関西学生アメリカンフットボール Div.1 シーズン展望

Updated, 2006 Aug. 18 at 00:22 JST.
Updated, 2006 Aug. 20 at 13:40 JST.
Updated, 2006 Aug. 21 at 01:45 JST.
Updated, 2006 Aug. 27 at 01:05 JST.
Updated, 2006 Aug. 27 at 15:36 JST.



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立命館大学・関西学院大学・関西大学・同志社大学・京都大学・近畿大学・神戸大学・大阪産業大学




 2006年リーグ戦開幕まで1ヶ月をきった。今年も関西の覇権を目指して過酷な試合が続くことは間違いないが、その激闘のリーグ戦を各チームがどのように戦い抜こうとしているか、春の試合結果のまとめと戦力分析を通じて、リーグ戦の展開を予想する。

 近年の関西学生DIV1は、関西学院大学と立命館大学の両校による覇権争いが続いている。立命館大学は4連覇を継続中だが、関西学院大学も2004年には同率優勝によって関西トップの座に就いていて、関学立命によって関西トップの座を分け合ってきている。

 だが昨年リーグ戦では3勝4敗で3校が同率順位に並び、さらに、今春のNEWERABOWLで立命関学以外の選手が中心になって接戦が繰り広げられたように、リーグ各校の力量差は以前と比較すると小さくなってきている。この戦力均衡の波は、立命関学をも飲み込んで、9月の序盤戦から戦前予想の効かない上位下位の区別のない白熱のリーグ戦をもたらすことになるだろう。

 4連覇中の立命館大学が記録を伸ばすか、それとも、関西学院大学悲願の単独優勝なるか。あるいは、上位に定着の兆候が見えてきた関西大学、同志社大学がその勢いでステップアップするか。さらに、京都大学の復活や、NEWERABOWLで大活躍した近畿大学、不気味な神戸大学、そして、DIV1へ久しぶりに復帰した大阪産業大学によって、しのぎを削るリーグ戦。昨年のリーグ戦は開幕節から波乱が起こって星取表でも白黒入り乱れる結果に終わったが、今年も昨年以上に白黒が混在する星取表になるに違いない。

 今年から新しい試合会場として、大阪千里の地にEXPO FLASH FIELD(エキスポフラッシュフィールド)が加わり、神戸京都大阪の3ホーム体制が確立、関西学生アメリカンフットボールを取り巻く環境が少しずつ変わって行っている。2006年リーグ戦は、予断を許さない展開を経て新しい形で終幕を迎えることになるかもしれない。開幕です。

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立命館大学
○27−24早稲田・○49− 7東海大・○24− 6関西大・○31−24アサ飲
●27−35オービック


 今春の立命館大学の試合は、4月の長浜ボウル早稲田大学戦、5月の関西大学戦、さらにJVでの南山大学戦、いずれも得点上僅差の試合が多かったが、接戦になるように微妙に逆コントロールしている様子も伺える試合展開だった。

 この時期に出場していた選手は、今シーズン新たにスターターとなる選手と来年シーズン以降で中心にならなければならない次代を担う選手。実戦での経験を積むと言っても、大差リードした状態での経験と、勝敗が決していない状況での経験は雲泥の差であり、試合時間48分間、常に緊張を持たせることを意図したように見えた。今年はもちろんのこと、来年の選手構成すら伺える春の試合だった。

 春の序盤から攻守どのポジションとも選手が揃って今年のスタイルを確保、そこに、夏を越えて新たな戦力をどの程度上乗せできるかというチーム選手層の厚さは、他のチームと比較するとトラック1周分リードしているとしても過言ではない。

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 オフェンスフォーメーションは、今年もショットガン隊形からバランスのいいランパス攻撃が展開されることになりそうだ。
 攻撃の起点となるQBは、昨年もいくつかの試合でスターター経験がある#3渋井と今春から出場機会が増えてきた#9木下。昨年まではランの渋井、パスの木下と得意分野がくっきりと分かれていたこともあったが、春の試合ではほぼ併用で起用されてきており、それも徐々に解決されランパスとものQBに変わってきている。

 ショットガンパスのレシーバーとしては、WR#22和田、#89森脇がショートからミドルレンジのインサイドのパスターゲットとして、そしてWR#11前田(直)がロングパスターゲットとして活躍したが、他にも#1本多、#7小城などレシーバー陣は豊富である。

 RBは、昨年関学戦のキーマンだったRB#26松森のスピードが今年も脅威の中心になるだろう。ただ、このスピードランを出すためのRB#99太田のパワーブロックを筆頭に、#37石井、#2家亀、#21中西、#46山城というアスリートが豊富で、ショベルパス、スクリーンパス、そしてハンドオフからのランプレーが繰り出される。

 そしてオフェンスの要となるOLには、4年生#52谷口、#55田中、#66渡邊、3年#77紀平、#62西川が存在し、春序盤からメンバーが揃っている。  もちろん、ここから新たな選手の台頭などの成長カーブが重要だが、ここ数年ではOLの完成度は高いところから始まることは間違いないだろう。

