関西学生アメリカンフットボール Div.1 シーズン展望

Updated, 2010 Aug. 25 at 23:49 JST. (同大甲南京大神大近大)
Updated, 2010 Aug. 29 at 03:55 JST. (関大関学)
Updated, 2010 Aug. 30 at 01:30 JST. (立命)
Updated, 2010 Aug. 31 at 21:52 JST. (まえふり)
Updated, 2010 Aug. 31 at 21:52 JST. (あとふり)



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関西大学・関西学院大学・立命館大学・同志社大学・甲南大学・京都大学・神戸大学・近畿大学






 関西学生リーグのパワーバランスは、70〜80年代の「関京」時代から「関京立」三強時代を経て「関立」二強へと移り変わっていった。昨年は、そこに関西大学が割って入った形で62シーズンぶり関西学生優勝と大学日本一を獲得、パワーバランスに微妙な変化の兆候が表れた。

 こうして迎えた2010年シーズン、今年は同志社大学が虎視眈々と変貌準備中で5個以上の白星獲得に挑む。そして甲南大学はオフェンス集大成の年でありながら攻守ともに新芽も現れて上位進出を伺う勢い。
 京都大学も昨年の黒星街道の中で関西学院大学から勝利寸前までに迫った潜在力は今年も侮れない。そして昨年入れ替え戦経験した神戸大学と近畿大学はオフェンス機動力を増加させて白星獲得を目論む。

 ところで、今春NEWERABOWL観戦記冒頭で「旧3強時代から新3強時代突入なるか、そこにプラス1以上なるか、というのが2010年今年の関西学生DIV1リーグ戦・・・・」と書いたのだが、各校の展望を考えていくうちに、「新三強時代」は来ないのではないかという思いが少しずつ強くなってきた。NEWERA観戦記の文字に倣うなら「そこにプラス1以上なるか・・」こちらのほうが現実味を帯びている。

 昨年、序盤戦で関西学院大学・立命館大学が黒星なったように、今年も序盤戦で、下からの突き上げによる小波が立ちそうな気配がある。それは昨年のチャンピオン関西大学にもあてはまることで、昨年経験した関西学院大学や立命館大学も2年連続で序盤戦黒星喫す、も十分にあり得るかも。そんな試合順序になっている。

 昨年、しっかりと目の前の対戦相手を見ないと大変なことになる、ことを経験し、1個々々を積み重ねていくと終わってみれば7個になっていった、ことも体験した。どちらの路線で行くかはチーム次第。

 今年は得点力のあるチームばかりなので全敗チームはなくなるのではないかと考えている。そして、下克上ありの混沌としたリーグ戦は、3校だけでなく4校〜5校〜6校以上で成績を分け合うことになりそうだ。

 あと数日でリーグ戦本番が開幕する。8校の健闘を期待しています。(8月31日記)



関西大学
(今春の試合結果) ○17− 7追手門・● 3−31法政大・○24−14龍谷大・●14−44立命館
△14−14神院大・○34−28早稲田・● 0−18関学大・● 0−29P電工


 昨年2009年リーグ戦では、62シーズンぶりの優勝でシーズンの幕を閉じた。そして2010年は2連覇をめざすシーズンになる。
 一昨年成績が5位だったので、昨年のリーグ戦は、前半戦で上位校と対戦するという試合順序だった。このことが功を奏した面は正直言って否定できないのだが、それでも、私が見る限り、対戦相手によっては春段階で「関西大学要注意」の意識付けをしようと思えばができるチームはあった。それをしなかった時点で油断負けで片付けていいのか疑問に思う。ダークホースなどと評するものもあるようだが、ま、それは置いておくとして。

 今年は「62シーズンぶり」の余波が様々にチームに襲うシーズンでもあり、1月まで厳しい試合が続いたことによる年間スケジュール見直しと怪我人フォローした春シーズン、そして夏から秋にかけては、私のところも含めて「連覇」という言葉が文字になったり音として聞こえてきたりと周囲の雑音が増える・・・。ただし、春の試合を見ている限りでは、現場選手には「62」という数字ほどの大きいプレッシャーは届いていない、感じていない、何事もなかったかのように普通の春シーズンを過ごしたように見えた。おそらく、スタッフなど上層のところで、コントロールできているのかもしれない。

 その今年のチームだが、昨年メンバーからQBLBおよび攻守ラインで数名の交代があり、春シーズンは試行錯誤を繰り返しながら、今年のチームを作り上げてきている。各論は各章に記すとして、オフェンススタイルもディフェンスシステムも昨年スタイルをほぼ踏襲することになりそうだ。

 今春の試合では、トップチームが勝利したのは早稲田大学戦のみ。昨年もトップチームが勝利したのは早稲田大学戦と近畿大学戦。昨年の近畿大学戦ではランよりもパスのほうが多かったような印象で、今年も5月の立命館大学戦はパス重視の系譜に従うように見えるのは、偶然の一致なのだろうか。ここは来春の私の課題としておこう。いずれにしても春は試合の中で攻守選手システムを調整しながら仕上げていくチームなので、勝敗結果に一喜一憂するのではなく、試合内容を見ておきたい。

 今春、私が観戦した試合は3試合。5月の立命館大学戦では大差敗退だが、立命館大学春シーズンが5月末の電工戦で終了するのに対して、関西大学は6月末の電工戦が春の最終試合という日程である。つまり、5月中旬の立命VS関大では、チームの仕上がり状態で1ヶ月以上のズレがあることになる。立命館大学がほぼベストメンバで試合に望んだのに対して関西大学は攻守ともシリーズ毎に選手が入れ替わる状態、それがこの得点差に現れるのは止むを得ないところ。

 ちなみに、関西大学も6月の関西学院大学戦および電工戦では、負傷者を除いて攻守ベストメンバーで試合に臨んでいて、たとえば電工を基準に考えると、立命と関大の差は44−14ほどではないことになる??と、数字のお遊びはこれくらいにして・・・

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 まずオフェンスQBだが、私が観戦した春の試合では、#18井上が最終戦を除くほぼ全試合を担当、最終電工戦では#18井上負傷によるのか#16岡がスターターとして登場し#12平山も1シリーズを担当した。なお、今春、私が見る機会のなかった#7池井もQBに名を連ねる。

 4名のQBで若干身体のサイズが異なり、さらにランとパスの得意とするところも少し違いがあるようだが、関西大学オフェンスの基本スタイルとなるセットバックおよびショットガンからのRBランとTEWRへのショート〜ミドルパスというスタイルは十分にこなせる陣容で、選手層の厚さでいえば驚異的。
 今春の試合では、4月追手門学院大学戦や5月立命館大学戦ではQBWRの連携をWR#17高原、#19堤などと確認したパス中心でランプレーも少しという試合、そして6月の関西学院大学戦と電工戦ではRBとOLの連携およびラインパワーの確認が第一で少しだけパスというオフェンス組み立てに変わる。試合時期でオフェンス組み立てが変わるのだが、オフェンス方針に、それぞれのプレーにQBが従った形になっている。

 ただし、メインQBが#18井上で4月以降6月までほぼフル出場し、6月最終戦のみ#16岡という起用は、やはり関関戦でのケガが関係しているかも。普通に考えれば、おそらくスターターは#18井上になると思うが、今年はQB併用含めて、リーグ戦序盤は少し試行錯誤があるかもしれない。

 RBでは、まずFBとして#42菊池、#20有谷、#99楠田がTBのリードブロッカー役として、さらに中央突破ダイブのパワープレーヤーとして活躍する。
 TBでは、#5播川と#1藤森の両巨頭が今年も健在、#5播川は破壊力突進力のあるTBとして、#1藤森は高速スピードランナーとして、それぞれの特徴を生かした分野でオフェンスをリードする。ところで、リターナーとしての重責も担う#1藤森は、昨年はスピードに任せたランナーという印象だったが、今年は若干重心が低くなりスピードに重さが加わって。より一層タックルしにくいランナーになっている。
 なお6月の関関戦では、FB#99楠田がTBでセットし、スピードと重量の両方で中央突破を試みるパワーランが数回。いずれも関西学院大学ディフェンスから9ヤード確実にゲインしていたのは印象に残る。
 ところでこれらRB陣も高齢化が進み、次代のランナーの登場が待たれるところで、春の私が観戦した試合ではあまり印象にないのだが、ひと夏超えて秋リーグ戦では、そろそろ出場してきますか??

