昨年は、甲子園ボウルから遠ざかって4年。それを打破しなければならない、という大きな枷・目標があった。それ自体でプレッシャーであったには違いない。
今年はそのプレッシャーから開放された、とも言えるのだが、それはチームスタッフの最上層部のみのことで、現役選手にとっては、やはり、今年の目標も甲子園出場・勝利とライスボウルでの日本一獲得であり、そのためには、昨年と同じ数の白星が必要なことに変わりはない。つまり、昨年となんら状況は変わっていないのである
春の試合は、4月に関東の大学に対して1敗1分と白星なく不穏なシーズンインだったのだが、日を重ねるごとに、コンビネーションが確立されていくと、その後は安定感のある試合を繰り広げて行った。
攻守ともに昨年から経験のあるメンバーが多いこともあって短期間で、コンビネーション確立というよりは本来のパフォーマンスを取り戻したといことなのかもしれない。
********
オフェンスは、今年もショットガンスタイルからのランパスという組み立てになる。そのQBには、4年生#9三原、3年生#12幸田、#16加納が春の試合で起用されている。
QB#9三原は5月以降はほぼ全シリーズで得点を挙げるというパーフェクトな成績を残しており、オフェンス完成度という点ではリーグ戦他校でも群を抜いている。
ただし、ディフェンスから強烈なプレッシャーを受けたときの回避策や対応方法を見る機会がなかったことが、気掛かりではある。社会人松下電工との試合が麻疹騒動によって辞退せざるを得なかったことは、チーム運営上はマイナスだったかもしれない。
今春のオフェンススタイルは、冒頭に記したようにショットガンフォーメーションからのランパスではあるのだが、OLゴリ押しの中央ラン突破ランなどの極めてオーソドックスなプレーに徹した試合もあれば、昨年のようにWRモーションやRBへのショベルQBスクランブルとバックスが、時間軸含めて縦横に自由に動き回るテクニックに凝った試合もありで、様々なテーマに取り組んだ春という感じがした。
ただし、一点だけ特筆するとすれば、昨年まではスピード系重視の傾向があったが、今年はRB#45石田による中央パワープレーを試みているようにパワーフットボールの面が加わるかもしれないという点である。
なお、今春の試合では、QBは3人、RBWRは4年生から新人まで多数起用されている。つまり、個人毎に見れば1試合でのプレー数は極めて少ない。そのために、各自アピールのためにも絶対にゲインしなければならないというプレッシャーがかかった状態でプレーしていたことになる。昨年の甲子園ボウルでも見せたように、今春も、全員フットボールを狙っているようだ。
したがって、各ポジションの代表選手もなかなか挙げにくいところがあるのだが、とりあえずは下記メンバーをマークしておくと、秋リーグ戦の観戦に役に立つかもしれません。
QBは、#9三原、#12幸田、#16加納、RB#45石田、#21稲毛、#38平田、#27浅谷、WR#1岸、#81榊原、#85秋山、#86水原、#18萬代、#82中山、#19中井、#87柴田、#4太田、#88松原。
OLだけは#72中山、#75福田、#76廖、#55岡田、#52上村によるほぼ不動のメンバーであった。
********
一方、ディフェンスは、私が観戦した試合限定だが、DLLBDB各ポジションともほぼ固定メンバーで試合に臨んでいる。過去には、春の試合でも後半に若手メンバーを起用する余裕を見せていたが、近年は春もスタメンがフル出場する試合が多くなっている。
その半固定メンバーは、DL#51川島、#98黒澤、#93早川、#97國方。LB#56佐藤、#90古下、#7坂戸。DB#3藤本、#11深川、#28山本、#44笠原、#84徳井、#8泊という布陣である。
この中で特筆すべきは、守備範囲の広いILB#56佐藤と、判断のいいスピードのあるDB(S)#84徳井。メンバー表を改めて見直したのだが、#84徳井はまだ3年生でありながら関西トップ級のDB(S)になりつつある。
このディフェンス陣は、DL3人、LB3人、DB5人で配されることが多い。もっとも5人目のDBである#11深川は、LBともとれるポジションに位置し、実質は、3−3.5−4.5という人員配置になっていて、パス守備強化とともにランプレーにも対応と言う重責を担っている。
今年のディフェンス陣で不安な点をいくつかあげると、中央突破ランで中を抜かれ始めると止まらなくなってしまい、ロングドライブを許すことにある。スピード系のランプレーでも中央を大きく割られてしまうことがあり、試合の流れが変わってしまう可能性が残っている。
また、守備の基本思想としてショートパスを許してもロングパスは許さないという方針なのだろうが、ショートパスは捕られてもかまわないという姿勢が、パスキャッチ後のタックルミスに繋がっているように見受けられるシーンがあった。
********
今年は、冒頭に記したように、昨年からのメンバーが多く残っていることもあって、OL・DLとも春の早い段階でベストの布陣を組むことが出来た。
特にOLは、シーズンインしてもメンバーが決まらなかった昨年と比較すると、早い段階で形が決まったために、様々なバリエーションプレーを試みるところまで手を広げることが出来ており、昨年の今の時点と比較すると完成度は高い。
しかし、反対の意味で捕らえると、今年はこれ以上の飛躍的な成長は見込めないかもしれない、ある程度の上限が見えたということにもなる。特にDLは、中央付近をランプレーで突破されるてしまう傾向にあるが、根本的な変更がなければ解消しないかもしれないということに繋がる。
このような今年の特徴を踏まえてシーズンインすることになるが、今年は、オフェンスから試合を作っていくスタイルのチームになりそうだ。したがって、理想的な試合展開は「先行逃げ切り」になるだろう。
その正反対の試合展開は、オフェンスが自由にさせてもらえない試合、ということになる。4月の日本大学戦や日本体育大学戦、6月の関西大学戦でも少しそのようなシーンが垣間見えた。
ディフェンスが序盤に崩れて失点を許し、オフェンス追い上げが必要なときに、相手ディフェンスがどの程度プレスが厳しいか、その厳しいプレッシャーを受けたときにオフェンスが回避できるかどうか。関西学院大学の試合観戦ポイントはこのあたりにありそうだ。
************************
|