関西学生アメリカンフットボール Div.1 シーズン展望

Updated, 2004 Aug. 17 at 00:51 JST.



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立命館大学・京都大学・近畿大学・関西学院大学

関西大学・同志社大学・神戸大学・龍谷大学





立命館大学

 立命館大学は2年連続で関西を制覇し、今年は3連覇に挑む年となる。関西学生の最近の記録では関西学院大学が1999年から2001年まで3連覇を達成しており、立命館大学の連覇はその翌年から始まった。
 しかし、今年のメンバー構成を眺めてみると、ディフェンスは2連覇期間中ほぼ不動のメンバーが大幅に入れ替わり、オフェンスも実質ゼロからスタートのQB#12池野や#3渋井がいろいろと苦労している。
 過去のいくつかのチームの連覇の歴史を振り返ってみると、往往にして連覇の最終年は翌年以降の資産を作らずに、つまり、何もせずに制覇達成してしまっている。今年の立命館大学攻守はそのパターンに近い。

 資産ゼロではないにしても、昨年までと大きく異なる戦力で今年のリーグ戦にどのように挑むか。選手にとってはもちろんだが、チームスタッフにとっても大変重要になってくる。昨年と比較したり引きずっている状態では連覇は難しいだろう。しかし昨年と完全に決別し全ての面で今年のチームカラーを出せれば連覇も可能。連覇が途切れる年となるか、本物の立命館時代スタートとなるのか。注目のシーズンである。

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 オフェンス面では、今年もバックス陣の人材は豊富である。RBにはスピードランナーの#22佃、#21岸野、#23古川、そしてパワーランナー兼サイドパスレシーバーとして#44斎藤が健在である。そして、パスターゲットとなるWR#18木下、#7長谷川は、いずれも一発でロングゲインTDまで持っていけるだけのスピードと相手DBをかわすテクニックを有している。ランもパスもディフェンス側から見ると1個のタックルミスでさえ致命傷になりかねない。

 ただしこれらのメンバーは昨年までの主力であり、#22佃以外は最上級学年でもある。来年のオフェンスバックス陣が心配だが、それよりもまず今年はQBが新規であることが最大の特徴である。

 春の試合ではQB#12池野と#3渋井が昨年までと同様のショットガンを行ってきたが、パスターゲットが限定されていたので、マークが厳しくなると成功率が落ちてくる傾向がある。OL#50佐藤、#75伊部等のブロックは昨年のピークと比較するとまだ未整備という状態だった。このあたりは夏秋の成長を待つことにしよう。

 立命館大学ショットガンはランパス均等というのがここ4年間の理想形だった。そして、今年はQBが変わる。それでも「基本はショットガンからのランパス」とするか、あるいはRB陣のスピードをメインに据えた地上戦という全く異なるスタイルになるのか。いずれにせよオフェンスチームとしてプレースタイルが確立されていくことが最大のポイントである。

 QB陣は春からいろいろと苦しんでいる様子だが、秋開幕までになんらかの形に決めてくることも考えられるが、シーズンを通して形にしていく可能性も残り、OLの整備も含めてシーズンに入ってみないと判らない部分が多い。

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 ディフェンスは昨年から半数以上が入れ替えになっているが、新しいメンバーでも春の試合から大きなウイークポイントを感じなかった。改めて立命館大学の層の厚さに感心してしまう。

 春シーズンのDLは、#99紀平一人が目立ち過ぎで他のメンバーに日が当たらない状況が続いた。昨年までは均等にDLの名前が挙がっていたことと比較すると個人の突出ぶりを示すことになり、必ずしも良い傾向ではないのだが、#59谷野、#57岩崎、#97浮田等が徐々に頭角を現してきている。
 LBも#9田中、#5内田、#9塚田というメンバーが順調に成長しているし、DBは昨年からの#27福島、#13三宅に#32河合が加わってきた。特にDB#13三宅の守備範囲の広さは特筆モノで第3列はほとんど完璧といえる。

 ディフェンスはメンバーが変わったものの、大きな穴は埋まったと言えよう。春から関東社会人を相手に接戦を繰り広げているように、X相手には鉄壁ぶりを遺憾なく発揮している。
 ただしLBのコンテインなど細かいことを言い出すと、まだまだ完成の域には達していない。関西学生上位には達するが、その上を目指すにはもう一歩・あと少し・ひと伸びが欲しい。なお基本スタイルは昨年までの4−3−4と変わらない。

