昨年は関西学生リーグ2連覇を達成し、さらに、6年ぶりの学生日本一となって正月を東京で迎えることができた。そして今年は、関西3連覇とチーム始めての2年連続ライスボウル出場、さらには、7年ぶりの社会人撃破に挑戦するシーズンとなる。
しかし今年のチームは、久しぶりにライスボウルまで出場したことで2008年体制開始が遅れたり、学生トップに立った昨年チームといろいろな面で比較されてしまうなど様々な功罪を引き継いでいて、選手の入れ替えがある学生チーム特有の苦しいシーズンを迎えることになる。
過去には2001年シーズンにライスボウルに出場したときも翌年のリーグ戦では苦労していて、今春の関東関西社会人の強豪チームとの試合で苦戦続き黒星続きというところにもその傾向が現れている。
と、最初から暗い話になってしまったが、チームとして始めての2年連続ライスボウル出場を目指すための産みの苦しみ、ということで、春の苦戦続きから夏を経て、秋には今年のチームカラーに染まって登場してくることだろうことは間違いない。
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オフェンスは、今年もショットガン隊形からのランパスという攻撃スタイルになりそうで、今春の試合ではQB#16加納が先発出場して、#12幸田、#17浅海、#6加藤などが試合後半を担当することが多かった。
今年スターターとなるQB#16加納は、NEBを筆頭にいくつかの試合ではパス失敗が続いたり判断に迷うシーンがあったが、その成否はパスタイミングや距離によって大きく異なっていて、ミドルレンジからショートレンジへとレシーバーとの距離が近づくにつれて成功確率が上がってくる。
短いパスだけでドライブすると決めたシリーズではヒット確率は高く、春最終の明治大学戦ではノーハドル含めてイメージどうりに試合を組み立てられたのではないだろうか。
つまり、単純に、もともと得意とする距離範囲と上達すべき距離ということになるのだろう。なおQB単独の問題ではなくレシーバーにも課題があるところである。
レシーバーは、ショートミドル範囲のパスターゲットとして#4太田と#19中井、ミドルロングのターゲットに#18萬代と#1松原、マルチな存在に#87柴田、というのが大雑把な距離分担だが、これが全てではない。その他のレシーバーとしてTE#82中山、#95垣内、WR#86春日など、選手層は分厚い。この中では#4太田や#18萬代が際どいパスも執念深く拾い上げていたところが記憶に残る。今春は全般にQBWR間が不調だったが、秋リーグ戦中に今年のパススタイルが確立していくことになる。
RBには#45石田、#21稲毛、#33多田羅、#27浅谷、#99河原、#38平田、さらに、1年生松岡など、タイプの違う人材が豊富で、ボディバランスのいい#99河原と#38平田、スピードランナーとしては#21稲毛と松岡など。スピードだけならば軽量の松岡のほうが速そうだが、それは3年前のデビュー当時の#21稲毛についても言えたことである。1年生のスピードランテクニックを
なお、パワーランナーの担い手として期待したい選手に負傷者が多いところが気掛かりで、復帰なればオフェンスの幅が大きく広がることは間違いないのだが、ゲームプランを大きく左右することになるだろう。
オフェンス起点となるOLでは#76寥が唯一昨年のスターターメンバーから残る。さらに#50新谷、#58島田も昨年から交替出場していて試合経験は多い。また、#57荒牧が2年ぶりにOLに復帰し、今春からスターターとなったC#74村田も安定している。今春試合では相手に圧倒完全勝利というほどのパワフルラインではないが、昨年同様に安定したライン構成になっている。
以上の布陣による今年の目指すところのオフェンススタイルだが、秋リーグ戦でどこまで余裕があるかわからないが、リーグ戦中でも春の試合と同様の試合展開が繰り広げられながら、時にはインターセプトされることもあるかもしれないがミドルレンジ以上のパスを適度に組み込みながら、その中から成長ストーリーを探っていくことになるだろう。
