日本選手権 ライスボウル



ライスボウル 



01月03日(月) 東京ドーム 14:00
チーム名1Q2Q3Q4Q合計
立命館大学
オービック1024
(現地観戦)
 
立命館大学
オービック
1Q
TD
1Q
FG× 2Q
TD
2Q FG
3Q
G×
3Q TD
G× 4Q
FL
G×
G×
G×
4Q END
(作者Aのメモより)
AK-CHART
AK-CHARTの見方


 甲子園ボウルが終わってからライスボウルまでの時間、2010年シーズンで立命館大学が緊迫した接戦となった試合の映像を探していた。

 10月の関西学院大学戦は、どちらかといえば関西学院大学が崩れていってしまった試合で、立命館大学側が「こじ開けた」展開ではなかった。さらに今から2ヶ月以上も昔の10月末のものなので、そこからチームは大きく変化している。

 11月の関西大学戦は、2010年立命館大学唯一の黒星となった試合なので、映像があれば是非とも見たかったのだが、スカウティング映像を入手するルートもなく・・・

 甲子園ボウルは最近の試合なので新鮮度はあるものの、試合序盤は少し参考になることがあるかもしれないが、映像を携帯用に準備する労力と効果を天秤にかけると、乗り気になれず。
 さらに他の試合で映像はないものかと探していて、12月13日の京セラドーム大阪での関西学生プレイオフ(西日本学生代表決定戦・決勝戦)の映像に辿り着いた。立命館大学放送部(RBC)がUSTREAMでライブ中継を行った時のものである。

 この試合は、立命館大学が少しずつ試合の流れを手繰り寄せるという展開だったので、少なくとも第3Q中盤までの立命館大学攻守のパフォーマンスはライスボウル観戦に参考になるのではないかと思って、映像を見ながら当時のメモを見ながら再確認していた。

 現地では関西大学サイドから観戦していたので立命館大学側の細かい動きはわかっているようでわかっていなかったのだが、攻守ともに頻繁な選手交代を行いながら、その交代ミスによるタイムアウト行使がなかったベンチワークに感嘆し、さらに、RB3人+QBという重厚なショットガンフォーメーションを改めて堪能することができた。

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 さて、今年のライスボウルの話に入る前に、昨年のライスボウルで個人的に反省したことを挙げておくと。

 去年のライスボウル、関西大学VS鹿島における「個人的なライスボウル展望」は、甲子園ボウルを怒涛のランドライブで圧勝した関西大学オフェンスイメージを引きずってしまっていて、「東京ドームでもある程度以上のランドライブは出来る」という固定観念に陥ってしまっていた。

 これが誤りだったことは、その試合が始まって早々に気付くことになる。OLによるブロックだけではRB走路をコンスタントに確保することはできず、リードブロック役となるFBをつけても鹿島ディフェンスをなかなか崩せない・・対学生の甲子園ボウルと対社会人は別物だということに、遅まきながら気付いた次第です。  それならば関西大学オフェンスに残された手段は何?と、試合観戦途中に「展望の修正」を余儀なくされたのが昨年のライスボウルだった。

 なので、今年の立命館大学が苦しんだ試合の映像を探していたのです。なおオービックについては映像は集めたものの見る時間もないまま当日を迎えることになってしまいました。

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 試合結果は、24−0でオービックの完封勝利、昨年に引き続きで学生2連敗、これで社会人VS学生の成績は16勝VS14勝となった。

 オービックの得点は24点だが、立命館大学オフェンスが全く進まないまま試合後半に突入したので、特に第4Qなどは、得点をとるよりも時間消化を優先したようなプレー選択が続く。競った試合だったらゴール前でのギャンブル選択もFGトライに変わっていたかもしれないし、TD7点が入っていても可笑しくないフィールドポジションが続く。点差以上にオービックの圧勝という試合だった。

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 それでも、第1Qは、均衡していた。オービックにTDプレーはあるのだが右SE縦ロングパス1本でのもので事故として処理してもいい(実際には少し問題があるのだが、それは後述)

 この事故プレー以外は立命館大学ディフェンスがオービックオフェンスのランパスに対抗できていて、QB菅原のパス精度も悪く、立命館大学ディフェンスプレッシャーは届いていたと言えよう。オービックのFD更新ドライブは第2Qの得点が入るまでは0回に抑えられている。(記録上は第1QのロングTDパスでFD更新1回がカウントされる)