 さらに、K#30澤和のロングFGキックも信頼性が増している。

 オフェンスは、ショットガンスタイルが完全に浸透し、そしてQBRBWRに人材が揃い、OLもほぼ形になっていて、プレーのコンビネーションの完成度は高い。

 ただし、私に見る目がないのだろうが、試合の中のプレーのつながりという点では、ストーリーがないようの思うことが最近多くなってきている。
 オフェンス各人のパワースピードが強烈過ぎて、力任せでもゲインしてしまうというところもあるのだろうが、プレー選択の妙という点で工夫が見たいと思うことが、昨年あたりから時々感じることがある。

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 ディフェンスは、DL#90堀田、#91今、#59佐倉、#56岡本、#57武知、#92前田(和)、#97久司と昨年のメンバーが残りつつ、今春からのメンバーが加わるという状態。春序盤の試合では昨年経験者が起用されずに、新規スターターの経験をつませる機会が多かった。その結果なのだろう、DL#59佐倉、#97久司などが頭角を現しつつある状態で、層の厚さが伺われる。

 LBも経験者と新規スターターの融合は同様で、主将#44橋本のパフォーマンスは4月からさえ渡り、さらに#5木下、#53前田(孝)、#54名和とメンバーが揃う。

 そしてDBにはDB#4河村が磐石なS(セイフティ)として最後の砦にたち、さらに経験豊富な#14藤本、#24大亀、#21乗次、#27尾上など。そして、CB#13石貞が春からCBとして、また、キックカバーチームで勢いのある思い切りのいいパフォーマンスを披露していた。

 ただし、攻守全体でどこがウイークポイントかと問われれば、やはりLBDBの経験不足が相対的には見えてきてしまう。特に選手層で言えばLBが最も手薄で、負傷等を考えると更なる台頭が必要なポジションではある。それでも関西学生トップクラスであることに違いはないのだが。
 
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 立命館大学は昨年関西学生4連覇を達成し、チーム創設以来の未知の領域に足を踏み込んでいる。今年はさらにその記録を伸ばして5連覇を目指すことになる。 だが、これは歴代チームとしての話であって、今年のチームにとって連覇云々は関係のないこと。今年の各選手にとっては、各自の立場役割に従って、単純に白星を重ねていくこと、今年の勝ちが全てであることは言うまでもない。

 一方で昨年甲子園ボウルで始めての黒星を喫するという結果も残してしまっているので、この雪辱を果たすことが今年のチーム目標の一つに加わっていることも間違いない。

 もっとも、関西を突破できるという保障などあるわけも無く、昨年リーグ戦関西大学戦は第4Q中盤までリードされる試合を行い、過去には近畿大学とも接戦を繰り広げている。さらに今年も第7節には言うなれば敵地となる神戸ユニバでの関西学院大学戦も控えている。

 9月最初から11月末までの3ヶ月間を常にフル充電では望めないだろう、どこかで、苦戦になるはず。先を見ていては足元を掬われるし、足元を見ていればどこかで意識が途切れてしまいそうだ。

 どこを見据えて秋リーグ戦に突入するか。関西4連覇を達成した立命館大学2006年シーズンに新たな重圧が加わった。

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関西学院大学
○42− 0慶應大・○65− 3日体大・△17−17同志社・● 3−45法政大
● 6−28日本大・○16−10関西大・○77− 7明治大


 甲子園出場が途絶えること4年。関西学生アメリカンフットボール界の一つの関心事になってしまい、今シーズンも否応なく話題に上ることになるだろう。
 東西大学王座決定戦@甲子園となると、来年からの2年間は甲子園球場の改修工事のために緑の天然芝から離れることになる。改修前最後となる2006年、関西学院大学の甲子園出場を願う人が多いのも事実ではある。
 だが、現場の選手・スタッフにとっては、ごく自然に1個ずつ白星を積み重ねること、目の前の試合を乗り切ること、それだけのことである。

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 オフェンスは、今年もショットガンスタイルを採用、そして、QBには#9三原、#13加納、#2幸田が名を連ねる。
 いずれのQBも昨年の試合経験が豊富なのだが、スターターとして試合を作り上げていくというのは今季から。そのためか、春はスターターという点も含めて、いろいろ戸惑っているシーンが散見された。だが、体験するための春シーズンでもある。秋には、その経験を踏まえてステップアップして登場してくることは間違いない。

 ショットガンパスターゲットとしては、WR#1岸、#81榊原、#85秋山、#86水原、#91萬代というWR陣、さらにTE#95韓も加わる。これらレシーバー陣は、いずれも長短パス様々なコースのマルチターゲットになりうる能力を有するのだが、レシーバ陣容が豊富すぎることで、逆に個人の特徴や役割が不鮮明になるというマイナス面を感じることがある。
 その中で、#85秋山、#1岸などボールへの執着心が増してきていて、パスキャッチミスが驚くほど減ってきているのは明るい材料になっている。

 RB陣では、パワーランナーのUB#36山田、TBに#35古谷、#31川村、#32稲毛という布陣。今季は、QBに走る脅威が少ないので、オフェンスプレー幅を広げるためにはRBのランテクニックの重要度は増しているが、UBの中央突破、TBの中央縦突破とオープンへの展開スピード、さらに、ショベルパスターゲットとしての重責を果たしている。


 そしてオフェンスの要となるOLだが、春の戦績が今一だった原因の一つは、OLがベストメンバーで臨むことができなかったことにある。
 しかし、NEWERABOWLまでに#50生田、#71白水、#78野原が復活、これらメンバーによるラインパワーがBLUEに得点をもたらしたシーンがあるように、さすがにメンバーが揃うとオフェンス全体が充実してくる。

