東西大学王座決定戦 毎日甲子園ボウル



甲子園ボウル 




 第62回甲子園ボウルは、18年ぶりに関西学院大学と日本大学の対決となった。甲子園球場ではなく長居陸上競技場での開催となるのだが「冬の赤と青」の対決であることに違いは無い。春には定期戦を行っているのでお互いに手の内を知らない間柄ではないのだが、春の試合と冬のベストコンディションでの試合では全く異なる。シーズンベストの日本大学を関西に迎えるのは実に17年ぶりとなる。

 近年の甲子園ボウル出場校は、関西代表が関西学院大学と立命館大学のどちらかが出場しており回数的にもほぼ互角、一方の関東代表はここ10年で法政大学が9回出場と圧倒的な強さを見せており、甲子園ボウルではオレンジが暴れまわることが半ば固定化された姿になっていた。

 そして今年は日本大学が関東代表になったことで、新鮮味のある対戦カードとなった。

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 今年の関西学院大学は、4月に日本大学に敗戦・日本体育大学に引き分けという黒星先行のスタートとなったが、その後は白星を順調に重ねつつ、突然、麻疹に見舞われて社会人との対戦が消滅するなど、波乱の春シーズンを送っている。

 オフェンス春は、パワープレーを志向した試合、スピードとテクニックを志向した試合と分かれたが、最終的には今年もバックス陣が縦横に動き回るスタイルとなっている。

 OLは、春後半には今年のメンバーが固まってフル装備の試合をこなしているところを観戦した。ただしリーグ戦を通じてここまで主力メンバーの交代がない。これは主力メンバーが突出しているという見方もできるが、その分だけ層が薄いとも言える。

 オフェンスバックスでは、やはり特筆すべきはQB#9三原が春から順調完璧なパフォーマンスを展開し、そのまま秋リーグ戦も通過してきていることであろう。QBの成績を示す指標でもダントツ1位で2年連続で関西学生最優秀選手となっている。

 なお、RBWR陣はリーグ戦でも様々なメンバーが交代出場してきており、レシーバーで10人以上、ランナーでも10人近くの名前が挙がるので列挙は割愛したい。強いて挙げるならばWR#85秋山、#1岸。RB#99河原など、だが。

 ただし、昨年の甲子園ボウルで、WRRBバックス陣は1人1プレーという選手が多数出場している。4年生から1年生まで全選手に何らかの役割が与えられていて、それだけは絶対にゲインすること、というプレー投入だったように感じた。
 つまり、本当の全員フットボールになっていて少数のプレーヤーの中だけでプレーを繰り返すことをしていない。

 そして、おそらく今年も同様のスタイルになるだろうことは、春からのオフェンスの取り組みを見ても明白であろう。だからWRRB多数の名前が挙がることになる。
 例えば、立命館大学戦では#16加納がワンポイントQBで起用されていたが、シーズン中はWRRBPも経験しており、この試合でもどこに起用されるかは不明。そして他のポジションも同様に4年生から1年生まで誰もが主役になるはず。

 課題を挙げるとすれば、やはり、OLか。関西リーグ戦ではほぼ完璧パフォーマンスのOL陣だったが、立命館大学DLに対しては徐々に機能しなくなっていき、試合後半にはQB三原にDLの手がかかるようになってしまった。
 今シーズンここまでラインが押し込まれた経験が少なく、最終戦以外を順調にこなしてきていたこともあって、日本大学DL陣と対峙したときに、QB含めたオフェンス陣がどのように切り抜けようとするか。精神面含めて少々気掛かりなポイントである。

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 一方の関西学院大学ディフェンスは、4月の段階でほぼベストメンバーが決定していて、そのメンバーで1試合をこなすことが多かった。オフェンスが多彩なメンバーを起用していることを見れば双極にある。

 そして、秋リーグ戦終盤でも4月の段階と基本的な部分では大きな変化が見られなかったように思う。春の試合で垣間見えた不安が程度の差こそあれ、秋にもそのまま残っていそうな予感はあった。

 その一つが中央付近のランプレーに対してミドルゲインを許し続けていることで、立命館大学戦ではあわやのシーンに繋がってしまった。関西学生リーグ戦ではこのウイークポイントを積極的に・執拗に突くチームが無かったことが不思議だが、関西学院大学にとっては幸いだった。

