関西学生アメリカンフットボール Div.1 シーズン展望

Updated, 2005 Aug. 25 at 03:01 JST.
Updated, 2005 Aug. 27 at 16:21 JST.



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立命館大学・関西学院大学・関西大学・京都大学・神戸大学・龍谷大学・近畿大学・同志社大学




立命館大学
○48− 7早稲田・○13− 7イワタ・○28− 6関西大・○27− 7東海大
●14−33アサヒ

 昨年は、その前年までの不動メンバー(QB高田・WR冷水河瀬・TE栗山、DL森・飾磨・平井・LB八木など)が卒業してしまったことで資産ゼロからのスタートだったが、2004年のチームを作り上げて関西学院大学との同率優勝ながらチーム初の関西学生3連覇を達成した。
 3連覇の次は4連覇が目標であり未踏の記録を伸ばす挑戦の年となるのだが、昨年のシーズン展望で、「連覇がなれば立命館大学の時代到来か」と記したように、その兆候が少しずつ見えてきており、今年も頂点に立つようであれば、関西学生の歴史に「立命時代」の文字が刻み込まれることになるかもしれない。

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 オフェンスは、今年もQB#12池野中心のショットガンになる。春の試合ではQB#3渋井、#16木下も加わった3人が交互に起用されているが、やはり今年のエースQBは#12池野が務めることになる。
 昨年リーグ戦関西学院大学でみせたQB#12池野のパフォーマンスは、おそらく全ての点において最良のパフォーマンスだったと誰もが認めるところだろう。その後のプレーオフから甲子園・ライスで必ずしも彼の本調子でなかったことは、反対に見ると当初の予定通り1年間でこの日だけは必ずピークを持ってくるという年間コントロールが確実に成されたと言える。
 年間にいくつものピークを作ること、そして、おそらくは予期していなかった出番を同じレベルにコントロールすることは得てして難しいことであり、昨年の課題の一つではある。ただし、今年は最終節が関西学院大学戦であることを考えると、日程が近いこともあって、たとえその後に試合がいくつあっても、いずれもベストパフォーマンスを見せてくれることだろう。

 オフェンスバックスメンバーは、今年もアスリートが揃っている。RBは#22佃が中心だが、それに続くメンバーとして春の試合で出場機会が多かったのは、#34石井、#46山城である。なお今春の試合ではスクリーンパスを多用しており、今年のキープレーの一つになるかもしれない。ランとスクリーンの併用はディフェンス側から見るとLB付近がしっかりと対応しないと厄介なオフェンスになりそうだ。

 パスの受けてであるレシーバー陣も、WR#88大滝、#11前田、#87本多、#5阿南、#松村、#27和田、TE#15末原、#89森脇などなど人材が豊富すぎる。いずれのレシーバーともスピード・高さ・テクニックで優秀なのは当然だが、特筆すべきは誰もがボールへの執着心も高く、少々の難しいパスならばボールに飛びついて、きっとスーパーキャッチを披露してくれることだろう。したがって、何らかのきっかけで接戦になったとしても、ここ一発のパスだけはつないでしまいそうな期待感と安心感があり、そして相手ディフェンスにすれば絶対に手が抜けないレシーバー陣容であgある。

 OLには#74佐々木、#76寺戸、#52谷口、#65田口という陣容は昨年からの入れ替えもあるが、QB池野に落ち着いたプレー判断時間を与えることができれば、このオフェンス陣容ならば大崩れすることはないだろう。
 なおFGキックは今年2年目の#30澤和が担当する。これまで厳しいシーンでのキック機会が少ないが、今年は注目したい。

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 ディフェンスは、DLLBDBいずれにも中心となる選手が存在していて春の段階でほぼ見込みがついているようだ。もちろん、ひと夏経過しての上乗せ分と含めて、春とは少し違った11人になっていくのだろう、シーズン中の更なる成長が楽しみである。

 DLは#57谷野、#10谷澤に昨年最終戦から登場の2年生#56岡本という布陣でシーズンに臨む。今年の特徴は、爆発的な破壊力破壊者が存在しないことだが、どのように影響するか、あるいは、自由に動ける#56岡本などの若い学年から新規の破壊者が登場するか。DLは立命館大学ディフェンスの顔でもあり、注目ポイントの一つである。

 LBは主将#9塚田と#44橋本、#45北仲に#41木下、#47篠倉という新しいメンバーも台頭してきている。ディフェンス3ポジションの中では最も新スターターの多いポジションだが、昨年のLBも一年間でしっかり成長しているように今年も秋冬には頼もしいメンバーになっているだろう。OLBの動き的な面も含めてLB陣の成長を楽しみたい。