 今春、これら経験豊富なメンバーを起用しなかった理由は、一つには負傷していたことが挙げられるかもしれない。だが、オフェンス全体を整備するという位置づけも大きな要素だったことは間違いないだろう。

 リーグ戦を負傷者なく無傷で乗り切ることはほとんど不可能に近く、春にOL#75福田、#55岡田、#72中山、#60寥という次代を担うメンバーが経験を積んだことは、OL層を厚くすることにつながっている。
 さらに、OLが完全でなくともQB以下バックス陣が相手ディフェンスに惑わされることなく攻撃力を発揮すること、特に、スターター初体験となるQB陣に様々なプレッシャー経験を積ませるいい機会になったのではないだろうか。
 したがって、今春のオフェンス不調がもたらした引分と黒星については、意義のあったものと言える。


 関西学院大学ショットガンオフェンスの組み立ては、QBからのショート〜ミドルパスが生命線のように見える。QBの判断とかボールコントロールとレシーバーのキャッチミス。このあたりでつまらないミスなく当然のことが出来れば、結果もついてくるだろう。
 また、パスに偏るとディフェンス側も対応しやすくなるので、ランプレーで確実にゲインできるかも注目ポイントになる。ショベルパスでもQBスクランブルでもOLゴリ押しによるRBの中央突破ランでもなんでも可だが、ランのキラープレーとして、なにか欲しい。

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 ディフェンスDLは#93早川、#97國方、#57市村。LBは#53柏木、#56佐藤、#4橋本という昨年シーズンにも出場経験の豊富なメンバーが揃う。そこに新たにDL#52川島とLB#61坂戸が加わった春シーズンだった。

 DBはS#34磯野がアグレッシブかつ冷静に最終ラインを堅守し、他にDB#28山本、#44笠原、#15藤井、#8泊というメンバーが揃う。ただし、3年生主体で構成されるので、昨年の経験があるとは言え、まだ整備途上という印象だった。


 ところで、今春の試合では、いろいろなディフェンスフォーメーションを試みていて、特に5月中は、DBに5人を配しDL3人+LB3人という隊形を多用した。
 これは、ショートパスは許してもロングパスは許さないことを目的としたもので、立命館大学などのショットガンオフェンスを想定していることは間違いない。
 だが、横浜での法政大学戦で5人DB陣の隙間にパスを通されたのをはじめ、パスディフェンスで苦労する試合が多かったが、まだ不慣れなフォーメーションだったことが原因だったのだろう。

 さらに、DL3人+LB3人のために中央のランプレーでも大きくゲインを奪われていて、同志社大学戦や関西大学戦で苦戦しているのはこのあたりも関係する。

 ただし、これらは全て試行錯誤の期間のことであり、そのまま関西学院大学ディフェンス陣の実力を表してはいない。今春の関西学院大学ディフェンスは、春の試合を通じて、現有戦力によるベストフォーメーションを探り出すことを試みた。その結果がDB5人となるか、あるいは、LB4人とするか、DL4人になるか。それは、秋のリーグ戦開幕時点まで不明である。

 春の試合で個人レベルでは、DB#34磯野とLB#4橋本の勢いのあるプレーが際立っていた。入れ違いになってヒヤリとすることもあるが、ボールキャリアに突進する気の持ちようは、ビッグプレーを生む要素の一つになる。他のポジションにも破壊屋が現れれば、ディフェンスの脅威が倍加するのは間違いない。

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 今年の開幕戦対戦相手は神戸大学、第2節は大阪産業大学という日程でシーズンインとなる。昨年の入れ替え戦出場校であり、DIV1復帰直後のチームではあるのだが、シーズン序盤での対戦となると簡単な相手ではない。9月序盤のこの2試合をどのように戦うか、注目である。

 1個ずつ目の前の課題を解決して、2006年関西学院大学各人の活躍を見ることが出来れば、それが自然に甲子園へつながっている。

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関西大学
● 7−31法政大・● 6−24立命館・○36− 9早稲田・●10−16関学大


 昨年は4勝3敗で単独3位の成績を収め、年々確実に順位を上げてきていて勢いがある。今春の試合では法政大学、立命館大学に黒星を喫しているが、春序盤の調整色の濃い試合でのものなで参考にはならない。そして6月に入ってからの早稲田大学戦勝利と雨中の関西学院大学戦僅差肉薄した試合は、今年の秋シーズンの更なる飛躍をうかがわせるに十分なものだった。

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 オフェンスフォーメーションは、昨年はショットガンを試みた時期もあったが、今年はQB#14森口によるセットバックからのランパスのバランスのいい組み立てを試みている。さらに バックアップQBとして#9宮城、#10原口も春から経験を積んでいる。

 RBには#33平と#22中西。RB#22中西は従来の「スピードランナー」に加えパワフルなランスタイルが加わった。スクリメージを抜けるためのパワーと抜けた後のスピードを兼ね備えている類稀なRBとして中央突破を繰り返す。そして、RB#33平はTBとしてオープン中央をスピードで突破する。