 ただ選手起用としてはOLBが内へランキャリアを誘い込み、ランで外を回らせない、インサイド突破のランに対してDB(S)が仕留める、DB(CB)はパスに専念するという基本思想はある。インサイドラン1回10ヤードは走られすぎではあるが。

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 さて、17年ぶりに冬の関西に姿を現す日本大学だが、私が観戦した秋の試合は、先日の関東大学選手権を観戦したのみ。4月の関西学院大学戦、6月末の京都大学戦も観戦しているが、特に6月末には若い選手も多数起用していたこともあって、あまり印象に残っていない。

 オフェンスはQB#10木村によるショットガン、ただし先日の関東大学選手権で負傷してしまい、その後は#12平本がQBとして出場している。両QBの間でランパスバランスやタイミングに若干の違いがありそうだが、それがどのような結果になるかはやってみないとわからない。

 オフェンスバックスとしては、テクニックランナーRB#21金と、パスターゲット#25小嶋、#22松林、#23秋山、#80中村など。
 まず、パスについてはレシーバーのボールへの執着心が半端ではない。最後まで諦めることなく捨て身のジャンピングキャッチによって、コントロールの乱れを吸収してしまう幅の広いターゲットになっている。
 パス距離はミドルレンジまででキャッチ後にランゲインできればというスタイルで、サイドライン際へのショートパスから中央のクロスパターン、そして時々縦ミドルも加わる。クロスパターンのパス、つまり、右WRの左へのクロス、あるいはその逆をレシーバーが走るコースは、RB#21金の中央突破ランとの兼ね合いでDB(S)にプレッシャーがかかるプレーになるだろう。

 そして圧巻は大型OLとRB#21金によるインサイドランプレーである。RB#21金は大型ラインが開ける空間を抜けるランではボディバランスもよく秀逸で、走路を見つける視野の広さも併せ持つ好ランナーである。ラインも#70高崎、#57福元、#54山辺、#50越後谷、#52高橋という100kg超の大型サイズでありながら機動力も備わっている。

 ただし一つだけ不安に感じたところは、ランナーが#21金の1名だけというところである。ディフェンス側から見ると、ライン戦との兼ね合いもあるが、徹底マークすればもしかしたら対応できる??このオンリーランナーでも判っていても止められないということがある一方で、もしも対応されたときに、その次の手があるか否か。春の京都大学戦では若手のランナーが起用をされていたのでランナー不在ということはないだろうが、ひとつのキーポイントではある。

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 一方のディフェンスだが、DLに3人を配してその後ろは3−5を基本にフリースタイルになっている。そしてフロントDE#92鈴木、DT#99一木、#90小宮のサイズとスピードのアンバランス、LB#8長島の守備範囲の広さが驚異的である。

 DBのパスディフェンスは法政大学との試合前半で機能しなかったのだが、後半には少しずつターゲットパスコースにアジャストできるようになっていた。基本的にDB5人配置でスターターには#27伊東、#2石川、#7矢野などが並ぶが、他にも複数名の選手が交互に出場していて2ユニットは構成できそうだ。これはDLについても同様で選手層の厚さを伺わせうる。

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 さて関西学院大学オフェンスと日本大学ディフェンスの攻防だが、試合序盤に関西学院大学が繰り出すであろう、ショベルやスクリーンやスローバックパス、モーションカウンター等々の様々なトリッキーなプレーに対して日本大学がいつの時点で対応できるようになるか。
 パスディフェンスがレシーバーにアジャストするまでの失点をどこまで抑えられるか、そして、DLのプレッシャーがQB#9三原に届いてパスが止まるまでにどの程度の時間を要するか。

 全ての起点となる関西学院大学OLと日本大学DLのライン戦の結果だが、均衡状態に変化が現れる時間帯がどこになるか試合の流れを大きく左右する。

 まずは日本大学LBDBが、モーションプレーなどの複雑な動きに対して、ボールキャリアを見失わないことが大きなポイントになりそうだ。LB#8長島、DB#7矢野など守備範囲の広いバックスの動きに注目したい。

