東西大学王座決定戦 毎日甲子園ボウル



甲子園ボウル 



12月19日 (日)  甲子園球場  13:00
TEAM1Q2Q3Q4Q合計
立命館大学37141438
法政大学737017
(現地観戦)
 
立命館大学
法政大学
1Q
FG
1Q TD
2Q
FG
TD
2Q
3Q RTD
FG×
FL
TD
FL
TD
3Q
4Q
RFL
TD
RTD
G×
4Q END
(作者Aのメモより)
詳細テーブル


年間最優秀選手:木下典明(立命館大学)
甲子園ボウル最優秀選手:木下典明(立命館大学)
甲子園ボウル敢闘選手:伊藤喜章(法政大学)
NFL特別賞:木下典明(立命館大学)


 第59回甲子園ボウルは昨年に引き続き立命館大学と法政大学の対戦となった。近年の対戦成績は関西の8勝1敗1分けと圧倒的に関西優位であり、この試合についても戦前予想では立命館大学優勢の声が多かった。だが今年は、法政大学にも立命館大学にも注目すべき点気がかりなところがあった。

 まず法政大学オフェンスは、従来のオプションラン重視からショットガンによるパスを取り入れてランパス均等のオフェンススタイルに変わった。
 もともとバックスにはアスリートが揃う法政大学だが、ランパス均等にしたことで昨年までと傾向の異なる攻撃パターンになるはずで、関西初登場となるランパスマルチスタイルが立命館大学ディフェンスに通用するかがポイントである。

 そして立命館大学は、関西学院大学とのプレーオフによる大量の負傷者発生に対する手当てと、この試合に向けてのモチベーションコントロールが注目されていた。

 両チームとも昨年とは少し違った秋リーグ戦を経てたどりついた2004年東西大学王座決定戦は暖冬の甲子園フィールドでキックオフとなった。

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 第1シリーズ、立命館大学QB#12池野のショットガンオフェンスは法政大学DL#90伊倉のパスカット、QBサックロス10ヤードと大きく後退、一方の法政大学オフェンスもFDプレーでDB裏へのロングパス失敗があったものの第2D第3Dに中央ランプレーに立命館大学LB#10田中がしっかりと対応、ともにFD更新なしのパントを蹴りあった。

 しかし、次のシリーズから、少しずつ試合が動き始める。

 立命館大学自陣20ヤードスタートのオフェンスは一度はDL#90伊倉のQBサックを受けてロスするのだが、ここからスーパーアスリートWR#11木下の連続パス成功(13ヤード+16ヤード+5ヤード+12ヤード=46ヤード)ドライブとなった。CBのマークが少し甘いことと、それをスピードで振り切ってしまう個人芸を披露、さらにRB#21岸野と#22佃のキャリーもあって敵陣27ヤードまで到達する。

 だがここから3回の攻撃がいずれもランショートゲインに止まってしまい、そして最後はFGで3点先制するに留まった。

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 一方の法政大学はQB#17市川からのミドルパスがヒットした。LB裏へのパスは立命館大学のパスディフェンスの少し甘いところでもあり、WR#82蔵重の9ヤード、WR#11戸倉の19ヤードとコントロールの良いパスが飛んで2回FD更新する。

 だが直後の2回連続QBキープにLB#10田中が対応してノーゲイン。こうして敵陣40ヤード付近で第4Dとなった。パントフォーメーション。

 ここで立命館大学がスペシャルプレーをほとんど警戒していなかったこともあって、パンター#18菅原から#39丸茂へのパスが決まる。これで法政大学が敵陣30ヤードでFD更新するとともに、試合序盤の流れが少し法政大学側に傾いた。

 QB#18菅原に交代すると再びWR#80国友、#82蔵重へのロールパスミドルパスを2本成功させてエンドゾーン前4ヤード。最後はQB#18菅原のフェイク中央キープでTDランを決めて法政大学が7−3と逆転した。

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 立命館大学攻撃第3シリーズでは、この日実質オンリーワンパスターゲットのWR#11木下へのロングパスをDB#27大浦にかき出されてパス失敗、さらにQB#12池野の判断も遅く、ランプレーでつなごうとするがLB#44福田のノーゲインタックルを受けるなどで、オフェンスのテンポは悪い。