 パスターゲットとしては、スピードのあるロングパスターゲットとしてWR#17西尾、#16永川、そして大型のTE#86強は信頼性の高いミドルパスターゲットとして活躍する。特にTE#86強はパスキャッチ後のダイナミックな走りにも注目である。#17西尾、#16永川はそのスピードを生かした快速リターナーとしての存在も脅威になる。

 そして、今年の関西大学オフェンスにあって特色を出しているのが、インサイドのショートパスターゲットとしてのRB(WR)#29河原の存在である。すでにNEWERABOWLでもWHITEチームのインサイドのショートパスターゲットとしての実績を重ねており、昨年までRBだったこともあってパスキャッチ後のランテクニックに期待がかかる。

 これらを支えるOL陣としては#76福島、#78渡辺、#57山元、#56大壁、#54村田が春序盤からほぼ固定で経験を積んでいる。特に雨中の関関戦ではラインゴリ押しで中央に大きなランホールを空け続けており、OLパワーも侮ることが出来ない。

 今年の関西大学オフェンスは、ランパスのプレー数が格段に増えたこととが大きな特徴になっている。オフェンスコーチが変わったことも少なからず影響しているのかもしれないが、昨年までとは一味違ったプレー組み立て・プレースタイルになることは間違いない。これが白星につながていけば、勢いに乗れるだろう。

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 ディフェンスは、DL#90和久、#91杉山、#94岡田、#92福岡、LB#49宮崎、DB#13山本、#23長谷川、#24大塚という布陣。

 DL#90和久、#91杉山のファンブルフォースタックルは強烈で、さらにILB#49宮崎もボールキャリアをしっかりと見据えた鋭いタックルを決める。DB(S)#13山本、#23長谷川ともで中央のランプレーは、ほとんどショートゲインに留めており、DLとILB・DB(S)による中央T字構造線は頑強だ。

 このようにディフェンスの中央部分が分厚いので、相手攻撃側は外へ活路を見出していくのだろう、左右サイドライン際へ攻め込まれると、時々大きなゲインを奪われてしまうというのが春観戦した試合の印象だった。だがDB(CB)にはパスインターセプトのビッグプレーも多く、したがって安定感が向上さえすれば、ディフェンス網は完璧なものになる。

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 今年の関西大学オフェンスは、春の段階から方針がしっかりとしていて、例年と比較すると今年は何か変わりそうな勢いが伺える。いろいろと興味が沸いているチーム陣容である。
 一方のディフェンスはDLLBから徐々に整備されつつある状態だが、運動能力の長けた選手が多いので秋までには形になるだろう。昨年リーグ戦は4勝3敗。そして今年はここに白星をいくつ上乗せが出来るか。注目のチームである。

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同志社大学

●23−31立教大・○30−29天理大・△17−17関学大・●21−51慶應大
●14−50内外電


 春は関西学院大学と引き分けて幸先のよいスタートを切ったが、その後の試合では大差敗退の黒星が続く。その原因がどこにあるのか(怪我人の存在?・JV戦?・若手中心の起用??)など外部からは知る由もない。

 だが、終盤の不調が怪我人の存在にあったとしても、同志社大学の選手層は想像以上に厚く、過去にも、主戦QBが開幕戦で負傷欠場を余儀なくされながらもバックアップQBの活躍でいい成績を残してシーズンを乗り切っており次世代選手層が厚い。

 昨年もリーグ開幕戦でRB永富が負傷したが、そのマイナス分を補う以上の活躍で同志社大学オフェンスの形を作り上げたのがRB福山だった。連盟表彰ではRB永富が選出されたが、昨年の同志社大学オフェンスバックスの中核はRB福山だろう。
 さらに最終戦では、復帰した永富をRB位置に配しながらフェイクプレーの囮に徹し、RB福山などの連続キャリーという組み立てでプレーを展開、ディフェンス側がイライラしている中でランプレーが面白いようにゲインする痛快な試合を披露した。

 選手層があつく、また、年を追う毎に攻守とも少しずつ整備が加わってステップアップしてきている同志社大学は、今年も要注目のチームである。

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 オフェンスはスターター2年目となるQB#8村上によるショットガン。同志社大学もショットガンスタイルが定着してきており、ランパスのバランスのいい攻撃を行えるバックススタッフが充実している。

 QB#8村上は昨年も攻撃の中心となって活躍していたが、視野の広さと絶妙な判断に基づいて繰り出されるショートパスとスクランブルランには、益々磨きがかかる。
 今春のNEWERABOWLでもWHITEの攻撃の中心としてショートパスとスクランブルランを決めており、秋の活躍も必至で、同志社大学歴代のQB相当以上のいやらしいタイプのQBに成長してきた。

 ショットガンパスターゲットWRは#9池田、#14田又。短いパスのイメージをテンポ良くつなぐドライブオフェンスの一端を担う。ロングパスをほとんど投じないところが逆に恐ろしい。

 さらにRBには、#21山本、#22會田、#2太刀掛、#20和田谷と層が厚い。どちらかと言えばスピード系タイプだが中央突破オープンランともいずれも足を止めない粘り強い走りが売りポイントである。
 またRB#21への短いパスがサイドライン際、ランパスキャリアとしてプレーの幅を広げていて同志社大学オフェンスのキーマンの一人である。

