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年間最優秀選手 ミルズ杯:QB谷口翔真(立命館大学3年) 甲子園ボウル最優秀選手:RB高野橋慶太(立命館大学4年) 敢闘選手:RB末吉智一(早稲田大学3年) NFL特別賞:DB荻須創太(立命館大学4年) 関西学生が3校同率優勝でプレイオフ開催となったために、毎週1試合の観戦記と観戦のための展望を検討(UPする分と、個人的な観戦準備のためのものとの両建て)するというこの1ヶ月間は、師走を迎えるにふさわしいあわただしさで経過していきました。 そして、関西学生プレイオフ決勝戦(西日本学生代表決定戦・決勝戦)から甲子園ボウルまでわずか5日間というせわしない日々は、プレイオフ決勝戦の観戦記を書いている間に甲子園ボウルまで終わってしまうという、ありえない結末を迎えてしまいました。 「甲子園ボウル展望」を楽しみにしていた方には申し訳ないことをしてしまいましたが、sky−A映像による早稲田大学VS明治大学と、早稲田大学VS法政大学の試合を見ながらチャートを作成してみたところまでで力尽きてしまった、というのが実際のところです。これが「展望」としての唯一の成果となってしまいました。。 もしも、映像を見ながら「観戦メモ」をとっていたならば、なんらかの形として「展望」が仕上がっていたかもしれません、敗因は、メモをとらずに映像を見たことです。 ただ、公開用に準備してきたものもがあり、それを公開せずに終わるのもなんなので、ここで、陽の目を見させてあげようと思います。といっても、たいした資料ではないのですが・・。 次に示すデータは、今シーズン両チームの秋リーグ戦および大学選手権トーナメント試合において、どのようにして得点を挙げたのかというプレー種別と得点した選手名、および、その回数を調べたものです。(数値は、関西学生連盟および関東学生連盟の各試合スタッツを用いて集計しました)
早稲田大学RB#10末吉君キャリーによるTDが20回あり、早稲田大学ランプレーによる全TD35回のうち6割近く(57%)が#10末吉君によるものだった。 ここで用いた数値はTDプレーでのものだが、重要なシーンで誰がキャリーするかというところを知りたかったのでTDプレーでの数値を用いた。 つまり、甲子園ボウルでの全プレーは「重要なシーン」にあてはまるはず。反対に、リーグ戦での大勢が決したあとのプレー分が加わってしまうと「重要なシーン」というポイントから外れてしまうだろう、という考え方に基づく。 実際に甲子園ボウルでの#10末吉君のキャリーは、トータル93ヤード平均4.7ヤードなので、キャリー回数は20回と算出できる。また、早稲田大学のランプレートータルは33回で、そのうち#10末吉君が20回なので約61%、つまり「重要なシーン」数値になる。(数値は、スポーツ新聞4誌より) ちなみに、リーグ戦および大学選手権の全プレーを対象にすると、早稲田大学ランプレー総数329回、うち、#10末吉君のランプレーは127回となって、全ランプレー数の39%にしかならない。 ただ、リーグ戦での1試合あたりのキャリー回数は7戦とも14〜16回の範囲に見事に収まっているので、なんらかの管理があったと考えるべきだろう。そして、法政大学との代表決定戦では21回のランキャリーで早稲田大学ランプレーの50%、つまり、2回に1回は#10末吉君のランプレーになる。重要なシーン・重要な試合になればなるほど#10末吉君のキャリー回数は増えていく。 ******** 今回の甲子園ボウルの焦点は、早稲田大学RB#10末吉君を立命館大学ディフェンスが止められるのだろうか、ここが大きなポイントとして、スポーツ新聞その他で取り上げられていた。 そのような観点からもsky−Aによる2試合の映像を見ていたのだが、確かに彼のキャリー回数は多く、1000ヤードラッシャーになるのもうなずける、そんなオフェンスプレー傾向だった。 ちなみに、立命館大学のランによるTD回数で上位57%に相当するラインは、#15谷口+#39川端+#27高野橋+#30北川までの4人になる。 オフェンスフォーメーションで言うと、QB#15谷口とTB1名(フォーメーションによってはTB2名)で、ディフェンス側がマークしなければならないランナーはフィールド内に常時2人存在することになる。さらにそのうち1名は、立命館大学固有の特徴だが、パスも投げられるRBである。(昨年、パスの投げられるRBとしてボヨヨン王国で紹介されたのは、関西大学QB原口君) では、ディフェンス側から見て、守りにくいのは、どちらのチームになるか、だが、普通に考えても同時に3パターンに対応しなければならない「立命館大学」タイプのほうが守りにくいという結論に達することに対して、おそらく、異論はないところと思う。 唯一の例外は、早稲田大学OLが立命館大学DLをコントロールしてRB#10末吉が走るランコースをこじ開け続けたとき。つまり、ライン戦で早稲田大学優位の時間が長く続くのであれば、「守りにくさ」という点でイーブン、引分に近くなる。 確かに、早稲田大学OL陣はsky−A映像でもブロックの精度がよく、さらにTEWR陣によるブロックも的確に決まっていて、RBの走路をきれいに確保していた。 このブロック精度に関する部分は、相手ディフェンスチームとの相対関係になるので、法政大学、あるいは、中央大学とは、このような結果だったが、立命館大学DLと対戦したときにどのようになるのか、この部分は、実際にあたってみないと(対戦してみないと)わかりにくい部分になる。 ******** したがって、甲子園ボウル展望としては、早稲田大学OLが立命館大学DLをコントロールしてRB#10末吉君のラン走路を確保し続けるのであれば「点の取り合い」。 反対に立命館大学DLが優勢ならば、焦点は立命館大学得点がどこまで伸びるか。