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 さて、今年のリーグ戦日程を眺めていて昨年までと大きく違うところがある。それは立命館大学と関西学院大学の対戦が第5節にあるということである。今年の最大のポイントは、この日程にある。

 昨年までは第5節が京都大学戦、そして第7節が関西学院大学との対戦だった。京都大学と第5節で対戦すること自体も大きな山場に違いないのだが、立命館大学にとって対戦相手が京都大学と関西学院大学とでは、準備すべき内容が全く異なる。

 例えば昨年第5節の立命館大学が第7節の関西学院大学と対戦したときにどのような試合になったか。もっとも、これを詳細に詮索しても意味は為さないし、今年は当然第5節を対関西学院大学戦用に準備してくるだろう。しかし、昨年までのタイムスケジュールと少し違うことがどこまで浸透し、消化されているか。

 攻守とも主力選手の半数近くが入れ替わったことで再構築を強いられ、さらに対戦日程も大きく変わる今シーズンだが、様々な環境変化にも柔軟に対応し、今年のチームカラーを作り上げて連覇達成となれば、本当の立命館大学時代の幕が開くことになる。選手だけでなくチームスタッフ含め大きな意味を持ったシーズンである。



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京都大学

 立命館大学の3連覇について書くにあたって関西学生優勝校の歴史を再確認した。それによると、京都大学の関西制覇は96年を最後に途絶えてしまっていて、それ以降は立命館大学と関西学院大学とで関西覇者を分け合っている。関西学生のトップに立った時期の京都大学を知っている人にとっては、覇権に届かないもどかしさを感じずにはいられないのだろう。
 しかし連覇が途切れてから7年も経ってしまえば、過去の出来事など現役選手には全く関係のないことである。周囲と現役選手との間に意識のギャップが気にかかる。

 アメリカンフットボールの経験者の少ない集団が安定して2位〜3位にいることだけでもすごいことだと誰もが考えていた時代に、もう一度、戻りたい。

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 今年の京都大学オフェンスは、Iフォーメーションからのランプレー主体で時折ショート〜ミドルパスを織り混ぜてゲインを狙うスタイルになりそうだ。攻撃の中心となるQBには#3御澤、スピードの要求されるTBに#33池上、そして、UBには#31中村がディフェンスからコンバートされて起用されている。
 そして、このパワー・サイズを兼ね備えたUB#31中村の存在が今年の京都大学オフェンスの特徴である。

 IフォーメーションにおけるUBの役割は、自らが力でラインを割って走り抜けるランナーになることもあれば、TBのための走路を確保するブロッカーの役割もある。したがってUBに要求されることは、大きな体格と、力があることとスピードがあることである。そして春の関西学院大学戦で見せてくれたように、この全てに#31中村が適合している。

 このようにIフォーメーションの理想形を十分に満たす布陣を敷けるので、OL#52表、66椿、70近藤などとのコンビネーションを含めて全てが噛み合えば、ランプレー中央突破(ダイブ=UBのラン・ドロー=TBのラン・ブラスト=TBのラン)等基本的なプレーだけでゴリ押しできる。
 さらにTE#89東へのクイックパスを絡めるだけで相手ディフェンスはお手上げ状態に陥る。さらに、ミドル〜ロングパスターゲットとしてWR#34飯田、#25森田、#82鋤崎が揃っており、オフェンス陣はかなり充実している。

 また、リターナーとしての#25森田・#33池上はスピードがる上に相手の隙間を見つけ出す嗅覚が鋭い。一個のビッグリターンだけでロースコアの試合を引っくり返すことも可能である。

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 一方のデイフェンスは、DL#93福江、#90市川、#94桂木、#97近藤、LB#57城、DB#11廣岡、#37吉田など昨年からのメンバーに新人が加わった布陣になるが、中村がオフェンスへ転向したことによる穴も大きそうだ。ディフェンス全体で昨年まで出場する機会のなかった若手メンバーがどこまで成長&底上げできるかが、一つのポイントになるだろう。