 RBQBを支えるOL陣では、3年生#72西田、2年生#76吉川がNEWERAでブルーディフェンスをめくりあげていたシーンが忘れられない。さらに4年生#57角田、#75保呂、#56大谷、#66富永、若い学年でも#79大旗、#59泡などがスターター候補で存在する。ラインパワー全開で試合の臨んだのは6月最終の電工戦のみだが、その電工重量DL陣と均衡してランゲイン5ヤードを稼ぎ出していたパワー&ブロックテクニックは驚異的である。

 レシーバーでは、QB兼任#16岡とTE#89青木がインサイドレシーバーとしてクイックパスのターゲットになる。TE#89青木は身体のサイズを生かして相手ディフェンスを跳ね除けるダイナミックなパスキャッチとランゲインに注目、#16岡は相手ディフェンスの隙間を見つける視野の広さとボールへの執着心が魅力なレシーバーである。
 ミドル〜ディープのターゲットでは、WR#17高原、#19堤、QB兼任#7池井など昨年も重要なシーンで確実にパスキャッチした安定感のあるレシーバーが揃っている。特に#17高原はスピードとパスキャッチ位置の高さが尋常ではなく、今年もミラクルなマジックハンドキャッチを見せてくれるはず。さらに次代のパスターゲットとしてWR#80奥谷、TE#88高木などが春の試合に出場して経験を重ねている。

 そして関西大学スペシャルチームの活躍は絶対に見逃せない。今春の立命館大学戦ではFGトライのフェイクから#19が堤が40ヤードのTDランで得点、6月電工戦では試合開始時のフリーキックでオンサイドキックを決めている。さらに快速リターナー#1藤森はNEWERAでリターンTDを奪っている。これらスペシャルチームのフェイク・トリックとスピードは、試合の流れを大きく変えるだろう。

 また、P#30佐野による絶妙なコントロールパントとカバーチームの共同作業にも注目しておきたい。電工戦では攻撃スタート地点を自陣1桁ヤードに追いやったシリーズが3回ある。そのうちの1回はディフェンスがあわやセイフティ2点獲得かというシーンにつながっている。

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 今年の関西大学ディフェンスチームは、DLとLBで昨年中心選手が複数名も抜けたことで、春序盤の試合ではシステム自体ままならず、容易に中央を抜かれたりもしていたのだが、時間の経過とともに、今年のDLLBの形に変化してしまって、数ヶ月でほぼ完成の領域に近づいたのには少々驚いている。

 DLは、NEWERAで大活躍だった#94上田と#98石田に注目したい。ともに3年生だが、突進力があってさらに身のこなしがいいDLである。QBサックをかわされスクランブルしたQBを追走してタックルしたシーンは驚異的。さらに#95水村、#77桂、#68清家と昨年経験者が揃う。昨年のDLは「重い大きい」イメージがあったが、今年は「突進力スピード」がセールスポイントになる。

 LBは、春当初、昨年OLBだった#2豊田一人だけが残った再建色濃いポジションだった。そのためDL以上に複数メンバーによる試行錯誤が続いたのだが、そうやって試合経験を重ねているうちに、全員でステップアップしてしまったようで、結局最終戦電工戦でも2ユニット構成で出場し、メンバーが固定しなかった。
 もしかしたら、今年は3人固定のメンバーは定まらないままシーズンを終えるのではないかと、反対の意味で危惧するが、見方によっては、試合経験豊富なメンバーがたくさん揃ったことになる。一般的にLBは当たりが激しく負傷者対策が必要だが、今年は万全な体制で臨めそう、さらに来年は困らないかもしれない??そんな、楽しみなポジションになっている。
 その2ユニットだが、ILBに#2豊田、#4岡田、ストロングサイドのOLBに#49白滝、ウイークサイドで守備範囲の広さが求められるOLBでは#12金部、#4谷、#27西澤、そしてDB#8飾磨もOLBとして起用された試合がある。さらにタックルの重さならば#53中澤にも期待したい。

 DBは昨年メンバーから半分交代するが、それでも試合経験の豊富な選手がたくさん残る。#44砂川、#13中村、#10森本、#8飾磨、#11中谷など昨年も大活躍した選手が名を連ねていて、ディフェンス全体では最も喪失感が少なく力量的にも安定したポジションである。電工のWR長谷川とイーブンのポジション争いを展開し、電工RB石野に独走TDを許さなかった熱い心で、鉄壁の最終第3列を構成する。

 このディフェンスチームの課題を挙げるならば2個。ひとつは、今春の試合でディフェンスチームが全く対応できなかった(対応しなかった??)ショットガンQBのスクランブルランへの対策で、関学QB加藤と電工QB高田に走られまくったことが遠因となって2試合とも決定的な失点につながってしまった。LBポジションの試行錯誤がそこまで手が回らなかったためと考えられるが、秋本番までには役割分担が出来ていることだろう。
 もうひとつは、LBが分厚い選手層になったことで、相対的にDLとDBの層の薄さを感じてしまうのだが、このあたりは、ひと夏超えたことによるステップアップに期待します。

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 今年の関西大学チームの特徴でありゲームメイクの起点になるのは、やはり、鉄壁ディフェンスになるか。

 ちなみに、大雨悪天候の関関戦でのレッドゾーンディフェンスは、FG5機会4成功1失敗で相手攻撃によるTDは0回で合計12失点(他にインターセプトリターンTDが1回ある)。快晴の電工戦ではFG5機会5成功2TDで合計15+14失点(1TD回はズルズルドライブ、1TD回はビッグゲイン絡み)。
 単純計算で行けば、2回FGを決められても6失点、そしてオフェンスチームが1回のチャンス、つまり、1TDで逆転できる・・・・と、こんな単純計算で本当にいいのかどうか、不安は残るが、ま、私の考えたことなので。

 いずれにしても、ディフェンスで試合をコントロールしてオフェンスが隙間を突く、というスタイルになりそうだ。

 ちなみに今春の関西大学得点をみてみると、早稲田大学戦を除いてオフェンス得点の少ない試合が続いていて、5月の立命館大学戦ではFGフェイクのキープランと最後の最後でのTDパスヒットによる2TD、そして6月の関学戦と電工戦では無得点に終わっている。春の試合は内容第一、勝敗は二の次とは言うものの、無得点というのは確かに少々気持ちが悪いところだが・・・・

 参考までに、昨年も第2・3・4戦ではロースコア僅差の試合だったが、少ないチャンスをなんとか得点に結びつけるオフェンスと、堅守ディフェンスの攻守両面併せ技で、上手に試合展開をコントロールして白星にたどりついている。そして関西大学の爆発的なオフェンス得点力が脚光を浴びたのは第5戦以降で甲子園ボウルで頂点に達する。

 今年もリーグ戦前半戦では、主にQBの最終調整を兼ねながら得点力アップを目指し、そして後半戦に挑むことになりそう。つまり、昨年と成長ストーリーには大きな違いはない。(リーグ戦対戦相手は大きく異なるが。)

 ディフェンスについては上記のように、DLLBDB各ポジションとも春の段階で一応の形を成した。DL筆頭にスピードのある攻撃的な守備が可能、高速レシーバーも完全カバーできるアスリート揃いのDB陣と、鉄壁ぶりは6月の2試合で披露してある。さらにNEWERAでもWHITE白星獲得の一翼を担っていた。

 ではオフェンスがどこのの隙間を突くかだが、ランとパスのマルチスタイルから適当なものを選択することになる(曖昧な表現だが、試合によって、対戦相手によって、狙いどころは代わってくるのではないだろうか。)。さらにスペシャルチームでの得点も加わる。
 こうして、虎の子の得点を攻・守・スペシャルの全体の力で、さらに、策士の戦略戦術も絡めながら、白星を重ねて行きそうだ。

 冒頭に記したように、連覇なるかという注目のシーズンになる。もちろん連覇など簡単なことでがないが、それでも、昨年シーズン終了後に私が個人的に想定していたイメージほどには難しくはないかもしれない。期待しています。



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関西学院大学
(今春の試合結果) ○58− 0日体大・●21−22追手門・○19−14日本大・○36− 7同志社
○58−14京都大・○28− 7桃院大・○18− 0関西大・○31− 0明治大
○59− 2大院大


 今春の関西学院大学の試合日程が公開された時点で、さてどうしようと困ったことがある。それは、関西学院大学が全力本気で臨まないと試合黒星になってしまいそうな試合、つまり、春時点であっても最上級ベストの力を見せてくれる試合はどれだろうと考えると、5月の日本大学戦と6月の関西大学戦の2試合だけになりそう、という点だった。
 同志社大学と京都大学は、結果度外視で調整重視の試合をおこないそう、さらに社会人との対戦もないので、関西地区で観戦できる唯一関西大学戦だけでいいのか、しかし5月に川崎まで遠征すると某チームの観戦数が・・・、などと考えて、関東遠征を止めた次第。

 その結果、日本体育大学戦ではQB#6加藤のパス成功率100%(15/15)、同志社大学戦ではエースQB#6加藤を温存、QB#17遠藤がスターターとなってバックススピードだけで得点を重ねて勝利、明治大学戦ではQB#11糟谷がランパスに非凡なところを披露したが、どちらかといえば先制チャンスをミスで逃した明治大学が良くも悪くも試合の流れを作ってしまった。唯一の関西大学戦ではRBランプレーで敵陣侵攻もオフェンスでは攻めきれずFGによる加点とデイフェンス得点によるもので、オフェンスTDなしという際どい試合になった。

 春の試合はJV戦を除いて全勝勝利となったが、以前から得意なところは徹底的に伸ばしたものの、苦手なところはそのまま残っているかのよう。関西大学レッドゾーンオフェンスでTDを奪えないのは昨年と変わっていない(もっとも関西大学戦は激しい雨でパス攻撃をもぎ取られた状態でのものなので参考程度だが。)、ディフェンスも近年の課題であるインサイドラン突破に対して有効な手段を見つけたか少々疑問が残る春だった。

