東西大学王座決定戦 毎日甲子園ボウル



甲子園ボウル 



12月16日(日) 長居陸上競技場 13:00
チーム名1Q2Q3Q4Q合計
関西学院大学010102141
日本大学7372138
(現地観戦)
 
関西学院大学
日本大学
1Q
1Q TD
TD 2Q
FG
FG
G× 2Q
3Q
FG
TD
TD 3Q
4Q
TD
RTD
TD
TD
TD
TD
4Q REND
(作者Aのメモより)
AK-CHART
AK-CHARTの見方


 第62回甲子園ボウルは18年ぶりに関西学院大学と日本大学の対戦となった。試合は序盤はディフェンシィブでロースコアのまま経過したが、後半は徐々に点の取り合いとなり、第3Q以降だけで逆転シーン6回という白熱した攻防が繰り広げられていく。そして試合終了6秒前までは日本大学がリードしていた。

 残り6秒、関西学院大学の攻撃は日本大学陣1ヤードで第4D。このプレーが進んでいなかったらそのまま日本大学の勝利が確実だった。
 しかし、関西学院大学RB#2横山による中央突破のスライディングダイブがエンドゾーンに届いて試合終了間際に逆転、主導権があっちにもこっちにも転がる大接戦は、この得点が両チームの最終得点となったことで関西学院大学に6年ぶり23回目の甲子園ボウル勝利が転がり込んだ。

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 試合序盤は予想に反してロースコアの展開となった。

 関西学院大学オフェンスは序盤から日本大学ディフェンスの強烈なプレッシャーを受けてゲインがほとんど出来ない状態、オフェンス手詰まり状態からのスタートとなる。
 ショベルパスを何度か試みるもののスクリメージライン付近で日本大学DL#99一木、#92鈴木、#90小宮、LB#8長島などに完璧に対応されてシャットアウト状態が続く。
 パスはQB#9三原にDL#99一木、#92鈴木のプレッシャーが届いて投げる時間的余裕がなく、投げるタイミングを逸する、コントロールを乱す等々、関西学生リーグでここまで追い詰められた試合はなかった。

 DLの厳しいプレッシャーを掻い潜ってパスヒットする機会が少しだけあるのだが、早いタイミングのショートパスは、パスキャッチと同時にLBDBのタックルが飛んできてプレーデッドとなてしまう。
 DBLBの中間へのミドルパスだけはある程度のゲインにつながるのだが、これもDBの反応タイミングによってはパスカットされることもあって確実性はない。

 関西学院大学オフェンスは、コンスタントにゲインできる攻撃手段が消滅していた。

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 一方の日本大学オフェンスは、QB#10木村が負傷欠場となり、QB#12平本がショットガンの司令塔を担う。しかし、RB#21金によるランプレーはゲインするものの、WR#25小嶋、#19星野などへのパスコントロールが乱れ気味、あるいは、DLプレッシャからの回避に不安なところがあった。

 もっとも、試合前半は、ランとパスとどちらでオフェンスを組み立てるかの検討と、そして、関西学院大学ディフェンスの力関係を計ることに重点を置きつつ、その中で得点を重ねて行くというスタイルというほうが正しいかもしれない。

 そして試合序盤からミドルゲインを繰り返したRB#21金によるランプレーが前半のキラープレーとなっていく。OLブロックと視野の広さでランコースを判断してスクリメージを抜けていく。最終タックラーはほとんどDB担当となるので、ゲインは大きい。

 日本大学オフェンス第1シリーズ、RB#21金が中央突破から左オープンへ抜けたランプレーは、関西学院大学側の反則がなければTDプレーだったかもしれない。

 そして、日本大学3回目の攻撃は自陣10ヤードから。RB#21金にスクリーンパスのようなショートパスがヒットすると、見事なボディバランスとステップワークでディフェンス陣を翻弄、さらに驚異的な加速スピードで追いすがるDBを振りほどいて84ヤードのTDランを決めた。