 DBはスターター3年目の#三宅、#32河合、#4河村、#17黒田という布陣になりそう。さらに#14藤本、#31乗次、という次代のメンバーも春から経験を積んでいる。ディフェンス3ポジションの中では昨年からのメンバーが最も多くランにもパスにも大穴が存在しない安定感がある。その中でもDB#13三宅のボールキャリアの見極め判断とそのキャリアへ向かうスピードは芸術品ですらあるが、今年は#4河村、#14藤本などが芸術的嗅覚の後継者になるかもしれない。

 なお、春の早稲田大学戦や関西大学戦ではフリーキックやパントのリターンカバーが甘く、大きく戻されるシーンがあった。今年はリーグ内にも高速リターナーが多いので修正できてないとリターンTDシーンがあるかもしれない。が。

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 昨年は10月末に関西学院大学との頂上決戦を行って敗退、その後12月にプレーオフでピークを作り、甲子園ライスと2週間隔での試合を行った。ピーク作りモチベーション維持というコンディション面では、何度もピークが必要な難しいシーズンだったのだが、そこをしっかりと勝ち抜いての頂点奪取だった。

 その点では、今年は最終戦までに徐々に調整できそうであり、11月ピークの一山のみなのでコンディショニング作りでは昨年よりも簡単だろう。ただし、この余裕が逆に序盤戦での調整遅れになってよもやを引き起こすことがありえるかもしれない。

 その序盤戦は開幕戦同志社戦から近大・龍谷・神戸と続くが、相性の悪い近畿大学には第4Qに追い上げられて1軍が再登場した昨年以外にも接戦になった過去がある。さらに昨年の神戸大学戦第3Q終了時点で7−6など立命館大学といえども決して安泰ではない。シーズンインから準備万端の最終戦までをどのように調整しながら白星を重ね、そして、成長していくか、しっかりと見届けたい。

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関西学院大学
○34−21日本大・○48− 7日体大・○34− 3京都大・○45− 6明治大
○56−16神戸大・○24− 3関西大・●20−23松電工

 昨年は関西学生の頂点に立つことはできたが、立命館大学との同率優勝であり、プレーオフでの惜敗で甲子園への道が閉ざされてしまった。これで甲子園から遠ざかって3年が経過した。過去にも甲子園出場が3年間途絶えたことはあったが、4年連続は、ない。関西学院大学としては今年は是が非でも甲子園までたどり着かなければならない年になる。のだが、悲壮感が漂っても固まってしまうだけなのでやめておこう。
 12月に甲子園の柔らかい芝の上でアメリカンフットボールができること、そして、フットボーラーとして東京で過ごす正月。それに向けての春の試合は学生相手には6戦全勝で終えることができた。集大成の松下電工戦では黒星を喫しているが、それは夏の課題を提供しているに違いない。

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 オフェンススタイルは、今年もショットガンからのランパスになるだろう。パスターゲットはWR#20三浦を筆頭に、#1岸、#85秋山、#86水原、#27多田羅と様々のターゲットが揃う。特に2年生の#81榊原と#91萬代はスピードがあう上にボールへの執着心も高いのでミラクルパスキャッチシーンが続出しそうだ。今シーズンはもちろんのこと来シーズン以降の中核を担うであろう大勢の2年生レシーバーの活躍と成長は今からとても楽しみにしている。
 なお春の試合ではTEが活躍するシーンが記憶にないのだが、昨年リーグ戦立命館大学戦でもTEOLの存在が大きくクローズアップされたように、攻撃パターンを広げるための重要なポジションであり、#95韓などが頭角を現してきてほしいところだ。
 ショットガンオフェンスの中心となるQBには4年生#10出原が就く。スターターは今季からで、昨年までのバックアップとは起用方法が異なるのだが、試合経験は充分に積んでいるので問題はない。パス判断で試合毎に大きくムラがあるように見えるが、春の試合ではショットガン隊形からのスクランブルランで自らが距離を稼ぐなど、パサーランナーとして活躍しており、手持ちの駒が多いQBである。
 なお春の試合では、2年#9三原、1年#加納も交代で登場している。この両名は、昨年、出原がQB河野のバックアップを勤めたようにチェンジオブペースの大役を担って出場する機会がある。