そして、ここを検討するためには早稲田大学ディフェンスについて詳細を見ていくことになる。(実は、ここの詳細検討が欠けてしまっているので・・・展望が没になってしまった、というのも一部真実です) そして第1Q最初の早稲田大学オフェンスにおいて、ほとんどRB#10末吉君のランプレーが出なかったこと、立命館大学が束になってRB#10末吉君マークしてシャットアウトしていたこと、以上のことから、RB#10末吉君が走り回って得点を重ねる・・という選択肢は消滅し、焦点は、この立命館大学DL優位というライン戦の力関係がいつまで続くかという点に移った。 そして、第4Q、立命館大学が大幅にメンバー交代して初めてビッグゲインが生まれる、その時間帯までRB#10末吉君のランプレーを完封し続けたことになる。 ******** 甲子園ボウルの翌日、スポーツ新聞4誌を買ってみたのだが、立命館大学ディフェンス陣はRB#10末吉君に対して二の矢・三の矢で合計3人がマークするという徹底振りだったようだ。 ボールキャリー回数で全ランプレーの6割近くになるのであれば、2回に1回は確実に当たるので「宝くじ」でもなんでもない。もしも外れたならば三の矢の選手が修正すれば、ショートゲインで止めることは無理でも、ロングゲインを連発されることはないだろうという目論見はあったはずだ。 というように、立命館大学ディフェンス陣は、早稲田大学RB#10末吉君に対して、関西学生プレイオフ(西日本学生代表決定戦決勝戦)終了後のわずか数日で対策をしたことになる。 ******** ******** 6割近いキャリー回数のRBに対して、対戦相手となるディフェンスチームは、どのような策をとることになるか。関東学生Bブロックの各校には、どのような戦略があったのだろうか。 ライン戦でディフェンス優位にならなかったとして、LBDBが徹底マークすれば1プレー10ヤードゲインでFD更新することがあるかもしれないが、確率的に2回に1回はLBDBの考えたとおりになるので、それほどのゲインにはならないのではないか。 このようにリーグ戦での#10末吉君の数値を調べていて、東京大学ディフェンスだけが、他のチームと若干傾向が異なることに気付いた。 #10末吉君のキャリー回数は、他の対戦チームと同様に14回なのだがTDを獲得できていない。その他のチームからはコンスタントに2TD程度を奪っているのだが・・・。 さらに獲得ヤードも119ヤードまで、その次は明治・中央・立教の140ヤード台になるので、約25ヤードの開きがある。 このあたりは、数字上のお遊び、といわれればそれまで、なのだが。東京大学VS早稲田大学の試合を見ていれば、東京大学ディフェンスチームが何か変わったことをしていたのか、それとも単なるグラウンドコンディション等々(天候は晴れ)、その日の調子がたまたま悪かっただけなのか、判断できるのだが・・。 ******** ******** 1000ヤードラッシャーが生まれるということは、そのリーグにおける他チームのディフェンス陣に責任がある。全ディフェンスチームは、対策することもなく、走られまくっていたのを見ていただけ。もちろん各チーム毎に喪失ヤードは異なるから、それなりに、責任分担量は異なってくるのだが、少なくとも今回の早稲田大学の場合は、ほぼ均等に喪失ヤードを献上しているので、リーグ全体のディフェンスの責任、ということになる 1000ヤードラッシャーが一つのチームで同時に2名出現するのであれば、それは別の話。ディフェンス側としてはどちらを対応してよいかわからなくなる、という上記「立命館大学タイプ」の話になっていくのだが、このような優秀なランナーが同時期の同じチームに所属するというのは宝くじに当たるのと同じくらい天文学的な確率数字でしか起こりえない。 たとえ宝くじに当たったとしても2年間程度。卒業すれば元の木阿弥になるのであれば、ディフェンスを立て直す(フィジカル・システム両面で)ほうが長期的に見れば建設的なストーリーだと思います。 ******** もしも、今年の関東学生Bブロックの全ディフェンスチームが、RB#10末吉君対策を工夫していたならば、1000ヤードにはなっていなかったかもしれない。 しかし、相手ディフェンスの工夫に対して、RB#10末吉君は何かしらの対策を立てることになるから、トータルで見れば、ランテクニックに関して今のレベル以上になっているだろうことは、想像に難くない。だが実際は各ディフェンスチームが無策だったことで、成長する機会を損失したことになる。 ******** ******** 今年の甲子園ボウルの早稲田大学敗因をどこに求めるかだが、第一は、早稲田大学と対戦したチームのディフェンス、をあげておきたい。 早稲田大学OLのパワー不足・ブロックテクニックを挙げてもいいのだが、「2回に1回」という判りきった状態なので、OLはDLだけでなくLBやDBも完全に手中に収めなければならない。 同じ学生でありながら、OL5人で相手ディフェンス10人を完全コントロールするフィジカルを身に付けようとする試みは、時間的にも労力的にも効率が悪すぎる。他に解決策を求めたほうが効率的である。 もしも相手ディフェンスに工夫がないならば、2回に1回の確率を減少させるべく、他のRBを同じレベルまで成長させるべき、だろう。 1000ヤードラッシャー1名よりも、500ヤードラッシャー2名のほうが、相手ディフェンスにとっては脅威であることは、上でも示したとおり。そして600ヤード2名ならば完勝のはず。さらにリーディングレシーバー2名(1位と2位)が存在すれば、鬼に金棒。相手ディフェンスを憂えているだけでなく、それなりにオフェンスが工夫すればいい。 「#10末吉君のランテクニックが敗因」なんていう可笑しな結論には至っていないとは思いますが、老婆心ながら。 こんなことを考えながら観戦していた甲子園ボウルでした。 (了) |