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 第1Q中盤、オービック攻撃にディレイオブゲームの罰退と立命館大学LB#52猪野とDL#6十亀による連続マイナスゲインタックルが加わってフィールドポジションが逆転する。
 第1Q後半から第2Q序盤は立命館大学が敵陣でプレーする時間帯になり、つまり攻守の連携で立命館大学側に流れが傾きつつあった。

 惜しむらくは、敵陣での2回のチャンスをパントとFGキックにしたこと。1回目は第4D残り4ヤード、2回目は残り2ヤードだったので、特に2回目はギャンブルで勢いに乗ってもよかったかも。社会人相手にパワープレーを挑むのは決断が必要だがモメンタムが後押しする可能性も、無きにしも非ず、と思いながらFGシーンを見ていた。

 FG失敗は痛くない、と言えば少しウソになるが、相手に与える衝撃で言えば3点と7点では違うが、0点と3点ではあまり変わらないのではないだろうか。もっとも7点獲得はFD更新してドライブできての話なのだが、このあたりに「挑戦者」らしくない「よそ行き」なプレー選択という印象を受けた。

 第2Q中盤、フィールド中央での立命館大学攻撃でDL#12ノアによるQBサックがあって15ヤード後退、これで、立命館大学はフィールドポジションを押し戻される。そしてオービックの6分間ドライブがスタートした。

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 そのオービックオフェンスは、第2Q自陣37ヤードからスタート、最大でも10ヤード程度のショートゲインを繰り返した。ただし、スクリーンパスやスローバック、カウンターランなど、第1Qの攻撃パターンよりも攻撃的な揺さぶりをかけるスタイルになっていた。

 第1Qのオービックオフェンスが様子見だったのか緊張していたのかは不明だが、この左右前後に揺さぶりながらの刻んだドライブは敵陣17ヤードでFD更新、さらにRB#20古谷拓ピッチプレーで敵陣10ヤードまで侵攻した。
 第2DはDL#3南が中央突破ランを0ヤードに止めて第3D。オービックQB#6菅原はパスの構えから大きくロールしてスクランブルランだが、立命館大学ディフェンスプレッシャーにパスタイミングを逸して追い出されたというのが正しい。
 立命館大学ディフェンス陣は大きなマイナスゲインでタックルできそうだったのだが、実際はまったく手をかけられず。スクランブルランが、そのままTDプレーとなった。

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 このスクランブルシーンと先の一発ロングTDパスにおいて、立命館大学ディフェンスの追走するコースでロスが発生しているのが惜しい。
 対学生だったならばいずれも最短コースだったかもしれないが、社会人スピードを見誤っていた??ことで結果的に大回りになってしまい、追いつけなかった。
 たとえ追いついてもゴール前ディフェンスは必至だが、FG3点に抑えるディフェンス力があったことは、第2Q最後に示している。

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 このオービックの攻撃はTDプレーまでで6分01秒を費やすロング揺さぶりドライブとなって、立命館大学ディフェンスからスタミナを奪ったか、ゲームクロックで約1分後に再びディフェンス機会が訪れるのだが、同じようにショートゲインながらズルズルとオービックのゲインを許してしまった。

 オービックは残り時間を考えながらの丁寧なドライブで5回のFD更新、自陣16ヤードから敵陣14ヤードまで前進する。

 しかし、中央ランプレーを立命館大学DL陣がショートに止め、フォルススタートの反則罰退、立命館大学堅守によるパス失敗も加わって、FG3点まで、となった。

 ハーフタイムでバックネット裏へ下がる立命館大学ディフェンス陣の疲れ切った&やり切った感のある足取りが印象に残る。

 前半17失点0得点は崖っぷちギリギリだが、オフェンスの反撃を待った。

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 その立命館大学オフェンス、試合前半はFD更新2回。1回目はQB#15谷口のスクランブルによる17ヤードゲインラン、2回目はQBスクランブル8ヤードで届かなかった残り1ヤードを第4DギャンブルでスニークでFD更新した合計2回。
 それ以外は、パス失敗が続き、他のRBはシングルバックからのキャリーはマークされてノーゲイン、さらにQBランもどちらかといえば対応されていた。
(なお、パス失敗のうち、スクリーンやショートパスのいくつかはオービックディフェンスの手によるチップやカットによるものでRBWRのキャッチミスではないものが含まれている。)