 もっとも、学生チームの宿命として毎年メンバー交代していくなかで、チームの目標とするオフェンス・ディフェンスのスタイルを常に一定値以上に保っていることは驚異的で、今年も春の段階で攻守ラインバックスとも、少なくとも昨年と同等値になりそうなことは確認できた。そこに上乗せがあるか否かは、ひと夏超えてからのことになる。再登場の姿を楽しみにしています。

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 オフェンスのラインは、#66宋、#73和田、#74村田、#57谷山、#62浜崎、#60木村などが今春の主なスタートメンバーになる。この中では、#村田、#谷山が昨年スターター経験者で、さらに#宋、#和田も途中出場などで試合経験を積む。

 QBは4年生#加藤が日体大戦でパス成功率15/15という脅威の数値を残して4月で完成度100%をアピール、さらに同志社大学戦で2年生#17遠藤、明治大学戦では3年#11糟谷が1試合を任されている。なお#11糟谷は2番手QBとして今春多くの試合を経験し、さらにNEWERAでもQB参加して経験を積んだ。
 このQB3人ともクイック〜ミドルパスに苦手意識がなく、関西学院大学オフェンススタイルの統一感を損なわない層の厚さは驚異的。パスからスクランブルランに切り替える判断も絶妙で、今年はもちろん、来年・再来年もQBについては心配無用だ。

 そのパスターゲットとしては、TEに4年生#垣内と2年生#85榎という大型レシーバーが揃う。WRでは#1松原、#16和田、#81渡辺、#80小山がSEとしてスピードに任せたディープターゲット、WR#86春日はTEとともにインサイドレシーバーとしてミドルレンジの複雑なパスコースを担当する。このレシーバー陣も試合経験豊富で頼もしい。さらに、マイナスな試合経験を今年はプラスに転じるべく春から集中力の高いレシービングを繰り返しているところは注目しておきたい。

 RBでは、RB#22久司、#39稲村と#7松岡など昨年までの試合経験豊富なメンバーが残る。いずれもスピードがあってタックルしにくいランナーである。今年もFBパワータイプの巨漢ランナーは春時点で確認できなかったが、夏を越えて新メンバーが参加することになるか、それとも複数名存在するTEがフォーメーションシフトでFBに入ってTBのリードブロック役に加わるかも。

 そして今年もK#3大西によるFG3点は、特に1点を争うリーグ戦後半戦では重要な戦力になるだろう。昨年京都大学戦の逆転FGキック成功のシーンは、今でも鮮明に蘇る。

 今年の関西学院大学オフェンススタイルも、QBからWRへのパスでディフェンスを広げて、その後にランプレーを加えて中央を切り裂いてディフェンスを撹乱する・・・関西学院大学の得意とする例年通りのオフェンスが繰り広げられることだろう、昨年経験者が多く残るのでプレー精度は昨年以上になるのは間違いない。

 ところで今年のオフェンスチームは、昨年メンバーのキーマンを何人か喪失するものの、昨年来の経験者が多く残る。そのため、すでに春の段階で、OLQB・OLRB・QBWRそれぞれ連携部分や基本プレーでの不安はほとんどなかった。なので、もしかしたら、何か目新しい挑戦的なことをするかと思っていたのだが、どちらかと言えば、昨年スタイルの練り上げに注力したかのような春シーズンだった。ただし、JV戦は全く観戦していないので、そこで実験的なことをしている可能性は残ります。
 なお、私が気づいた目新しいものとしては、ショットガンとIフォーメーションを融合したフォーメーションセットが1回ある。ただし、パワーランナータイプのRBは存在しないみたいなので、TEがFBへシフト変化、あるいは、一般的だがTEダウンフィールドブロックのゴリ押しランドライブが、あるかもしれない・・・

 強いて課題を挙げるとすれば、今春も京都大学戦・関西大学戦で見られたようにレッドゾーンオフェンスの決め手に欠けて、敵陣エンドゾーン目前にしてFG3点に終わるということは、今春までのことになるのか、秋も続くのか。
 そしてもうひとつ、こちらは楽しみにしているところなのだが、昨年メンバーがそのまま残ったような陣容に、新たな選手が頭角を現して新風を吹き込んでくれることを期待したい。このあたりは、ひと夏超えてリーグ戦にて。

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 ディフェンスもオフェンス同様に昨年メンバーが多く残る。唯一再建色が濃かったLBもコンバートによって経験値を回復し、トータル的に今年のディフェンス陣容については、春の段階でほぼ整備終了しているようだ。

 DLは、#96梶原、#52平澤、#98長島、#99朝倉など昨年シーズン後半のメンバーがそのまま今春のスタート選手として残っている。さらに#51好川、#55畑田と大型選手が控えている。この両名は先発メンバーと遜色なく職人肌の熱い選手である。さらに#61岸、#41前川も試合によってはスターターに名を連ねるとともに#41前川はOLBでも試合経験を積む。

 LBはILBに#91村上をコンバートして安定感が増した。関西大学戦やNEWERAでは、試合の流れが動くのを防ぐ貴重なソロタックルを決めている。プレー判断・ボールキャリア捕捉、そしてタックル精度ともに今年からLBとは思えないアスリートである。
 そしてOLBは、#46西岡、#65川端がスタートメンバーで、#4香田や#68吉井も途中から試合出場している。OLBのうち守備範囲の広さを要求されるウィークサイドのOLBには#46西岡、#4香田のDB経験者が配され、持ち前のスピード判断でランパス両方に対応していたのが印象に残る。

 CBでは#14吉井、#28三木、#37渡辺、Sでは#8善元、#12重田、#4香山が今春の試合のスタートメンバーである。ほとんどが昨年のスターターであり試合経験も豊富でプレーに安定感がある。
 特に#8善元は、最終第三列の守護神として超級の安定度をほこる最も信頼のおける選手である。そして今年は#12重田がその系譜を継ぐ選手として頭角を現してきた。プレー判断と動きの両方にスピードがあって守備範囲が広いのが特徴で、NEWERAで関西学院大学選手の活躍があまり目立たなかった中でLB#91村上とともにBLUEチームで異彩を放っていた。是非とも注目しておきたい選手である。

 このように今年の関西学院大学ディフェンスはLB以外でほぼ昨年メンバーが残っていて、さらにLB#91村上のコンバートも大成功となって、今年のスタイルは完成した。

 あえて課題を挙げるとすれば、同志社大学戦でSBの縦パスがLBDBの隙間にヒットし続けたことと、明治大学戦ではDL#52平澤欠場の影響もあるがランパスでドライブされ続けられたり。関西大学戦ではパワーTBに中央突破8ヤード近くを許すなど、中央付近のランパスに若干の不安を残しているかもしれない。
 同志社大学や関西大学・京都大学が徹底的にそこを攻略ポイントとしなかったのは、単に春の試合で、他にも確認したいことがあったからに他ならない。秋リーグ戦なら徹底的に突いて来ていると思うが、そこは過程の話である。
 この課題は、昨年メンバーが多く残るが故に、昨秋シーズン課題も残ると言えなくもないが、ひと夏超えて解消されているか、少々気になる点ではある。

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 以前はトップチームの試合でも様々な選手起用を試みていたが、今春観戦した試合では、攻守ともにほぼ固定メンバーになるか、QBWRで試合最初からメンバー交代してそのまま試合終盤までという起用方法が中心になっている。昨年からの経験者が多いポジションでも、積極的にはスターターをいじっていない。したがって、例えば、ディフェンスキーマンLB#91村上や、DBでもキーマン欠場なった時に、どんなパフォーマンスになるのだろうかと、ちょっと気掛かりなところはある。
 もっとも、新規選手はJV戦で試合経験を重ねているだろうし、トップチームでの試合経験・周囲選手との連携という点においても、春の成果を踏まえて夏の間に修正連携を高めているだろう。(来年はJV戦も観戦しに行こうと思う。)

 一方で関西学院大学が得意としている「全員フットボール」の部分は、まだ他のチームの追随を許さない。一人々々に役割が与えられていて、1年間でそのプレーだけを練習(実際はそんなことはないと思うが)して成功率100%というスペシャリスト、1試合1プレー必殺必中が多ければ、試合のモメンタムは逃さない。この「全員フットボール」の精神は今年も十分に育っていることだろう。
 さらに、昨年からの経験者が多いということをいい意味で見ると、ここ一番の集中力はある、ということになる。例えば京都大学戦最後の逆転ドライブであったり、最終立命館大学戦で見せた「全員フットボール」は今年も再現できる、ということだ。そして、いくつかの全勝対決を乗り切って、2007年以来のリーグ優勝を手にするに違いない。
 開幕戦は神戸大学と対戦し、第2節で近畿大学と、その後、甲南大学・京都大学と続いて第5節では長居陸上競技場で立命館大学と対決する。期待しています。



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立命館大学
(今春の試合結果) ○35−10吹田マ・○47− 6追手門・○30−27日本大・○61− 6東海大
○28− 3早稲田・○34− 0南山大・○44−14関西大・○17− 0龍谷大
● 9−44パナ電・○37− 7大産大


