関西学生アメリカンフットボール Div.1 シーズン展望


Updated, 2015 Aug. 26 at 01:20 JST.(近大・神戸・龍谷・京大・桃山)
Updated, 2015 Aug. 29 at 11:38 JST.(立命)
Updated, 2015 Aug. 30 at 21:53 JST.(関大)


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関西学院大学・立命館大学・関西大学・近畿大学・神戸大学・龍谷大学・京都大学・桃山学院大学





 AK'sの今春の観戦数は現地観戦12試合、RTV映像観戦が2試合以上4試合くらい、という結果である。観戦記としてまとまったものは公開してこなかったが、観戦メモへの注釈や下書き、そして、書きかけの観戦記ファイルは存在している。いずれも中途半端な状態で終わってしまっているのだが、一応、各試合のキーポイントなどは書き出しているつもりである。今回はそのような観戦メモと記憶を掘りここしながら、2015年リーグ戦の展望なるものをまとめてみた。

 昨年DIV1リーグ戦では、関西学院大学が5年連続54回目の優勝を飾る一方で、国立大学の雄として君臨していた京都大学が入れ替え戦に出場するという緊張のシーンがあった。京都大学は入れ替え戦を圧勝して残留を果たすが、同じく入れ替え戦に臨んだ同志社大学が降格し桃山学院大学が37年ぶりにDIV1へ昇格した。

 そして2015年リーグ戦は関西学院大学が6連覇なるかというのが話題のひとつである。6連覇となると1981年34連覇の過程以来の出来事となる。これは京都大学が台頭してきた80年代、そこに立命館大学が割り込んで3強時代となった90年代と連覇することすら難しかった群雄割拠の時代を経て、再び、関西学院大学孤高の時代に逆戻りしそうな様相を呈してきている関西学生DIV1の力関係を示している。
 そこに割って入って来そうなのが関西学生最初の加盟チームである古豪関西大学。2009年から2連覇の実績はあるものの、その後、3位固定してしまっているが、今年はそこから抜け出せそうな勢いがある。近畿大学・神戸大学・龍谷大学が順位アップを虎視眈々と狙っている状態。そして昨年は7位に低迷した京都大学が定位置に戻るか、37年ぶりDIV1復帰なった桃山学院大学は新たな風を吹き込むはず。まもなく開幕です。




関西学院大学
(今春の試合結果) ● 7−36プリンストン大・○49−26慶應大・○23−21日体大・● 7−17日本大
○23− 3関西大・○45− 3ELECOM神戸・○54− 0西南学院・○54− 0大阪大






立命館大学
(今春の試合結果) ○21− 7名城大・○23− 7龍谷大・● 7−24関西大・● 0−24早稲田
○32−30東海大・○35−13近畿大


 まず私の反省も含めて昨年春〜秋を振り返るところからはじめたい。昨年も5月中旬までの試合では、どうなることやらと悪いことばかり思い浮かべていたのだが、6月BKCでのパナソニック(電工)戦で、おぼろげながらも方向性を垣間見ることができた。たった1ヶ月の間で見違えるような成長をしたこと事態が驚きではあった。1ヶ月でこんなに変われるのだからと良い想像ばかりを重ねて開幕を待った。

 そして9月、その方向性を維持したままスケールアップした姿を確認し、10月、11月と円熟味が増す、というストーリーを楽しませてもらった。久しぶりに立命館大学に対しても肩入れして迎えたシーズンで、本当に感謝しています。ただ、最終戦関西学院大学との全勝対決で敗戦し2014年シーズンが終了するのだが、その観戦記で全く違うチームになってしまったのが残念という論調で観戦記を書いている。

 その後の約半年間、各チームのいろいろな映像を観ながら2014年を振り返っていた中で立命館大学VS関西大学の映像に辿り着いた。それを観ていると対関西大学戦でも立命館大学の攻撃スタイルも、どちらかというと春から積み上げてきたものと違うオープンへのランプレーを多用している。さらに、試合序盤でのインサイドランはそれほど効果的なゲインが出来ていないことを加味すると、対関関2試合でのオフェンススタイルの変更は至極当然だったのかもしれない、と思うようになってきたのである。
 その最大の理由は、関西大学ILB#4林、関西学院大学ILB#57小野の存在である。さらに両チームとも充実したDL陣を擁していることを鑑みると、中央ラン突破を避けてオープン左右へ振り回す手段は、普通にメインの選択肢としてあってもいいことだったのかもしれない。

 ただし、ILBの存在はわかっていても、それでも強引にインサイドを付き捲る手段も完全否定は出来ない。例えば・・・・と、ここからは、たらればの仮定の話(細かいことを考えないで正面から消耗戦を挑む、とか)が続くのだが、仮定の話を長々と続けても意味がないので、ここで中断する。昨年立命館大学は春〜秋でこのように変化したということと、その中で私の観戦記に検討不足なところがあったかもしれないという反省でした。

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 さて、今春の戦績を振り返ってみると、ほぼ力が均衡した関係にある関西大学と早稲田大学に黒星を喫し、それ以外のチーム相手でも圧勝した試合はなく、オフェンス再構成の年ということがよく判る結果になっている。それを如実に示しているのが最多得点35点という得点の少なさである。春の試合なので上級生は出場しない試合が多かったのかもしれないが、大昔には若い学年主体であっても得点を重ねた試合がほとんどだったことを考えるとチーム事情が大きく変わってきているのだろうこと。
 もっとも学生チームなので毎年構成メンバーが変わり、それとともにチームカラーが変わるのは当然、今の現役選手に過去の時代のことを求めようとも思わない。今年のチームには今年のチームにふさわしい成長ストーリーがあるので、それが、秋本番で見ることが出来れば十分である。今年の攻守チームについて以下見ていくが、全般的に攻守とも昨年メンバーが多く残る状態なので、心配はないはずだ。が。