 ハーフタイムを挟んで試合後半。先攻立命館大学最初のシリーズは#11呉田による16ヤードリターンで自陣34ヤードスタート。そして、前半はQB#15谷口のスクランブル中央突破が数回ゲインしていたのだが、それは後半に向けての種まきだったと思わせたのが、このシリーズである。

 左から右へのモーション途中にQB#15谷口からハンドオフでボールを受けたRB#27高野橋の右オープン15ヤードゲインは、QBが左へ行くフェイク動作との連携による。
 続くRB#39川端のオープンラン12ヤードもQBの細かいフェイク動作が入って二人カウンターになっている。

 ディフェンス視点に立てば後半立ち上がりということがあったかもしれないが、少なくとも立命館大学RB陣とQBのコラボレーションプレーが威力を発揮しそうな雰囲気が漂っていた。

 試合前半のランプレーは、1名のTBによるOLブロックとのコンビネーションを試みただけで、そこにはQBの細かいフェイク動作はなかった。さらに前半ではQBランの中央突破は数回だがゲインしている。

 そして後半立ち上がり。QBランをフェイクにしたRBランでRB#27高野橋、#39川端のビッグゲインが生まれた。ならば、その次は両RBを囮にしてQBスクランブル中央突破ラン、というようにQBとRBの連携による攻撃バリエーションの交互選択は十分にできたのではないかと思う。

 京セラでの関西大学戦で盛んに試みていたのは、ショットガンセットするQBの周囲にRB3人を配置したパワー&パス両方に対応できるフォーメーション。
 だが、この試合では、実質、わずかに1回のみ(第1Qにフォルススタートの反則で取消、第3QにはこのフォーメーションからWRへのパス失敗)

 RB2名をリードブロック役にして第3のRBがゲインする、あるいは、リードブロック役3人というパワープレー、さらには、RB3人とQBによる細かいハンドオフフェイクで、ディフェンスを惑わすカウンター系などなど。少なくとも関西大学戦ではリードブロッカー2名のウイッシュボーンライクなランプレーは盛んに試みていた。
 FB#2高田、#94佐紺、TB#27高野橋、#39川端、#30北川、そしてQB#15谷口。
 甲子園ボウル観戦記で書いたが、TBとQBによるボールキャリーはほぼ同じくらいの回数になるので、QBRBそれぞれ互いにフェイクしあうような連携プレーは、少々、楽しみにしていたところでした。

 昨年、関西大学がFB1名のリードブロックだけでは鹿島ディフェンスがビクともしなかったけれども、2名3名と人数が増えて、さらに、フェイク動作が加われば、なんとかなるのではないか・・

 ・・・これらがオービックディフェンスに通用していたかどうかは、わからないが、やってみないとわからないことなので、やってみてほしかった、というのが個人的な感想です。

 前半のQBキープは、いい種まきだと思っていたのだが、個人的には、その収穫シーンが見られないまま。今年のチームはランプレー重視できたので、もう少しパワープレーに固執して欲しかった。ここにも「よそ行き」な雰囲気を感じてしまいました。

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 結局、後半最初の立命館大学ドライブは、敵陣での第2Dでピッチ乱れからロスし、第3Dロングとなってドライブが止まる。その後は、パスプレーの回数が増えていくものの、つながらず。
 ロングシチュエーションが増えてオービックディフェンスプレッシャも厳しくなってパス失敗、さらに試合時間も減っていってパスに頼らざるを得ない、という悪循環に陥ってしまった。

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 立命館大学ディフェンスは、DB#35柘植、#20矢部のパスカット、LB#56猪野による2回のQBサックはいずれもビッグロスを奪う。さらにDL#3南、#6十亀、#54武知、LB#43盛田は中のランプレーを止めて、パス狙いのQBを追い回すシーンもあった。他にもDL#95山本、#80高橋、LB#5菊地、DB#13荻須、#21海島、#7水澤などディフェンスによる集中力の切れないビッグプレーが続いた。

(了)