 昨年リーグ戦戦績は5勝2敗で3位でシーズンを終えている。立命館大学が3位以下になるのは2000年シーズン結果以来になる。昨年春の長浜ボウルは、日本大学相手に全シリーズノーハドルオフェンスという世間を戦慄させるデビュー戦となり、その後、6月の電工戦でも接戦を展開、独走でリーグ優勝も夢ではないと思わせた春シーズンだった。その後の変遷を経て、上記の成績を残すところまでになった。

 そして今年の立命館大学春シーズンも公式ページによると、4月初旬からゲーム形式の練習が始まり、長浜ボウルでの日本大学戦でトップチームが正式に開幕し、5月末BKCでの電工戦で春シーズンが終了する。

 立命館大学としては毎年恒例の春の試合スケジュールだが、DIV1他チームでは6月末近辺まで試合をするところもあるので、約1ヶ月ほど他チームよりも前倒しになっている。その理由は単純にチームの育成スケジュールであったり、大学本業のスケジュールとの兼ね合いもあるだろう。

 ただし、他チームより1ヶ月先行していることは、春の対学生で全勝続きという試合結果に影響を及ぼしているかもしれない。今春も唯一黒星は社会人電工戦のみで、対学生では昨年チャンピオンの関西大学戦含めて全勝している。
 もっとも春長浜での日本大学戦だけは競った試合になっていて、試合最後まで勝敗の行方のわからない展開だった。春序盤にもかかわらず、気持ちの熱い試合だったという印象、そして、電工戦でも一発TDを許さない、あるいはFD更新を寸前のところで許さない懸命なタックルは、久しぶりに心の熱い立命館大学チームを見た。

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 今年の立命館大学オフェンス、ラインはOL#56市川、#77真田(4年2名)という昨年までの経験者が残るが、#50柴田、#68服部、#79前田(2年3名)など若い選手との構成になりそう。経験不足は否定できないが、ライスボウル出場など経験豊富な4年生が、文字通り、オフェンスを牽引することになる。

 QBは#9松田、#15谷口、#12荒木の3人体制になりそうだ。日本大学戦では#9松田がスターターとして登場するが、関西大学戦と電工戦では#15谷口が先発となり2番手に#9松田という起用順序になった。春の練習試合なので起用順序即順列ではないし、各選手体調事情などもあり得る。なおNEWERAでは#9松田がBLUEチームのQBとして、関学糟谷と交互起用されている。
 QB#9松田は、ショートパスのパス精度もは秀逸でNEWERAでもBLUE反撃ドライブを仕掛けている。さらにスクランブル判断と走力もあるマルチタイプのQBである。若干距離の長いパスを苦手としているようだが、そこはチームプレーとして長身WR#1田中、大型TE#99荒木、そしてマジックミラクルハンドの#25宜本がカバーするだろう。
 QB#15谷口は、短いパスも問題なくタイミングよくレシーバーに投げ込んでいるが、そのダイナミックな体格を生かしたスクランブルランがパワープレーになるところは彼独自の持ち味で、ディフェンス視点に立てばショットガンセットからのパスとパワープレー両面に対応しなければならないのは少々厄介である。そして長身#12荒木は今春は3番手的に起用方法だったが、長身を生かしたロングパスは脅威である。
 このようにQB3人体制で選手層自体は厚いのだが、各人得意とするプレーが少しずつ異なっているので、オフェンスチーム全体で見たときに長所となるのか短所となるのか、微妙なところである。少なくともオフェンスライン・バックスともプレースタイルは一つに統一されているようなので、「QB個人の特性を生かしつつ、一つのプレースタイルを目指すQB陣」ということになりそうだ。

 ロングパスターゲットとしては、スピードのある#11呉田、長身大型サイズの#1田中などが揃う。いずれも昨年までの試合経験者でロングパスキャッチ一つで試合の流れを変えるビッグプレーメーカーとしての重責を担う。また春の試合で1年生WR#12頓花がマルチターゲットとして活躍していた。
 さらにショート〜ミドルレンジのパスでは、TE#99荒木とTE#85居林、FLには2年生#25宜本が加わる。#25宜本は2年生ながら玉際での強さと身のこなし、さらに、キャッチ後の走路の見極めなど、様々なところに類稀なセンスを発揮していて、すでに立命館大学を代表するFLと言っても過言ではない。

 RBは、エース#27高野橋が健在でボディバランスのいいスピードのある走りを見せる。さらに今春の試合で#39川端、#30北川が大活躍していて、川端はインサイドからOT付近までの中央付近を積極的に飛び込むランナーとして、#30北川は一瞬の隙間をすり抜ける高速ランナーとして走りまくる。この#27高野橋、#39川端、#30北川の3名は若干タイプが違うことで結果的にプレー幅が広がっている。相手ディフェンスマークも適度に分散するので今年は走りやすくなるか。さらに、#33東松や1年生にも好ランナーを抱えるてTB陣は層の厚いポジションになっている。

 なお、電工戦ではTE#95荒木がモーションからFB参加したシーンが何度かある。巨漢タイプのRBがいないので、今秋リーグ戦でもこのようなプレー機会は多くなりそうだ。そしてFBとしてのボールキャリーはもちろん、TBのリードブロック役もあり、そして、FB位置からショートパスターゲットにもなりうる、少々ディフェンスから見るとうるさい選手になるかもしれない。

 スペシャルチームでは、P#1田中の飛距離滞空時間のあるコントロールパントキックは魅力。キッカーでは、K#17松山が今春も安定したFGキックで着実に3点を重ねているが、電工戦で#32佐伯(1年生)が50ヤード近いFGを決めて戦慄デビューを果たしている。さすがに立命館大学はスペシャルチームでも選手層が分厚い。
 一方で春は、キックカバーとパントカバーで大きくリターンされそうなシーンが多く見られたが、そのあたりは、持ち前のスピードと連係プレーで、ひと夏超えて改善されていることだろう。

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 今年の立命館大学ディフェンスは、特にLBがメンバー一新して文字通り新規構成となった。もっともJV戦やトップチームでの試合経験はある選手ばかりなので経験値は問題ない。DLとDBを併せたディフェンス全体のコンビネーション調整に費やした春シーズンになっている。

 DLはDE#6十亀、DT#3南、DT#38藤井、DE#95山本などが今春スターターメンバーで、さらにDL#98石神なども健在で、いずれも昨年までの試合経験豊富なメンバーで、さらに、アグレッシブな勢いのある選手ばかりでQBサック等のビッグプレーメーカーになる。

 そして新規構成となったLB陣は、ILBに主将#8佐藤、OLBには#43盛田、#10名倉という固定先発メンバーでコンビネーション育成をおこなっていた。#佐藤はILBというポジションにふさわしい冷静かつ無駄のない動きでボールキャリアに対応、一方#43森田と名倉は血気盛んなアグレッシブな動きで前後左右にボールキャリアを追い詰める。その他の今春試合出場経験者では、OLB#52猪野、#5菊池など、いずれもLBという荒々しいポジションに向きの動きのいい選手が揃っている。試合経験不足なところは否定できないが、個人のスピードパワーは十分なので、あとは周囲との連携のみ。そこは、時間が解決してくれることだろう。

 DBは、Sに#21海島と#35柘植、#7水澤など、CBは#13荻須、CB#20矢部、#23田中などが今春先発メンバーを務める。特にS#21海島と#35柘植の存在感は絶大でフィールド内にいるのといないのとで、ディフェンス全体の安定感に影響を及ぼすような精神的支柱である。CBもエースナンバー#13をつける荻須のパスカバーは秀逸である。

 このDB陣と電工レシーバーランナーとの壮絶なバトルは今でも鮮明に記憶に残っていて、電工WR長谷川とDB#13荻須によるロングパスの攻防筆頭に、FD更新まで数ヤードを進むか止めるかの攻防をDB#35柘植、#20矢部、LB#8佐藤、#10名倉が繰り広げている。
 守備範囲の広さもさることながら、1ヤードを許さない熱い選手の集団となった今年のディフェンスチームの勢いは、オフェンスチームをも巻き込んで、今年の立命館大学チームの全体の方向性を決めことになりそうだ。

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 昨年はリーグ戦2連覇を逃したが、今年は、関西派遣奪還を目指すシーズンになる。だが、リーグ戦開幕戦でいきなり京都大学と対戦することになっていて、過去には接戦を繰り広げた対戦相手でもあり、開幕戦での激突は気分的にもイヤな感じがしないでもないのだが、昨年から決まっていたことでもあるので、むしろ準備万端整っていると考えるべきだろう。

 ところで、立命館大学は、DIV1の8校の中で、最も早く春シーズン終了したチームである。一応は、社会人電工との全力対決を観戦し、今年の立命館大学攻守のポテンシャルの高さは確認したつもりだが、そこから3ヶ月間が公になっていない。「5月の試合よりも6月の試合のほうが9月リーグ戦戦力を占うに適した試合」というのを身上とする私としては、6月以降で更なるステップアップがあってもいいのではないかと勘繰ってしまう。

