東西大学王座決定戦 毎日甲子園ボウル



甲子園ボウル 




 第61回甲子園ボウルは、5年ぶりに関西学院大学と法政大学の対決となった。この対戦カードは今春のヨコハマで実現していて、その時は、法政大学が45ー3の圧勝で終わっている。その後、両チームとも夏と秋リーグ戦を経て大きく成長変貌を遂げた冬のシーズンで再戦となった。

 関東代表の法政大学は4年連続14回目の出場で昨年に引き続いての連覇を狙う。昨年は立命館大学に対して攻守全ての面で完全勝利し、ここ10年間以上続いた西高東低の傾向に完全終止符をつけたことは記憶に新しい。
 個々の選手の運動能力が高いのはもちろんのこと、ここ数年の甲子園では試合運びの面でも関西陣営を上回るような準備と対応をみせている。
 昨年はこの戦術面試合運びの点で立命館大学が圧倒されたこともあって、今年の関西陣営(選手チーム関係者はもちろんのこと一般観客まで含む)は、甲子園に法政大学を迎え入れるにあたって、戦々恐々の思いを抱いている。
 昨年の立命館大学に続いて関西学院大学も打ち破ることになれば、今度は東高西低が囁かれることになるだろう。

 今シーズンの法政大学は、関東大学リーグ戦を7戦全勝で勝ち上がり、さらに関東大学選手権でも慶應義塾大学を寄せ付けない圧倒的な力強さを見せて関東トップに上り詰めている。大差圧勝やロースコアながらも試合内容や選手起用をみると余裕のある試合もあったように見受けられる。

 今秋の関東勝ち上がりや、昨年甲子園勝利、今春関西学院大学に圧勝を観ると法政大学に、もしかしたら油断というのがあるかもしれない。(そんなことは決してないのだが、そのくらい恐れ??ているということです。)
 しかし、関西陣営打破に向けて今シーズンベストの状態に高めて甲子園に乗り込んでくることは間違いない。

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 関西学院大学は、5年ぶりの甲子園出場となった。過去94年から96年までの3年間甲子園の地を離れたことはあるが、4年間は初めての経験である。
 この4年間はいずれも立命館大学に甲子園の道を阻まれ続けて来たのだが、今年は関西学生リーグ戦最終戦、神戸ユニバでの立命館大学との全勝対決に勝利して悲願の甲子園復帰となった。

 冒頭に記したように、関西学院大学は春にヨコハマで法政大学と対戦していて、最終スコア3−45、第1Qだけでも3TDを奪われるという完敗を喫している。
 この試合を中心に、今春5月から6月にかけては絶不調の時期だった。そして、今は半周期経過した12月ならばチームコンディションも春とは正反対で絶好調??
 と、冗談はさて置き。

 近年遠ざかっていた甲子園フィールドに復帰し、そして、春の不調から這い上がってきて到達した最後の場所での再戦は、関西学院大学にとってこれ以上はありえないという最高のステージが準備されたことになる。

 試合に向けての集中力は、否が応でも高まり、高揚感に満ち満ちた姿で甲子園の芝を踏むことだろう。今シーズンベストのパフォーマンスを展開してくれることは間違いない。春大敗の借りを返して、2001年以来のライスボウルへの道を、切り開くことができるか。

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 今年観戦した法政大学の試合は、春のヨコハマでの関西学院大学戦と、秋リーグ戦最終戦で早稲田大学戦の2試合である。正直なところ、春よりも秋の試合のほうがスキルアップなどの成長分が見えるはずなのだが、実際は、春ヨコハマでの試合のほうがまとまっていたような印象を受けた。

 だが、法政大学にとってヨコハマの試合は、春の集大成という位置づけで最高の状態で試合に臨んだであろうに対して、リーグ戦は、まだ関東大学選手権と甲子園を控えていたので、これからという位置づけだったのかもしれない。春のベストは見たけども、2006年のベストはこれからということなのだろうか。
 あるいは、私の中で春の大勝のイメージが美化されている可能性と、アミノでの私の観戦姿勢の問題の可能性も残る。したがって、法政大学に関する試合展望は、あまり参考にならないかもしれない。
 なお、関東大学選手権の観戦記については、こちらに詳しく書かれているので、のぞいてみてください。

 早稲田大学戦での法政大学オフェンスは、QB#4菅原によるショットガン隊形からのランパスのバランスアタックという組み立てになっていた。パスターゲットは、WR#7本間、#11戸倉、#81栗原、#89東など。
 ショート〜ミドルレンジのパスが多く、DBの隙間に入り込んでくるレシーバーへのタイミングパスは精度よく連続ヒット、さらに、スローバックパスキャッチからのランなど、バリエーションは多い。レシーバーは複数人するが、いずれもパスターゲットとなりえる層の厚さにあり、さらに、RB#29丸田もパスターゲットとして加わる。