 驚異的なRBの存在と、関西学院大学の攻撃を完封しているディフェンスと。関西人にとっては、日本大学攻守の全貌が見えてきたとともに、関西学院大学の対戦相手がとてつもない強敵であることを、改めて、認識した瞬間だった。



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 先制点を奪われた関西学院大学だったが、#99河原による44ヤードのキックリターンによって敵陣スタートとなったことでチャンスが生まれた。

 この時間帯の関西学院大学オフェンスは、日本大学ディフェンスの強烈なプレッシャーを受けるなかで効果的なプレーはないかと、様々なプレーを投入していく段階だった。したがって、このビッグリターンは、プレー効果を測定しつつ得点につなげられるかもという点で、ビッグプレーと言えるだろう。

 敵陣41ヤード、左WR#85秋山インサイドミドルパス24ヤードがヒット、さらにRB#21稲毛のカウンター右オープン15ヤードとミドルゲイン2回で敵陣エンドゾーン前1ヤードに到達、そして、ここで第1Qが終了する。サイドチェンジのための時間ができたことは、どちらのチームに優位に働いただろうか。

 関西学院大学は第2Q最初のプレーでRB#2横山の中央突破ランで同点とした。

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 続く日本大学の攻撃は自陣から。ここで第1Qの早い段階で一旦は封印したクイックパスを試みるが、関西学院大学LB#11深川とDB#84徳井に連続でインターセプトを喫してしまう。ミドルレンジとショートレンジのパスだったが、ターゲットが見た目には判らないクイックパスに対するディフェンスの反応が良かった。

 しかし、関西学院大学オフェンスは2回のターンオーバーをFD更新すらできない。1回目は第4Dで日本大学ラフィングザキッカーの反則からFD更新しているが、そこでも10ヤードに至らず。2回目はミドルゲインプレーが反則で無効に。

 結局、フィールドポジションの良かった2回目をFG3点につなげるのだが、関西学院大学オフェンスをシャットアウトした日本大学ディフェンスの驚異を改めて認識したシリーズとなる。

 ただし、関西学院大学オフェンスにとっても今後に繋がる貴重な攻撃機会だったのではないだろうか。
 反則で無効になったが、QB#17浅海のオープンスイープがミドルゲインになる可能性を知り、反則罰退後のQB#9三原スクランブルドローも5ヤード以上のゲインとなっている。QBラン突破の可能性を見出したかもしれない。



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 関西学院大学10点。日本大学7点。第2Q残り時間5分27秒。

 自陣19ヤードスタートとなった日本大学オフェンスは、WR#84吉田への短いパスとRB#21金のラン、ラフィングザパサーの反則も加わったが、敵陣25ヤードまでの距離56ヤードを進むのにFD更新4回を要する。

 確実に前進するためにショートヤードのプレーを繰り返した結果であって、これまでの他のシリーズとは少し傾向が異なるプレー選択には、試合前半を同点あるいはリードして終わらせたいという日本大学の意図が見える。このオフェンスシリーズが、この日の日本大学の最長時間ドライブ(4分20秒)となった。

 一方で関西学院大学ディフェンスも25ヤードまで攻め込まれながら堅守で窮地を脱する。RB#21金のオープンランに対してDB#84徳井が対応、さらにCB#3藤本によるミドルパスカットなどで日本大学に逆転のTDを与えなかった。

 日本大学第4D。ゴールポストまでの距離42ヤードは簡単ではない。さらに、決まれば同点という2個のプレッシャーのかかるシチュエーションの中でK#80中村が3点を獲得、同点とした。

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 第2Q残り1分02秒。得点はイーブン。関西学院大学攻撃は自陣28ヤードスタート。

 この時間と、この得点と、このフィールドポジションならばニーダウンで時間消費でもよかった。のだが、このシリーズは、後から振り返ってみると、いろいろと興味深いシリーズだった。