 このショットガンオフェンスを支えるOLには#65足立、#58辻村、#64島田の大型ラインが揃う。5月の関西学院大学戦では中央に大きなランン走路を作り出していた。

 同志社大学のショットガンオフェンスもバックスラインとも充実、WRRB兼任プレーヤーも存在するが、特徴はQBが走ることが出来る点でプレー幅が広がっているのが同志社大学ショットガンの強みである。
 さらに巧妙なオフェンスプレー選択と、厚い選手層と。近年の同志社大学オフェンスは、侮ることは出来ない。

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 ディフェンスも、DL#53藤井、#90赤堀、#78松本、LB#54輪地、#55川口、DB#24大長、#18津田、#27蔓などによる4−3隊形。

 DLは大型でサイズながらスピードがあり、とくにDE#53藤井のスピードと集中力が際立つ。LBも判断力と思い切りの良さが売りの選手が充実している。

 近年の同志社大学ディフェンス陣は集中力と動きのいい選手が増えてきているが、今年は各ポジションに複数名存在し、近年ではトップクラスの充実振りを誇る。
 ディフェンス全体で見ると若い学年経験の少ない選手を配するポジションも存在するが、そこを以下にカバーするか、春からどれだけ成長しているか。

 今年の関西学生にあって、ディフェンスは全体各チームとも層が薄いが、若手の成長があればディフェンス網が完成しそうなチームの一つである。もしも、整備されたならばオフェンスも戦いやすくなる。同志社大学今年の戦績を左右するのは、おそらくディフェンス側だろう。

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 5月関西学院大学との引き分け試合が今年最高位の試合ではないことは当然であって、引き分けになった感触を得て更なるステップアップのために何を加えるか、このような夏だったことだろう。全ては秋にどのような姿で登場してくるか、である。

 昨年の成績は3勝4敗、そして抽選によって4位相当の扱いで今年のリーグ戦を迎えることになる。つまり、リーグ戦対戦順が例年と異なり、序盤に立命関学と戦いながらチーム状況を整えるというストーリーが通用しない。戦う順番が逆になるので、戦力をまとめる時間が例年よりも短くなるのだが、これがどの程度影響するか。

 開幕戦相手は今春ベールに包まれた京都大学。昨年は前半リードを奪いながらも逆転負け。ただし一昨年は勝利を奪っているように、近年では相性は悪くないはずだ。開幕白星を足がかりにすれば、更なる順位アップも十分に視野に入るだろう。

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京都大学

 

 京都大学は、春公式戦を辞退したことによって今シーズンの戦力調整がどこまで進んでいるのか、完全にベールに包まれてしまっている。したがって、昨年リーグ戦の京都大学を踏まえて今年の姿を想像するしか仕方がない。

 だが、これは、戦力分析のできないチームと対戦する相手チームの立場にも通じるところがあり、京都大学側から見ると優位な状態にあると言える。

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 オフェンスは、QB#19宮下によるIフォーメーションからのランパスという組み立て方で、ショットガン全盛の関西学生の中では異色の存在である。
 バックス陣は、RB#39高松、WR#16小野、#1藤本、さらにOL陣は、#77伊藤、#72鈴木、#60増田、#73山本という昨年からの重量級ラインがそのまま残っている。

 昨年は、QBの中央突破ランがOLパワーとの絶妙なコンビネーションによって面白いようにゲインを重ね、また、TEへの縦ミドルパスも関西学院大学戦などで威力を発揮していた。

 おそらく今年も、経験豊かなOLのパワーを前面に打ち出したオフェンススタイル、つまり、中央突破ランの連続によるゴリ押しのドライブが中心になるだろう。だが、そのためのバックス陣が手薄な印象が拭えないところで、新しいメンバーの出現を待つことになりそうだ。

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 ディフェンスは昨年からの主力が多く残る。DLでは#94桂木主将を筆頭に、#76井上、#92木村、#91三井、LB#29植竹、#54川島、#21金、DBは#22中西、#18上田など。
 特にフロントDLLBのサイズとパワーは、今年の関西学生においてトップクラスの陣容を誇っている。一方で若い学年の起用が必須のDBには、ショットガンオフェンス全盛の中でパス守備に対する経験不足の不安が消えない。
 だが、それはパスを投げられた時のこと。もしかしたら、ディフェンス全体のバランスで解決できるかもしれない。

 現在のショットガンスタイルの攻撃を止める最も効果的な方法は、おそらく、DLLBフロント陣がQBにプレッシャーを掛け続けることだろうと考えている。
 つまり、QBがDLLBに追い回されることでパスコントロールに乱れが生じ、そしてパス判断に迷いが生じ、最後にはRBへのハンドオフ・ピッチが乱れてくる。さらにOLが押し込まれているので、RBも思うような走りが出来ず、スクリメージラインすら突破できなくなる。

 攻撃の起点となるQBにプレッシャーを与えることが出来るDLLBの存在が、ショットガンスタイルの攻撃を止める唯一の方法であり、そして、京都大学DLLBには、そのためのパワーとサイズと気合いが備わっている。関西学生ショットガンオフェンスに対して一石を投じる可能性を秘めており、京都大学ディフェンスフロント陣の動きには要注目である。