 レシーバーの皆に注目してほしいのだが、一人挙げるとすれば、やはり、WR#11戸倉。パスキャッチセンス、DBマークを外すセンス等々でファインプレーの連続に目が離せない。ショート〜ロングのパスターゲットとしてはもちろんだが、QBの最終ターゲットとしてのセイフティーバルブとしても機能する信頼性の高いレシーバーである。
 スピード派というよりは、どちらかと言えば技巧派タイプだが、スピードも侮ることが出来ない。QB#4菅原からWR#11戸倉へのパスは、法政大学オフェンスの生命線の一つであり、WR#11戸倉には注目しておきたい。

 ただし早稲田大学戦では、OLのパスプロテクトが長時間維持できていたこともあって、QBが自由にパスターゲットを探すことが出来た。これがパス成功し続けた要因になっている。関西学院大学ディフェンスと向き合ったときでもパスプロが機能するか否か、そのときのQB判断のタイミングと正確さ、このあたりは実際に対戦してみないと判らない。

 さらに、OLのパスプロが長時間維持できるわりには、RB#29丸田の中央突破ランがそれほど大きくゲインできなかったのも早稲田大学戦である。ランプレーでゲインできなくなると、アスリート揃いのパスターゲットと言えども、関西学院大学のパスディフェンスもレシーバーカバーの対応がしやすくなるのは間違いない。

 春ヨコハマでの関西学院大学戦では、QBのパス判断も的確かつスピードがあり、ランプレーでもゲインを稼ぎ出していたのだが、この甲子園ではどちらの姿を見せてくれることになるのか。もしも、オフェンス手詰まりになることがあれば、OLとQB周辺のタイミングがずれていった時、だろうと考えている。

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 一方のディフェンスだが、早稲田大学戦ではDL#99萩野、#59山崎、#90伊倉、#79黒澤という昨年からほぼ不動のメンバー、LBはLB47#内村、#2細井、#5上羽、#44福田などで。
 経験豊富なDLパワーも強烈だったが、ディフェンスポジションの中心であるLB#47内村の動きには要注目で、法政大学らしいパワースピードを兼ね備えたLBで、相手攻撃をことごとく破壊していた。また、DBもスピードがあって、#27浅野、#34樋田などのパスカバーは秀逸である。

 実は早稲田大学戦では、法政大学ディフェンスが圧倒していて、ディフェンスが追い込まれたシーンがなかった。さらに春関西学院大学も完封されている。今年ここまで法政大学ディフェンスのベストメンバーが追い込まれたシーンがあったのだろうか、それ程の強力なパワースピードを擁するディフェンス陣である。

 したがって、攻略ポイントが見えないのだが、こういう時は、WRとDBの1対1対決に持ち込むのが、おそらくは関西学院大学側のストーリーになるだろう。だが、はたしてDLがQBにパスを投げる時間を与えてくれるだろうか。関西学院大学オフェンスプレーがDLとLBに潰されてしまったら、手がなくなってしまう・・・・。

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 関西学院大学オフェンスは、QB#9三原によるショットガンからのランパスバランスアタックを展開、パスターゲットには、WR#81榊原、#91萬代、#95韓、さらに、#1岸、#84徳井、などターゲットは多く、ショートロング、そして、スローバックと、法政大学同様に様々なパスがある。

 しかし、今年のオフェンスドライブの原動力はRB陣に逸材が揃ったことが大きい。昨年まではランゲインできなくて、レシーバーに対するディフェンスマークが厳しかったが、今年は、ランもパスもありの状態なので、ディフェンスが分散し、それが、ランパスでのドライブにつながっている。

 4年生ランナーRB#35古谷、#31川村は重要なポイントで確実にゲインし、さらに、少しでも前にという気の入ったプレーを見せている。他にRB#21稲毛、#32河原も加わって、ショットガン隊形からのショベルパススクリーンパスはもちろんのこと、オーソドックスだが昨年までは少なかったオープン中央様々にランゲインできるところが今年のオフェンスの大きな特徴になっている。さらに、QB#9三原のスクランブルランも試合を重ねるごとに磨きがかかってきた。

 これらオフェンスを支えるOL陣は、#71白水、#55岡田、#75福田、#78野原、#50生田。シーズンが深まるに連れて主力メンバーが復帰し、ラン走路を切り開くOLの好ブロックが春とは一味違ったオフェンス組み立てにつながっている。

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 関西学院大学ディフェンスは、LB主将#53柏木がリーグ戦最終戦で復帰して、ILBとしてディフェンス全体をリードした。また、ILB#56佐藤も今年の関西学院大学ディフェンスの重要な役割を担っている一人で、要所で確実に決めるタックルが相手ゲインを許さない。また、動きのいい#11深川がDBとの兼務でOLBに配されることがある。

 DLはシーズン当初はメンバーがなかなか固まらなかったが、最終的には、#93早川、#98黒澤、#94荒牧、#97國方いう構成になり、DBは#15藤井、#28山本、#13岡本、#34磯野等。ディフェンス全体の中では、まだパスディフェンスに少し不安の残る立命館大学戦だったが。

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 さて、甲子園における両校対決の見所、そして、勝敗を分けそうなポイントだが。