 そしてショットガンオフェンスを支えるOL陣には主将#70松本中心に、#76小林、#78野原、#50生田という布陣になる。今春にDLからコンバートされた#50生田は、#78野原とともに来年のOLの核をつくるべく長期戦略による。3年と4年を中心に構成されているOL陣は力強さに物足りなさを感じる春の試合が多かったが、攻撃をどのように組み立てるか、ランパス比率とかプレー選択に大きく影響を及ぼす重要なポジションなので、ひと夏超えたことで大きく変貌を遂げていることだろう。

 RBは技巧派#26辻野、パワー系#40吉岡、そして#23稲毛が中心メンバーになりそうだ。大人数のレシーバーと比較すると、タイプ人数とも層の薄さが目立ってしまうが、QB#10出原によるショットガンからのスクランブルは、体格が大きい見栄えのするランナーに変貌するサプライズ効果によってランプレーの幅を広げている。

 パンター&キッカーは、昨年に引き続いて#11小笠原が兼務するが、関西学院大学代々のパンターの流れを引き継いだ絶妙なコントロールキックは秀逸で飛距離滞空時間とも常にベストのキックを繰り返している。また、カバーチームとのコンビネーションは、相手チームにリターンをほとんど許さず、キッキングゲームで優位なポジションを得て試合をコントロールするという丁寧な取り組みは春の時点ですでに仕上がっていた。
 一方で高速リターナー#81、#91が存在する意味は大きく、オフェンス劣勢だった松下電工戦でも2TDを挙げているように、力の均衡した試合では、重要な戦力になるだろう。


 春の学生相手の試合ではオフェンス主導で試合を作り上げて危なげない試合展開が続いた。ただし、相手ディフェンスが未整備だったことも大きく、社会人松下電工に対しては、オフェンスでは1TDしか奪えていない。学生と社会人を同列に扱うのもどうかと思う一方で、「全ての」学生を相手にいまのオフェンスが機能するのか否か。
 今春の得点シーン・得点ドライブは、QB#10出原のスクランブルによるミドルゲインが絡んでいたことが多い。他にはWR#20三浦、#81榊原、#91萬代へのミドルレンジ以上のパスがきっかけになっており、小さなゲインを積み重ねたロングドライブというシーンが少ない。オフェンス全体のパワー不足がポイントになる試合があるかもしれない。

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 ディフェンスは春はメンバーポジションともいろいろと試行錯誤していたように見受けられる。個々人のスキルアップが目標であってディフェンス全体のコンビネーション確立までに至ってないかもしれない。ひと夏の経過とシーズン序盤の時間を用いて修正しつつ組み上げていくという試みなのだろう。おそらく内部的にはそれなりに結論が得られているのだろが、外部からでは、結局どうなったのかが見えない。

 今春出場機会があったメンバーを列挙してみると、DLは#58庭野、#52上村、#97國方など。LBは#49井上、#53柏木、DBと兼務の#16河合、DLと兼務の#56佐藤。DBでは、#13岡本、#21片山、#16河合、#15藤井、#19岩城、#45磯野、#8泊、#44笠原など。いずれのポジションとも4年生が少ないのだが、アスリートが多く揃っているのが特徴であり、怪我人が発生してもロスは少ないだろう。他に#4橋本、#57市村が控えるなど人材面は豊富である。

 フロント第1列DLは#58庭野が中心、第2・3列のLBDBは、いずれのポジションでも勢いのあるプレーで目立っていた#16河合を中心にして全体を構成していこうとする試みは見える。ポジションが流動的だった春シーズンを経て秋はどのような布陣で臨むのだろうか。LBとDBについては私なりには決められるのだが、ここで挙げるのはやめておこう。

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 今年の春の関西学院大学は、オフェンスはQBスクランブルとミドルレンジ以上のパスが決め手になるがパワー不足な点も否めないこと、ディフェンスはコンビネーションについて未確認だがアスリートは揃っているという状況である。だが攻守とも不確定要素が多いように感じるのは、故意に隠しているようにも思える。
 リーグ戦開幕戦の対戦相手は近畿大学。そこから、同志社・神戸・龍谷と続く。シーズン序盤から中盤にかけて、今年の関西学院大学攻守の姿が徐々に明らかになっていき、そして、第6節京都大学戦と第7節立命館大学戦の二大決戦を迎える頃には、今年の攻守が完成しているはず。今シーズンは宝が池初登場という話題もあるが、関西学生単独覇権奪取と甲子園出場が最大目標になる。しっかりと見届けたい。