 このあたりを確認する上でも、開幕戦京都大学との試合というのは格好の材料になりそうだ。もちろん、京都大学も必殺必勝の準備をしてくることだろうからは、試合序盤は均衡するかもしれない。その後、どのような試合展開になるかは、今年の立命館大学リーグ戦を見ていく上での重要なポイントになりそうだ。詳細は第1節展望にて。熱い選手が多い今年の立命館大学の試合を、楽しみにしています。



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同志社大学
(今春の試合結果) ●14−46立教大・● 7−36関学大・●20−26慶應大
● 0− 6天理大・○47−21大阪大


 同志社大学は、今春の試合も黒星を重ねているが、春の試合の成績が悪いのは例年通りのことで、昨年実績(リーグ戦4位)でもわかるように春の試合結果と秋の戦績は全く関係ない。

 今春は、攻守ラインとQBが新規メンバーになったが、攻守ともバックスは昨年メンバーが多く残っている。このような事情からか、春の試合では、攻守ともラインの整備と、ここ数年続いている攻撃スタイルにQBが慣れることを目標とした試合になっていたように思う。

 慶應義塾大学との定期戦も、慶應義塾大学は勝利にこだわった選手起用&プレー選択に対して、同志社大学は白星目標と調整が相半ばという選手起用だった。ただし、それにもかかわらず1TD差まで迫る惜敗は、別の意味で力強さと芯の太さを感じた試合だった。

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 上記のようにオフェンスでは、OLとQBが今シーズンから新規スターターになる。

 OLの今春試合出場経験者は、#64浜田、#79庄林、#66内野、#73八城,#70野上、#54内堀、#63山下など。この中で昨年スターター経験者は#64浜田、#54内堀など少数、他のメンバーも途中出場などの経験はあるものの、OL全体としてのコンビネーション連携作りは今春からスタートとなった。

 QBも3年生#9杉岡が今シーズンから新規スターターとなる。試合経験は少ないのだが、春2試合を観戦しただけでも大きく成長している様子が伺える。短いタイミングパスを得意とするQBでここ数年の同志社大学オフェンススタイルを踏襲している。そしてバックアップQBには2年生#17福井が存在し、同じプレースタイルを志向する。

 ところで、近年の同志社大学オフェンスは、QBの得意とするプレースタイルに併せるのではなく、同志社大学チームが目指すプレースタイルにマッチするようにQBを育英している。つまり、スターターとバックアップが同じスタイルになるのは当然のこと。そして、近年は、このルーチンに従って、毎年同じタイプのQBを輩出してきていてQB育成にも定評があるチームである。
 したがって、春の時点でのQB#9杉岡の経験不足も(春時点でほぼ解決気味だが)、秋シーズンインの段階で、完璧に解消されていることだろう。

 RBではTB#34河野は快速ランナー、TB#41土井はパワーランナーとして、さらに、FB#90岡田と様々なタイプのランナーが存在する。さらに今春出場なかったが高速TB#20重坂など、選手層は厚い。
 クイックヒットのランとドローのタイミングの違いや、カウンターの絶妙なステップワーク、さらにスクリーンショベルのレシーバーとして、また、ダウンフィールドではディレイパスターゲットとして、各人多様な特性を生かしてプレー参加する。

 そしてインサイドレシーバーとして、SB#49東、#46青木、TE#86清松がショート〜ミドルの縦パスターゲットになる。クイックヒットのパスは相手ディフェンス選手と直接衝突が多いが、いずれも身体のサイズが大きい。さらにディフェンス陣の隙間を探してパスキャッチ後のラン走路を探すのも得意としている。
 ロングパスターゲットには、WR#81和田、#82黒田、#8山林と、いずれも快速高速を身上とするレシーバーが揃う。玉際の強さボールへの執着心もあるのが特徴で、芯の強い頼りになるレシーバー陣である。

 さらに、P#93によるパントキックにも注目したい。シチュエーション毎に最適なキック距離と方向コントロールを選択実行できるパンターである。
 慶應義塾大学戦では相手ミスがあったとはいえカバー選手とのコンビネーションで敵陣での攻撃権を奪い、NEWERAではホームランスナップボールを冷静にキックしてWHITEチームに勝利をもたらすビッグプレーを見せた。
 この絶妙なフィールドポジションコントロールは、秋リーグ戦でもチーム全体の士気を大いに高めることだろう。

 今年の同志社大学オフェンススタイルもショットガンセットからのバランスアタックを展開になるだろう。大雑把に言えば、インサイドレシーバーへの縦パスとSEへのアウトパターンでディフェンスを拡散させて、そこをRBが走り抜けるパターン、をメインに枝葉が広がっていくことになりそうだ。

 そんなオフェンス方向性に対して、5月関西学院大学戦では、QBWRのパス連携を実戦で確認するような試合で、#49東、#46青木への縦クイックパスは関西学院大学ディフェンスの隙間にヒットし続けた。得点にはつながっていないが、パスによるオフェンスドライブはできている。
 6月慶應義塾大学戦では、相手ディフェンスの出足にラインが押し込まれるなどで、遅いパスプレーやランプレーではロスゲインが多かったが、クイックヒットのランではある程度のゲインを稼ぐ状態。
 その慶応義塾大学ディフェンスの足を止めたのもSBへのクイックヒットのパス、ということで同志社大学のパス攻撃は、春の段階でほぼ完成していると考えても良いのではないだろうか。

 あとは多彩なRB陣とOLブロックの連携が春夏を経てどこまでステップアップしているか。そして重要なポイントになるのがクイックパスの成功率、というよりも安定度になるが、多彩なバックス陣がカバーするだろう。ランパス様々なプレー構想が考えられる楽しみなオフェンスチームである。

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 ディフェンスのラインだが、DL#94中谷、#91平林、#96大西、#93前田、#33上田などが今春試合出場してが、昨年のスターター経験者は#96大西、#93前田のごく少数とOL同様にフレッシュなメンバーによる構成になった。

 そしてLBは、主将#55嶌岡、#12西澤、#51栗原、#57杉垣など、昨年からスターターあるいはバックアップ選手として試合経験は豊富なメンバーによる。この中ではILB#51栗原、OLB#57杉垣はスピードがあって守備範囲が広い。さらに重くて破壊力のあるタックルを得意とする熱い選手である。

 DBはディフェンスの中では最も昨年メンバーが多く残るポジションでS#23富、S#2福田、CB#29岸田、#5中嶌という昨年経験者に、CB#13矢島、S#28吉川などが今春試合出場している。
 S#23富、#2福田の両名は堅実冷静なセイフティとして最終列を担当、キャリアに対して確実なタックルは定評がある。CBでは、#5中嶌はスピードがあって気持ちの熱い選手、#29岸田は安定感があるが、一方で重要な局面でのビッグプレーメーカー、そして#13矢島も判断のいい選手でスターターと遜色はない。

 LBDBはいずれも試合経験が豊富で大崩れすることがない。さらに熱い選手と冷静な選手が半々という絶妙なバランスになっていて、結果的に守備範囲の広さと堅実安定感という両極を満たす、ある意味では奇跡の布陣とも言える。

 春5月関西学院大学戦は攻撃バックスの個人技で、ディフェンス全体が前後左右に振り回されていたが、まだ整備途上なので参考程度。
 6月の慶應義塾大学戦では、相手QBのいやらしい動きに対して、最初こそ後塵を排する状態だったが、徐々に対応できるようになっていく。最終的には、システム的に外されていても、DL#93前田、LB#51栗原、#57杉垣など誰か一人が最後のところでキャリアに絡む熱い執念を見せる熱い試合だった。

 春の時点ではDLの経験不足を補う2・3列という構成だったが、ひと夏超えてアグレッシブな勢いと安定感を兼ね備えたディフェンスチームになりそうだ。

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 攻守ともにラインで新規スターターになる選手が多く、春はライン間の連携を作り上げるだけで精一杯だったかもしれない。その中で、関西学院大学戦・慶應義塾大学戦で攻守それぞれの持ち味をアピールしていたことも忘れてはならない。
 この2試合、四苦八苦なんとか乗り切ったというイメージではなく、得意分野においては、互角以上優勢の結果を残したというべきで、見方によっては戦略的でもある。

 昨年は最下位から4勝3敗で4位に浮上したが、今年はさらに白星の数を増やしたいシーズン、開幕戦で甲南大学と対戦し、その後、京都大学・神戸大学・近畿大学と続く。この前半戦にも、難しい対戦相手が多いが、白星街道を進んで後半戦につなげてほしい。

 2010年チームの持てる力を余すところなく発揮して、5個以上の白星獲得を期待しています。



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甲南大学
(今春の試合結果) ○39− 7神院大・● 0−28京都大
○31−28神戸大・△17−17学習院


 昨年シーズンは2勝4敗1分で5位という成績を残す。2勝は京都大学・近畿大学からのものだが、第3節で立命館大学に前半終了時点1TD差に迫りながら試合後半でバランスが崩れてしまった惜敗は記憶に残る試合。そんな昨年リーグ戦だった。

 今春は2試合しか観戦できず、それも5月中旬が観戦最終戦なので、そこから、大きく変化しているのは間違いないだろう。とりあえず、4月の京都大学戦と5月の神戸大学戦を参考にして、甲南大学チームの攻守を考えてみるが、おそらく参考にならないだろうことをお断りしておく。