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 ところで、今年の京都大学は試合の流れをオフェンスが作るのか、それともディフェンスがコントロールするのか、どちらのタイプになるのだろう。
 大量得点を挙げて逃げ切りを狙うにはランプレーだけでは不足である。一方で守り抜くにはディフェンスメンバーの若さが気にかかる。
 したがって、やはり今年も「オフェンスがランプレーを続けて時間を消費しながらのロングドライブ」というのが理想的な試合スタイルになりそうだ。

 圧勝完勝の試合は少ないかもしれないが試合が終わってみれば京都大学の力強さだけが印象に残った、というのが理想的な試合展開であり、昨年も関西学院大学戦など何試合かで、このようにコントロールされた試合があった。
 逆に、この理想形が崩れるときは、オフェンスランプレーが全くゲインしない時である。

 今年も昨年と同様に開幕戦は苦手神戸大学との対戦となる。ここを是が非でも乗り超えることができれば今シーズンも形になりそうだ。だが、万が一ここでつまづくようなことがあると、その後はどうなるのだろう、考えたくはない。開幕戦がキーポイントである。



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近畿大学

 昨年は3強に対して3連敗という結果に終わり、一昨年に関西学院大学と京都大学を打破したポジションから一歩後退してしまった。しかし今年はその当時活躍したメンバーがチームの要職についている。今年は、もう一度歯車の噛み合った勢いのある近畿大学攻守を見てみたい。

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 今年の近畿大学オフェンス陣で特筆すべきことは、QB・UB・TBという中心線に人材が揃ったことである。快速のTBは毎年存在したが、力で押すタイプのランナーは久し振りの登場である。つまり、オフェンススタイルはIフォーメーションからのQB岡キープとUBの中央突破と、そしてTBのスピードに乗ったオープンへの展開、そしてパスと、例年と比較するとプレーの選択の幅が格段に広がったことになる。

 そのオフェンスバックスはRBに快速TB#7樋口、#34碓氷、注目の大型UB#23吉田。パスターゲットとしてWR#6長谷川、#87石田が、そしてIフォーメーションに彩りを添えるTEパスターゲットに#4橋本が大きく成長してきた。
 OLは例年押しの弱さが挙げられてしまうが、今年は#66佐倉、#57白木、#58長戸などがしっかりとランナーの走路を確保するラインとして活躍するだろう。

 そしてこのオフェンスを指揮するQBには#10岡が起用されそうだ。岡のランパスバランスアタックは高校時代から経験豊富であり、特にオプションプレーとコーナーへの縦パスは秀逸である。パスはラインとの身長差から投げにくそうにすることもあるが、そこからキープランに切り替える判断が良い。

 このようにオフェンストータルで見ると素晴らしい陣容を誇るのだが、実際は立命館戦・専修戦・金沢戦で思い切った展開ができていないところが課題である。いずれも雨天の試合だったが、持ち駒が多くて工夫の可能性は広がっているはずなのに、オフェンス陣全体が慎重に運ぼうとすると萎縮して手詰まりに陥ってしまう。
 唯一金沢大学戦第4Qだけは得点差が広がったこともあって怒涛のオフェンスを繰り広げていたが、やはり感覚とスピードでのっていくチームである。

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 一方ディフェンスは、春の時点で主将DB#5青木中心に良い形でまとまりつつあるように見えた。

 DBには#18西村、#1中路という経験豊富なメンバーに#26井上が加わり、LBも#14須田、#9田中という最上級生と、#井上、#森末、という若いメンバーが登場している。さらに前列DL陣では#63泉森、#99柳川のアグレッシブな突っ込みが良い。
 ところで主将#5青木が守備範囲の広さを買われて、時にはDBとして、ある時はLBとして起用され、ディフェンスの中心人物として大活躍である。しかし負担を減らすためにも、ポジションをDBに固定できるようにLBが決まってほしい。

 近畿大学ディフェンスの特徴のひとつは、DB#5青木、#18西村に代表されるように、その反応のよさ・スピードにある。しかしこれが時には欠点にもなり、反応が良い分だけ逆サイドのプレーで抜かれることも多くなり、QBオーバーアクションやフェイク・カウンター系のプレーに振り回される危険性がある。
 もうひとつは、キックカバー・パントカバーが甘く、ビッグリターンを許すことである。競った試合になると致命傷になるのだが、そこまでチェック修正を入れる余裕があるか。