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関西大学
●14−24法政大・● 6−28立命大・●21−31早稲田・● 3−24関学大
●10−21BE

 関西大学は、この2年間のリーグ戦で京都大学や関西学院大学の大物食いを行って2年連続4勝3敗という成績を残した。さらに昨年は単独3位という位置に到達しており、今年はDIV1昇格3年目というよりは上位定着「以上」を狙う年になる。DIV1昇格以降は着実にステップアップして快進撃が続いているが今年は何を見せてくれるだろうか。今春の試合では黒星が続いているが、DIV1上位狙いの今シーズンは注目である。

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 オフェンスは今春私が観戦した4月の法政大学戦と5月の立命館大学戦ともショットガンフォーメーションによるランパス主体の組み立てだった。だが、聞くところによると6月の試合ではセットバックに戻したようで、その時にどのようなオフェンス組み立てになっていたのか、さらに、セットバックに変えた理由などがどこにあるか見えない部分が多い。いずれにせよ私が観戦した5月までとは様相が異なっている。

 QBは最上級生#3堤が怪我で出場機会が少なく3年の#14森口がほとんどの試合を指揮している。バックスはRB#22中西のキャリーをメインにした組み立てが多かったが、他にRB#29河原、WR#25小西、#17西尾、#83三宅、#8北尾、TE#80光山と絶対数は揃っている。春観戦した試合ではスクリーンやショベルパスのターゲットもRB#22中西が兼任だったが、オプションのQBキープやTEパス含めプレーの組み立て方によっては、試合内容が大きく様変わりするだろう。

 RB#22中西にボールを集めつつ、それは次のプレーの布石となれば、プレーアクションも十分に効果があり、一気にWR#25小西、#8北尾への縦パスでロングゲインの可能性もある。その他にも、リターナー#17西尾の高速リターンによる優位なフィールドポジションの獲得と、K#20西口によるFGキックなど。
 オフェンス全体に得点力はある。あとは、オフェンス組み立て方次第といえる。正直な単調な組み立て方では相手ディフェンスの餌食になってしまうが、裏プレーを意識しつつボールを集めるなどいやらしいオフェンス組み立てになれば怒涛のドライブが続くはず。春の成績は不調だったが、侮れない存在であることに間違いない。

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 ディフェンスは、DL#59野田、#90和久、#91杉山、#94岡田、LB#4平岡、#34濱口、#44鈴木、#51遠藤、DB#24大塚、#7大亀、#13山本、#27地下というメンバーが揃う。ただし今年からのスターターが多く、さらに、若い学年が多数ということもあるのだろう、今春の試合ではコンビネーション不足とかポジショニングが課題など、DLLBDBいずれのポジションにも課題が多かった。だが、この中には高校時代から活躍していた選手も多く堅実なディフェンスになる素地はある。いい方向に回転すれば。

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 開幕戦は昨年と同様の金曜ナイター試合となった。昨年の開幕戦では関西学院大学にあと少しで逆転勝利までの接戦を演じて一気に盛り上がったが今年は立場が大きく変わる。リーグ戦前半の対戦相手が龍谷・神戸・同志社と続く今シーズンは序盤戦からピーク維持が必要で気の抜けない試合が続く。オフェンスのプレー組み立てとディフェンスのまとまりと。DIV1の3年目シーズン上位定着のための重要なシーズンの関西大学に注目したい。

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京都大学

● 3−34関学大・●17−52鹿 島・●13−21日本大・● 9−14東京大

 昨年リーグ戦は3勝4敗という負け越しの年となってしまったが、それでも、関西学院大学には2連勝、神戸大学には98年以降連勝とこの2チームに対してだけは優位が続いている。当事者でない単なる外野の勝手な想像だが、宿敵関西学院大学とか苦手神戸大学と言われているこの2チームに対する何か特別な意識があって、それが勝利をもたらしているのだろうか?。今年のリーグ戦はどのような展開になっていくのか攻守メンバーを見ておきたい。