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 ショットガンスタイル主流の関西にあって、攻守ともパワースタイルという独自路線を貫く姿は関西学生ファンにとっては新鮮に映る。さらに、今年の関西学生DIV1では攻撃主導型のチームが多い中で、唯一ディフェンス主導のチームでもある。
 対戦相手から見ると、唯一、戦い方が異なる特異なチームなので、準備の面などでいろいろと手間隙が要求される厄介な存在になるだろう。

 京都大学の勝利へのストーリーは、ディフェンスがロースコアに持ち込んで、攻撃側はチャンスを確実に得点するという展開。攻守とも経験不足は否定できないところだが、幸いにも昨年の経験をそのまま生かせるポジションが多い。

 過去2年間、リーグ戦では5分の星を残すところに留まっているが、今年はディフェンスパワーが炸裂すればチャンスの年である。

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近畿大学

●21−23内外電・○39− 7大産大・○72− 0金沢大・○49−13桃学大
○10− 0アサ飲・○41−16専修大・●21−24イワタニ


 今春近畿大学の試合を観戦したのは、5月長居での大阪産業大学戦1試合のみ。ただし、7月のNEWERABOWLでBLUEオフェンスバックスの中核を成していたのが近畿大学のメンバーだったので、かなり参考になりました。

 近畿大学は、6月も学生や社会人相手に毎週のように試合を行っていて、社会人相手でも善戦が続いたようですが、試合会場は全て東大阪の近畿大学グラウンド。来年こそは日程調整を行い、そして、気合を入れて現地調査に臨みたいと思っています。

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 オフェンススタイルは、セットバック主体のフォーメーション。プレーの組み立て方も、他のショットガン主体のチームと若干異なるところがあり、RBへのピッチプレーによるオープンへの展開と縦中央突破のランというオーソドックスなIフォーメーション主体となる。ただし、以下に示すように、今年の近畿大学布陣ならば他校同様のショットガンよりは現時の布陣に適したオフェンス組み立てを行いやすいだろう。


 QBは#10岡と#5春日井の併用が続くがともに最終学年を迎える。どちらもランパス判断コントロールに冴える。

 RBにはTBに#21尾下、#20山上という高速ランナーが存在し、そのスピードに注目が集まっている。さらに、RB#29吉田は1年生ながら5月の大阪産業大学戦でフル参戦して活躍しているように若手の選手にも力のある選手が多い。
 そして、パワーランナーとしてRB#35平城がUBに存在、ランホールを開けるブロッカー役として、また、中央突破ランキャリアとして、オフェンスの重要なポジションで機能、オフェンス躍進のポイントの一つとなっている。

 パスターゲットとしては、WR#87石田、#7冨尾、#19森など、こちらもスピードのあるパスターゲットとしてロングターゲット〜ショートターゲットとして存在する。

 このようにRBWRとものスピードは充実しており、一発ロングゲインの可能性を大きく誇示したスピードオフェンスは必見である。

 さらに、NEWERAでBLUEオフェンスの中核を成したQB#5春日井とRB#21尾下、#20山下のバックス陣、バックスユニットの完成度は高い。

 これら高速キャリアを支えるOLも、#57前田、#77岸田、#54中田、#56金田などの大型ラインが揃う。ラインとバックスの一体感がさらに向上し、その完成度がさらに増せば脅威的なオフェンスになる。

 課題ということではないが、QB2人体制が今年も続くが、来年以降のことを考えると、若い学年のQBにも試合経験を積ませておきたいところ。春の近畿大学グラウンドでの試合では、それなりに出場機会はあったのだろうが、秋本番での試合経験も重要、QBはもちろんのこと若い次代の新しい選手の登場にも期待したい。

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 ディフェンスは、DL#97高山、#61石浜、#79末常、LB#2吉田、#25岩井、#43末吉、DB#27小野澤、#15渡辺、#17谷原という昨年実績あるメンバーが多く残った3−4−4の隊形となりそうだ。

 ただし、今春5月の試合では、まだディフェンスの形が見えてこなかった。DLフロントは強力だが、バックスがまだ整備途上という印象だったが、5月という時期的なことを考えれば当然のことだろう。

 6月の学生や社会人との試合での失点は少数に押さえ込んでいるので、やはり当然のように整備されてきているのだろう。どのポジションに誰がまでは、現段階では把握しきれないが、それは開幕戦金曜夕刻のエキスポで確認します。

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 今年の近畿大学の強みは、なんと言ってもオフェンスにスピードがあることだろう。たとえ点の取り合いの試合になっても、RBWRの一発で得点できる手段を有していること、それも複数名存在していることが相手ディフェンス側からみるとプレッシャーになりそう。さらに、リターンTDの脅威もあり、近畿大学攻撃シーンは一瞬たりとも目が離せない。

 ディフェンスがどこまで整備されているかがポイントだが、6月戦線のように失点を最小限に留めるような固いディフェンス網に仕上がっているならば、昨年7位とは違ったリーグ戦結果になることは間違いない。今年の近畿大学には要注意。

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神戸大学

○20−14甲南大・○59−13横国大・○38−13大体大・○28− 3大産大
●14−24松電工


 昨年は、開幕戦で京都大学に勝利するも、その後は黒星が続いて入れ替え戦へ出場、その試合でも残り時間0秒でのFGでようやく残留が確定するという薄氷のシーズンだった。

 だが、このように黒星が続いたにもかかわらずチームの雰囲気が暗くなることがなく、翌節の試合では気合の入ったプレーが随所に溢れるというモチベーションコントロール能力の高さを示した。これも重要なチーム力の一つである。