 一方の法政大学は、前回のシリーズがパス中心だったこともあって、このシリーズはランプレーでもドライブできるようになった。
 ショットガンからのQBスクランブルとRB#29伊藤のドロー、さらにここまでランパスの種をまいた後ではQBフェイク動作込みのRB#20丸田へのショベルパスは立命館大学ディフェンスを迷わすには十分だった。これが30ヤードのビッグゲインとなって再び敵陣へ侵攻する。
 このシリーズ最終的にはプレーアクションパスを見切ったDLのプレッシャーを受けてFGに止まっているが、法政大学攻撃に勢いがあった。

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 昨年までの法政大学オフェンスはラン偏重だったので、RBと走路をある程度想定して前陣強調ディフェンスを敷いておけば、それほどの脅威はなかった。
 しかし、今年はパス試行回数が多く、さらに、パスターゲットが充実、そして、パス成功率が高いとなれば、LBはランパスともに対応せざるを得ず、つまり前にも後ろにもとなって動けなくなってしまう。
 法政大学が攻撃のレパートリーにパスを加えたことによってランプレーも通る状況になっていて、昨年までの法政大学とは完全に違うということを甲子園球場全ての観客が認識したことだろう。

 ディフェンス側がこのランパスバランスオフェンスを打ち破る方法は、QBにプレッシャーをかけて投げ急がすこと、パスコントロールを乱させること、あるいはパスを投げさせないこと、この3種の方法しかない。つまりDL陣の働きによって試合が左右されるということである。そしてこの法政大学ドライブをFG3点に止めたのはDLの活躍による。

 立命館大学ディフェンスが法政大学の攻撃パターンにアジャストできるようになったこのシリーズ以降、徐々に法政大学オフェンスドライブが続かなくなる。そして立命館大学DLLBの活躍が目に付くようになって行った。

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 第2Q残り10分の時点で法政大学が10−3と7点リードという状況にあっては、立命館大学もこれ以上は得点差を付けられるとさすがに厳しくなる。先のシリーズでもオフェンス陣には緊張からかRBWRに少し力が入っている様子が見える。自分がしなければ・・は正しいのだが、それが焦りにつながる少し手前のところまで到達していたのではないか。

 7点をリードされた立命館大学は自陣39ヤード、QB#12池野はパスを投げるよりもキープを重視に方向転換、QBキープによる中央付近ショートゲインを繰り返す。さらにRB#23古川のラン12ヤード、WR#91高橋へのクイックパス12ヤードを織り交ぜつつのドライブとなった。

 敵陣23ヤードまでラン中心のドライブだった次のプレーが右コーナーWR#81本多へのTDパス狙い。これに法政大学のパスインターフェアを誘うと、最後はQBキープ中央突破ランによってようやく同点に追い付いた。第2Q残り時間5分49秒。

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 ここから立命館大学法政大学ともオフェンス膠着状態となって2回のパントの蹴りあい。

 特に法政大学オフェンス2回とも第1DでDL#99紀平がQBサックを見舞い、さらにDB#13三宅も中央ランにノーゲインタックルを決めるなどディフェンスは徐々に立ち直っている様子が伺えた。

 だが立命館大学オフェンスは、しっくりとしない。残り時間0分28秒自陣18ヤードからの攻撃はニーダウンでの時間消化がベストの選択と思うのだが、実際はショートパス成功ミドルパス失敗。第3DではLB#47二上にサックを受けてプレーデッドとなったのだが、ここで立命館大学がタイムアウトを要求して時計を止めてしまった。この結果、法政大学にプレー機会を与えてしまったのだが、オフェンス不調の象徴的なシーンだった。

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 前半を終えて10−10の同点という大方の戦前予想とは少し違った(というと法政大学関係者には失礼だが)試合展開となった。

 立命館大学は攻守とも全般的に動きが固かった。オフェンスは早い段階でOL一人を欠いたことも影響しているかもしれないが、乗れていなかい。ディフェンスは徐々に動きを回復していたが、立命館大学は勝って当然という下馬評の中で迎えた試合だけに、一つ間違えれば完全に法政大学のペースになりそうな状況である。

 一方の法政大学はQB#17市川メインに#18菅原をワンシリーズ的な起用によるランパスバランスアタックが十分に機能した。ディフェンスはDL#90伊倉、#44福田、LB#47二上等のプレッシャーがQB判断を迷わすに十分、さらにDBパスカバーでは何度もレシーバー前でパスカットを披露するあたりはさすがアスリートという動きだった。