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 オフェンスは、中央付近のランプレーを中心に時々TEやWRへの短いパスをつなぐという昨年のスタイルから大きくは変化しないだろう。ただし昨年はIフォーメーション(QBの後ろにRBが縦に並ぶ)からのスタートだったが、今春はTフォーメーション(QBの後ろにRBが横に並ぶ)を多用していた。
 Tにすると、RBがラインを抜けるまでの距離が若干短くなるのでOLの負担が少し軽くなることと、RBの左右どちらにボールを渡すかというトリッキーな動きや左右RBの反対側へ抜けるカウンター系のランでディフェンスを撹乱したり、さらにQBキープを混ぜたオプション等の様々なオフェンス組み立が考えられる。タイミングの違いだけでも更なる工夫ができる点で一般的にIよりも攻め手が広がる。
 さらに、TEへの短い中央付近のパスと、WRへの外へのパスが加われば、いずれも5〜10ヤード程度のショートゲインのプレーだけなので派手さはないが面白いオフェンスになる。ディフェンス側から見るとLBがしっかり対応しないと短い距離だけどもズルズルと進まれてしまう厄介なオフェンスである。いい方向に回転すればなかなか止まらないだろう。

 QBには、4年#3御澤と2年#12宮下の併用そしてRBは#19奥原、#35木戸、#17藤原、#25土屋という体格を生かしたパワー系のプレーヤーが揃う。さらにOLには#56福江、#50伊藤、#65恒川など体格の大きい大型ラインの押しがRBの中央ランホールを開ける。また短いパスターゲットはWR#82鋤崎、#富永、TE#89山本と揃っている。

 なお、短い距離をコツコツと積み上げていくスタイルなので、何度も得点チャンスがあるわけではなく、ロースコアの試合展開になるのは必至である。したがって敵陣へ入ったチャンスは必ず得点しなければならない。TD7点が理想だが最低でもFG3点は必須でK#28佐々木のキック力にも注目である。

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 ディフェンスはDL#90市川、#94桂木という昨年からのメンバーに#76井上、#91三井という若手が加わった。DBでは#21金、#22中西、#37吉田、#34増田、LB#10森田、#36曽根田、#29植竹という布陣で、日本大学戦で動きの目立った#小林など若い年代にも注目である。

 ただし、ディフェンス全体の中心司令塔となるLBに若手が多く経験不足ということもあって春の試合ではウイークポイントになってしまった。さらに日本大学戦ではLBDBのパスカバーの甘さと、DLのQBへのプレスが弱いことことで終盤に追い付かれてしまったように、いくつかの課題が見えていた。一方で日本大学戦で#金がLBへ入るという工夫もあり、まだまだ春は成長途上試行錯誤の段階に過ぎない。ひと夏超えて春の経験を踏まえて成長してくることを期待できるメンバーである。

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 京都大学チーム全体で見ると、攻撃スタイルがショートゲインを積み重ねるスタイルなのでロースコアの試合になる可能性が大きい。したがってディフェンスは相手に多くの点を与えられない。このようにディフェンスの活躍が勝利のための必須条件であり、この前提が崩れると少し苦しい展開になってしまう可能性も少なからず残る。

 今年もリーグ戦開幕戦は神戸大学との対戦となった。開幕戦としては3年連続の同一カードだが、対神戸大学は1998年以降連勝中でもある。神戸大学に対して苦手意識があると考えているのは外野だけかもしれない。春は、関西学生・関東学生・社会人のトップクラスを相手に黒星が続いたが、秋は昨年同様に神戸大学戦好スタートからリーグ戦を戦い抜く京都大学の姿を楽しみたい。

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神戸大学

○30− 7横国大・○27−19近畿大・●16−56関学大

 6月の創部30周年記念試合では関西学院大学の手荒い祝福を受けた形になってしまったが、ここからどのように立ち直っているか、どのようにステップアップしているか。毎年コンスタントに白星を稼ぐ神戸大学が昨年の3勝4敗の同率4位から創部30周年最後を更なる上位の成績を残せば記念試合の意義があったと言える。今年は久しぶりにオフェンス主導のチーム構成になりそうでもあり、色々と興味深いシーズンになりそうだ。

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 神戸大学はここ数年はディフェンス主導のチームだったが、今年はオフェンスが試合の流れを作っていく形になるだろう。そのオフェンススタイルだが、昨年はショットガンもかなり用いていたがどうやら今年はセットバック中心のスタイルに落ち着きそうだ。選手層ではラインが大型化しRBも複数名揃って近年ではかなり充実している。甲南大学戦と近畿大学戦では、OLの力強い押しとRBのランコース判断による中央突破ラン(UBダイブ・TBドロー)のコンビネーションによって繰り広げられたロングドライブが印象に残った。特にFB#2井ノ上のランナーとしてとTBのブロッカーとしての動きが秀逸で、他のRBはTB#1中井、#29中桐、#32竹内、FB#92東と揃っている。OLは#53水谷、#54安田、#70森嶋、#58伊勢など100kg超級の大型ラインに注目で、OLとRBのコンビネーションは春の段階で概ね確立されており、ダイブやドローの中央突破ランだけ時間消費しながらドライブできる理想形が出来上がっている。