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 近畿大学のリーグ戦前展望では、毎年、あと一歩で本当の上位進出と思うのだが、実際は中庸で終わってしまうことが多い。そして今年も「勢いに乗れば前年同位以上になるし、悪ければ入れ替え戦」という戦前予想になりそうだ。
 関西学生の力量差が少ないことの現れでもあるが、隔年現象などと天気のようなことは言わないが、今年は揺り戻しの年になってくれるに違いない。

 その第一歩として開幕節同志社大学戦でどのような内容の試合を見せてくれるか。決して簡単な対戦相手ではないがオフェンスで切り崩していく試合を見たい。



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関西学院大学

 昨年は第2節で黒星を喫し関京戦でも久し振りの敗戦するなど苦しい試合が続いたが、最終節立命館大学戦では、底力を発揮して前評判を覆す大接戦を見せてくれた。そして今秋のリーグ戦を落ち着いて迎えることができるのも、あの試合があったからこそであって、改めて振り返ってみても今年につながる良い試合だったと言える。関西学院大学の試合でベストを選択する機会があれば是非とも入れておきたい。

 そして今年は立命館大学から覇権奪還を目論む重要なシーズンである。もし立命館大学に3連覇を許すようなことがあれば、来年以降の覇権奪取には想像以上の労力が必要になってくるかもしれない。

 今春は明治大学・京都大学・松下電工・関西大学と約2ヶ月間で4試合を観戦した。実は、明治大学戦を観戦した時点では本当に秋は大丈夫なのだろうかと心配になったのだが、最終的にはしっかりと整備されてきている。春の段階で今年の基礎形を完成させることができたと言えよう。

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 さて今年のオフェンスだが、QBは今年も#14河野と#10出原によるショットガンをメインに組み立てることになりそうだ。両名の併用は昨年から続いているが、今春は明治大学戦・松下電工戦・関西大学戦など河野が先発出場している試合が多い。
 どちらも好不調の差が激しいことが気にかかるが、関西大学戦は両名とも絶好調だった。さらに特記すべき事は、両名QBともアフターフェイクを完璧忠実に取り入れるようになってきたことである。

 アフターフェイクとは、ディフェンスを撹乱する目的で、QBがボールをRBに手渡した後に、あたかも自分がまだボールを持っているかのように振るまい、キープランのようなフリをすることである。(ボールを手渡した後のフェイク:アフターフェイク)ディフェンス側は、QBの動きにも対応しなければならないが、本当にボールを持っているRBへの対応も必要なので、その結果、力が分散してしまうことになる。オフェンスはこのスキを突こうとする動作であり、ディフェンス側から見るとイヤなプレーになる。

 このアフターフェイクの効果を上げるためには、QBのスクランブルランそのものが脅威的なプレーでなければならないが、QB#14河野、#10出原ともカウンター・スクランブルには昔からキレがあったので、このQBの動きに惑わされるディフェンスチームが続出するかもしれない。

 オフェンスバックス陣では、RBにUB#40吉岡、TB#6田中、#26辻野とパワー系スピード系が揃う。また、#6田中、#26辻野がスクリーンパスターゲットとしても起用されている。
 さらにパスターゲットにはWR#1板坂、#9福井、#81多田、#84五百川と多くのメンバーの名を挙げることができる。それだけ信頼できるショート〜ロングパスターゲットが揃っていることであり、QBとのコンビネーションの良し悪しが試合毎に大きく変わってしまうことが課題だったが、その安定度も徐々に改善されそうだ。

 そしてオフェンスバックス陣を支えるOLには#50塩田、#76大林、#70松本という昨年活躍したメンバーに#東井がTEからOL専任として加わっている。

 なお、ショットガンフォーメーションからのプレースタイルは、昨年までと同様にRBがキャリアとなるランプレーとパスを織り混ぜたランパス均等の形になるだろう。

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 ディフェンスはDL・LB・DBとも春の段階でほぼメンバーが固まった様子である。