ところで、最近の甲子園ボウルや立命館大学戦では、ショートヤードなど特徴的なシチュエーションでQBを交代させたりRBをワンポイント投入することが多くなっている。そして今年も場面に合わせたスペシャリストの起用はあるのではないか。バックアップQBとしては#12幸田、#17浅海、#6加藤が控えている。RBは上記したメンバーから状況に合わせて交替出場することになる。
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ディフェンスは、フォーメーションとしては昨年同様3−4−4を基本にDBLBを兼任するフリーマン1名のスタイルになっている。各ポジションとも昨年メンバーから若干の入れ替えはあるものの大きなマイナスはなく、選手層の厚さと試合経験は豊富で、いずれのポジションも概ね安定感はある。
ただし、この数年間でタックルの正確性が大きく失われているところが気掛かりなポイントである。これは関西学院大学固有のことではなく、昨年甲子園ボウルで日本大学ディフェンスによる一発で止める的確で鋭いタックルを見た関西陣営には大きな衝撃が走ったはず。
その正確なタックルを身体で体験した唯一の関西チームが関西学院大学なので、それが今年のタックルの姿勢に反映されていることを希望します。
今年の関西学院大学ディフェンスの中では主将DL#93早川の存在が秀逸で、今春の試合でDL#93早川がフィールド内にいるときとサイドラインに控えているときのディフェンスの安定感が大きく違っていた。DLの中心NGに安定感のある選手が配置されるだけで、こんなにもディフェンスの雰囲気とパフォーマンスが変わるのかということを改めて実感した次第です。(次代のNGとの差が大きいということでもあるのだが)。
その他にDL(DT)には#98黒澤、#52平澤、#51川島、#91村上など。重量感というよりもスピードタイプで、久しぶりに破壊屋のイメージのあるフロントラインとなった。
LBは#7坂戸、#90古下、そして日本大学戦で値千金のQBサックを決めた#59吉川と神戸ボウルで堅守を披露した#29畑中。絶妙なプレー判断でビッグプレーを繰り返している#11深川は、今春もOLBとDBを兼任していたが、メンバーの成長と来年以降のことを考えるとDB専任になる可能性もある。
DB(S)は#84徳井、#8善元、#3藤井が最終ラインをカバーするが、DB#84徳井の守備範囲の広さは昨年来実証済みである。CBは#20福田、#23頼本、#28三木、#25吉川、#10内藤、#46西岡が春の試合で先発出場していて、メンバーは豊富だが、この中から最終的にはパスカバーとタックルの正確さでポジションが決定されていくことになるのではないか。
以上のディフェンス陣は、ディフェンスフォーメーションの中心線となるDL(NG)#93早川、ILB#90古下、DB(S)#84徳井が安定している。昨年とほぼ同じ中心線だが2年目を迎えて円熟味が増している。さらにスピードも備わっているので、ディフェンスで試合の流れを作り出すことも出来る、そのような布陣である。
しかし、ランで中央付近を割られ続けるシーンがあり、ズルズルいかれると止まらない時がある。中心線が崩れるとディフェンスの建て直しに時間がかかるのは、上記の「中心線が安定している」ことの裏返しでもある。これまではDB#11深川によるプレー判断が窮地を救うことが多かったが、ズルズルと後退する時間と距離がどの程度で収まるかがポイントで、ここが試合の行方を分ける可能性も残る。
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今年の関西学院大学攻守チームは、ディフェンスが春の段階でほぼ安定した布陣になっているが、オフェンスは形が整いつつあるものの細かい様々なところは試行錯誤状態が続いている。
したがって、シーズンインしてからも最終的な攻撃スタイルをいろいろと模索していくことになるだろう。もっとも、リーグ前半戦だからといって余裕がある対戦相手ではないので、途中にはロースコアの試合展開が多くなるかもしれない。しかし、この期間に攻守の最終確認を行ってシーズン後半戦に突き進みたいところ。関西3連覇なるかは、リーグ戦序盤の試合にかかっているような感じがする。
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