 レシーバーはWR#12村上、#19福田、#88齋藤と、TE#43三輪、#92東などで層が薄いようにも見えるが、RB陣#2井ノ上、#29中桐などもショートパスのレシーバーを兼務しており、パスターゲット層は充実している。

 神戸大学のオフェンスを指揮するQB#7多和はもともとパスが得意ということもあり、また、RBもパスターゲットになりうる素地があることもあってランパスバランスアタックという組み立て方になるのだるか。確かに春の関西学院大学戦・近畿大学戦ではパス中心の攻撃シリーズも見受けられたが、いずれにしてもQBパスコントロールとレシーバーとコンビネーションの確立が必須になる。

 神戸大学オフェンスが何をしたいのか。レベルの揃った強力OLとパワースピードラン様々なランプレーのできるバックスによるランごり押しオフェンスに徹すれば、ある程度のドライブ得点は見込めるが、そのレベルで満足しても意味がない。さらに、その上に行くためには、パスが必要。ということなのだろう。確かにパス精度が向上していれば、中央付近のランプレーは今まで以上にゲインするのは間違いない。神戸大学の挑戦的なオフェンスは今年のひとつの重要な観戦ポイントになる。

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 一方ディフェンスは、DL#57中西、#56金園、LB#5清水、#44山本、DB#6阿部、#22梶山、#25矢野川とポジションごとに中心になるキーマンは存在するのだが、春の近畿大学戦でオープンへのオプションで簡単に破られるなど、全体的にコンビネーションがばらばらの印象だった。

 ディフェンスは、DLLBが相手にコントロールされると劣勢になる。今年のディフェンスの中ではDBが最もメンバーが揃っているが、相手にコントロールされてしまうDLLBの背後では、いかに優秀なDBであっても、やはり荷が重たい。したがって、DLLBがどのようにまとまるか、核となる選手の周囲に並ぶなど来年の中心選手の台頭が必要不可欠である。
 春の経験を踏まえてどのように成長しているか。昨年まで鉄壁ディフェンスと言われ続けていたのだから、チーム内には、まだ、新しい選手をシステム面含めて育てる方法が残っているはず。期待しています。

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 今年も開幕戦は京都大学が相手になる。昨年はホーム尼崎でのナイターだったが今年はアウェイの西京極ナイター開催となる。昨年と同様、神戸大学はこの試合のためだけにひと夏を費やして準備しているはず。だから神戸大学VS京都大学のカードは面白い。この試合の見所はたくさんあるが、それは、第1節展望にて。オフェンス主導でいい展開に持ち込んで好スタートを切りたい。

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龍谷大学

● 7−28同志社・○38−13一橋大・●21−23中央大・● 0-10ファイ

 昨年は攻守ともに関西学生トップ級のアスリートが存在して試合をコントロールし、ディフェンス劣勢のときにも最後の線を維持してDIV1初昇格ながら2個の白星を獲得している。そして攻守のキーマンが卒業した今春の試合の観戦ポイントのひとつは、どのようにチームが変わっていくか、秋シーズンに向けてのその道筋を予測することにあった。
 だが、日程と天候の影響で、実際に私が観戦したのは5月の同志社大学戦のみになってしまった。本当は、6月川崎での中央大学戦や7月のファイニーズ戦も観戦した上で、秋にどのようなチームになりそうか思い巡らしてみたかったのだが。
 その5月の1試合だけからの印象を敢えて表現すれば、昨年は春から気合の入った熱い試合を繰り広げていたことと比較すると、攻守ともに落ち着いた冷静堅実な雰囲気を漂わせているチームというのが感じたところになる。しかし、春シーズンイン直後の印象が的を射ている訳がない。今年のチームがどのように変化して行こうとしているのか、私には見えていないところが多い。

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 QBは2年の#12善元が担当する。大学での試合経験が不足している点は否めないが、それは、経験豊富な上級生の手厚いフォローがあるだろう。そのバックスには、昨年から出場しているWR#8山口、#9中川、RB#1山形、#7辻本などが残っている。特にWR#9中川のパスキャッチセンスは秀逸で、ロング〜ショートいずれにも対応できるパスキャッチセンスは秀逸で、玉際にも強い。またRB山形のパワーラン/スピードランとカットランにも注目したい。
 攻撃スタイルは、昨年のショットガンパス中心からセットバックによるランパスバランスアタック中心になるだろう。関東の大学相手にはある程度得点を重ねておりディフェンスの甘いチームには十分に通用しそうだ。

