東西大学王座決定戦 毎日甲子園ボウル



甲子園ボウル 



12月18日(日) 阪神甲子園球場 13:00
TEAM 1Q 2Q 3Q 4Q 合計
立命館大学 0 7 7 0 14
法政大学 3 7 0 7 17
(現地観戦)
 
立命館大学
法政大学
1Q FG
G×
1Q
2Q
FL
TD
TD
2Q END
3Q
FG×
TD
3Q
4Q TD
G×
4Q END
(作者Aのメモより)
詳細テーブル


年間最優秀選手:丸田 泰裕(法政大学)
甲子園ボウル最優秀選手:丸田 泰裕(法政大学)
敢闘選手:前田 直輝(立命館大学)
NFL特別賞:丸田 泰裕(法政大学)



 第60回の東西大学王座決定戦毎日甲子園ボウルは、法政大学が17−14で立命館大学を下して5年ぶり4回目の学生王座についた。そして3回目の出場となるライスボウルでは社会人代表のオービックシーガルズと対戦する。なお、対立命館大学戦は対戦6度目で初めての白星獲得となった。

 試合展開は、得点の上では立命館大学がリードする時間帯もあったが、試合をコントロールしていたのは最初から最後まで法政大学攻守だった。立命館大学に得点リードを奪われても法政大学が冷静に逆転していき、戦前予想を覆して法政大学の完勝となった。

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 数日前から悪天候が予想されていたが、私がこれまでに観戦した悪天候下で行われた甲子園ボウルとして思い浮かべたのは3試合あった。そのうちの2試合は、第38回大会の京都大学VS日本大学と第55回大会の関西学院大学VS法政大学だった。前者は粉雪の舞う中での試合で6連覇を狙った日本大学が出場2回目の京都大学に圧勝するだろうという戦前予想だった試合、後者は冷たい雨が振っていた中で行われた試合で、この時も戦前予想では関西学院大学優位の声が大きかった。圧倒的優位といわれていたチームが、相手に試合の主導権を握られたまま敗戦していくというこの2試合が脳裏をよぎった。単に偶然の一致の産物でしかないのだが。

(なお、悪天候下でのもう一試合は、第40回の関西学院大学VS明治大学。雨が振ったり止んだりだったが、戦前予想では両校均衡だったように記憶している。試合内容が強烈だったので戦前予想の記憶がないというのが正直なところ。)

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 当日の甲子園球場周辺の天候は、気温は低かったが快晴で、青い空が広がっていた。数日前に遡っても降雨降雪はなく、グラウンドの状態はベストだった。ただ強風がライトからレフト方向に吹いていて、これが若干試合に影響するかもしれないと思いながらキックオフの時を待った。私が着席したのは外野レフトスタンドの端付近、フィールドをほぼ縦方向に眺めるその位置は、強風を正面から受ける場所でもあった。

 コイントスで法政大学が後半行使の選択をし、そして、第1Qは立命館大学が風下に陣を構えることになった。パントの応酬となった試合序盤の立命館大学フィールドポジションの悪さは、単に風下だからであってサイドチェンジすれば攻勢は逆転するだろうと考えていたのだが。
 本当に風の影響だけだろうかと思い直した第1Q中盤、法政大学が攻守ともライン戦で立命館大学に対して優位に立っていた。そして、第2Q以降も力関係が逆転するまでには至らなかった。

 立命館大学は攻守ともラインが押し込まれていたことが起点となってそこから色々と各ポジションに課題が派生していくという状態で、まさしくアメリカンフットボールの基本はライン戦にあることを改めて示した試合と言える。

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 さて、私が戦前に考えていたこの試合の展開は次のようなものだった。

 立命館大学ディフェンスが法政大学の攻撃を封じ込めて試合の流れを支配し、ただし立命館大学オフェンスが負傷者が多いこともあって、あまり得点は入らないかもしれないが、得点上は僅差以上でリードを確保。セイフティーリードを付けるまでには至らずに結果的にはもつれる可能性もあるかもしれないが、最終的にはパスディフェンスの隙間を突いたロングパスで立命館大学の勝利、というストーリーだった。
 オフェンスは手詰まり感があるがディフェンスが試合をコントロールしているので、気持ち的に優位な位置にある立命館大学が最終的にはリードを広げて・・という試合展開を考えていた。