 そして今年、攻守とも昨年よりパワーアップが見込め、特にオフェンスの充実振りが際立つチームになってきており、昨年の1勝6敗7位からステップアップすることは間違いない。2006年の神戸大学は要注目である。

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 オフェンスは、昨年あたりからショットガンスタイルを模索していたが、今年は各ポジションの隅々までショットガンの意図が浸透してきたようだ。そして、(OLQBRBWR)いずれのポジションとも選手の力量バランスがよく、ランとパスが均等に繰り出され、かつ、いずれでも前進できるタレントを有する。これが今年の神戸大学オフェンスの大きな特徴点といえる。
 関西学生の中でショットガンスタイルを採用するチームが多いが、選手の力量のバランスという点では、トップクラスにあると言える。バランスがよければ、どこからプレーが飛び出るか判らないことになり、プレーの組み立て方次第で少々の運動能力を補うことが出来るところがアメリカンフットボールの面白いところ。これが神戸大学要注目の理由である。

 QBは#7多和と#4大原による併用が続くが、同じようなタイプなのでチームへ与えるストレスが少ない。春序盤の試合ではパス重視の試合が多かったが、QBとWRのコンビネーションが試合毎に増してくる様子が垣間見ることが出来た。

 そのパスターゲットには、ショートパスターゲットとしてWR#19福田、#88齋藤、#80古川、そしてロングパスターゲットとして#24大園が揃う。さらに、ミドルパスターゲットTE#43三輪は、プレーアクションパスとクイックパスという全くタイミングの異なるパスレシーバーとしてプレー幅を広げる重責を担う。

 RBは4年生#1中井筆頭に、#20竹内、#34宮路、#33富田という神戸大学らしいパワーランナーが揃う。中央縦突破が大きな役割だが、春の試合でも最後まで足を動かしで少しでも前進しようとする姿勢をみせている。OLには#65田中、#78伊賀、#70森嶋、#64上野、などパワーサイズの揃った選手が並んでおり、中央ラン突破のための空間を作り出している。


 神戸大学のこの布陣から繰り出されるショットガン攻撃とは、どのようなものになるか。
 中央ランプレーを使うことで相手ディフェンスは前に集め、短いサイドライン際へのパスを使ってにDB(CB)を外側に広げ、ロングパスでDB(S・CB)を下げる。さらに、TEへの縦のミドルパスを使って中央ディフェンス陣を後ろへ下げる。つまり、LBDBを前後左右に振り回すプレーが備わっていることになる。

 プレーの組み立て方も、ドライブ成否の大きな要因になるが、大阪産業大学戦ではランパスバランスのいいオフェンスドライブを展開し、社会人相手の神戸ボウル松下電工戦でもスタッツではいい数字が残っている。
 中央ランプレーを警戒中のディフェンスに対して、プレーアクションからのTEへ縦パスなど、このオフェンスがテンポよくドライブすることになると相手ディフェンス側は完全にパニックになるだろう。
 さらに、春のNEWERABOWLでロングFGを決め、さらに昨年の入れ替え戦での水平バーに当てながらのサヨナラFGを決めた強運の持ち主であるFGキッカーとしての#43三輪の存在も大きい。

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 ディフェンスはDL#90荒谷、#95春山、#97浦久保、LB#47川村、#51北村、DB#17黒川、#6阿部という布陣。そして、フロントDLは、春序盤から#90荒谷、#95春山などが動きのいい判断のいいプレーを連発していた。だが、DBLBに若い学年の新規スターター選手が多かったこともあって、ディフェンス網に不安を感じさせる試合が多かったのも事実である。

 ディフェンスバックスとしては人数的にも若手の起用が不可欠であり、DB#6阿部中心に今年のスタイルを確立することが春の最重要課題だった。ただしタレント的にはLB#42玉井など動きのいい選手が多いので、その成長次第(上位学年の指導含め)では強固な布陣に完成する可能性を秘めている。

 今年の神戸大学攻守のバランスを考えたとき、どちらかと言えば、ディフェンス側の整備が途上というイメージがあるが、夏を経たことで今年のスタイルが徐々に見えてくることだろう。

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 そして開幕戦対戦相手は、関西学院大学。神戸大学側から見ると、どちらかと言えば組みやすい相手だろう、昨年は48分中34分攻撃という記録を残しており、試合のコントロール自体は出来ていた。今年も2ヶ月間の準備の結果が開幕戦に現れることになるだろう、そして、興味深い試合展開になるのではないかと予想している。
 昨年の連敗が開幕戦で勝利したことに起因するのか否か定かではないが、神戸大学の目標が「甲子園出場」ならば白星が当然であってそこで一喜する理由はないというスタンスで開幕戦好スタートを切って欲しい。

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大阪産業大学

● 7−39近畿大・● 3−28神戸大・●20−21南山大


 大阪産業大学は2002年冬の入れ替え戦で降格し、その後、DIV2に定着しそうな時期もあったが、昨年の入れ替え戦で龍谷大学に勝利し、4年ぶりのDIV1復帰となった。