 今年の関西学生においてチームとして最も安定しているのが関西学院大学のDL陣で、#52佐岡、#90石田、#57市村という布陣にシチュエーションによっては#44田頭が加わる。#52佐岡の中央からのQBサック、#44田頭の外から回りこんだQBサック等春から大暴れだった。

 DL同様に目を引いたのがDB陣で、DB#2深見、CB#8渡辺、#27高倉によるランカバーパスカバーのスピードがいい。松下電工戦では社会人のスピードに振り回されてしまうことがあったが、NEWERABOWLでは立命館大学レシーバーをしっかりと捕捉していて、ボールに対する執着心がすごい。

 このDLDB陣と比較すると若干物足りなさを感じるのがLB陣だが、最終学年となった#32朝山、#39近藤、そして#53柏木と#85橋本という布陣で徐々に整備されてきている。

 春の段階で最も安定していたのが関西学院大学のディフェンス陣だった。確かに早い段階で目処が着いたことは良いことだが、贅沢を承知で言うならば、ここからの更なるステップアップのためにも、夏の間に新顔が台頭してきてほしい。

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 ところで今年の関西学院大学のチームにあって、特筆すべきはスペシャルチームである。

 パント・フリーキックでのカバーチームの素早さは相手に僅かのリターンさえも許さない。フィルドポジションを少しでも優位に確保しておくことは地味だが重要な基本事項であり、松下電工戦が大差にならなかった一つの要因に挙げられる。

 そしてもうひとつはK/P#11小笠原の存在であり、キックオフしでは風向きによればエンドラインを越えてしまうぐらいの長距離キッカーである。

 だが彼の特徴はパントにある。私が観戦した春の試合だけでもパントフォーメーションからのスクランブルが2回あった。
 このプレーは決まれば効果が大きく、最近の大きな試合では2001年度のライスボウル第2Qに関西学院大学P榊原が敵陣でスクランブルして一気にモメンタムを引き寄せている。
 しかし、失敗するとその代償はとてつもなく大きく、試合の流れを失ったり勝敗さえも逆転してしまう可能性がある。
 考え様によってはバクチだが、広くフィールドを見通す眼があることも確かであり、リーグ戦で採用する/しないを含め、今年の関西学院大学成績を左右するポイントの一つになるかもしれない。

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 さて今年のリーグ戦だが、注目はやはり第5節10月末日に行われる立命館大学戦である。例年と比較すると1ヶ月早い対決であり、戦力を整備するスケジュールが大きく変わっていることだろう。例年と異なるスケジュールというのも気持ちを新たにする上で、良い方向に回転するに違いない。

 今年は春の段階で攻守とも一応の形が整った。ただし伸びシロという点ではまだまだ十分余地があるし、ここで成長が止まってしまっては、あまりにもスケールが小さすぎる。夏から秋にかけて更なるワンステップアップできるチームである。覇権奪回に余裕があるわけではないが、手が届かない距離ではない。



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関西大学

 昨年は開幕節京都大学戦でディフェンスの勢いを見せつけて、前年までDIV2にいたチームとは思えない驚きと新鮮さがあった。その勢いで第2節には関西学院大学から白星を挙げてリーグ戦勝ち越しに繋げている。

 しかし今春観戦した2試合(神戸大学戦・関西学院大学戦)では、攻守いずれも昨年のような勢いが感じられず、正直なところ拍子抜けしてしまった。もっとも、秋と春の試合を比較するのが間違いであり、今年も攻守ともポイントとなる選手・きっかけになるプレーは揃っている。手も足も出ない状態ではないので、秋リーグ戦をどのような成績を収めるか興味深いチームである。

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 今年の関西大学オフェンスの売りポイントは豊富なRB陣であり、RB#3松田、#34鎌倉などスピード系ランナーによるカウンター系のプレーやオープンへの展開は、そのスピードに乗ってタックルミスを誘えば、ビッグゲインにつながる可能性を秘めている。
 さらにパスレシーバーもスピードのあるWR#17大谷、#15中尾、#19加門とTE#81岩田も健在で、QBとのコンビネーションが改善して行けば楽しみが増えてくる。
 このようにRB・WRともスピード系が揃っており、願わくば、パワー系のRBが居ればと思うが、春の試合でスピード系RBだけでウイッシュボーンをセットできるのだから贅沢な悩みかもしれない。