 だが実際は、立命館大学ディフェンスが相手のコントロール下に入ってしまい、得点上も、終始立命館大学が相手を追いかけるという展開になった。

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 ディフェンスが優位に立てなかった理由は、立命館大学DLが押し込まれていたことが筆頭にあげられる。DLのプレッシャーが全くQBに届かず、QB#4菅原に自由にプレーさせていた。だが、法政大学が立命館大学ディフェンス第2・3列を振り回すためのオフェンスプレー組み立てを準備していたことも大きな要因を占めている。

 法政大学オフェンスバックスは、QB#4菅原とRB#29丸田中心にさらにレシーバー陣が加わるという構成は戦前考えていた通りだったが、プレーの組み立て方・狙い所が、過去数年の自分の得意なプレーオンリーだったオフェンスと大きく異なっていた。どのようにしてLBDBを振り回すか、突破口をこじ開けるか、そのために、このようなプレーを準備した、というストーリーが明確だった。

  QBが右サイドへ流れてからの左側レシーバーへの横パス(スローバックパス)を試みるあたりは、立命館大学ディフェンスの傾向を探った準備が伺える。ディフェンス全体を右サイドに誘って左サイドに空間を作り出し、そこへのパスという構図だが、オーバーリアクション気味の立命館大学ディフェンスに効果的な手段として関西学院大学もよく用いている。
 レシーバーとDBの1対1対決を挑んだ形で、最初は立命館大学DBも正確にタックルしていたのだが、法政大学がリードブロッカーを1人付けたことで数的に断然優位となった。
 他にも、QB#4菅原とRB#29丸田による様々なカウンター系のプレーかと思えば、QB菅原からRB丸田へのオプションピッチがあり、さらにRBへのフェイクを入れたプレーアクションパスがTEへ飛んでおいる。このパスは立命館大学DB2人がかろうじて追いついて失敗に終わったが、色々と練られたプレーが飛び出していて、驚きの連続だった。

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 これで少しでも立命館大学OLが相手ディフェンスをコントロールしているか均衡状態であれば、また違った試合展開になったかもしれないが、OLが押し込まれていたことでランの走路を見出しにくく、さらに、長身絶壁のDLが目の前に迫ってくるQB#3渋井にはフリーのレシーバーを探し出す隙間と時間が与えられなかった。
 第4Q中盤で再逆転され、OLが押し込まれている上にオフェンス自らが得点を挙げないと勝利に辿り着かない、ロングターゲットレシーバーが実質1人。大きな舞台でこの状況を背負わせるのは少し厳しい。

 立命館大学OLはリーグ戦関西学院大学戦では十分に機能していて、OLの活躍が白星獲得の一つの要因だった。ただ関西学院大学ディフェンスは3−4隊形(DL3人、LB4人)でOLが直接向き合う相手は3人だったのに対して法政大学ディフェンスは4−3(DL4人、LB3人)。どこかで誰かが書いていたが、DL1人増えたアサイメント上の練成度と機動力ある法政大学DLが力勝負で立命館大学OLを粉砕したといことだろう。

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 第4Q、立命館大学最後のオフェンスドライブ。QB#3渋井からWR#11前田へ縦のミドルパス、RB#22佃の中央ラン、いずれも、あと一歩でディフェンスを抜くプレーだった。パスキャッチしていれば、あと一人抜けていれば、そのままエンドゾーンまで到達していたかもしれない。だが、たとえこれで立命館大学が逆転していたとしても、10年以上続いた関西陣営優位の時代の幕が閉じたことにかわりはない。
 法政大学が1年をかけて準備してきて、立命館大学と対等以上の試合を繰り広げたこと、この事実が、東西格差の時代が終焉を向かえ、そして、東西均衡の時代に突入しつつあることを現している。本来ならば昨年の甲子園ボウルでの法政大学を見た時点で、その準備量について真剣に検討すべきだった。すでに兆候は見えていたのだが。
 驚異的なことは、法政大学が、どのように準備してきたのか。リーグ戦1試合を観戦しただけでも色々と準備している様子は伺えたが、実戦で多くを試す機会はあったのだろうかということ。全ては「この日のために」だったの違いない。

(了)(2006年12月19日 最終5行修正。修正前はソース参照)