 第1Dクイックパスはコントロールミスで失敗。第2Dではロングパス失敗。関京戦でも第2Q最後にロングパスに固執したシリーズがあったがそれと同じで、通れば儲け物のようなロングパスだった。したがって第3DはFD更新まで10ヤードを残すシチュエーション。残り時間は50秒台??。

 第3D、QB#9三原がパス狙いからのスクランブルドロー、中央を縦に突っ込んだ。

 本来なら、この時間帯、このフィールドポジションでするようなプレーではない。「なんで、ここで」「怪我をしたらどうするの?」と疑問に思ったのだが。

 ただ、後で観戦メモを見ながら振り返ってみて判ったことだが、ここまでの関西学院大学オフェンスのプレーの中でゲインできる可能性があったものが、このQBランとRBのカウンターによるオープンランだった。
 したがって、この第3Dのドローランは、走れることを確認するという意図したところがあったのかもしれない。

 このシリーズ、最終的には第4Dでニーダウン、パントを蹴らずにしてハーフタイムを迎えた。



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 前半のスコアは10−10の同点で終わる。もう少しハイスコアリングゲームになるのではないかと予想していたので、すこし拍子抜けしてしまったというところと、後半の試合展開が読めなくなってしまった、とういのが正直なところです。

 ロースコアになった要因だが、関西学院大学側は、関西学生リーグ戦でゲインしていた得意なプレーが、日本大学の強烈なディフェンス陣に対して全く通じなかったことが大きい。一方の日本大学はQB#10木村欠場による試行錯誤の時間が必要だったということになるか。

 したがって、後半の見所としては、関西学院大学オフェンス側はどのようにして日本大学ディフェンス陣のプレッシャーを緩める、あるいは、避けるか。どのようなトリッキーなプレーが組み込まれるか、にあった。

 一方の日本大学オフェンスは、RB#21金のランプレーは出るものの、2回もインターセプトされてしまっているパス攻撃が、果たして後半の攻撃の打開策となりえるのか、ここが大きなポイントになりそうだった。関東大学選手権でWR#25が半固定ターゲットとして何回もショートパスキャッチしていたことを考えると、やはり、オフェンスの組み立て方にQB差があるかもしれない。

 さらに、RB#21金のオンリーキャリア状態が続くならば、さすがに関西学院大学ディフェンスも対応してくるのではないだろうか、ということを考えながらハーフタイムが経過した。



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 さて「後半」に入る前に、この試合のタイムオブポゼッション(ボール所有時間=攻撃していた時間)について、触れておく。

 公式記録によると関西学院大学40分22秒、日本大学19分38秒となっている。
 この20分という極端な時間差から、関西学院大学側の絶妙なタイムコントロール云々の話があるが、試合を観戦している限りではコントロールしているようには感じなかった。
 第4Q最後のドライブ途中に積極的に時間を流していることがあったが、そこで消費した分は多く見積もっても2分まで。合計20分の差がつく要因にはならない。

 そこで、観戦メモを用いて私なりに再計算をしてみたのだが、前半(KG約17分、日大13分)後半(KG約23分30秒、日大約6分30秒)となり、後半の差が、そのまま合計に現れていることがわかる。(チャートから時間をピックアップしてみてください。)

 そして後半の日本大学オフェンスシリーズだが、第3QにWR#22松林へのロングパス含め3プレーでTD、第4QにはリターンTDと、94ヤードTDパス、リバースによる38ヤードのTDラン、いずれもロングゲイン一発で攻撃が終わってしまっている。

 したがって、正しい表現は「日本大学の攻撃が時間を使わなかった」となる。関西学院大学側が積極的に時間を潰したのではなく、単純に関西学院大学オフェンス時間が増えただけ、というのが本質ではないだろうか。
 公式記録によれば、関西学院大学のプレー数は日本大学の約2倍になっている。(公式記録の合計数値だけを見ることにあまり意味がない、ということを縷々説明してきている中で公式記録数値を使用するところに矛盾を感じるのだが。本来ならば私の観戦メモからプレー数をピックアップすべき、です。)

