第60回甲子園ボウルは、3年連続で立命館大学と法政大学の対戦となった。この対戦は過去に4回行われて立命館大学の4戦4勝で、昨年は38−17、一昨年は61−6というスコアで決している。今年は立命館大学が4年連続6回目を、法政大学は5年ぶり3回目の覇権奪還を目指す。 立命館大学の今シーズンは、リーグ戦第6節では関西大学に第4Q終盤までリードを許しながらも逆転勝利、そして、最終戦関西学院大学との全勝対決では戦では終盤に追いつかれそうな展開を辛くも逃げ切ってリーグ戦7戦全勝で関西4連覇を達成した。 一方の法政大学は、リーグ戦序盤から危なげない得点経過の試合が続き、日本大学戦も終わってみればほぼ完勝でリーグ戦を突破した。関東大学選手権準決勝の早稲田大学戦では1点差の薄氷の勝利だったが、決勝では危なげない試合展開で3年連続の甲子園出場となった。 ******** 今秋、私が観戦した法政大学の試合は、11月03日に現地観戦した日本大学戦と、テレビ観戦となった関東大学選手権決勝戦の2試合である。この2試合から垣間見えた法政大学攻守の特徴を簡単に紹介する。 まず、オフェンスはQB#4菅原とHB#29丸田によるショットガンと、その変形となるHB#29丸田がシフトしたノーバック、そして、セットバックのIフォーメーションからのランパスというスタイルである。ランナーは関東リーグ戦で1000ヤードラッシャーとなったRB#29丸田のスピードランと、パスターゲットはショートからミドルレンジのパスターゲットにTE#89東、WR#1井上、ロングパスターゲットがWR#11戸倉と大まかに示すとこのような攻撃スタイルである。 QB#4菅原とRB#29丸田が攻撃の中心を為していて、さらに、ショットガン・セットバック関係なくQB#4菅原からRB#29丸田へのボールの渡り方が複雑巧妙でダイレクトスナップやらショベルパス等々種類が多い。一種のカウンター系の動きになるので、ディフェンスの判断遅れは致命傷になるかもしれない。 ランプレーではQB#4菅原のキープかRB29丸田のキャリーとほぼ決まっている状態だが、RB#29丸田を囮に使ったフェイクプレーは十分に考えられる。このフェイクプレーが効果的に決まるようであれば、ディフェンス側から見て少々厄介なオフェンススタイルになる。 ディフェンスでは、ILB#97杉本の動きが俊敏で守備範囲が広く、文字通りILBとして守備の要になっている。また今年も法政大学ディフェンス歴代の特徴を踏襲してDLに大型長身のDE#94長谷川を配置、再三のショートパスカットを見せている。さらに、主将DL#9高橋、#90伊倉による第1・2列は今年も絶壁&鉄壁ディフェンスを構成している。 ただ第3列は若い学年が多いこともあるのかもしれないが、パスカバーが若干甘いところがあって、日本大学戦、関東大学選手権決勝ともミドルレンジ以上のパスで抜かれることがある。ただ前への反応は俊敏で、オープンランやサイドパスに対しては相手攻撃を封じ込めている。 なお、スペシャルチームではP/K#11戸倉のキックは距離が出るのでフィールドポジションを一気に逆転することも可能だ。 ******** ところで、日本大学戦オフェンスは、試合前半にショットガンを多用していたのだが効果的でなかったこともあって試合後半からIフォーメーションのランパスに切り替えて逆転勝利した。また、ミドルパスを投じる方向が限定的だったのは相手ディフェンス陣のウイークポイントを突いていたことにある。 戦況分析して、それならば、という方向付けによることは間違いない。アジャスト能力とともに、それだけのプレー種類を準備しているということなのだろう、これが冒頭の「垣間見えた」の表現の意図するところであり、もしかしたら、ここまで披露したこともない何かが隠れている可能性がありそうだ。 この試合でも攻守ともスタイルを変えながら最も効果的なフォーメーションプレーを探りながらということになるだろうが、どの程度の手駒を持っているか。昨年もショットガンからのランパスが機能したように法政大学攻守とも懐に深みを増してきているので侮ることは出来ない。 立命館大学の攻撃に対して、どのようなディフェンスフォーメーションでランとパスをどのように止めにくるか。そして、立命館大学ディフェンス布陣を、どのように切り崩そうとするか。おそらくスカウティングは十分に為されているだろう、法政大学がどのように立ち向かってくるか。 ******** 立命館大学は、複数のスポーツ新聞によるとエースQB#12池野がリーグ戦途中の怪我の影響で欠場する可能性があるとのことで、リーグ戦京都大学戦同様QB#3渋井がフルタイム出場することになりそうだ。京都大学戦以外に神戸大学戦・関西学院大学戦で経験を重ねており、ランパス判断パスコントロールとも既に戦力ダウンにはならないレベルに達している。さらに、OLが最終戦関西学院大学戦で終始優位に立つという成長を見せており、QBOLのコンビネーションも心配はない。 オフェンスバックスはWR#11前田、#5阿南、#88大滝という長身高速アスリートが充実、さらに#27和田、#87本多という来年のキーマンも頭角を現している。RBも#22佃、#26松森のスピードは法政大学#29丸田に劣らない。パワーランナー#99太田の復活も加わり、プレー種類が多いこともあってスピードとパワーを兼ね備えたショットガンからのランパスは、簡単には止まらないだろう。またK#30澤和の成功率の高いFGキックも重要な戦力になている。 ディフェンスはLB3人の堅守が関西学院大学戦勝利の要因の一つであり、LB#9塚田に続くメンバーとして3年#44橋本と2年#41木下の出現は来年以降の基盤構成いう点でも意義深い。DLも2年#56岡本、1年#92前田の動きが良いが、それも#57谷野、#10谷澤が頑丈なためであり、層の厚さを感じさせる。 DBはシーズン当初から最も安泰のポジションで#13三宅、#32河合中心に#17黒田、#4河村、#14藤本等等守備範囲の広いメンバーが揃う。シーズン中盤まではパスディフェンス特にコース取りの面で不安があったが、それもほぼ消滅し、最終列で鉄壁を構成している。 昨年は、プレーオフから2週間後に甲子園ボウルを迎えたこともあって試合序盤はあまり動けていない様子だった。今年はリーグ最終戦から3週間空いている。余裕があるといえばそうだが空き過ぎという見方もある。昨年とはまた違ったコンディショニングの難しさがあるが、そこは昨年の経験が生きて来ることだろう。そして、昨年今年と様々なコンディショニングに難しさを経験しており、立命館大学チームとしての財産が増えつつあることは、甲子園ボウルとは直接は関係ないが、見ておくべきポイントである。 ********* この試合は、やはり立命館大学優位は変わりそうにないのだが、アメリカンフットボールとは流れが相手方に傾くとそれを逆転するまでに予想以上のコスト(パワーと時間)がかかる場合がある。一発でひっくり変えることもあるが、相手側に流れがあるときは、通常ならばなんでもないプレーすら通らなくなる決まらなくなるのがアメリカンフットボールの怖いところで、そういう観点から探し出せば、何試合かピックアップすることが出来る。 2005年12月18日、地球温暖化による暖冬はどこへやらの、久しぶりに厳寒最高気温一桁で降雪残雪さえも予想されている甲子園、試合の行方が見えなくなる要因として挙げるならば、やはり立命館大学オフェンスのテンポが乱れたときと、悪天候によって両校戦力が均等化したとき。 ********* 極寒なので、このHPでの中継はありません(?)。甲子園球場でお待ちしています。 |