは午前4時30分。「未明
にUP予定」と書いておきながら、失礼させていただきました。       
 そして、日曜日。昼過ぎに起きてスポーツ新聞3誌を買い込んみ、ゲームの余
韻に浸りながら再び寝入る。夕刻。そろそろ書こうと思いながら確認のためにビ
デオのSWを入れて、そのまま最後まで見てしまいました。         



Updated, Dec. 24 at 00:00 JST.

 さて、あれから3日が経った。冷静に振り返ってみると、いくつかのポイント
に気付いた。                              

 法政大学3TDのうち2本が、中央フェイクのオープンランとパスである。前
半から執拗にダイブ・ブラストで組み立てて関西学院の目を中央に集めていた。
それを囮にしての第3D敵陣5ヤードから左TE升田への同点TDパスであり、
第3Dインチの右オプションTB#29池場の独走TDランである。戦術として
オープンへの展開を隠していたのだろう、見事ピッタリとはまった。     

 次に、第3Dインチの場面。法政大学は、一気にオープンへ展開して逆転TD
を奪ったが、時間を残しすぎた。もっとも残り時間が1分14秒、さらに、タイ
ムアウトが残っていないことを考えれば、「中央突破1ヤードでFD更新、その
後の2回のロングゲインでTD」は無理な要求かも知れない。さらに、FD更新
後では、関西学院ディフェンスの目が、中央オープン均等に配されるはずだ。中
央に集中するインチの場面だからこそオープンを独走できたと考えれば、選択は
正しかったのだろう。                          

 そして、関西学院最後のTFP。もし、同点TDの時点でもう少し冷静だった
らと考えなくもない。たとえば「2年連続」とか「2年ぶり」の甲子園だったな
ら、「全員で次を考えていたはず」というのは厳しすぎるか。        



 法政大学は4年連続出場だが、昨年までは「取り敢えず大きくゲインすればい
いだろう」的な一種の荒さを感じていた。たが、今年は今までと全く違う緻密さ
を見た。関東大学選手権決勝第2Q最後のFGにもその感触があったのだが、何
かが変わってきた?                           

 そして、関西学院。この試合は、どちらかというと法政大学を見事に抑えこん
だ関西学院ペースで展開されたと言うべきだろう。私は、春の時点で、ここまで
来るとは思いもしなかった。攻守ともの互角の状況は、この3年間の低迷が本当
は悪い夢だったと思わせるほどだ。                    
 この試合も、リーグ戦の立命館大戦と同様、再戦すれば法政大学の圧勝かもし
れない。だが、アメリカンフットボールとは限られた時間の中で戦術を駆使する
スポーツである。                            
 「2年連続甲子園出場」の可能性は、高そうだ。          (了)