 このように、試合後半は、関西学院大学オフェンスと日本大学ディフェンスのプレー機会が増えたことになり、スタミナ勝負の面が加わったというところがあるのだが、もうひとつ気になるポイントがある。

 それは、関西学院大学オフェンスチームに日本大学ディフェンス攻略方法を考える時間(プレーの効果を測定する回数も含む)を与えてしまったかもしれないというところ。もちろん、日本大学側にもオフェンスの攻略方法を検討する時間が増えたことになるのだが。

 もっとも、本当に攻略方法を導き出すまでに至ったか、それとも、結果から逆算する観戦者の空論なのか。このあたりは、当然のことながら、不明です。



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 試合後半。冒頭にも記したように、ここから少しずつ乱打戦の様相を呈してくる。両チームとも後半に4個のTDを獲得し、さらに関西学院大学にはFGも加わる。どのようにしてオフェンス側が相手ディフェンスを攻略していったか、そして、オフェンス優位の中でとったディフェンスの対応方法は・・・。

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 後半先攻関西学院大学オフェンスは、ボールを左右に大きく展開してディフェンスを振り回すプレーを積極的に投入していく。
 前半で最もゲインしそうなプレーがRBのカウンターからのオープンランとQBスクランブルランだったこと、QBへの縦のプレッシャーを緩めるため、というところが発端だろう。

 後半第1シリーズは、右OTラン、左アウト#87柴田へ10ヤードパス、左WR#81榊原の右サイドへのオープンスイープと、左右交互にプレーを投入して10ヤード程度進む。しかし、フィールド中央付近で試みたクイックパスには、まだディフェンスDL#90小宮などのプレッシャーが厳しかった。

 そして第2シリーズはランプレーだけで左右へ展開する。QB#9三原の右ロールからスクランブル、QB#17浅海は左ロールアウトから右へのカウンタースクランブルと左右への派手な展開が続く。
 このシリーズはその後もQB#9三原のオプションキープや、RB#38平田カウンター左オープンなど。これらは全て1回10ヤードのランゲインが続く。前半の手詰まりとは異なった風景となっていった。

 敵陣深くまでドライブが進み、エンドゾーン手前10ヤードでFD更新。しかし、ディフェンス守備範囲が狭くなったこともあって攻撃側が手詰まりとなってしまった。オープンラン1ヤード、QB中央7ヤードまでとDBLBの壁が厚い。
 そしてエンドゾーンまで2ヤードを残した第3D、QBに#2横山を起用した中央キープ突破が届かず、FG3点を追加するに止まった。

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 関西学院大学後半第3シリーズ。ここも最終的にはエンドゾーンまでボールを運んでいるが、QB#9三原、#17浅海のスクランブルキープに対して日本大学DL#99一木、#92鈴木などが早々とアジャスしてこれまでのように1回10ヤード大きく前進するプレーではなくなった。

 それでも5ヤード近くゲインすることと、このシリーズだけ日本大学LBの構成が若干変わっていたことが効いた。何故、構成が変わっていたのか、どのように攻撃を止めるか外から見るためか、怪我の治療か、定かではないが、次のシリーズ以降は元の配置に戻っている。

 関西学院大学は刻みながらもポジションを進めていって敵陣19ヤード、左へロールアウトしたQB#9三原が、左から右へのモーションしたWR#81榊原へのスローバックパスをヒットさせて7点を追加した。

 さらに第4QにはQB#9三原オプションキープとRB#21稲毛へのオプションロングピッチでディフェンスプレッシャーを振り解いて17ヤードゲインなどをきっかけにTDへと繋げていく。

 この時間帯あたりから日本大学DLのプレッシャーが若干緩めになっていく。関西学院大学の攻撃がランプレーで左右へ振り回してスタミナを奪ったことと、日本大学の攻撃が時間を使わなかったことでディフェンス全体に疲労が蓄積していたかもしれない。