 ちなみにDIV1の8校のうち、6月の試合を観戦したチームは甲南大学・立命館大学・京都大学を除く5チームになる(6月上旬と下旬でもチーム戦力は大きく成長変化しているとは思うが・・・・)
 昨年6月に某試合と某試合を観戦して、5月という時期の試合は、まだまだ調整段階だということを改めて認識した次第。今春は、日程が合えば甲南大学グラウンドに観戦しに行こうかとも考えていたのだが、残念ながら試合予定がなく、このような結果になってしまいました。

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 オフェンスラインは、OL#74尼谷、#67林、#66濱本、#71久保、#59宋、#63田伏などが今春の試合でスタートメンバーに名を連ねた。
 そしてNEWERAでは#51二木、#71久保、#77藤森という昨年来のメンバーが、関大選手と一緒にWHITEチームのOLを構成していた。次代の選手の底上げをはかりながら、昨年メンバーとのコンビネーションも確立していて、選手層の厚さを誇る。

 QBは#11松延が最終学年としての集大成・渾身のオフェンスを指揮することになる。オフェンスのプレースタイルは、QB松延の得意とするショートミドルのパスとランプレーを絡めたバランスアタックを展開することになるだろう。

 そのパスターゲットだが、ミドル〜ロングのパスではWR#10戸田、#85前田、そしてインサイドのショートからミドルレンジのターゲットにFL#3永吉、TE#92林が中心になる。いずれも集中力とスピードのあるレシーバー陣である。
 春の試合ではQBWRの連携が悪くパス失敗が多かったが、昨年までもパスでの攻撃実績があるチームであり、さらにNEWERAではQB#11松延が2番手QBとして登場、得意なパスを駆使してロングドライブを展開して本調子に戻っていることをアピールしていた。したがって、4月5月のパス不調を気に留める必要はない。

 RBではエース#26高谷がキラーランナーとして今年も存在する。中央からOT付近を抜けるテクニックはさらに磨きがかかり、QB#11松延のクイックパスとの両輪で甲南大学オフェンスを牽引する。
 ところで今年はRB#26高谷オンリーランナーになるのではないかと危惧していたのだが、FB#21藤原、RB#25近藤など新たな選手がしっかりと成長してきていることも春の試合で確認できた。FBパワーとTBのスピード両面ででかき回すことになりそうだ。

 さらに、K#7仲野の安定したキック力も魅力で、FG3点を確実に積み重ねていく。

 今年の甲南大学オフェンスのキーの一つは、やはり、パス精度、ということになりそうだ。スーパーランナーRB#26高谷などRB陣だけで攻撃が続くような対戦相手は、おそらく存在しない。パスがつながることでランゲインし、さらに、ランプレーが出るからミドルパスもヒットする、そんな両輪駆動で甲南大学オフェンスにリズムが出てくる。

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 ディフェンスは、DL#53荒木、#77藤森、#52吉田、#44安楽、#2野々村、#41永瀬などが春の試合ではスターターなどを勤めた。ただしOLは昨年選手が残るもののDLは新規スターターが多くて再構築の試行錯誤中という印象が強い。

 一方で、LBとDBは昨年選手が多く残っていて安定感があり、さらに今春の試合で新しい選手も登場するなど楽しみなポジションになっている。
 LBでは、#9溝渕、#12小林、#4平瀬、#5松村、#6内芝などが今春の試合で出場経験があるが、特に、昨年後半戦あたりから出場しているビッグプレーメーカーOLB#4平瀬のスピードとアグレッシブな熱さには注目しておきたい。
 DBでは、#8田頭、#豊福、#22田中(健)、#34永井、#24田中(彰)など昨年までの経験者と2名の1年生#1中津、#28告野が今春の試合出場している。
 その中で異色な存在は1年生S#1中津で、4月の京都大学戦でTDパスをインターセプトし、5月の神戸大学戦ではパスインターセプトからのリターンTDを奪うなど、春から大活躍中で、その集中力とスピードには是非とも注目して欲しい。特に神戸大学戦でのリターンスピードは驚異的で、もしかしたら、スペシャルチームでのリターナー起用もあるかもしれない。

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 上記したように、5月までの2試合を観戦したのみなので、攻守ともに未知数な部分が多い。きっと、6月以降で大きく変化しているはずなので、どのようなチームになっているのか、つかみどころがない。
 それでも、オフェンススタイルが一新していることはないだろうし、QBWR連携部分は整備され、ランパス多彩な攻撃手段のバランスは調剤終了、ディフェンスはDL再構築に目処がつき、第2・3列バックスの経験値と熱さがチームを支える。6月以降、夏を経て攻守ともにパフォーマンスは向上しているはず。

 9月4日に地元王子スタジアムで同志社大学と開幕戦を行うが、再登場の姿を楽しみにしています。



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京都大学
(今春の試合結果) ○28− 0甲南大・● 7−14近畿大・●14−58関学大
○27− 0東京大・● 7−44日本大


 昨年は、第5節まで1勝4敗で黒星先行していたにもかかわらず第6節の関西学院大学戦では勝利が手に届く寸前までの大接戦となった。このように、京都大学は、一見では掴みきれないチームになってきている。
 今春も甲南大学には大勝して好スタートを切ったかに思えたが、その後は、近畿大学と関西学院大学に黒星を喫し、最終日本大学戦では大敗に終わる春シーズンだったが、そのの中で攻守ともに順調に整備していたのは間違いないだろう。

 春の試合観戦では、京都大学の試合に限ったことではなく、一般的かつ極論すれば、勝敗に一喜一憂する必要はなく、試合内容だけを見ていれば良い。誰がどのようにプレーに参加したか、さらには良い例としてのプレーだったのか悪い例を実地で確認してみようとしたプレーだったのか、机上の案を実際にやってみたのか、そのプレーの意図を読み取らないといけない。
 もちろんチームの意図するところは「公」にはならないので観戦者側にとっては類推想像の世界の話になるのだが、勝敗結果に意味がないことに変わりはない。

 つまり、春の試合結果と秋の成績は無関係で、昨年の関学戦のように、今秋も「やってみないと結果は判らない」そんな試合がどこかで、あるいは、全てそんな試合になるかもしれない、と考えていくと、京都大学チームの恐ろしさが実感できる。
 とりあえず今春の攻守チームを紹介してみるが、それすら意味を成さないかも・・

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 まず、オフェンスのラインは、OL#59内尾、#55白坂、#79西本、#65駒井、#57上森などが今春のスタートメンバーで、昨年経験者と新規メンバーが融合する形になっている。今春の関西での試合では、OLパワー全開のごり押しランドライブは少なかったが、関学戦でもその片鱗は覗かせていて、今年も対戦相手によってはキーとなる攻撃手段になるだろう。

 QBは#9矢野と#17今村の両名が揃う。甲南大学戦で先発した#9矢野は得点シーンに絡むことがなかったがランパスバランスの良い安定感のあるプレーを行っていた。#17今村は甲南大学戦2番手で全得点に関係していて、その後の試合でもスターター起用されていて、秋シーズンも両名で乗り切ることになるだろう。バックアップ体制という点で層の厚さを感じる。

 RBも今年は多彩なメンバーが揃っていて充実している。FB#33田原、TB#2北畠、#34安河内、#21高木という陣容、さらに#95曽田はFBTB兼務できる。春の試合ではFBとTBを2セット組んでいた試合があり選手層は厚い。
 FBTB兼務の#95曽田は、その体格を生かしたダイナミックな中央ランプレーは破壊力がある。TB#21高木は甲南大学戦で始めてみたのだが、オープンをスピードで捲り上げて大きく距離を稼いでいて久しぶりに高速ランナー出現という印象だ。さらにいずれのRBもショートパスターゲットとなってスクリーン・ショベルは当然のこと、遅いタイミングのミドルパスターゲットとしても活躍する。

 レシーバは、WR#18坂田、#83木原という昨年経験者に#8薮田、#1上廣とTE#5番矢が今年からスターターに名を連ねる。#18坂田のスピードは今年も健在で、春の関西学院大学戦でもブッチギリのロングTDパスを成功させている。さらに今年からSEとして加わる#1上廣もスピードがあるレシーバーである。
 また、WR#83木原、#8薮田とTE#5番矢はミドルレンジのインサイドレシーバーとして活躍する。内外長短と様々なタイプのレシーバーが存在していて楽しいオフェンスになりそうだ。

 昨年は絶対的なホットラインが存在していて苦しい時のホットライン頼みの傾向があったが、今年は多彩なRBと豊富なレシーバー陣によるランパスのバランスアタックということになりそう。
 相手ディフェンスとの力関係、および、試合の中での好不調を勘案してプレーを組み立てていくオフェンスコーディネートの部分も重要な要素になりそうだ。