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 オフェンスのラインメンバーは、OL#52村田、#77島野、#73西、#58遠藤、#78齋藤、#50白波瀬など昨年メンバーがほぼそのまま残る形である。春の試合では機能しなかった印象が強いが春のことなので。シーズンが深まるにつれて本領発揮していくことは間違いないだろう。

 レシーバーランナーという攻撃バックスも昨年メンバーが多く残る。WRでは3年#1猪熊、2年#88近江という昨年試合を牽引した高速レシーバーメンバーに、春の試合で#7佐溝、#84廣吉などが経験を重ねた。さらに大型TE#90島野の存在と多種多彩な選手が揃う。
 RBはスピードを武器とする#25森本、#32西村が頼もしい。さらにTB#27田中など人材豊富である。そして、私が個人的に注目なのは昨年パワーランナーとしても起用された#42長谷川である。今年のオフェンス方針は不明だが、そのプラン内容によっては今年のオフェンスのチームカラーを象徴する中心的な存在になるはずだ。

 そして注目は攻撃の中心となるQBである。春の起用方法から私が勝手に想像すると、QB#11西山が2年生ながらも立命館大学の大所帯を先導する大役を任されることになりそうだ。試合を自分で組み立てるというのは高校時代に経験済みだ。またバックアップQBもメンバーは揃っているので、どのような起用方法になるか、QB陣としての成長ストーリーも、秋本番で。

 振り返ってみるとOLとWRRBのスキルポジションであまり変動がないとは言うものの、攻撃の司令塔が2年生となることでオフェンス再構築が求められるシーズンである。したがって春の試合で得点力が低調なのはある程度は止むを得ないところ。春からどの程度成長しているかがキーポイントになるのは間違いない。それも2年生QBに全責任を負わせるのではなくチーム&スタッフのチームへの取り組みの方向性が問われるシーズンになりそうだ。

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 一方のディフェンスも各ポジションで昨年メンバーが多く残る。LBDBでは昨年メンバーから数名のアスリートが抜けるものの十分にバックアップできそうな人材は揃っているもで、オフェンスほどの再構築感はない。DLでは#91大野、#57田辺、#93仲里、#54中村、さらに#92南、#94松原などの重厚ラインが健在だ。
 LBも2年次からスタートメンバーに名を連ねることが多かった守備範囲の広い#56浦野、判断のいい堅実なILB#4長谷川が揃う。昨年OLB位置に配置されていた#3八条はDB陣との兼ね合いでポジション変動があるかもしれないが勢いのある熱い中心選手として大活躍すること間違いない。そして立命館大学DBのエース番号#13を引き継ぐCB奥田の存在にも注目。ほかにCB#20長尾、S#28西村、S#29清水、#30木村などが最終列を担当する。DB陣も昨年までの試合経験は豊富だが、若干パスディフェンスでの連携部分に経験不足感を感じた春だったが。

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 攻守ともに昨年からの実績があるメンバーも多く残る。一部ポジションでキーマンが抜けるものの今年のメンバーを見るとその穴を十分に埋めることができるだけの人材は揃っている。それほど見劣りするメンバーでもない。課題はQBが2年生と若いことと、春チームに攻守ともに勢いがなかったことで私的には秋展望が見えない状態だったこと。故に、昨年実績をそのまま鵜呑みにしてよいかどうか、は疑問。秋開幕戦で。

 昨年春同様、今年も春の時点では全く方向性が見えないまま、5月の関西大学戦と早稲田大学戦での黒星を喫する試合を観戦した。もしも6月にトップチームの試合が組まれていたら、昨年と同じようにその時点で秋の方向性が見えていたのだろうか、それとも今年は、違うのだろうか。ここの判断は開幕戦を見ないとわからない。

 8月末の開幕戦、西京極陸上競技場で京都大学と対戦する。一昨年、同じ西京極陸上競技場での平日夜開催で立命館大学が京都大学に敗れるという小波乱が起きているが、それ以来の西京極での立命京大戦となる。どちらのチームにとっても重要な位置付けの試合である。
 これを立命館大学視点に立つと、試合観戦中に春のチームとは別のイメージを持つことができるようになるか、ここが大きなポイントになる。特にオフェンス面で攻撃の組み立て方、試合主導権を握るためのストーリーが確立したか、あるいはその方向性を垣間見ることが出来そうか。リーグ戦の早い段階でその姿を見ておきたいのだが、それが開幕戦で確認できるか否か。

 以上を踏まえて今年の立命館大学はシーズン終了時点でどのような位置にいるか。チームスタッフのPDCAサイクル次第だが、昨年メンバーが多く残ることを上手に活用できれば上振れするし、そうでなければ下振れする。注目のシーズンである。




関西大学
(今春の試合結果) ●31−52法政大・○26−23明治大・○24− 7立命館・● 3−23関学大・●12−30早稲田
 


 春の関西大学は関東関西の強豪校と対戦する。法政大学・早稲田大学および関西学院大学との定期戦に加え、今春は立命館大学とも対戦した。これだけ密度の濃い春シーズンを過ごせるチームは、東西合わせても珍しい。特に関東のチームと接戦が続くようになってきた昨今(法政大学戦は2012年白星以外ここ10年で1勝8敗1中止、早稲田大学戦は5連敗中)春は勝利至上ではないとは言うものの、勝ちパターンを学ぶ上では、3校との定期戦プラスαが春に経験できる点で恵まれていると言える。

 それが理由かどうかは不明だが、今春、関西学生DIV1の8校の中で最も多く試合観戦したのが関西大学だった。4月法政大学戦は、試合に対する思いが両校の間で若干ミスマッチだったこともあって大差にはなったが、それでも第3Q後半から第4QでQB#8石内による3TDパスの追い上げは、今年の関西大学オフェンスの方向性を見てとるに十分な試合だった。明治大学戦は控えQB#12岡口と#19大内が担当したが、それでもパスで得点を挙げるという方向性が控えQBにまで浸透しているという点で、ある意味では驚きでもあり、楽しみが広がった試合だった。