 試合前半の流れモメンタムとしては法政大学に傾きそうなところを立命館大学ディフェンスが崖っぷちでイーブンに戻しているバランス関係、つまり、立命館大学にとってはきわどい状態、法政大学にすれば、あと一押しという状況であり、後半の見所ポイントとしてはどちらがどのような方法で得点を挙げるか、それで、選手の気持ちがどのように流れるか、だった。

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 そして試合再開。立命館大学キック、リターンは法政大学。

 キックされたボールは飛距離は十分にあった。さらに立命館大学カバーチームも対応したのだが、その中央をトップスピードで駆け抜けたのが法政大学#29伊藤だった。そのまま約90ヤードを駆け抜ける。立命館大学としては出鼻をくじかれ、法政大学としては後半も行くぞという気合付けの得点となった。

 ここまでの得点経過は立命館大学FGで先行もその後は常に法政大学がリードする形で経過している。そして後半、再び法政大学がリードしたことで、外野レフトスタンドの雰囲気も少しずつ変わって行く。

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 7点をリードされた立命館大学オフェンスは自陣24ヤードスタート。後半最初のオフェンスは勢いがあった。RB#21岸野の気合の入った左OTラン9ヤード、RB#23古川の中央突破が20ヤードゲイン、WR#26和田をターゲットにしたパス2本ヒット、RB#22佃のサイドピッチからの縦ラン10ヤード。ただRB#21岸野、#22佃のオープンランはもう少しゲインしても良かったのだが、法政大学LBDBの出足が早く10ヤード付近で止まってしまっている。
 結局立命館大学のこのドライブは敵陣10ヤードまで迫りながら、最後はDL#92高橋サックロスと左コーナーTDパスをDBパスカットと、法政大学ディフェンスに押し戻されてしまった。さらにFGキックも#21鹿島がカット、立命館大学は無得点に終わった。第3Q残り時間8分28秒。

 立命館大学オフェンスに対して法政大学ディフェンスの勢いが上回ったシリーズだったが、続く法政大学攻撃に対しても立命館大学ディフェンスがオーバーパワー、そして、この立命館大学ディフェンスが試合の流れを逆転させていった。

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 法政大学後半最初の攻撃は自陣でRB#29伊藤の中央ランで1回FD更新、さらにWR#11戸倉へにショートパス9ヤードとランパスバランスアタックは変わらないのだが、第3Dでのパス狙いに立命館大学LB#5内田がQBにタックル。これで手からボールが離れてしまい、イーブンボールを立命館大学が確保した。

 立命館大学オフェンスは敵陣15ヤード、RB#22佃中央ラン9ヤードゲインの第2D残り1ヤード狙いをパワーIでセット、そして中央ランをフェイクしたTB#44齋藤の右OTがTDランとなって、第3Q残り5分06秒、立命館大学がようやく同点に追い付く。

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 法政大学次のシリーズは自陣26ヤード、ロールパス狙いからQBスクランブル、しかし右サイドライン際に追い詰められた際にボールを落としてしまった。サイドライン際のフリーボールに両チーム有資格者無資格者入り乱れたが、ここでもボールを確保したのは立命館大学と2回連続ターンオーバーとなる。

 こうして再び敵陣で攻撃権を得た立命館大学は、その第1プレーで右コーナーへのTDパス、そのターゲットはWR#11木下だった。DBマークもなんのそののパスキャッチによって第3Q残り時間3分42秒、立命館大学が7点リードした。

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 立命館大学オフェンスは必ずしもドライブできているのではなく敵陣深いところでのターンオーバーを効率よく得点に結び付けているだけであり、運/不運という表現を使ってしまいたい衝動に駆られるのだが、やはり、ファンブルを強いたディフェンスと確実にエンドゾーンまでボールを運んだオフェンス陣を賞賛すべきだろう。