 関西学院大学オフェンスは第3Qではランで得点を重ねつつ、少しずつパスが加わっていく。そして第4Q残り時間7分29秒自陣22ヤードからのTDドライブはロングパス2本(実際はショベルを加えた計3プレー)で得点を挙げるという、リーグ戦同様の攻撃パターンが復活した。

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 一方の日本大学オフェンスだが、こちらも前半の組み立て方と少しずつ異なった傾向になっていく。

 後半最初のシリーズはRB#21金とRB#30赤堀のランプレーでFDならず。さらに、日本大学第3Q最後のオフェンスシリーズでもRB#21金のランプレーをライン全体で押し込んで対応している。
 関西学院大学DL等前陣のプレッシャーがOLを徐々にコントロールできるようになってきたことと、DB陣がRB#21金のランに慣れてきた時間帯、さらに、OLに引っ掛かってケガがあったようだ。

 こうしてランプレーが止まったのだが、ミドルパスは確実にヒットした。

 第3Q自陣34ヤード、インサイドレシーバーWR#25小嶋へのアウト11ヤード、WR#22松林への縦ロングポストはDBと競い合いの末のボール奪取で40ヤードゲインすると最後はQB#12平本による15ヤードキープラン、わずか3プレーで得点する。

 さらに第4Qには#21金による95ヤードリターンTDで3点差に迫り、次のシリーズでは、ターゲット左WR#23秋山の縦ミドルパスがDB裏へヒット、そのままエンドゾーンまで走りきって94ヤードの逆転TDパスキャッチとした。

 前半はショートレンジ程度のパスが多かったが、後半は一転してミドルレンジ以上のパス中心に変わる。いずれもWRがフリーでパスキャッチしているところがポイントで、レシーバーのスピードがパスプロに負担をかけずにDBを振り解いている。

 なお、関西学院大学ディフェンスフォーメーションについては後述するが、ディフェンス隊形の変化に日本大学側が対応したということになりそうだ。



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 第4Q、日本大学がWR#23秋山への94ヤードTDパスで逆転すると、関西学院大学もミドルパス2本で再逆転、この時点で残り時間6分21秒。

 自陣44ヤード付近からの日本大学の攻撃はWR#80中村へのクイックパスで敵陣へ侵攻すると、#25小嶋がQB位置に入るスペシャルプレーでラン突破6ヤードゲイン、さらに、左WR#23秋山の右リバースが抜けて38ヤードのTDラン、ここまでで見せたことのないプレーで再び試合をひっくり返した。残り時間4分15秒。

 そして続く関西学院大学オフェンスが結果的にはこの試合両チーム最後の攻撃となった。

 残り時間4分08秒。関西学院大学陣35ヤードからWR#85秋山へ15ヤードパスを通してフィールド中央へ。しかし、続く3プレーで合計9ヤードまで。第4D1ヤードのギャンブルシーンに追い込まれる。

 この試合で1ヤードをゲインするために何回も用いられたプレーが、アンバランスセットしたOLとブロック役のRBを配置したパワーフォーメーション、そのボールキャリアはここまでRB#2横山が担当していた。

 今回の1ヤードプレーもアンバランス+RB#2横山によるパワーフォーメーションセットする。しかし、実際のプレーは、RB#2横山がフェイクで左へ流れるとともに、これまでブロッカ役だったRB#33多田羅が右OT付近へ上がってショートパスターゲットとなった。

 日本大学ディフェンス陣の多くはRB#2横山へのハンドオフ動作に反応してRBによる中央左付近のランをケアする。

 しかし、日本大学LB#8長島だけは、ボールキャリアRB#33多田羅の動きを見逃さなかった。このランフェイクパスは本来ならばTDプレーになったはずだが、FD更新するに留まる。