 春は、法政大学QB#4によるショットガンからに速いタイミングパスが関西学院大学パスディフェンスの隙間にヒットし続けて得点差が広がるという展開だったが、この試合でも法政大学ショットガンオフェンスと関西学院大学パスディフェンスの結果が試合の行方に大きく影響を及ぼすことになりそうだ。

 立命館大学戦での関西学院大学パスディフェンスを見ると、やはり、DB間へパスを通されるシーンが多く、今回もWR#11戸倉、#89東、#81栗原などへある程度のパスヒットは避けられないだろう。関西学院大学DB陣のアグレッシブなパスレシーバーマークがあれば、様子は変わってくる。

 もう一つは、法政大学OLのパスプロテクトとQB判断速度に対して関西学院大学DLLB陣が効果的なプレッシャーを与えることができるか。秋シーズンはまだ本調子でないかもしれない法政大学OLQBにプレッシャーが届けば、パス精度も変わってくる。
 厄介なのは、QB#4菅原が走れることと、RBへのパス。特にパス警戒でディフェンス後退したところへのQBスクランブルドローからのビッグゲインはあっても不思議ではない。

 関西学院大学ディフェンスと法政大学オフェンスの対決としては、パスの成否を注目ポイントとしてあげておく。

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 一方の関西学院大学オフェンスと、法政大学ディフェンスの攻防だが、こちらも、法政大学ディフェンスのパワーとスピードに対して、関西学院大学は手を焼くことになりそうだ。
 法政大学ディフェンスに対して真正面からの力とスピードによる真っ向勝負では、法政大学優位は揺るがないだろう。もっとも、関西学院大学側も、正面からの力勝負は挑まないだろう、無理な勝負は避けるという意味で。

 やはり、カウンター系のランとスローバックパスなどのディフェンスを左右に大きく振り回すプレー中心の組み立て、そして、時折、その裏となる正面ラン突破という組み立てになるのではないか。
 法政大学ディフェンス相手に連続ドライブできるような状況にはならないだろうが、カウンター系のランパスによる1回のミドルゲインを、チャンスを確実に得点につなげたいところだ。

 関西学院大学オフェンスが、パワースピード溢れる法政大学ディフェンスを避けながら(左右に振り回しながら)ドライブできるか否か。パスターゲットとなるレシーバー陣とQBのコンビネーション、そして、左右へ振り回した後のRB#35、#31などによるランプレーで、どの程度ゲインできるか。つまり、プレー順序とプレー精度である。関西学院大学オフェンス全体の戦略面に注目したい。

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 この試合は、関西学院大学勝利ならば、僅差ロースコアの試合展開、立命館大学戦のような展開から選手ベンチスタッフ全員の力を結集して勝利を掴むというストーリーになるだろう。
 そして、法政大学勝利ならば、大差の春ヨコハマボウルの再現のような試合になりそう。

 過去法政大学と関西学院大学の甲子園ボウルで法政大学圧倒的優位が言われたのは、法政大学DL主将基、RB池場のスピードランとLB志賀を擁した1997年の対戦のときだった。関西学院大学QB高橋による試合時間残り59秒からの同点ドライブとPATキックが失敗となって同点両校優勝となった試合である。
 法政大学の得点力とディフェンス破壊力が、関西学院大学を粉砕してしまうかと戦々恐々だったのだが、ロースコアの試合展開になったことで関西学院大学にも勝ち目が見えてきた試合だった。

 今回の力関係は1997年と似通った状況にあり、おそらく、今回も関西学院大学側はロースコアの試合展開に持ち込まないと苦しいのではないかと考えている。
 そして、ロースコアの試合展開に持ち込めたとしても、重要なポイントでタイムアウトをとる余裕冷静さが関西学院大学サイドラインにあるか否か。
 ミスが全くない試合というものは絶対にありえないが、しかし、個々人のプレーはもちろんのこと、スタッフのベンチワークまで含めた全てで法政大学と向かい合った結果がスコアに現れてくる。

 法政大学は、昨年の立命館大学に続いて関西学院大学をも打ち破るとなると、それは、まさに「関西征伐」である。近年は、選手個人の運動能力にベンチワークが加わった緻密なプレー展開が加わり、容易には攻略できなくなっている。
 今年ここまで、競った試合が少ないように思えるが、甲子園連覇のためのパワー充填ならば、一方的な試合になる可能性も十分にありうるだろう。

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 阪神甲子園球場は、今回の甲子園ボウルのあとに本格的な改修工事に入る。そして、来年と再来年の2年間、この東西大学王座決定戦は甲子園の地から離れることになる。

 しばしの別れとなる緑の天然芝、縦横無尽に駆け巡るのは法政大学のオレンジか、それともKGブルーか。決戦です。



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 なお、今年からライスボウルへ出場する学生代表チームの決定方法が変わります。
 これまでは、東西大学王座決定戦甲子園ボウルの勝利チームがそのままライスボウルへ出場していましたが、今年から、東西大学王座決定戦勝利チームに加えて、東日本大学王座決定戦勝利チームと西日本大学王座決定戦の勝利チームも加わった合計3校の中から、日本学生アメリカンフットボール連盟が協議して決定したチームがライスボウルへ進出するように変更されました。

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(了)