 春の試合はすべて黒星だが、いずれの試合も確実にチームを作り上げることに主眼を置いたような取り組み方だった。本来春の試合は練習であって、勝敗に大きな意味はない。

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 オフェンスは、IフォーメーションからのTBによる中央とオープンへのラン、そしてWRへのサイドライン際への短いパス、そして、TEへの縦ミドルパスという組み立てになっている。

 QBは今季からスターターとなる#11康が担当する。2年の春から1試合を任されるというかなりハードな状況だが、じっくりと経験を積んでいくと大きく成長しそうな雰囲気が伺える今後が楽しみなQBである。
 RBはUBに昨年までの経験もあるパワーランナー#30田儀、そしてTBには#22木村、#2渡邊が就く。TB#22木村は、春の試合で最も多用されたバックスであり、今年の大阪産業大学オフェンスの重要なポジションを担うことになりそうだ。
 レシーバーは攻守通じて最も安定しているポジションで、スピード・体格・玉際の強さありというTE#39春田、WR#82門谷、#19寺川、#1粕井など、経験豊かなメンバーが揃っている。

 今春の試合では、RB#22木村、#30田儀による中央突破とオープンへの展開、さらにサイドライン際への短いパスという基本的な攻撃スタイルを繰り返していた。

 特に短いサイドライン際へのパスは、今年の大阪産業大学オフェンスプレーの生命線でもあり、ディフェンスを外へ散らすことで中央ランプレーも前進できるという一対の関係を成している。そして、春の試合でもこのパスが通らないためにRB木村の中央突破ランがマークされてノーゲインに終わるというシーンが多かった。

 したがって、絶対に成功させなければならないパスであり、経験豊富なレシーバーの立場からQBをリードするという面もあったのだろう、実戦で執拗に試みていたことが印象に残る。

 一方で、練習があまり必要のない得意なプレーが、実は、隠されているのではないかと思わせるようなシーンも見え隠れしていたことが興味を沸き立たせる。

   ディフェンスは、主将LB#56水野を中心に、DL#97白井、#92山田、#90稲田、LB#55中田、DB#18奥野、#24辻などのメンバーで構成される。DLLBDBいずれのポジションとも核となる選手が存在するのだが、リーグ戦では経験の浅い若い学年を含めたメンバー構成になりそうだ。おそらく、ひと夏超えて成長した姿を見せてくれることだろう。

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 攻守とも春から1年生が出場するという人数不足の面がある一方で、若い学年にも動きのシャープな選手が存在している。これらのアスリートの卵が成長してくることでリーグ戦の戦い方は大きく変わってくるだろう。春は攻守とも整備途上だった。そして、秋にどのような姿で登場してくるかは、未知数である。

 策士集団である大阪産業大学コーチ陣によるアメリカンフットボールの試合は、時として、あっと言わせるような試合結果になる。大阪産業大学の今シーズンの最低限目標はDIV1残留、そのためには白星をいくつか獲得しなければならない。どこのチームから白星を得ようとするか。そのときの戦術は・・?

 ショットガンオフェンス全盛の関西学生DIV1にあって、唯一オプションオフェンス中心のチームであり、ここにコーチ陣による巧妙な色が加わるはず。ディフェンスの甘いチームにとってはやりにくい相手になるだろう。

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 春の試合をいくつか観戦しての印象としては、今年は各チームともどちらかと言えばオフェンスのほうが充実しており、相対的にディフェンス側の整備が遅れているといるようにみえた。したがって、今年のリーグ戦はいずれの試合も守備戦にはなりにくく、どちらかと言えば、得点の取り合いの試合になるのではないかと考えていえる。

 各チームのオフェンススタイルは、立命・関学・関大・同志社・神戸がショットガンからのランパス、近大は少し趣旨が異なるがショットガン隊形重視、大産大・京都はラン中心で全く異質なオフェンスになりそう。ショットガンフォーメーションを採用するチームがほとんどだが、OLの充実度に若干のばらつきはあるものの各チームとも概ねコンビネーションが確立している。

 それに対して、ディフェンス側は春の段階でDLLBDB各ポジションの名前の挙がるチームが少ない。春夏を経て新しいメンバーが加わり、さらに秋リーグ戦途中で確立していくことになるだろう。

 ところで、ディフェンス側の基本的な守備思想は、ショットガン攻撃のスピード差への対応の違いはあるものの、大きくは変わらない。DLとILBがランを完全にシャットアウトすることが大前提、OLBはランとTEパスを完全ケア。そしてCBはオープンランとサイドライン際のパス(ロングショート)に専念し、DB(S)は縦ロングパスに対応、さらにDB(S)は全てのプレーの最終ストッパーという重責を担っている。

 各々のチームに当てはめてみると、DLが充実しているところ、DLILBDB(S)の中央縦線がしっかりしているチームなどなど、各チーム各様という春の状態だったが、本番までにどの程度の底上げがなされているか。


 乱打戦になりそうなリーグ戦を制するためには、ディフェンスチームを強化することが最も手っ取り速い。あるいは別の見方をすると、オフェンス側で手の幅が狭いチームは点差を広げられると追いつけなくなるかもしれない。
 今年のリーグ戦の行方占うポイントは、ディフェンスの整備状況とオフェンスのプレー組み立て。このあたりになるのではないかと、AK'sでは睨んでいるのですが、皆さんはいかがでしょうか。


(了)