 この時点で残り時間2分40秒台。おそらく、関西学院大学が試合時間をコントロールして全ての時間を使い切ろうと明確に決心したのは、このシーンからだったのではないだろうか。

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 その後、関西学院大学はRB#21稲毛、#38平田のオープンランと日本大学オフサイドなどでボールを進めて日本大学陣4ヤードでFD更新とする。この時点で残り時間は約2分40秒

 第1DでQB#9三原キープ2ヤード、第2Dの中央突破が届かず、そして関西学院大学が後半2回目のタイムアウト。残り11秒。

 第3D残り1ヤードを中央突破で届かず、関西学院大学最後のタイムアウトで時計は残り6秒で止まった。

 関西学院大学が1ヤードゲインすれば逆転TD、ゲインできなければ日本大学勝利がほぼ確実。この試合ラストプレーまでに日本大学も残り2回のタイムアウトを使い切って最後の準備をする。

 関西学院大学オフェンス最終フォーメーションは、ここまで同様1ヤードをとるために様々なバリエーションが加わっていたRB#2横山中心のパワーフォーメーション。そして、中央左のラインの山をRB#2横山が滑って1ヤードゲイン。残り時間0分03秒、両チーム併せて6回目の逆転シーンとなる。

 続く日本大学リターンはボールを手にしたところで関西学院大学に囲まれてゲインできず。そして、ゲームオーバーとなった。



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 後半のいくつかのシーンを振り返ってみると。

 第4Q終盤のRB#33多田羅による第4Dダイブフェイクの右パス。これは、昨年の甲子園ボウルでの第4D1ヤードでのQB三原のファンブルフェイクのTEパスプレーと同じ類のプレーになる。
 今回はファンブルフェイクが入っていない分だけ素直だが、それでも様々なアンバランス隊形からのRB#2横山ランを見せていた後だけに、いやらしさは隠せない。
 最低でもFD更新であわよくばTDまでも想定したプレーだったに違いないが、ダイブフェイクに引っ掛らなかったLB#8長島の驚異的な反応速度には、もはや言葉がない。

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 第3Q、関西学院大学敵陣2ヤードでの第3D。
 この2ヤードをセットバック隊形(ノーバック?)からのQBスクランブル、それも本職でない選手に託したのが、実はあまりこの選択に納得できていない。これがTDに至らなかった要因としていいのではないだろうか。

 縦突破をスピードと体重で乗り切るのであればやはりRB位置から加速してボールを受けるパワープレーでしかないだろう。QB位置からのスタートで2ヤードゲインは加速度パワー的に疑問が残る。この試合でショートヤードを確実にゲインするための選手としてRB#2横山が存在するならば、2ヤードは長い。ケガの可能性もある。

 実際にボールを受けた後の中央キープラン突破は壁に遮られてほとんどゲインできずに第4Dを迎え、K#6大西によるFGで3点を追加するにとどまる。

 しかし、このシリーズは後半両チーム通じて最初の得点機会でもあり、7点獲得して突き放しておけば、関西学院大学にとって少しは試合展開が変わったのではないだろうか。

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 タイムコントロール云々については中盤にも記したように、日本大学オフェンスが時間を使用しなかったことが「大差」の要因であることは間違いないだろう。そして関西学院大学側が積極的に時間を消費しようと決意したのも、第4D1ヤードのギャンブル成功後だったのではないかと考えている。

 ところで、この時間帯で日本大学側にはタイムアウトが2個残っていたのだが、ギャンブルでFD更新を許す時間帯までに1回行使してディフェンスの建て直しと時間の確保を狙うという、タイムアウトの選択肢はなかったのだろうか。もちろん、関西学院大学オフェンス側に攻撃を検討する時間を与えてしまうことになるのだが。

 後半の日本大学タイムアウト1回目も第4Q最初に自陣1ヤード付近に攻め込まれてからであり、ディフェンス側がタイムアウトを行使するタイミングやフィールドポジションに少しの疑問があった。



