大学選手権決勝 毎日甲子園ボウル



甲子園ボウル 



関西大学 秋の戦績  

○ 56−13 京都大学 CHART
○ 12− 0 神戸大学 CHART
○ 17−13 関西学院大学 CHART
○ 14− 7 立命館大学 CHART
○ 59−10 近畿大学 CHART
○ 46− 0 同志社大学 CHART
○ 44− 7 甲南大学 CHART

○ 42− 6 名城大学


4月19日 定期戦の結果

関西大学 0−36法政大学CHART

法政大学 秋の戦績  

○ 86− 6 一橋大学
○ 62−17 横浜国立大学
○ 42−14 東京大学
○ 56− 0 東海大学
○ 21−13 慶応義塾大学 CHART
○ 42−14 日本体育大学
○ 35−28 明治大学 CHART

○ 57−13 小樽商科大学
○ 38−11 早稲田大学 CHART








 第64回毎日甲子園ボウルは、今年から新設された全国8地区9校による全国大学選手権トーナメントの決勝戦として、東日本代表の法政大学と西日本代表の関西大学が対戦することになった。さらに改装なった甲子園球場へ3年ぶりにフィールドを戻しての開催となる。
 法政大学は2シーズン連続16回目の出場で、関西大学は61シーズンぶり3回目の出場、そして甲子園ボウルにおける法政大学と関西大学の対戦は初顔合わせになる。

 法政大学は2年前に日本大学に出場権を譲っているもののここ4年で3回出場していて、現在の4年生が1年生のときには改装前の甲子園フィールドにも足を踏み入れている。
 したがって昨年の「inNAGAI」含めて甲子園ボウル独特の雰囲気に対する経験は豊富にある。

 さらに甲子園ボウルは1Q15分で行われるので、1Q12分のリーグ戦から実質1Q分の試合時間延長になる。この点においても、法政大学は1992年以降では2002年を除く17回ものクラッシュボウル決勝戦出場を果たしていて1Q15分の試合におけるノウハウ蓄積量も相当なものがあるだろう。

 一方の関西大学現役選手にとっては、1Q15分の試合は始めてになる。関西大学チームが試合時間超過対策についていつごろから準備しているか外部の人間に知る由もないが、ここの経験の差は、見ておかなければならないポイントの一つにはなる。
 ただし、この経験不足な部分を関西大学が難なく乗り切る可能性も十分に考えられて、例えばリーグ戦では「京セラドーム大阪」という初めてのフィールドに急遽変更なっても普通に試合を行った実績があり、さらに板井ヘッドコーチ自身の京都大学以降様々な1Q15分の試合経験がチームに反映されるはず。なので、経験差はかなりのところで解消されるかもしれない。

********

 さて、今シーズンの両校ここまでの試合戦績をまとめてみたものが上記の表になる。

 関西大学についてはリーグ戦7戦全てを観戦しているが(大学選手権西日本代表決定戦VS名城大学、は、すみません。欠席しました。)、法政大学については今秋シーズンの試合を現地観戦していない。

 日程的には10月18日の法政大学VS慶應義塾大学の試合は東上して現地観戦できる状態にあったのだが、断念してしまった。その日の私の選択肢は、関東観戦/東海観戦/運転免許更新の3択になっていて、その後の関西学生DIV1の日程等々と相談の結果、運転免許の更新を選択したのだが、やはり、見ておくべきだったかなと後悔している。

 最近は様々な方法で関東の試合を映像で見ることが出来るようになって、大変ありがたいことである。だが、やはり、現地で空気を伝わってくる選手サイドラインの息遣いや温度・熱気とスピード感は、映像では絶対に伝わってこない。
 トータルでは一長二短ぐらいの思いなのだが、慶應義塾大学戦・明治大学戦・早稲田大学戦の3試合について映像を通して「観戦」してみた。その証の意味も含めてチャートを描いたので、上記リンクからアクセスしてみてください。

 この3試合はいずれも接戦になっていて、さらに2試合は第4Q終盤まで同点で推移していて、法政大学が逃げ切り用の得点を重ねてなんとか白星をもぎ取るという試合展開になっている。

 慶応義塾大学戦では、第4Q慶応義塾大学の自陣での攻撃でのパスを、法政大学がインターセプトしてエンドゾーン目前で攻撃権を獲得、このワンチャンスをモノにして8点差にリードを広げる展開。
 明治大学戦でも、第4Q終盤の明治大学第4Dパントでの痛恨のミスが効く。パンターがなんとかボールを蹴るものの法政大学が敵陣40ヤード付近での攻撃権を得ると、ビッグゲイン等々で勝ち越し得点に結び付けている。
 ただし、この勝ち越し点獲得後に、慶應明治両チームオフェンスの同点を狙った攻撃ドライブを許している。いずれも法政大学陣内にまで侵攻されてあわや同点かというところに迫られるものの、最後はディフェンス堅守でなんとか乗り切って白星となった。