 これらオフェンスを指揮するQBは#7堤と#8碇の併用が続くが、今年は#8碇が最終学年であり、最後はバシッと決めてくれるだろう。

 オフェンスバックス陣はいずれのポジションも複数名のアスリートがひしめき合う状態である。したがって、OL#75谷、#79下山という大型サイズの両名に続くメンバーがライン戦を支配できるようになれば、ランパスとも本当に面白い攻撃になる。潜在能力は高い。あとは、これを具現化できるか否か。

 そして関西大学のもう一つの得点源がリターナーの#17大谷である。そのスピードは1年の頃から関西学生のトップ級で、常に一発TDの脅威がある。少なくとも、リターンだけでFGレンジへ持ちこむことは容易すぎることであり、オフェンス不調であっても3点は確実である。

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 一方のディフェンスは、DL・LB・DBどのポジションにも昨年のメンバーが多く残っているはずだが、春2試合を観戦する限りでは昨年ほどの勢い・アグレッシブさが感じられなかった。
 目立ったのはDL#90和久、#95古川のみというのは他のメンバーに活躍の場を与えなかったから、と言うことでもないだろう。(私に見る目がなかった、ということは、ある)

 神戸大学戦・関西学院大学戦とも相手にロングドライブを許してしまっているが、これらの試合では、おそらくディフェンスとしても満足していないだろう。DL#92澗随、LB#31河田、#6野口、#4大林、DB#24川勝、#5騎馬と最上級学年が多いこともあり、最終的には昨年以上の力を発揮してくれるはず。開幕戦に期待します。

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 今年の開幕節は関西学院大学との対決である。昨年の結果から関西学院大学はここを重点に絞ってくるだろうことは十分に予想される。関西大学にとっても春の関関戦で黒星となってから約2ヵ月半後の再戦である。関西大学が昨年同様の好スタートを切るためにはこの試合に向けて入念な準備が必要になってくる。そして準備したことはその後の試合にも十分に活用できるだろう。全ては開幕戦にかかっている。



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同志社大学

 昨年は、開幕戦関西学院大学戦から第4節近畿大学戦までの上位4校と互角の接戦を繰り広げた。特に最終スコア3−7の京都大学戦、0−7の近畿大学戦の2試合は、ともに白黒逆転してもおかしくない試合であり強烈に印象に残る。

 昨春の試合を観戦した印象では「OLのパワー不足と待ちの姿勢のディフェンス全般」が気掛かりだったのだが、シーズン突入時点でほとんど解決されていて上位4校相手に全く臆することなく対等の試合を行った。

 さて、今春同志社大学の試合を観戦したのは龍谷大学戦と関東学院大学戦の2試合である。そしてこの2試合の観戦記がない。そこで簡単に振り返って見ると。
 龍谷大学戦では攻守とも終始押し込まれて苦しい展開が続いたが、第4Qになってようやく攻守とも目覚めてきたという試合。関東学院大学戦も序盤は均衡していたのだが、#1永富と#19久世の一発ロングゲインだけで試合の方向性を決めてしまった試合だった。

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 まず今年のオフェンスバックス陣だが、昨年とほぼ同じメンバーが揃っている。RBは#1永富、#31澄川が復活し、そこに今年のキーマンになりそうなUBに#33小佐井も加わった。またパスターゲットもWR#19久世、TE#89池内、#4天野と経験豊かなメンバーが多い。
 ただしQBは今年から#7奥野がスターターになったことで再構築しなければならないが、昨年までバックアップQBやRBとして活躍しているので経験値はある。春は少し固さが感じられたが時間が経てば問題ではないだろう。

 また、OLはNEWERAでもCとして出場した#71杉岡、#50坂田などこちらも経験を積んだメンバーが多い。特にUBの中央突破ランがゲインするのはOLのサイズ&パワーによるところが大きく、このようにフロントとバックスのコンビネーションも完璧である。

 この同志社大学オフェンスの特徴は一発で持っていけるRB・WRが存在していることである。RB#1永富とWR#19久世がボールを持つだけで相手ディフェンスの緊張が倍増する。
 この切り札を有効活用するためには、プレー選択を出来るだけ幅広く、他のキャリアを積極活用して相手マークを外すところから始まるのだが、それを充分にこなすオフェンス陣容は備わっている。あとは、実戦で結果が残せるか、否か。私個人的には密かに期待しているオフェンスです。