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 ディフェンスは、春の同志社大学戦ではDL#99石川、#93河井、LB#44西、#91丹山、DB#20島、#21宇津、#26原という布陣だった。だが、これは5月の試合であり、他の試合でも失点が多いように見えるが、この時点からメンバー・ポジションとも変化していることだろう、NEWERABOWLでDL#99石川の活躍が際立っていたように、徐々に整備されているきているに違いない。

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 5月の段階では、まだ今年のチームがどのような形になるのか全く見えていなかったが、スタッフ選手とでしっかりと今年のスタイルを作り上げてくるに違いない。関東の大学に対しては得点を重ねた競った試合になっていることも大きいが、7月ファイニーズ戦は雨天の試合とはいえ社会人相手に10失点で留めた事実を軽視してはならない。
 昨年はDIV1初昇格で2勝を挙げて同率ながら6位という成績を残した。今年はDIV1定着の年としてさらに白星を重ねていってほしい。期待しています。

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近畿大学

●19−27神戸大・○48−21専修大・● 0−33松電工

 昨年は2勝しながら入れ替え戦に出場し、北陸代表の金沢大学にあと一歩に迫られるという薄氷のシーズンとなった。今春私が観戦したのは5月の神戸大学戦1試合のみだが、今年こそは薄氷上の綱渡りを避けられるだろうという思いと、今年ももしかしたら危ういシーンがあるかもしれないという思いと、両方が併進している。今年も両睨みのシーズンになりそうだ。

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 今年のオフェンスの大きな特徴は、WR#25冨尾、RB#7樋口などバックス陣にスピードのあるメンバーが揃っていることである。このような「飛び道具」は、相手ディフェンスの隙間を縫ったり、タックルミスがあったりすると一気ロングゲインとなって試合の流れを一瞬にして変えてしまう。ディフェンスの甘いチームが相手ならば一発TDの可能性もあり、たとえ得点できなくとも有利なフィールドポジションが得られるという点で、今年の近畿大学オフェンスの目玉になるだろう。

 ただしディフェンスのスピードの遅いチームは通用するが、強い早いチーム相手でこの高速キャリアのプレーを止められてしまったときの次の手があるか否か。高速キャリアが縦横に走り回ることができれば大量得点だが、止められると貧攻に陥る可能性も見逃せない。

 本来なら「オフェンススタイル」とか「戦術・戦略」で攻略していくところだが、その方向性が見えにくいところが近年の近畿大学オフェンスの特徴でもある。QB#5春日井と#10岡の併用スタイルも3年目に突入するが、すでにこの段階で方向性が定まっていないのだが。
 オフェンス陣容としては他にWR#6長谷川、#87石田、TE#4橋本へのパスと大型サイズのOL#白木57、#52安井、#91前田が揃っている。陣容的にはサイズスピードを兼ね備えている楽しみな布陣ではある。あとはこれらアスリートを効果的に起用した緻密な攻撃シリーズを組み立てることができるか。今年こそは。

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 一方のディフェンスだが、今年は再建色が強く、春の段階ではいずれのポジションとも、しっくりとしないで苦労している様子が伺えた。DL#99柳川、LB#1中路、#9井上、#2吉田、DB#26井上、#27小野澤などがそれぞれの中心に据わることになりそうだが、その周囲に加わる新戦力が今年の近畿大学ディフェンスの方向性を決める。ひと夏を超えての上乗せ分に期待します。

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 春の試合はいずれも失点が多く、攻守トータルで見ると、試合展開としては得点の取り合いに持ち込む必要がありそうだ。そのためにも攻撃側の整備は必須でオフェンスバックス陣の個性的なスピードの上に何が積み重なるか。攻守とも新戦力新体制に期待しています。

 リーグ戦は第1節関学戦から立命・京大・関大と続く。星勘定だけを考えれば、取り組みやすいシーズンでもある。序盤戦で攻守ともいい経験を積むとその後は勢いの乗って白星が続く可能性もあるが、一方で、つまづくいてしまうと立ち直るきっかけが難しいかも。中庸は、ない。白星が続くか黒星が続くか。今年も近畿大学から目が離せない。