 東日本代表決定戦となった早稲田大学戦は、得点上は法政大学優位の試合展開のように見えるが、早稲田大学が第1Qと第2Qに合計2TD14点取れるところを0点に終わってしまっているのが残念。
 第1QはRB末吉の中央突破60ヤードTDランプレーに対しておそらくはプレーと関係のないところのWRイリーガルフォーメーションによるTD取り消し、第2Q終盤にはWRDBが交錯しながらエンドゾーン内でDBに掻き出されてしまったロングTDパス失敗。この2回のうち1回でも成功していれば、後半の試合の流れは少し変わったかもしれない。

 この3試合を見ての法政大学攻守の印象は、オフェンスの粘りとワンチャンスをモノにできる集中力とプレー精度の高さ、ディフェンスはランディフェンスに少々の穴を感じなくはないが最後の集中力がすごい。そしてチーム全体にある一体感・信頼感。そして神頼みはチーム関係者にとっては失礼にあたるかもしれないが、ツキがあるという印象だ。

********

 この3試合の映像を通して見た法政大学攻守について、もう少し詳細に感じたところや注目ポイントを挙げてみると。

 まず、法政大学ディフェンスだが、特にフロントDLLBに対して過去甲子園での甲子園ボウル出場時ほどにはプレースピードと高さを感じない。ただし、映像を通じての感想であって、実際に現地観戦していれば違った印象を持つかもしれない。そして以降読み進めていただければ判っていただけると思うが、この法政大学ディフェンスフロントに対する判断が、今回の試合展望論調を大きく左右するキーポイントになってくる。ここが10月の1試合観戦していれば何か掴めたかもしれない、と後悔しているところになる。と、後悔していても先に進まないので、このような前提条件の下での話ということで進めていくと。

 映像観戦した3試合のチャートを作成してみたが、いずれの試合も対戦相手チームにかなりの前進を許していることがわかる。特にRBによる中央突破ランゲインに対しては1回5ヤード程度連続喪失しているシーンが多い。
 さらにLBも、QBドロップバックに対してパスと決めてかかるかのような動きがあり、QBのフェイク動作に対する反応速度は少し時間がかかるかもしれない。LBが残るように修正した試合もあるのだが、ドロープレーによる中央ラン突破とプレーアクションパスなど、プレーのバリエーションで振り回すだけでもある程度のゲインは見込めるのではないか、というイメージを持っている。
 さらに左右サイドラインロングパスのスピード競争やLBとDBの中間付近へレシーバーとボールが同時に達する高度なタイミングパスについてはオフェンス優位かもしれない。

 一方でオープンプレーに対しては、DB陣特にSの判断がよく、ランもパスも早い段階でタックルを受けることになりそうだ。レシーバーがショートレンジ位置でフリーであったとしても、DBにスピードがあるのでボール到達する頃にはDBに絡まれてキャッチできずやインターセプトなどもあり得る。

 全体的に見て、特にLBDB陣はオフェンスチームの複雑ないやらしいプレーバリエーションに対して十分に揉まれていないのではないかと感じるところがあって、まだまだ伸びシロのあるディフェンスチームという印象だ。リーグ戦で競った試合が増えれば解決しそう、というAB制度に関する部分になるのだが、それは別途。伸びシロ分が今回のここで伸びてくるかどうか。

 DBでは1年生DB(S)#12浅瀬のスピードに注目。他にDB(CB)#27竹腰、(S)#34坂口、DLではDE#44徳田、DE#59清原、LB#57鵜沼、#54佐藤、#8村瀬など。そして1Q15分の試合に重要なバックアップ交代メンバーだが、総じて選手層には厚さがありそうだ。

********

 今年の法政大学チームにおいて要注意要警戒なのは、やはりオフェンスチームだろう。

 RB#29原、#28堀のラン突破のスピードはやはり驚異的で、OTから外へ展開するプレーは一発でTDプレーになる可能性を秘めている。
 そのポイントは2ヶ所で、その1は当然のことだがスクリメージを抜けるとトップスピードに乗ること。つまり、OTプレーならばDLLBが正確なタックルで止めなければならない。オープンプレーにはLBとCBが同様にタックルの正確さが求められる。ここの反応遅れやミスタックルがあると、スピードとラン走路判断のいいランナーなので止まらないだろう。
 ポイントその2は、法政大学OLWR陣が的確にブロックしてくるプレーの緻密さにある。DBLBがスクリメージライン付近で最初のタックルをしようにもブロックされ、ダウンフィールドではキャリアの走路確保をされて、ディフェンス数人が弾き飛ばされている間にキャリアが走っていく。レシーバー陣のブロックの正確さとランナータレントの相乗効果によって、そのまま一発ロングゲインTDランになる。