 そんなこんなの春最終戦早稲田大学戦は、今年の関西大学の良いところと欠点が両方とも見ることができた貴重な試合である。それは、QB#8石内のパス精度が確実&大幅にアップしたことが確認できたことと、相手QB1名の撹乱でディフェンスが簡単に崩壊してしまう脆さが露呈してしまったこと。
 特にディフェンスの脆さは、ここ数年の関西学院大学戦での敗戦パターンに似ていて、QBRB等バックスキャリアの左右前後タイミングずらしで翻弄されてしまうシーンは昨秋のデジャブかと思えるほどだった。ということで、このままだと今年も秋冬の本番で関西学院大学タイプのオフェンス揺さぶりでディフェンス機能が失われてしまいそうなので、なんらかの対応方法を確立しておかなければならない。
 ただ、私の中で明確に解決策があるわけでもなく、さらに、システマチックなディフェンスというのがあるのかわからないが、リアクション重視とは言うものの個人の熱い思いだけで動くディフェンスでは穴ができてしまう。かと言って全ポジションにアスリートを揃えるというのは理想論であって現実的な解決策ではない。では、如何に。それは関西大学が秋本番で示してくれるはず。楽しみにしています。

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 今年のオフェンスチームは、卒業による選手交代はあるものの大きな方向性の変化はないと思われる。つまり、昨年課題はそのまま引き継がれ、その解決に向けての2年目という部分も大きい。その中で、冒頭にも書いたが、今春のパスオフェンスの充実振りには目を見張るものがある。
 昨年秋リーグ戦最終戦京都大学戦、リードされて迎えた第4Q終盤での逆転ドライブは、QB#8石内から昨年4年生への連続3本のパスヒットによる、ある意味で置き土産であり次代への引継ぎのシーンでもあった。その後のシーズンオフを挟んでのわずか5ヵ月後、QB#8石内と今年のレシーバー陣との間での連携がすでに完成しているのは昨年経験を踏またいろいろなイメージトレーニングの結果だろう。法政大学戦での3TDに続き、関西学院大学戦第2Q速攻のパスヒット、早稲田大学戦でもパス精度は落ちなかった。
 なお、NEWERAボウルでは成績を残せていないが即興チームでできるタイプではないので想定の範囲内。秋リーグ戦で春の力を再現・発揮してくれれば十分です。また、春の試合を重ねるごとにレシーバーが負傷退場していき一人消え二人消えになっているのだが本番までに復帰されることを期待。これでパス攻撃には目処がついた。
 ところでQB2人体制が続くが、今春はQB#8石内は法政大学戦と関西学院大学戦早稲田大学戦で先発し立命館大学戦で急遽登板、#14岸村が立命館大学戦序盤で負傷退場しまって目立った実績はないままだが、パフォーマンスにおいて#8石内と遜色がないのは昨年までの実績が物語っている。今春未知数な分だけ秋での起用方法は注目される。さらに#12岡口、#19大内が明治大学戦で経験を重ねていて選手層は厚い。

 OL#79佐嶋、#69山下というリーグを代表するメンバーに、今春の試合では#62冨田が1年生ながらスタートメンバーに名を連ねる。さらに#55大黒、#51笹本とほぼ先発はほぼ固定メンバーで臨んだ今春の試合だった。経験豊富な上級生と若手という組み合わせは、次代への引継ぎも兼ねるという点では理想的な組み合わせ。今春の試合ではライン力を前面に押し出したプレーシーンはほとんど見られなかったが、おそらくコンビネーション確立に専念していたことだろう、夏を越えシーズンが深まるにつれて充実してくるラインは今年も楽しみだ。

 RBでは#22古川のセンスとスピードが際立った春だが、実績のある#5松田、#3地村も健在、今春は出場機会はなかったかもしれないが過去実績はある。できればパワーランナー系の台頭も希望したいというのは欲張りかもしれないがOLとの連携が整う秋シーズンには新たな展開があるかもしれない。

 そして今年の関西大学オフェンスの最注目ポジションがWRである。春序盤からQB#8石内とのコンビネーションが確立され試合の流れを一気に変える破壊力もある。アウトサイドの高速ターゲットとして#15森田、#88原田、#84三木、さらに法政大学戦怒涛のドライブの立役者2年生#82中村が頭角を現してきた。技巧派インサイドでは#11奥村、#80赤城、#87木下と並ぶ。さらにTE体型というよりはIRな#1青根、#48平井と選手層が厚い。怪我人続出した春だった、それでも次に出場してきたメンバーが同じように役割を果たしているのは感動物。関西大学でここまでレシーバー陣容が充実したのは久しぶり(と書くと、先代には失礼だが)。この陣容を生かさない手はない。春は怪我人続出だったが、復活を楽しみにしています。

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 ディフェンスは、昨年主将ILB#4林の抜けた穴をどのようにカバーするかというのが、私的に一つのポイントとしてみて春の試合を観ていたのだが杞憂に終わった。ILB#50濱野、#49辻元、OLB#7湯川、#29岩永などの堅実なILBと守備範囲の広いOLB、さらに#47中村など次代のメンバーが確実に成長してきていてる。ポジション面でいくつかの試行錯誤な試合はあったがメンバー固定するのに時間はかからないだろう。

 DLは今年も充実している。まず4年生#90藤谷は今春出場なく、3年生#92高谷も要所でのみの出場という試合が多かったが、明治大学戦などで絶体絶命のシーンで投入されると、しっかりと仕事をしてサイドラインに戻ってくるのは流石。ワンプレーで試合の流れを変えていた。その背中を見て次代の選手が育つ。