 ところで、5月の近畿大学戦ではオフェンスプラン的に淡白で、WRRBとも連続ゲインできずだったが、試合の位置づけの問題かもしれない。確かに昨秋リーグ戦で大勝した時にトップチームで戦い続けることに意味はあるのかと疑問を感じたこともあるが、この試合には意図するところがあるかもしれない。
 さらに6月の関西学院大学戦もどちらかといえば淡白なオフェンスで、QBWRの連携にミスが多くなっても徹底してパスコールしていたように、随所に春の試合らしさが現れている。
 ちなみに昨年も春の試合では調整の範囲内のような試合が多く黒星が続いたが、秋の成果に繋げているので、京都大学の春は「こんなもの」である。

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 ディフェンスのラインはDL#73岩崎、#92徳原、#29藤本、#98森田、#81大西、#畠中などがスタートメンバーに名を連ねる。つまり、ほぼ昨年と同じメンバーで構成されることになり試合経験が豊富な重厚DL陣になっている。
 DL#92徳原は、近大戦・関学戦・NEWERAのいずれの試合でもビッグプレーを繰り返していた。さらに#73岩崎、#98森田も昨年以上に動きが鋭く、京都大学のパワースピードラインの系譜に倣う。春の関西学院大学戦ではライン戦で一歩も引けを取ることなくイーブン以上の内容だったのことは気に留めておくべきことだろう。

 LBはDLと違って新規スターターが多く経験の浅い選手が揃うポジションになる。OLB#45近藤、ILB#84福田、OLB#41嚴と#44堀田などが今春の試合でプレー参加している。
 この中ではILB#84福田の動きは注目しておきたい。守備範囲が広く、中央突破ランのプレーは当然のこと左右OTプレーにも中央ショートミドルパスにも反応するプレー判断は秀逸である。一般的にDLとILBが安定していると、かなり強固なディフェンス陣容になるのだが、OLB陣の成長と併せていくと、今年の京都大学ディフェンスは試合経験を重ねるごとに鉄壁度が増していきそうだ。

 一方で、春シーズン毎試合のように苦労していたのがDB陣で、複数名のアスリート選手を卒業で失ってしまったことで、選手配置含めて再構築を余儀なくさたポジションである。
 主将#23塩見、#11槙塚、#15後藤、#24大岡、#6冨田、#30池田、#13川嶋などが試合経験を重ねたが、春序盤は積極的に経験の浅いメンバーを起用したこともあって、甲南大学戦、近畿大学戦でのパスディフェンスではかなり苦い経験を積んでしまった。

 ただしボールキャリアへの集まるスピードはあって、特にランディフェンスにおいては安定感があるDB陣である。さらに関西学院大学戦ではパスを通されてはいるもののCB#24大岡、CB#13川嶋などが少しずつレシーバーに対応できるようになっていたところは見逃せない。昨年のアスリートが抜けた穴を今年のメンバーがしっかりと埋めてきているので、夏を経てパスディフェンスも安定感が増していることだろう。

 以上が今年の京都大学ディフェンス陣容で、5月末の関西学院大学との試合を例に挙げると、インサイドランゲインを許さないDL、そして、TEWRへの縦ショートクイックパスにはILB#84福田がその守備範囲の広さとセンスでパスキャッチ後のゲインを許さない堅守を披露、そして、パスディフェンスも成長途上ということで、ディフェンスチームにも楽しみが多い。

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 フタをあけてみないと判らない、実際に試合を行ってみないと結果は判らない、今年の京都大学は、そんなチームである。
 この展望を書くにあたって、いろいろと昨秋と今春の試合を思い浮かべ、さらに攻守チーム各選手に思いを巡らせていたのだが、考えれば考えるほど春のいずれの試合よりも成長していきそうでで、良い意味での不気味さが漂ってくる。

 今秋リーグ戦は開幕戦で立命館大学と対戦し、その次のカードは同志社大学戦、そして昨年チャンピオン関西大学戦を経て関西学院大学戦と続くのだが、この前半戦4試合でも、あのカードこの試合と考えていくと、いずれの試合も昨年の関学戦のようなことが起きるのではないかと思えてしまう。

 ちなみに昨秋の戦績は2勝5敗で、5敗のうち1TD差以内が関西学院大学戦、同志社大学戦、甲南大学戦の3試合で、星勘定と得点勘定では少しイメージが異なる。もちろん、昨年チームと今年のチームは全くの別物、なのだが、今春の試合を見て感じた不気味さは今年のチームに対してのものなので・・・。
 つまり、リーグ戦で目指すところは全勝優勝だが、少し現実的な目で見てもリーグ戦勝ち越し以上は十分にあり得るのではないか、自チームと相手チームのモチベーションコントロールも関係するのだが、そんな試合日程になっている。2010年、京都大学の試合は注目しておきたい。



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神戸大学
(今春の試合結果) △14−14大阪大・● 9−13横国大・●28−31甲南大・○16− 7桃院大
●21−24龍谷大・○ 5− 0近畿大


 昨年は1勝6敗でリーグ戦7位と低迷したが、今年のチームは攻守とも昨年メンバーから大きく変わるので、いろいろな意味で心気一新、再スタートの年になる。
 今春はオフェンスはラインの一部とレシーバー数名を残しての大交代となったが、春序盤からランパスドライブ力のあるところを披露している。一方のディフェンスでもメンバー交代でシステム構築に悩みつつ春の試合を乗り越えた。私が観戦した4戦ともで主将#75庭山が攻守兼任でラインに参加、文字通りのフル参戦で攻守の両面に目を配っていたのが印象に残る。さすがに最終近畿大学戦終盤では力負けしたシーンも見えたが、主将のプレーを背後から見ていた攻守全ての選手には、その意気込みが伝わったに違いない。

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 オフェンスラインは、今春の試合で#70日野、#78藤原、#75庭山(攻守兼任)、#71横田、さらに次代を担う#67佐原(熱い)、#64木村、#76有川、などが、先発および交代出場している。昨年経験者は#70日野、#78藤原など少数で新規スターターが多い布陣だが、決して力負けしていない。さらに##67佐原のように心の熱い次代の選手も台頭してきていて一戦ごとの成長がたのもしい。
 新旧メンバーが融合して試合を重ねるごとに経験を積んで成長してきているので、攻守ライン兼務していた#75主将庭山も最終的にはDLに専念することになるだろう。

 オフェンスの司令塔QBにはQB#7林、#14原田、さらに#22木内が春の試合で出場している。その中で最も登場機会が多かったのは#7林で、大阪大学戦終盤の同点ドライブを指揮し、甲南大学戦と龍谷大学戦では細かい丁寧なフェイク動作からのランとパスで相手ディフェンスを惑わせてロングドライブを繋げるなど新規スターターとは思えない才能を見せている。
 一方、QB#14原田は細工のない思い切りのよさが#7林と好対照になっていて、結果的にディフェンスから見るとプレー種類タイミングのの異なるQBが揃っていることになる。QB#22木内は昨年までもRBとして試合出場経験ある。
 いずれのQBであっても、オフェンススタイルとしてはランとパスのバランスアタックを展開することになりそうで、ショート〜ミドルのパスと中央ランプレーでオフェンスを組み立てていく。

 RBは、FBに4年生#98寶田、TBでは3年の#26大仲、2年生#38井上、#9羽星も参加、さらに春出場なかったが#29種、#28三宅という昨年経験者を抱えていて層の厚さを伺わせている。とくにTB#26大仲は神戸大学TBの系譜を継ぐ好ランナーでランホールを的確に捉えて距離を稼ぎ出す。さらにQB自身のキープランもあわせてタイプの違ったランナーが揃っている。

 WRでは、SE#81岡本、#80稲葉が昨年までの試合経験もあってキャッチセンスがよくボールへの執着心もあるエースレシーバーとして健在、さらにIRでは人の当たりにも強い#87東江、#11東野、TE#85舟町などが加わってメンバー豊富になった。
 もっとも今春近畿大学戦でのロースコアゲームは、QBWRのパス連携が悪かったことによるもので、今年もパス精度が試合展開のキーポイントの一つであることは間違いないのだが、多彩なパスコースとランプレーがパス不調をカバーできそうだ。

 そのパス不調による苦しい試合展開となった近畿大学戦で、チームを窮地から救い出したのがP#34吉江によるパントキックだった。コントロールされたパントキックで有利なフィールドポジションを獲得できたことも勝利の一因で、今年の神戸大学オフェンスチームは、「投走蹴」いろいろなところに機動力を備えたチームになっているのが特徴だ。

 ラインやQBなど若いメンバーが多いが、試合を行う毎に成長しているので、まだまだ今年の頂点には辿り着いていない。一戦ごとに成長していく様子を見ているのが楽しい、そんなオフェンスチームになった。

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 今年の神戸大学ディフェンスチームは、昨年からのDLLBの喪失が大きいかもと思っていた春シーズン、私が観戦した試合では各ポジションとも先発は不動のメンバーで構成して今年のチームの核の確立を目指していたようだ。試合展開に応じてで若手メンバーも起用し、さらに甲南大学戦では負傷者発生等で先発DB陣に若手を多く起用して苦い経験を積んだが、そんな中から、新たな選手の台頭も期待できそる。
 時間の経過とともに各ポジションでベストメンバー・バックアップ選手が揃ってきていて、春夏を超えて秋序盤あたりで、今年のディフェンススタイルがまとまりそうな勢いがある。