 ただし、中央をOLラインパワーで押し込むようなパワープレーはほとんどない。OTから外へ展開するスタイルがメインなようなので、ディフェンス側から見ると、このあたりに打開策はあるかもしれない。

 RB#29原と#28堀がTBタイプであるのに対して、RB#99楠原はFB(UB)としてTBとして、そしてRB位置からショートパスタゲットレシーバーに変化するマルチな役割を果たす。プレー幅を広げるキャリアなので、どこかで必ず起用されることだろう。注目しておきたい。

 QBは#4山口と#18高島による。QB#4山口は、早稲田大学戦で何度か中央キープランもみられたが、あまり自分が持って走るタイプではないようだ。ただし、頻繁に交代出場してくるQB#18高島は自身のキープでも大きくゲインしてみようという決め打ちのキープが多い。

 WRでは#81栗原、#7宮本をメインターゲットに、#25森、#11河村、スピードのある1年生#19松永などが第3・4のターゲットになる。この中で要注目はWR#81栗原のスピードも然ることながら、FLインサイドレシーバーとしてセットするWR#7宮本は警戒が必要だ。IR特有のスキルと視野の広さがあって、様々なパスコースに器用に走り回る。フリーターゲットとしてフィールドで自由にさせると少々厄介かもしれない。
 さらに、ここまで随所に活躍していたWR#81栗原、#7宮本がディフェンスマークされたときに、WR#19松永のスピードとボールへの執着心がミラクルキャッチを生む。

 最後にQB#4山口の正確なパスコントロールも挙げておかなければならない。ディフェンスプレッシャーを受けながらも怯むところのない安定感のあるパサーである。

****************

 対する関西大学攻守についても今シーズンのスタイルを振り返っておくと。

 オフェンスはQB#14原口によるセットバックとショットガンスタイル。OLは、#75保呂、#69川西、#57大谷、#72西田、#66富永で3年生主体ながら経験とパワー豊富な面々が揃う。
 そしてOLパワーと、RB#22松森、#1藤森、#5播川、さらにRB#20有谷、#27藤井、#99楠田などによる、パワータイプスピードタイプ技巧派様々に揃ったランバリエーションによるラン攻撃と、WR#27高原、#7池井、#12森田、#16岡、#19堤、#24川田、TE#89青木への長短様々なパスというバランススタイルで攻撃を組み立てている。
 RB#1藤森のスピードランはリーグ戦でも独走TDプレーを繰り返していたが、#22松森、#5播川も同じタイプのランナーでスピードと視野の広さに大きな違いはない。ただしボディバランスやランレーンなど細かいところは3者3様の特徴があって、層の厚さを感じさせる。
 上記3人がTBタイプであるのに対して、RB#99楠田はFB(UB)としてTBとして、さらにその他に変化するマルチな役割を果たす。プレー幅を広げるキャリアなので、どこかで必ず起用されることだろう。注目しておきたい。

 そしてQB#14原口はFB体型の重量級ランナーとして重要な役を担い、ショットガンセットからのQBドローは関学戦・立命戦でも威力を発揮した。自らのキープランと、その裏になるドロップバックロールアウトからのパスでディフェンスを撹乱する。さらにセカンドQB#18井上も同じようプレースタイルでバックアップしている。

 関西大学オフェンスバックスは、上記のようにWRRBともに選手層試合経験とも豊富で、ローテーションで起用されている。怪我のバックアップの意味もあるが、来年以降のための経験という考え方もあるが、今回は相手ディフェンスに的を絞らせない多者多様のパフォーマンスが見られるはずだ。

 ディフェンスは、DL#90重近と#91杉原、#95水村、#98石田でスタートメンバーを組むことが多かったが、後半戦以降#93金原、#44田村などバックアップメンバーも活躍するシーンが増えて層が厚くなっている。中央付近のラン突破を許さない鉄壁ディフェンスを構成する。

 LBではILBに主将#33大舘、OLBを#2豊田と#11玉岡、さらにシーズン中盤までは#30小原がOLBとDB兼任していた。プレースピードとタックルの正確さが売りの第2列になる。LBもバックアップメンバーは揃っていて#31西口、#88谷など。DB陣は、#13林、#8飾磨、#6森本、#23飯野とLB兼任の#30小原、さらに1年生#9砂川、#32中村による。パスインターセプト数では関西学生DIV1でトップクラスになる。