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 この試合では、日本大学と関西学院大学のWR・LB・DBのパスキャッチシーンやタックルシーンで、反応スピード・的確さ・重さの違いを見せつけられた。

 第1Q開始早々の左ミドルパスに対する日本大学DB#2石川カット。第4Q左コーナーTDパスをキャッチしそうだったレシーバーの懐からボールを掻き出したDB#27伊東。第4Q中央ロングパスをDBと競合しながらボールを奪い取ったWR#22松林。日本大学のボールに対する執着心を感じ取ることができる。

 これを反対の立場から見たときに「執着心がない?」ということで済ませてしまうと本質が見えてこなくなるので、「日頃から競うシーンを想定しているか否かの差」という表現にしたいと思う。

 リーグ戦で1本のパス成否、あるいは、1個のタックルミスが試合結果を大きく左右するということが残念ながら少なくなってしまった。あわやとなっても、最終的には強引な力技でひっくり返ってしまうことが「日頃から競うシーンを想定しない」ことにつながっているのではないかということを考えていました。

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 ただし、守備側だけを見ると、日本大学LBDB陣のスピードと同時に重さも感じるタックルは、関西学院大学LBDBのタックルと明らかに違う。

 終始攻撃的な守備だった日本大学と、守備的な守備に徹している関西学院大学、ボールキャリアに対して、待つか迎えに行くかの違いがタックルの重さに現れているように思う。
 関西学院大学DBも積極果敢な動きを見せることもあるが、それは相手攻撃が相手陣にいるときまでで、フィールド中央付近以降はギャンブルをしない。

 待ちの姿勢は、どうしても身体が引けてしまうのだが、そもそも3−3−5(3−2−6)というフォーメーション自体後ろ側が重い隊形である。結局のころ、ショットガン隊形からのランパスという近年の攻撃スタイルに対する効果的な守備が見つかっていないというところになるのだろうか。

 となると、日本大学の攻撃的守備は、守備的な守備に変化する前の形なのか、それとも守備的な守備を経て現在のショットガンランパスに対する最終形に近いのか。

 なお、この日の関西学院大学ディフェンスフォーメーションだが、第1QはDL3人、LB2〜3人、DB5〜6人でセットする。特徴的なのはDBの配列でCB2人と深めのS2人と浅めのS1〜2人という実質4列隊形の後方パス重視となる。攻撃側から見るとパスをインターセプトされたりパス失敗が増えるのも当然で、結局RBのランプレーがゲインしやすい形である。
 そして時間の経過とともにLBを3人固定にして前方重点ランケアとなったことで、後半のミドルパスヒットにつながっている。



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 近年の甲子園ボウルは、関西代表が関学か立命、関東代表はほぼ法政大学と、半ば固定化された対戦カードが続いた。もちろん、学生チームなので年毎に特徴はあって同じ試合展開にはならないのだが、チーム傾向が同じ色になるのは止むを得ないところである。

 しかし、2007年甲子園ボウルは、17年ぶりに日本大学が出場して近年とは少し違った「色」になり、さらに、6転する劇的な展開も加わって、永く記憶に残る試合になった。

 2008年の甲子園ボウルも「in NAGAI」で行われることが決定したが、そのフィールドに立つチームは、緑の芝の上でどのような色を放つのだろう。



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 録画したテレビ映像を約3回見た。ここまで繰り返して見たのは関西学院大学VS法政大学20−20の試合以来である。したがって、今回の観戦記は現地でスタンドで見たときに感じたこと思ったことに、テレビ映像を通じて受けた印象分が加わっていることになる。

 秋シーズン11年間で観戦記なるものをいくつか書いてきたが、劇的な試合展開の興奮冷めやらぬままに書いた観戦記の中で、消し去りたいものが少なくとも一件ある。
 甲子園ボウルが終了してから約1ヶ月が経過した。冷静になればまともな観戦記になるかと思ったのだが、さて、いかがでしょうか。(本当は年末UPの予定でした)



(了)