 おそらく関西学院大学側は、立命館大学戦同様の先攻逃げ切りを臨むところだろうが、1Q15分の試合であり、オフェンス側が追い詰められる時間というのがある程度の時間帯でやってくるのではないかと考えている。そのときにどのような回避策打開策があるか否か。

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 一方の日本大学オフェンスと関西学院大学ディフェンスの対決だが、ここは、やはり日本大学OL+RB#21金によるインサイドラン突破を関西学院大学ディフェンスが対応できるかが大きなポイントになるのは言うまでもない。
 ただし、日本大学はランから入ってパスに広げるか、それともパスである程度見極めてからランを繰り出すか、このあたりのゲームプランは、負傷したQBの復帰量にかかわってくる。

 関西学院大学ディフェンススタイルから判断すると、早いタイミングでのサイドライン際へのショートヤードパスは半ば捨てているところがある。しかし、日本大学のこのポイントへのパス精度は高い。ターゲットは、WR#25小嶋、#22松林、#23秋山、#19星野など。いつまでもゲインを許せば、それはレッドゾーンに侵入されることにつながる。
 もうひとつのクロスパターンのパスコースは厄介で、左右レシーバーが急角度で内側に切れ込むのでDBが振られるあるいはマークが外れてしまう可能性が高い。
 関西学院大学ディフェンスDB陣#84徳井、#3藤井などの視点に立つと、中央付近を抜けてくるRB#21金のランプレーとの両方をケアしなければならなり、ランフェイクのパス(プレーアクションパス)と、パスフェイクのラン(ドロー)によって振り回されたときに運動量スタミナ面が気掛かりになる。
 関西学院大学側としては、できればDLLB段階でランプレーに対応しておきたいところだが、今春からのウイークポイントでもある。

 さて日本大学RB#21金WR#25小嶋などによるランパスが止まるとすれば、それは、不吉な話で申し訳ないのだが、RB#21金が負傷したとき?バックアップランナーは誰だろうか。関東大学選手権でも「オンリーランナー」の様子だったのだが。

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 おそらくこの試合は、どちらの勝利であっても5TDで足りるだろうかというハイスコアリングゲーム、点の取り合いの試合になるのではないだろうか。

 ただしライン戦の結果で攻撃が止まってしまうのが関西学院大学オフェンスで、止まらないのは日本大学オフェンスというのが戦前予想です。少なくとも単純なオフェンスによる得点だけならば日本大学側が優位かもしれない。

 その大量得点大量失点の応酬の中で勘所を掴んだディフェンスが勝利を引きずり込む、それが日本大学ディフェンスが先か、関西学院大学ディフェンスアジャストが早いか、これが一つのポイントになる。

 そうしてもうひとつは、止まってしまいそうな関西学院大学オフェンスがそこに細工を重ねて何かしらの方法で得点を重ねていくことができるか。
 関西学院大学オフェンスの印象に残っている通常でないプレー、昨年甲子園ではQBスニークファンブルフェイクのTEパスがあり、立命館大学戦でもスローバック系のパスが頻出した。対する日本大学ディフェンスはボールキャリアを見失わない広い視野が保てるか。

 両チームとも総力戦、そして最後に効くのは勝利への執念でしかない。練習量に裏付けされた高いレベルで繰り広げられる試合になる。

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 18年ぶりの赤と青の対決。この試合で関西学院大学が勝利ならば、甲子園ボウルでの対日本大学では1977年以来30年ぶりのこととなる。そして、日本大学勝利ならば17年ぶりの大学王座にたどり着くことになる。

 両チームともに出場記録勝利記録で2桁の数値が並ぶので現役選手およびチーム関係者にとって周囲の喧騒は想像以上だったことだろう。
 私も甲子園での赤と青の対決を見て育った一人だが、つねに赤がオーバーパワーしていて、関西学院大学が勝利した試合を知らない。アメリカンフットボールのテレビ中継で記憶に残っている最初のシーンは、画面左上にあった63−7(1978年)という圧倒的な点差の映像です。1984年に42−42で引き分けたことがとても大きな出来事だったことに今回はじめて気がつきました。

 大きな数値を断ち切って新たなスタートとなる第62回甲子園ボウル、熱戦を期待します。

(了)