 ただ、第4Q中盤フィールド中央での出来事だけは法政大学にとって不運としか言いようがない。

 立命館大学フィールド中央でFD更新なくパントを蹴る。そして、法政大学の選手がパントをブロックした。ここまではよかったのだが、ブロックしたボールがほぼ真上に上がってしまい、さらに、わずかだがスクリメージラインを超えた。
 まさかこんなところに落ちるとは思わなかっただろう法政大学選手が触れて、そして地上に転がったボールは、イーブンボールとなる。確保したチームに攻撃権があるのだが、ここでもボールを確保したのが立命館大学だった。

 パントブロックしたのだがボールがスクリメージを超えたこと、そして、法政大学選手が触れてしまったこと。つまり、普通のパントキックでのリターナーファンブルロストと同じである。

 立命館大学は5ヤード進んで再び攻撃権を得ると、その第1プレーが右WR#11木下へのクロスパス。WR#26和田のダウンフィールドブロックとブロッカー役となったWR#88大滝とのコンビネーションランでDB一人をかわして45ヤードのTDパス&ランとなった。これで立命館大学が14点差となり、この試合始めての大量(?)リードとなった。

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 法政大学オフェンスのQB#17市川によるパスは、DBマークをはずしたフリーのレシーバーへヒットすることもあるのだが、徐々にロングパス傾向が強くなっていく。WR#1井上へのロングポストパスは、プレーアクション動作が決まってDBマークもないフリー状態だったが、ボールは手の少し先へ落ちてしまう。

 こうしてパス成功と投げ捨てが交互になっていく中で、右ショートパスを立命館大学LB#5内田がWR前に割り込んでインターセプト、そのままエンドゾーンへ飛び込んでインターセプトリターンTD、第4Q残り時間は9分44秒だが3TD差に広がった。

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 その後、法政大学は連続オフサイドなどで敵陣に到達するが、LB#5内田、DL#57岩崎のロスタックル2回と第4Dギャンブルによるハンドオフミスによって攻撃権移動、立命館大学は時間消費ドライブとなって再び法政大学に攻撃機会が訪れたのは残り時間3分03秒だった。タイムアウト3回を使って時計を止めるのだが、3TD差に具体的なキャッチアップの方針もなくタイムアップとなってしまった。

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 戦前予想では立命館大学優位の声が多かったこの試合は最終スコア3TD差だが、第3Q中盤までは同点、そして第4Q中盤までわずか1TD差の僅差の試合だった。

 僅差になった要因はいくつかあるが、法政大学パスコースが立命館大学ディフェンスの隙間にきれいにヒットしたことが大きい。パスがつながったことでランでもドライブできたのが前半の法政大学オフェンスの姿である。ランパスバランスアタックにしたことで少なくとも前半は得点に結びついた。
 ただし法政大学がドライブして挙げた得点は前半の1FG1TDのみであり、立命館大学ディフェンスがアジャストし始めた第2Q終盤以降は、ディフェンスに押し込まれるシーンが多く、ファンブル・インターセプトが続出している。
 一方でレシーバーはDBを抜いてフリーになっている時が多かったのも事実であり、DLLBの活躍が無ければパスが通って混戦になっていた可能性はある。

 法政大学の後半のファンブルとインターセプトは、防げたものと仕方のないものが混在しているが、まとめておくと、ファンブルは自陣ドロップバック中のQBサック、ロールアウト中のハンドリングミス、そして真上に上がったパントブロックによる3回。
 インターセプトは右ミドルパスにDL#99紀平カットボールをLB#10田中インターセプトとLB#5内田がレシーバー前に割り込んだインターセプトの2個である。

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 立命館大学オフェンスはWR#11木下オンリーターゲットになってしまったのは得点シーンが強烈に印象に残るからかもしれないが、10月の関西学院大学戦をピークにパス精度判断等少し甘くなっているようにも感じる。パスターゲットとしてはWR#26和田という新しいレシーバーが登場した。さらに。RB陣は#21岸野、#22佃、#23古川、#44齋藤の4名久しぶりの揃い踏みとなった。

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 これで立命館大学は甲子園ボウル3連勝となり、正月のライスボウルで日本選手権3連覇を目指す。ライスボウルの3連覇は学生社会人含めて日本大学だけが達成しており立命館大学が史上2チーム目の快挙なるかが注目される。

 一方の法政大学は昨年に続いて連敗となったが、昨年までと今年の敗戦は少し意味が違う。これまでと違ったランパスマルチスタイルのオフェンスが機能し始めたことは記憶に留めておかなければならない。

(了)