 DBも主将#40森岡、#23松田、#10小阪田、#13田中と昨年メンバーが多く残る。パスに対する守備が課題かなと思っていた昨年、試合を重ねる毎にパスディフェンスが良い感じになっていくのが観ていても楽しかった。そのメンバーがそのまま残るのだからと春法政大学戦では期待していたのだが、イマイチだったのが少々残念だったのだが、今春も試合を重ねていく毎に昨年パフォーマンスに戻っていった。その姿を見て、昨年経験を踏まえてしっかりと上乗せ分があるということでDB陣も安泰。4年生が多いので次代のメンバーの台頭も期待しています。

 ということで、関西大学攻守を見たときに、毎年、守備チームの仕上がりは速い、それでも終わってみると定位置に収まってしまう要因のひとつがディフェンスにありそうなことは、その兆候は早稲田大学戦でも垣間見ることが出来た。問題は明確だが、さて。

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 ということで今年のオフェンスは、パス攻撃を早い段階で充実させその後にランプレーも熟成させていくという順序で秋本番を迎える。ディフェンスも春の早い段階で今年のメンバーが確立しバックアップメンバーを充実させる取り組みに着手しつつも、一方で弱い部分も露呈してしまったという状況だが、ここから立て直す時間があるということなのでそこに期待。

 昨年春シーズンは秋を見据えた取り組みなのか次年度以降のための試合なのか観戦していても理解できなかったのだが、今年は、明確に今年の秋を見据えた試合をしているのが印象に残る。例えば、QB1名で試合を賄う姿勢が貫かれていたこと。QB自身が1試合の中でのストーリー組み立てやペース配分、そして、そもそも試合に勝つための機微を身をもって体験できたことは大きい。それ以外のポジションでも今年秋のリーグ戦でベースとなる選手を多く起用した秋のための春の試合だった。という点でも春から少しずつステップアップしていっているのがよく判る。そして、昨年とは違った春の取り組みは、昨年とは違った秋本番の結果をもたらすはず。楽しみにしています。




近畿大学
(今春の試合結果) ●10−17専修大・○44−17明治院・○21−17京都大・●10−19立教大・●13−35立命館
 


 今春の戦績は、専修大学との定期戦で4年ぶりに黒星となり、さらに、関東学生BIG8の立教大学戦でも黒星が続く。結局、トップチームでは京都大学戦のみの勝利となってしまったが、この試合だけ観戦している(当初予定では立教大学戦や消滅してしまった試合で観戦実績を重ねる予定だったのだが、諸事情により)。

 京都大学との試合での得点経過は、敵失による敵陣からのショートドライブによるTDと、WR#83加減、RB#27小瀧などをつないだロングドライブによる得点、そして終了間際でのQB#8岡村からWR#83加減へのロングパスによる。一方の失点経過は、第2Q残り時間が少なくなってからパスドライブを許した結果の1TD1FGと、ディフェンスが巧妙に揺さぶられてしまったショベルスクリーンによるTDというもの。ただし、細かいランドライブは許していなかったという点でディフェンスフロントは頑強と言える。

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 今年の近畿大学オフェンスは、OLが昨年メンバーからの交代が激しく今春からスターターに就く選手が多い。京都大学戦の先発メンバーで4年生は#63柴田だけで、2名の1年生がスターターに名を連ねていた。もっとも近畿大学は春の試合で積極的に1年生を起用する傾向があるので割引は必要だが、選手層としては若い学年が多いのも事実である。

 QBは昨年の経験もある#18小林を筆頭に、京都大学戦後半出場した#8岡村や経験豊富な#12高谷などバックアップの層は厚い。京都大学戦での#18小林は、最初のレシーバーターゲットを諦めると2番手を探すのに苦労していた様子だったが、試合勘を取り戻せば問題ないだろう。経験は豊富である。また、後半出場してきた#8岡村はランスピードなど判断の切れば良い。
 RBはエース#28久保のスピードと、その陰に隠れがちだが良い仕事をしている#37萩野谷の4年生コンビに期待。さらに次代のTB#27小瀧、パスターゲットとしてTBのブロッカーとしてというFBも健在だ。
 そして今年の近畿大学オフェンスにあって、一つのセールスポイントになりそうなのが、豊富なレシーバー陣である。IRでは#83加減とTE#6長手など、さらにアウトサイドでは2年生主体で#80福嶋、#84村川、#15小梶、そしてエースターゲットとして長身4年#88金田が高速レシーブを披露酢売るする。

 以上をまとめると、ラインだけは経験値不足な面も残るが、その他のポジションは昨年までの経験者が豊富で、さらに今年はレシーバーの人材も豊かになってきている。そして、オフェンススタッフも充実してきたので、あたらしい攻撃スタイルが構築されるかもしれない。

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 またディフェンスだが、冒頭にも書いたようにランプレーで刻まれたドライブを許していない京都大学戦はの内容は注目すべき。立教大学戦の内容詳細は把握できないのだが、DL#90吉岡、#91藤井、#93塚本など勢いのあるDL陣容は頼もしい。さらに、昨年リーグ戦でも大活躍だったLB#1塚本とともにDLLBのフロントメンバーは信頼が置ける。DBは#21長嶺、#25木村など昨年経験もあるメンバーは揃うが、まだ発展途上。その中で京大戦途中から出場してきたDB(CB)#11矢部は注目しておきたいアスリートである。

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 春の試合では、時間経過とともにディフェンスが持ちこたえられずに失点を重ね、そこに攻撃がついていけないというパターンだっただろうか。春の時点で完成度が高いのは、どちらかと言えばディフェンスだったが、オフェンスもメンバーは充実していて潜在能力も十分に高いのも事実。攻撃がステップアップし、守備に追いつけば、試合組み立ては容易になる。そこからさらに相乗効果でステップアップしていきたい。開幕戦では神戸大学と対戦する。第1節での注目カードの一つだが幸先の良いスタートダッシュで乗り切りたい。