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 ディフェンスも、DL#56谷村、LB#47西内など昨年のメンバーが多く残っているのだが、龍谷大学戦ではDB#5関根の孤軍奮闘という試合になってしまった。チームとして主将が中心になるのは当然だが、実際のプレー面で主将しか目立たないというのはやはり違う。

 もっとも、ここ数年は、日が経つにつれて完璧な形になっていく傾向があり、今年も「時間」が攻めのディフェンスに変貌させていくとともに、新たなアスリートを輩出してくれるだろう。

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 今春の2試合を観戦しての負の側の印象は「OLパワー不足&手詰まりと待ちのディフェンス」というもので、つまり、昨年と全く同じだった。
 したがって、昨年と同じ成長カーブを辿るのであれば、春の内容は全く参考にならずに侮ることのできない存在になっていくが、もしも攻守とも大きな変化を成さないのであれば・・・・。
 ポイントは唯一、オフェンス・デイフェンスがひと夏越えて様変わりするか否か。

 注目の試合は、やはり第1節の近畿大学戦である。昨年は0−7の惜敗だったが、今年も同志社大学のペースの試合に持ち込むことができれば、面白いシーズンになることは間違いない。



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神戸大学

 昨年は開幕京都大学戦の黒星スタートがシーズンの流れを決めてしまったようだ。ただし、それは京都大学戦に向けて全身全霊全てをかけて準備していた集中度の高さの現れであって、あと一歩まで追い詰めながらの逆転は天国から地獄である。

 リーグ戦全ての試合に全力で挑むというのは簡単なようで、とても難しい。しかし神戸大学は毎試合多くの準備をして臨んでいる。ある年だけならば判るが、私が関西学生を観戦するようになって神戸大学を意識するようになってからほぼ毎年全ての年のことだから、チームとして世代間を受け継がれているのだろう。大学職員としてチームに携わることができる私学ならば当然のことだが、学生主体のチームでここまでできるのだから、そのシステム自体がすばらしい。
 他の大学のことだが、昨年あたりから同じように準備しているのではないかと感じるチームがある。


 さて今春観戦した神戸大学の試合は関西大学戦のみである。この試合は雨天だったこともあるのだろう神戸大学にとってはテンポが悪く、昨年の悪夢を髣髴させる展開になってしまった。
 また、時期的にも攻守全ての点で未完成だったのだが、それでも、オフェンス・ディフェンスともポテンシャルは相変わらず高くて、その後の成長の伸びシロ・余白を十分に感じさせてくれる試合だった。

 なお、神戸大学オフィシャルWEBページによると、6月にはXのアズワンと競った試合を行っているようなので、攻守とも徐々に形になってきているのだろう。

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 今年のオフェンスバックス陣は、昨年からのメンバー交替の影響が少ない。まずQBは#10江端が3年目となりオプションキープのいやらしさに磨きがかかる。さらにバックアップQB#4多和の存在も大きい。
 RBはTB#32森、#1中井、そして#29中桐によるスピードに乗ったオープンへの展開がある。そして今年の注目はなんと言ってもUB#2井ノ上が加わったことであり、春の段階ですでにQBとUBのコンビネーションが確立されていた。
 今年はQB・UB・TBの3ポジションに人材を得たことで神戸大学得意のランオフェンスオプションプレーのバリエーションが大幅に広がっているのが特徴であり強みである。

 OLは昨年の主力が抜けた穴が一つの課題だったが、DLからコンバートされた#52家入と#53水谷という実戦経験豊かなメンバーを中心に据えて、さらに5月の段階で新しい大型ラインが育っている兆候が見えた。このようにOLのメンバー交代ロスも大きな問題ではなくなっており、今年もラン主体のゴリ押しオフェンスが楽しみである。

 一方でパスターゲットだが、関西大学戦ではパスが少なかったこともあって未知な部分が多いが、少なくともWR#80立澤、TE#81中川など昨年のメンバーが残っている。ラン主体のオフェンスに時折ミドルパスを混ぜるとディフェンス対応がとても難しくなってくる。ところで、数年前WRDB兼任のアスリートがいたが、今年は?