 ディフェンスもオフェンス同様に各ポジションともに選手層が厚くて試合経験豊富で、おそらく1Q15分の試合でもローテーションしながら一定レベル保てるのではないだろうか。
 このディフェンスチームの特徴は、全体的に積極的なブリッツを仕掛けるほどの超攻撃的守備ではなく、どちらかというとプレー判断スピードとタックルの正確さがセールスポイントの守備陣になる。
 今春の定期戦で、法政大学オフェンスにバラバラにされた感が残っているはず。春とはディフェンス方針は変わっていて特にDBパスディフェンスは大きく様変わりしているので、注目したい。

 スペシャルチームではP#38佐野のコントロールパントと、今秋のFGキック成功率100%を誇るK#30小原の存在も注目しておきたい。
 K#30小原の今シーズン最長記録は44ヤードで、これを3回成功させている。そのうちの2回は、第2節神戸大学戦で0−0の同点のまま第3Qに突入した緊張の中で先制得点を叩き出し、第3節関西学院大学戦では第2Q残り0秒で追撃の狼煙を上げるキック成功で、試合後半に向けてチームを盛り上げた。いずれも試合の流れを変える値千金のキックだったが、甲子園でも重要なキックを任されることになるだろう。

********

 ところで今シーズンの関西大学は、開幕京都大学戦で大差勝利を収めると、第3節で関西学院大学、第4節で立命館大学を撃破して唯一全勝チームの位置に立つ。その後の3試合も勝利で関西学生リーグで優勝し、その勢いで西日本代表決定戦でも名城大学を粉砕してきた。
 この試合順序を見れば、関西大学リーグ戦の最大の山場が9月末〜10月上旬に巡ってきていること、春夏以降の全精力をこの時期に注ぎ込んで緊張感のある状態で山場の2戦白星を獲得していることは想像に難くない。
 その後の3試合も気の抜けない重要な試合ではあるのだが、第3・4節とは少し趣の異なる緊張感だったことは否定できない。実際、第5節以降では得点差の大きくなっている試合が多く、第6・7節ではつまらないミスが散見されている。

 今回出場の法政大学に限らず、立命関学日大と甲子園ボウルに出場するチームのほとんどが10月以降シーズンが深まるにつれて接戦が続くルートを辿る。これらのチームと比較すると、関西大学の緊張カーブは少し異なった曲線を描く。怪我人の調整や準備が出来る利点がある。マイナス面もなくはないが、さて・・。

****************

 という前提のもとに、この試合の展開予想だが、関西大学攻撃はランでもパスでもある程度はドライブできて得点も入るだろうと考えている。
 法政大学ディフェンスが明治大学と早稲田大学のRBにラン突破されたように、RB#5播川、#22松森、#1藤森が中央からOT付近まででランゲインを繰り返すことはできるだろう。
 ただし、中央ランプレーのためにOLパワーをどこまで充填する必要があるか否か。できることならばQBフェイク動作だけでディフェンスの隙間が作れることが理想だが、法政大学ディフェンスDLLBのパフォーマンスが、上記したように、よく判らないところになる。
 OLパワースタミナが必要ならば、試合終盤のキャッチアップな展開になったときに手詰まりになるか、1Q15分の影響が出てくる。反対に、それほどパワー消費せずに行けるのならば、試合後半終盤でも得点できるだろう。

 関西大学オフェンスはラン中心に時々豊富なWR陣へのパスという組み立て。ランドライブについては上記のとおり、さらにパスターゲットも豊富なので個人レベルではLBDB陣によるマークも甘くなってミドルパスヒットが続くか。トータルで、関西大学の得点は4TD+α程度を見積もっている。

 対する法政大学得点は、最小で2TDまでだが、最大は5〜6TD程度になる。つまり、この試合の勝敗を左右するポイントは、やはり法政大学ハイパーオフェンスと関西大学ディフェンスの攻防、になるだろう。
 これも上記したように、ランナーに対する関西大学ディフェンス最初のタックルの成否と、要注意レシーバー#7宮本、#19松永、#81栗原とDB陣の位置取り競争の成否。この2点が鍵を握る。
 そして関西大学ディフェンスが1Q15分のスタミナをどのように確保するか。関西大学攻撃がランゲインで時計を回せば・・・とか、いろいろ思いを巡らしていた2週間でした。

********

 2009年12月13日(日)新装なった阪神甲子園球場にて。
 天気予報では一応は晴れの予定ですが、改装前最後の甲子園では「12月の雷雨」もあったので、一応は、準備しておいたほうが良いかと思います。

 1985年(関学VS明治)以来24年ぶりのテレビによる生中継もありますが、3年ぶりに甲子園で行われる試合です。レフト側の並指定席でお待ちしています。


(了)