神戸大学
(今春の試合結果) ○13− 3甲南大・○22−21大教大・○38− 7横国大・○23− 0桃山大・○10− 0龍谷大
● 7−14エレコム神戸


 今春の神戸大学戦績は、関西DIV1で唯一の対学生全勝キープとなった(ちなみに関東では、日本大学・法政大学・早稲田大学など)。さらに1試合あたりの平均失点でも関西DIV1所属8チーム中で最小失点を記録している。対戦相手が異なり試合に臨むメンバー構成もチーム事情によるので比較すること自体に意味がない数字上のお遊びでしかないのだが、何にせよ「1位」というのは気持ちの良いことである。幸先の良いスタートを切ったということで秋本番でも期待したい。

 ところで、秋リーグ戦展望で毎年のように書いていることだが、神戸大学は、毎年同じようなチームを作り上げてくるというのが驚きである。「毎年同じことをするのだからルーチンワークにすれば簡単」という単純なストーリーは成立しない。国立大学なので人材の供給に年毎の凸凹があるにもかかわらずというところが重要である。個人のスキルに見合って積み上げ方は異なるのだが、それをクリアして毎年一定のレベルにチームを作り上げるノウハウが、見事に蓄積されていることの現れである。

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 オフェンスチームでは、攻撃の要となるOLは OL#71河島、#74岡本、#57倉谷など。#74岡本以外の大半が今年から先発に名を連ねる経験の浅いメンバー主体だが、春からILBまでも処理する機動力のあるところを披露していた。

 QBは4年生#7櫻井が最終学年の集大成としてオフェンスを指揮する。短いパスから長い距離まで安定感が増し、さらにスクランブルランとの絶妙なバランスは相手守備を霍乱する。RBは#3平井4年と#22中平3年の2名が揃う。身体のサイズやプレー的にもどちらかと言えば似通った二人なので、そこを巧妙に織り交ぜつつ、違ったタイプのランナーも欲しい。

 レシーバー陣は神戸大学も多彩なメンバーが揃う。IR#19岸岡3年、OR#12新水4年、OR#84川瀬4年、そして昨年から頭角を現してきた3年#11金岡。大阪教育大学戦第4Qの逆転ドライブではTE#4望月とWR#11金岡による執念のパスキャッチが逆転TDに繋がっている。インサイドもアウトサイドも技巧派が揃うレシーバー陣の意識は高い。

 今年も神戸大学オフェンススタイルは、今年も、時間消費しながらの短いパスとランをつないでいくロングドライブという方向性になりそうだ。前半と後半でそれぞれ3回のオフェンスシリーズ、合計6回で最低TD2個とFG1個に上乗せはいくつになるか。という試合展開になれば、それは神戸大学が主導権を握っている試合である。そのような観点からも観戦してみてください。

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 ディフェンスは、4年DL#99野田を中心に#55山本、#63小島などの布陣。春時点では破壊力発揮までには至らなかったが、今年も試合を重ねる毎に成長していくことは間違いないだろう。
 LBは昨年までの経験豊富なメンバーが揃い今期も安定している。OLB#49秋篠4年、#8川手4年の両OLBのスピードと守備範囲は脅威的。昨今ではアウトサイドへのパスカバーもOLBの守備範囲となってきたパスディフェンスだが、春の早い段階ですでにIRに対する完璧なカバーを行っていたのが印象に残る。そして守備の要であるILBには#37東3年が座る。

 DBは4年生S#2林が全体をまとめる構図で、DB(S)#17山本、CB#16水野、そしてCB#9田中という布陣である。今春の試合で唯一大量失点となった大阪教育大学戦は、若いCBサイドを狙われ続けたことが理由の一つだった。ただし4月序盤の試合だったので狙われたというよりは単なる偶然の産物であろう(ただし、試合の中で急遽対応したイメージもなくはない。CBが左右のサイドをチェンジするとパス方向も左右逆転していて、ある意味では面白い試合だった)

 2年生CBが四苦八苦していた試合だったが、昨年までの例にもあるように、神戸大学にはDBを育てる土壌も備わっている。昨年の第2節京都大学戦では5インターセプトの荒稼ぎで、最終的なシーズントータルでインターセプト9回、DBは先発メンバー全員に記録がある計7回、そしてLBも2回となった。そのDB陣大活躍の筆頭だった昨年のCB#14も2年生春にデビューしたときは散々なパフォーマンスだった。それが3年秋くらいから飛躍的に上達していき、最終学年となった昨年はリーグを代表するような不動のCBになっている。
 選手個人もそれなりに努力は必要だが、DBを育てる土壌もあるので、今年の2年生CBもこの成長曲線に乗るはず。努力すれば必ず実を結ぶ。期待しています。

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 冒頭にも書いたが、チームを作り上げる大きな方向性は確立&踏襲されていて秋が深まるにつれて毎年同じ実を結ぶ。国立大学であるにもかかわらずトップリーグに在籍し続けているという実績は、これまでは京都大学の陰に隠れがちだった。だが、もしかしたら低迷してしまうかもしれない昨今の京都大学の流れもある中で、結果を残している神戸大学の取り組みには、もっと世間の注目が集まっても良い。

 そして今年の攻守チームを見てきたが、今年も例年と同様な位置には辿り着きそうな勢いである。ところで毎年同じような結果になるところはわかった。毎年同じところまでチーム力を向上させることができるのだから、そこからもう一つ上の段階へ上がる方法をそろそろ見出しても良い時期ではある。次のステップアップが見たいものだ、というのが我侭な外野の思いです。