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 ディフェンスは、ここ数年間どのポジションにもアスリートを揃えたゴツイ布陣で、ディフェンス主導の試合構成に充分に応えられるメンバーだった。その間はどのポジションも世代交代が滞ることなく為されていたのだが、今年は前年からのロス分が埋まっていないポジションがあるように見える。

 各ポジションともDL#73池渕、#57中西、#6阿部、LB#5清水、#51奥野、DB#25矢野川、#21松田と核になる名を挙げることができる。いずれも単独でビッグプレーを演出できるアスリートだが、春の段階では、その次のメンバーが見えなかった。特に、2・3列のパスカバーには個人差が激しいところに不安が残る。

 もっとも、これらは春のことであり、その後のディフェンス陣がどこまで成長しているか。例年確実に新戦力となる選手を作りだしているチームなので、そこは秋リーグ戦の楽しみにしておこう。

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 神戸大学のシリーズ前半の上位校との対決(第1節京都大学戦・第2節立命館大学戦・第3節関西学院大学戦)に備えて、今年の理想的な試合展開を考えておく。

 まずオフェンス側から見た試合の流れとしては、ランプレーでFDを繰り返したロングドライブによる得点ということになりそうだ。敵陣に入ったシリーズは最低3点を獲得する、自陣ならばパントキックで敵陣深くに追いやっておくという展開が理想である。

 願わくば、オフェンスに一発で持っていけるようなビッグプレー・窮地を一気に挽回できるようなキーマン・ビックリマンが欲しいが、その点ではディフェンスのファンブルフォース・パスインターセプトなどのターンオーバーは必要になってくるだろう。

 神戸大学の理想形が崩れるのは、得点すべきときに加点できないときと、ディフェンスが早い時間帯で失点を重ねたとき。シリーズ前半の上位校との対決に限れば、第2Qを終わって同点ならば神戸大学のペースである。

 チームの潜在能力は高い。入れ替え戦付近で留まっているチームではない。

 初戦開幕戦は得意な京都大学戦であり、地元開催かつナイターで行われる。もっとも地の利があってもなくても今年は行けるはず。好スタート好展開のシーズンになることを希望します。



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龍谷大学

 今年はDIV1初体験の年となる。ここ数年は入れ替え戦一歩手前まで常連のチームだったが、昨年はその殻を破って念願の昇格を果たした。
 さらに今春は立命館大学・同志社大学と競った試合を展開して仕上がりの速さをアピールしている。春の試合と秋の試合では少し異なるが、取り組みようによっては今秋リーグ戦でも大暴れする可能性は秘めている。

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 オフェンスはRB#31山形のスピードに乗ったランプレーと、WR#8山口、#9中川とTE#4守山へのショートパス、とくに外側へのパスが基本プレーとなる。一発ロングパスの脅威は少ないが、高校時代からショットガンパスのメインターゲットとして活躍したレシーバーなど長短パスターゲットは多い。

 このオフェンスを指揮するQB#19佐藤は、今年の関西学生の中ではサイズのあるQBである。さらに、長浜での立命館大学戦ではRB#31山形とのピッチのコンビネーションおよびそのアフターフェイクも完璧だった。
 OLに若い学年が揃っているが、トータルで見るとDIV1で戦うのに必要な戦力は揃っている。あとはシーズンを通して発揮し続けることができるかがポイントになりそうだ。

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 ディフェンスはLB#43井坂の反応の良さが目に付いた。彼の動きに見とれてしまったからか他のメンバーが見えていないのだが、スピードのある積極的なデイフェンスを身上としている。

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 今年のリーグ戦では、まずDIV1上位校との対戦からスタートし、そこから修正をかけてシーズン後半戦に挑む形になる。
 攻守とも最上級学年から若い学年まで全ての学年で構成されている少数精鋭のチームにあってエース・キーマンの負傷は厳しい。チームの目標をどこに置くのかは知らないが、シーズンを通して戦力を維持し続けられるかが大きなポイントになる。

 DIV1初挑戦ということもあって世間の注目は高い。関西学生DIV1に新風を吹き込んでくれることを期待します。


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