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同志社大学

○35−26立教大・○28− 7龍谷大・●10−28慶應大

 同志社大学のオフェンススタイルは、QB#8村上によるランパスのバランスアタックだが、今年はQBのパスコントロールが一段と向上したこと、RBに多彩なメンバーが揃い、エースRBも怪我なく健在、さらにOLもCで経験豊富な主将#71杉岡など大型ラインが揃っていて、すべてのポジションとも充実著しい。春の段階ですでに昨年と同等のレベルにありそうな勢いだった。更なる成長がなされれていれば今秋リーグ戦の同志社大学オフェンスは面白いパフォーマンスを繰り広げることになるだろう。

 RBにはTB#1永富が怪我から完全復帰して最終学年を迎える。7月のNEWERABOWLでも快速独走のTDランを披露して存存をアピールしていた。
 個人的にはRB#1永富VS関西学院大学ディフェンスの攻防を楽しみにしている。2年前の尼崎での開幕戦はRB永富がフィールド内に存在していただけで様子は変わっていただろう。昨年も開幕戦で負傷しているが、今年が正真正銘最後のチャンス、今シーズンは絶対にフル出場をお願いします。(NEWERA以降、御姿を拝見していませんが怪我していないですよね?)

 ところで今年のRB陣は永富以外にも様々なタイプのランナーが揃っており、春の龍谷大学戦では永富の影が薄くなってしまうほどだった。FBには#32平野、TBは#25福山、#22曾田と#20和田谷、#21山本という高速技巧派の2年生が加わり、OLとのコンビネーションになるダイブプレーやFBをブロッカーに使ったTBドローなどの中央突破ランに脅威が増してきている。

 そして今年の大きな注目ポイントはQB#8村上のパスコントロール精度が向上し、また、DLのプレッシャーを受けながらも度胸が据わったパスを投げられるようになったことにある。昨年も何回か出場機会はあったが、エースQBとなった今シーズンからしっかりとその重責を全うするだろう。
 そのパスターゲットはWR#9池田、TE#4天野の少数精鋭なのだが、QBレシーバー間ですでに長短様々なコースのパスコンビネーションが確立している。時々レシーバー側にイージーなキャッチミスがあったりするのだが、そこは、精度向上を目指してもらいます。

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 ディフェンスは春の龍谷大学戦ではLB副将#99沖宗、LB#55岩佐、#2江上が中心になって引っ張るスタイル、というよりもLBの孤軍奮闘という印象が残った。

 だが、LBはオフェンスのQBに相当するポジションで、前に並ぶDLに対してはOLとのライン戦に備えて細かい指示を与え、左右背後のDBにはパスとランに対する守備範囲の指示と修正を要求するというディフェンス全体を指揮統括する重責を担っている。
 したがって、春の段階でディフェンスの中心ポジションにアスリートが揃っていたことで、DLDBの何が課題でどこをどのように修正すべきかが、秋に向けての課題が明確になったのではないだろうか。今年のディフェンスチームを作り上げていく過程を考えると、言葉は悪いがラッキーだったと言える。DLDB陣が手薄なのは否めないが、DL#78松本、DB#24大長、#18津田など核になる選手は存在する。次代を担う選手も秋までには登場してくることだろう。

 同志社大学のディフェンスに対してはタックルミスとか散見やコンテインコースが悪いとか待ちのディフェンスなどなど、いろいろと言わた時期があった。この数年はディフェンスの形として機能してきているが、今年はもう一段階ステップアップする可能性がある。LBというディフェンスの中心ポジションが先頭に立って作り上げる今年は、例年とは少し違った一枚岩の硬い布陣になるかもしれない。

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 今年の同志社大学はオフェンスにもディフェンスにも楽しみなポイントがある。まず、オフェンスでは、今年は他のチームでもRB陣が充実しているところが多いが、パスは同志社大学がQBの安定感度胸の面で一歩リードしていて、パスコースもショート〜ミドルとレンジが広いことも強みになっている。このように攻撃手段が多彩になるとランとパスいずれもが手詰まりになることはないだろう。得点の取り合いになっても十分に勝機がありそうだ。ただしフォーメーションをセットバックとするかショットガンを多用するかで少し様子が変わってくるが。

 ディフェンスは春の段階では未知だったが、先に示したように、今年はディフェンスの作りが理想的であり、秋登場時の姿を見るのが待ち遠しい。オフェンスに得点力が見込めるので、少々の失点がチーム全体のプレッシャーになることはないだろう。試合展開としてはシーズン序盤はオフェンス主導の形になるだろうが、実戦を通してディフェンスが整備されていくようであれば、今年は同志社大学のステップアップのシーズンになる。

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