 2013年台風下の大荒れの天候の中で接戦になった関西大学戦、立命館大学には2012年春に勝利し、秋本番では2006年の前半スコア7−10、2008年には前半リードでハーフタイムを迎え、昨年も0−12の僅差で前半終了など、上位チームにも接戦を演じることが多い。DIV1の各チームの地盤沈下が激しい中で、今年は得意とするチームからアップセットの白星を獲得できるかもしれないチャンスのシーズンでもある。

 開幕戦近畿大学との試合は注目。ここで幸先の良いスタートダッシュができれば、その勢いで前半戦白星を量産できるか。神戸大学のポジションアップがあっても良い。今年はシーズン終了したときに違う色が見たれるかもしれない。期待しています。




龍谷大学
(今春の試合結果) ● 7−23立命館・○10− 3桃山大・○27−16京産大・●10−26アサ飲・● 0−10神戸大



 今春は5試合を行って2勝3敗という成績を残す。この中で私が観戦したのは桃山学院大学戦とアサヒ飲料戦の2試合、さらにRTVで神戸大学戦を観戦した。
 桃山学院大学戦での得点は、TE#44西村へのパスとRB#18藤本によるオープンへのスピード展開、さらに2番手で登場したQB#15岡田の絶妙なスクランブルランなどを絡めたロングドライブによる。またアサヒ飲料戦では1TD1FG1FG失敗という結果を残す。相手陣地からの攻撃スタートも多かったが、WR#6井貝へのTDパスや桃山学院大学戦同様のRB#18藤本やTEパスによるドライブの兆候が見えていた。

 また失点経過も簡単にまとめておくと、アサヒ飲料戦では、試合最初にリターンTDを奪われたものの第3Q終盤までで2FGに止めたディフェンスが光る。桃山学院大学戦も1回のビッグランからFGの失点が生まれているが守備は堅実。神戸大学戦でもリターンTDによる失点のみであり、DIV1の同順位付近との試合では実質ディフェンスの失点はFG1回分のみという好成績を収めている。

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 今年のオフェンスチームは、上記したようにレシーバーランナーというバックフィールドにアスリートが集まるのが特徴である。TE#80/44西村、#83櫻木という大型のインサイードターゲットが大活躍、セイフティーバルブとしてものターゲットとしても機能していて頼もしい存在である。そしてWR#7中塚、#14野間、#6井貝が内外の長短パスターゲットとして存在している。

 RBはNEWERAでの活躍が話題を集めるが、その他の試合でも地力を発揮しているシーンは多い。例えば、RB#18藤本が社会人アサヒ飲料ディフェンスに対してオープンをまくりあげてスピードで抜けるランを披露、さらにTB#22赤澤、FB#36井上などが名を連ねる。自チームでのOLとのコンビネーション確立すれば秋本番でも大いに期待できそうだ。そのOLは、#66鈎、#73入江の昨年経験者に新たなメンバーとして#56茨、#53澤、#67宮川などが加わる。

 QBは今春の試合では2年生#11上田が起用される機会が多かった。昨年は#98という大きな背番号を背負っていたが#11に変更になった様子。ダイナミックかつ華麗なこれまでの龍谷大学QBとは少し違った雰囲気のあるQBで楽しみな存在である。
 また桃山学院大学戦アサヒ飲料戦ともに後半に出場してきたQB#15岡田による緩急のランドライブはチェンジオブペースで桃山学院大学ディフェンスを揺さぶった。どのような起用方法になるかは不明だが、QBの選手層が一気に分厚くなった印象である。

 ただし、オフェンスの特徴としてドライブするシリーズと簡単にパントを蹴る機会が明確に分かれてしまうところは気になる。これは今春に限ったことではなく、過去の龍谷大学オフェンスの印象だが、ドライブが繋がるときはリズムの良い攻撃が続くのに、何の前触れもなく一瞬にして全く違うチームを見ているように感じるときもある。1試合に数回しかドライブが続かないのはなぜだろうかと思うが、今年は例年とは違ったオフェンススタイルになるか。毎シリーズ同じように攻撃が進めば違った印象のチームになるはずだ。

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 一方のディフェンスは、各ポジションともに昨年メンバーが要所で残りつつ世代交代も進むという理想的な布陣を構成する。その経験豊富なところはアサヒ飲料戦でも披露されていて、ドライブされつつもゴール前ではエンドゾーンを死守、さらにロスゲインを見舞って3点失点に留めたDLの集中力とフロントパワーは見応えがあった。昨年経験に上乗せされた今年のパフォーマンスが今から楽しみである。
 DLは、#1竹原、#99森というパワフルな昨年メンバーが健在でラインの核を構成、そこにDL#92肥田、#97清原が加わる。LBは、動きのいいILB#9正岡、OLB#51長谷川という昨年メンバーがそのまま残る安定したポジションである。
 DB陣も、CB#4引野、CB#25奥井、S#17鶴羽は昨年経験者、さらにS#29荒木が加わった。CB#4引野のパスディフェンスと最後の砦S#17鶴羽の冷静な判断など楽しみなメンバーが揃う。

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 今春の試合を見ると、全般的に得点は少ないが失点も少ない展開が続いた。アサヒ飲料戦で第4Q後半にディフェンス失点で2TDを奪われているが若干メンバー交代があってのこと、昨年経験に更なる成長が見込める大崩れしない守備陣容は大いに楽しみである。ディフェンスビッグプレーで試合をひっくり返すようなシーンが今秋リーグ戦で見られるかもしれない。
 オフェンスチームはバックフィールドは充実していて、選手層の厚いQB陣からは新たな風が吹き込みそうな状態にある。オフェンス変貌して得点力が増せば鉄壁ディフェンスとの相乗効果で秋本番の成績が変わる。いずれにしても楽しみなシーズンになりそうだ。