 今春のDL先発選手は#97庭山、#90福島、#92白石、#94都間、#93谷口など。この中では#92白石がNEWERAに出場して長身を生かしたパスカット等BLUEチームのDL陣の中でも大活躍していたのが印象に残る。さらに、#90福島、#94都間、#93谷口もスピードもあってパワフルなラインになっている。春は攻守ライン兼務だった#97庭山は、最終的には選手層の部分でDL専任に落ち着きそう。そのスピードパワーについてはいまさら語るまでもない。

 LBはOLB#42前川、ILB#3花田、OLB41高松が春の試合での不動のスターターメンバー。昨年まではOLBで試合出場していた#3花田が今春からILB担当になっているが、昨年も時々ILBとして起用されていたこともあって経験不足感はなく、今春の試合を経てさらに安定感が出てきた。そしてオープンプレーにも絡むようになって文字通りILB中心選手として神戸大学ディフェンスを支えている。さらにLB#52柳下など若いメンバーがバックアップとして試合経験を重ねている。

 DB(S)では、S#17種田、#34吉江、#2梅本の3人ともプレー判断もよく守備範囲が広い。ディフェンス最終列として安定感のあるメンバー構成になっている。
 CBでは#20川口、#13小川などが今春の先発メンバーで、特に#13小川は2年生で今春からのスターターだが、そのスピードプレー判断には注目しておきたい。

 ディフェンスは全般にオフェンスよりも選手層が薄いところが少々気掛かりだが、各ポジションに昨年経験者が数名残っていて、LB#3花田、#42前川、DB#17種田、#2梅本、#20川口、DLは#97庭山、#90福島、#92白石と新規メンバーが上手に融合した状態で、今年のディフェンスチームの核はしっかりと構成されていて、さらなる若手の台頭も十分に考えられる。夏の成長と秋シーズン今後に期待したい。

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 私が春観戦した4試合全てで主将#97庭山が攻守ライン兼任で試合最後までプレーしたが、このことも今年のチーム作りが早い段階から実際に成果が形になって現れるようになった要因の一つではないかと思う。攻守ともに春一戦ずつ成長していたが、まだまだ伸びシロのあるチームで成長過程を見るのが楽しみでもある。

 開幕戦は5日(日)に王子スタジアムで関西学院大学と対戦し、その後、関大戦→同大戦→立命戦と続く。リーグ戦序盤戦はもしかしたら少々苦しむかもしれないが、その中で攻守とも経験を重ねていけば、今年はリーグ戦後半戦で確実に白星を重ねることが出来そう。期待しています。



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近畿大学
(今春の試合結果) ○31− 7大阪大・●14−21桃院大・○28−23明院大・○14− 7京都大
●16−14京産大・○31− 7金沢大・●20−21専修大・● 0− 5神戸大
○42−32一橋大


 近畿大学は過去2年連続入れ替え戦出場していて近年の成績は振るわないが、今年のチームは、一味違うかもしれない。
 今春観戦した試合は、5月の京都大学戦と6月の神戸大学戦の2試合で両方とも春らしい試合だった。京都大学の攻守とも勢いが感じられない試合を白星獲得し、6月の神戸大学戦では近畿大学オフェンスが手の内を隠しているかのような試合だった。
 それでも京都大学・専修大学から2・3TDを獲得するオフェンス得点力と、最大2TD失点に留めているディフェンス力は、昨年とは異なったものになっている。このあたりに今年のチームの可能性が見え隠れしている。

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 オフェンスは、OL#77半田、#57渡邉、#52向、#59新木本など、選手層薄く昨年経験者も少ないのだが、京都大学戦では中央ランプレーで攻撃の糸口を切り開くブロックテクニックを披露している。

 QBは#10林が担当、昨年シーズンでも試合経験はあり、パスにランにと多彩な攻撃を指揮する経験値は十分にある。

 そして今年の近畿大学オフェンスのセールスポイントの一つが、充実したレシーバー陣で、TE#87酒道、SE#88小野澤という大型レシーバーが2人存在することだろう。
 SEのアウトサイドへのクイックタイミングのショートパスと、TEの縦ミドルパスによるパスが主なパスコースになる。そして、大型ターゲットなので、QBによる少々のミスコントロールは体格がカバーしてしまい、さらにその身体サイズが相手ディフェンスを弾き飛ばす、そんなパワープレーなシーンが十分に考えられる。
 さらにWR#17千々岩も昨年経験者として残っていてセンスのいいマルチターゲットとして活躍する。
 これらWR陣は昨年入れ替え戦でも目に付く活躍をしていて、QBWRパスがつながれば近畿大学攻撃に勢いがつく。

 さらに今年はRB陣も豊富で、FB#44辻、TB#27福田、#20坂田、#39濱田、#6本など、タイプも多彩。これまではオープンをスピードで捲り上げるようなランプレーが多かったが、今春はOLブロックとの連携による中央突破ランを執拗に繰り返していたのが印象に残る。

 京都大学戦ではラOT付近のランプレーを繰り返してペースを掴み途中からミドルパスを加えて最終的にロングドライブ成功、神戸大学戦ではパスプレーだけでロングドライブがつながっている。

 今年の近畿大学オフェンスチームは、昨年以上に攻撃バックスに多彩なメンバーが揃ってランパスともに推進力があり、ラインも少数だが精鋭メンバで構成されている。その攻撃の中心となるQBも経験値豊富で攻撃のリード役として資質は十分。機動力のある攻撃が期待できる楽しみなオフェンスチームになった。

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 ディフェンスでは、DL#95上村、#15青石、#91巽、#55田畑など、選手層の薄さはここ数年解決されていないのだが、OL同様に少数精鋭メンバーで構成されている。今春の試合ではLBがボールキャリアに対して前掛かりで絡むシーンが多かったが、それは、DLが相手OLをコントロール出来ている証拠でもある。

 LB陣では、OLB#47乗影、ILB#4綾部など、さらにDBは#25川野、#18森本、#11池田などが今春の試合でのスタートメンバーになる。またDB#80藤井、LB#56平尾など1年生も春季シーズンの試合で経験を積んでいる。
 選手層については他のポジション同様の課題を抱えるものの、LB#47乗影、#2綾部、DB#25川野などは昨年までの試合経験があるので、若手メンバーのリード役としての重責も担う。

 このLBDB人陣は、ランプレーでのボールキャリアに集まりのスピードがすばらしい。特にLBはDLとともに突進力もあるメンバーが揃っている。前がかりの守備は春でも如何なく発揮していて、京都大学戦では1TD喪失、専修大学戦でも実質2TD喪失(1個はリターンTD)にとどまる。

 ただし、長いパスでのDBWR競争に若干不安を残していて、さらに若いメンバーが多いという選手層の問題もあるが、夏の成長分に期待しています。

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 昨年リーグ戦は全敗8位で入れ替え戦出場し、終盤の選択ミスから龍谷大学に最後逆転寸前まで迫られたが、なんとか切り抜けての勝ち逃げDIV1残留を果たしている。一昨年も僅差で入れ替え戦勝利というように薄氷の残留が続いている。

 しかし、今年はオフェンスの組み立て方次第では得点力を発揮できそうなので、相手ディフェンスチームとの力関係によっては点の取り合いの試合もありえるかもしれない。
 今春神戸大学戦は得点ゼロだが、この試合ではTEWRへのパス回数が極端に少なかった。これが「オフェンス組み立て方次第」に相当する部分で、春の事情による意図した結果なのかもしれない。
 いずれにしても、今年はチーム全体が良い方向に向いていけば、リーグ戦中にもいくつかの白星獲得があるだろう。

 開幕戦は5日(日)、エキスポで昨年の優勝チーム関西大学と対戦する。さらに前半戦はその後も前年上位チームとの対戦が続くが、その中でオフェンス機動力から試合流れを掴むような展開に持ち込みたい。
 その経験を重ねていけば徐々に白星獲得に近づけそう、リーグ戦でも少しずつ変化していけば後半戦では・・・、そんな楽しみのあるチームです。期待しています。



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 ようやく「リーグ戦展望」脱稿することができました。今年は、6月中旬から資料集め等で少しずつ準備していたので、それなりに、各チーム方向性はまとまっていたのですが・・・

 準備万端例年より2週間早いUPも可能??かと、カレンダーを見つめていた8月の初旬。不運にも、手術台に上がることになってしまい、その後、2週間ほど使い物にならず。(幸いないことに、年齢から来るものでもなく、長年の不摂生の代償でもなく。もちろん事件事故でもなく。健康人でも宝くじに当たってしまえば手術も止むなし、という奴です)

 今年は諦めるかと弱気になった時期もありましたが、とりあえず項目だけでも並べてみようと思って始めたところ、少しずつ、お勧めしたいポイントや伝えたいことが鮮明になっていき、最終的には、なんとか形にすることができました。

 とうわけで、ギリギリになってしまいましたが、そして、もう少し簡略化したかったのですが、時間切れとして脱稿させていただきました。例年以上に読みににくいとは思いますが、御容赦のほど、そして、今シーズンもよろしくお願いいたします。
(8月31日記)