 昨年秋は開幕戦京都大学に勝利してから白星を稼げない状態が続き、最終的には2勝5敗で6位という成績は、少し物足りなさを感じる。もう一皮むけたいというもどかしさは毎年のように感じるのだが、今年は昨年以上に順位を上げるための攻守要素は備わっていると見ている。目が離せない試合が続くだろう。




京都大学
(今春の試合結果) △ 6− 6同志社・●17−21近畿大・●10−14東京大・●23−24立教大


 今春の試合は、得点差最大でも4点という僅差の試合が続いた。しかし最終スコアでは引き分けはあるものの白星なしという結果である。現地観戦した近畿大学との試合およびRTVで観戦した立教大学戦から今年の京都大学の方向性を私の視点で見ていこうと思う。

 近畿大学戦では、プレーアクションのロングパスによるFGと、第2Q終盤のパスによるクイックドライブからのTD、トリックプレー感が充満するショベルスクリーンによる一発TDランによる。このスクリーンパスは春の試合らしくない小手先の得点シーンではあるものの、その他にもWRの細かい位置取りで相手DB陣のマークを外してビッグゲインを生み出すなど、細かい頭脳プレーはさすが京都大学と思わせるシーンが多かったのも事実。
、そして立教大学戦でも第2Q終盤のパスによるクイックドライブからの得点を挙げているように、QB#19田中とWR#82白根、#1河野によるホットラインというオフェンスの形は出来上がりつつある。

 一方で、立教大学OLに押し込まれていたDLは、大昔のパワフルな京都大学DLを知っている世代からすると少々驚きは隠せないところだが、サイズは大きく、さすがにゴール前ディフェンスは鉄壁を構成した。ラインは6月終盤でも未完というイメージだが、それが実力かセーブした結果なのか、それは秋本番で確認しなければならない。ということで、攻撃は機能しそうだが、守備がどこまで持ちこたえるか、このあたりが今年の京都大学攻守のポイントになりそうだ。

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 今年のオフェンス陣容をポジションごとに見ていくと、QBのスターターが2年生になる以外は、少しの入れ替わりはあるものの昨年までの経験を積んだメンバーが多く残る状態である。つまり試合勘という点では経験値が十分に役立つ。しかし、攻撃の起点となるQBが2年生になるということで 攻撃の組み立て方が変わる可能性も大きい。試合を重ねる毎にQBを盛り立てる形でオフェンスチーム全体がまとまっていきたいシーズンである。

 パスオフェンスでは、近畿大学戦で4年生左サイドのWR#82白根に連続ヒット、立教大学戦でも#82白根#1河野がクイックアウトからミドルレンジのメインターゲットになるなど、ショートミドルレンジのパスをつなぐ攻撃は良い調子でゲインを重ねていた。他にもターゲットは豊富でIR#84小松原、OR#88藤井という若手に、ベテラン#8大工、#10玉木など。QBは2年生#19田中だがパスコントロールが落ち着けば鋭いパスがサイドライン際へヒットする。この短いパスは攻撃組み立てのメインプレーであり、パスでディフェンスを崩してドライブしていく可能性は大きい。

 RBではエースランナー#21大上が健在。さらに次代のランナーとして#28宮路、#29入山などが春の試合で経験を重ねた。そしてラン走路を確保するOL陣では、#61高田、#77池淵、#74田中という昨年メンバーが多く残り、そこに#64金城など新規スターターとして加わる形である。立教大学戦では相手DLに押し込められるシーンが多く、RBの個人技でゲインを重ねたという印象だったが、春の試合なので参考程度にしておくべきだろう、昨年経験に裏打ちされたブロックテクニックでRBの走路を確保するシーンは秋本番で。

 上記したように、今春のオフェンス得点ドライブのシーンは、近畿大学戦でディフェンスが気を抜いた第2Q終盤の連続パス、立教大学戦でも連続パスからのクイックドライブと近畿大学戦の同様の展開だった。ということで春の時点で実績があるのはミドルレンジまでのパスドライブ。ここにランプレーでのゲインをどこまで組み込むことが出来るか、そして、ランとパスのバランスが如何様になるか、このあたりに注目したい。

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 一方のディフェンスも特にDLLBで昨年メンバーを多く残す。ただ、多くのポジションでキーマンが卒業で抜けたこともあり、ディフェンスシステムとしては再構築になりそうだ。DLでは#96植村、#94長嶋、#33岡本という昨年経験者に#98齋賀などが加わる。昨年1年生ながらもスターターの座を獲得した#96植村のパフォーマンスには今年も注目しておきたい。立教大学戦ではライン戦劣勢でランドライブを許すシーンもあったが、秋本番は変わるはず。
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 LBでは#2河村、#44添島、#54麻と昨年経験者に#9中村、#43桐畑などがバックアップメンバーで加わる。この中で若手#9中村が仕切っていた近畿大学戦は印象に残る。ただしILBとOLBの分担が不明確な春の印象だったので、どのように再構築されるか注目したい。

 DBも#15藤井、#25須藤、#11名智など昨年経験者は多い。ただしLB同様に昨年のエースが抜けた穴を埋め切れているかどうか。つまり、LBDBがどこまで今年のチームとなって機能するように整備されたか、このあたりがキーポイントになりそうだ。

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 以上が今春の京都大学攻守だが、春実績だけで言えばパスオフェンス以外のところに、大きなセールスポイントが見出せなかったという印象である。攻守どちらも再構築感は強いのだが、より厳しいのはキーマン二人が抜けたディフェンスだろうと考えている。つまり、ディフェンスへの過度な負担は避けるべく、そのためには攻撃側ので時間消費が必須で、ランプレーでのドライブが必要、あるいは、パスメインの組み立てならばパス成功率を上げなければならない、というロジックである。昨年までも実績のあるOLとRBによるランゲインは試合展開を大きく左右するといっても過言ではない。

 ところで、要所ではオフェンスプレーコールの妙も試合展開打破の重要ポイントになるかもしれない。IRとOLBのスピードミスマッチやショベルスクリーンなどのワンポイントでの妙はある。ただし、近畿大学戦でも第1Q早々に自陣でパントフェイクからのギャンブル失敗が先制点を奪われたように、スペシャル的なプレーは成否の差が大きい。相手チームに攻撃力があるとき、ミスから失点するとその分のリカバーも加わって苦しい展開になるかもしれない。

 昨年リーグ戦7位ということで、今年のリーグ戦は開幕戦で立命館大学と第2節で関西学院大学と対戦する。この試合順序は、相手がまだ大きくならないうちに叩けるというチャンスのシーズンでもある。6月以降をどのようにすごしてきたのか、開幕戦での京都大学の姿は必見である。




桃山学院大学
(今春の試合結果) ● 7−23立教大・● 3−10龍谷大・● 0−23神戸大・○21− 0大府大


 桃山学院大学は昨年入れ替え戦で同志社大学に勝利し、1978年以来37年ぶりのDIV1リーグ戦を迎えることとなった。私が観戦した春の試合は、現地観戦した龍谷大学戦とRTV観戦した神戸大学戦の2試合、また、昨秋は入れ替え戦2試合と昨春の数試合であり、チームの動向・傾向などについてあまり把握できていないのだが、その中で考えていたことを書いていきたいと思う。

 昨年の入れ替え戦終了後のイメージでは、DIV1昇格までに導いた選手構成において主要ポジションのいくつかを4年生が占めていたこともあって今年のDIV1シーズンはかなり苦労するのではないかと考えていた。しかし、5月に万博で龍谷大学戦を観戦した時点で、まったくの思い違いであったと反省している。
 2012年入れ替え戦でDIV1に昇格した大阪教育大学がについても当初は同様にマイナス思考だったのだが春時点で全くの誤りであったことを知ったが、それと同じである。DIV2からDIV1へ昇格するためには、単年度(4年生)だけにアスリートを揃えてもだめで、それを支える3年生2年生にも十分な戦力となりえる人の存在が必要だということなのだろう。単学年の頑張りだけではなく、全学年一丸となってというチーム事情が必要であることが十分にわかる。チーム全体の総合力でシーズンを乗り切らなければならない。当たり前と言えばそうなのだが、なかなか、そこに気づきにくい。

 さて観戦した今春の試合を振り返っておくと、龍谷大学戦ではRB#22吉田のドローランがビッグゲインとなって敵陣侵攻してFGに繋げる。失点はTEやWRへのパスドライブが突然繋がってのFGの失点とQBの緩急によるリズム外しからのビッグゲインがきっかけになったTDなど。神戸大学戦では、ディフェンスが神戸大学オフェンス小パワープレーに巻き込まれてズルズル後退してしまうシーンが続出、終始、神戸大学ペースで試合が進み、桃山学院大学のリズムで試合が出来ないままタイムアップという試合展開だった。

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 オフェンスは、司令塔QB#18織田の判断がいい。プレーが崩れても次の手を考えられる冷静なところがいい。さらに神戸大学戦では、様々なタイミングで動き回ってディフェンスに揺さぶりをかけていたシーンは印象に残る。
 攻撃バックスでは、RBスピードがあってステップワークも良いRB#22吉田と、レシーバーもスピードがあってDBとの駆け引きも上手なアウトサイドレシーバーWR#1高尾の両巨頭の存在が光る。特にQB#18織田とWR#1高尾のホットラインは是非とも注目しておきたいポイントである。
 龍谷大学戦前半では、確かにターゲットキャリア2名だけで試合をしていた感じもあるが、それ故、FB#99沖野がブロック要員として的確にラン走路を確保するなど基本に忠実な攻撃スタイルを展開していることが判る試合でもあった。その後はRB#28川上が交代出場するなど他の選手もキャリアとなっていて、攻撃手段が広がっている。

 オフェンスプレー全般では、基本プレーに徹した春なのだろうが素直すぎるオフェンスがディフェンスから見たら対応しやすいかも、と、第4Dギャンブルなどでリバースプレーを2回試みているが、いずれも失敗に終わっている。絶対に無理とは言わないが、やはり遅いプレーはDIV1では通用しにくいかもしれない。

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 一方のディフェンスにもアスリートが多い。まずDLでは、DE#2有村と#90中島に注目したい。龍谷大学戦ではOLを割ってボールキャリアに手が届くシーンが続出した。そのスピードと破壊力が頼もしい。
 またLBでは、ランパス判断よく動けるILB#4近石と守備範囲の広いOLB#9小林にも注目。さらに、際どいところのパスを再三カットした最終列の守護神DB(S)#7植田の存在は大きい。CB#14西川など、随所にアスリートが存在している。
 もっとも上記したように神戸大学戦での失点はILBとSがいずれもOLのブロックに巻き込まれてしまって無力化されたことが大きい。DIV1の大型ラインとの攻防にDLがどこまで慣れたか持ち堪えるか、このあたりがキーポイントになりそうだ。ライン戦攻防が均衡すればスピードと判断のいいバックス陣に捕まるかもしれないということ。期待しています。

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 以上が春の桃山学院大学攻守の印象だが、龍谷大学戦序盤苦戦の原因の一つに、第4Dパントで距離が出なかったこともあげられる。キッキングで有利なフィールドポジションを確保しつつ、守備は特にバックスはDIV1でも通用しそうな陣容で、さらにDLがDIV1のスピード&パワーに慣れて守備全体が機能するようになれば面白い存在になりそうだ。リーグ戦前半は少々苦しいかもしれないが、その中で経験を積んで後半戦を迎えたい。期待しています。