立命館大学 |
昨年の立命館大学は、リーグ戦序盤から力強い試合を積み重ね、最終戦では対関西学院大学戦4年ぶりの勝利を大差で勝ち取ると、そのまま社会人も圧倒して日本の頂点にまで一気に上り詰めた。さらに特徴的だったことは、リーグ戦序盤から2ミニッツオフェンスを繰り広げ、タイムアウトの使い方まで練習していたことで、これまでの力だけで押しまくる立命館大学に緻密さが加わった年だった。ただ残念なことに実戦で使用する機会に恵まれなかった。 ライスボウル社会人代表にさえも立命館大学のある一面だけで勝利してしまったことは本当に良かったのだろうか。ライスボウルで大接戦を演じていればその経験を生かして今年はワンランクステップアップした力と技の立命館大学を見ることができたに違いないと思う。成長の機会を逸してしまったことが惜しい。 さて今春の立命館大学の試合をいくつか観戦したが、攻守とも昨年のメンバーを残しながら一方で新しい選手も登場しており、改めて層の厚さを見せつけられた。オフェンスはQB#18高田によるショットガンが4年目を迎えることになる。そのパスターゲットには、最終学年となった技巧派WR#19冷水に#84河瀬、#11木下、#7長谷川、#6山田、TE#89栗山と揃う。 RBは昨年の礒谷と野本という大黒柱2人が抜けて気になるポジションだが、パワーランナーとしてRB#3斎藤が、スピード系には#23古川、そして早稲田大学戦では#5岸野、#22佃と次々にアスリートが登場してきた。ショットガンオフェンスを支えるOLにも#50佐藤、#63人羅、#70川登など人材が豊富で、ショート〜ロングパスにRBのハンドオフプレーという、昨年同様ディフェンス側から見ると厄介なオフェンスが繰り広げられることだろう。ディフェンスのタックルミス・判断ミス一つで独走のTDが山積みになりそうだ。 その中心になるQBには#18高田が座る。ショットガン自体は4年間でチームに十分に浸透しており、ランパスとQBスクランブルにオフェンスメンバーが迷うことはないだろう。ショットガンオフェンス完成の年と言っても良い。 そのQB高田自身は、昨年のリーグ最終戦第1Qでの負傷退場によって関西学院大学戦勝利も甲子園ボウル出場も果たせなかったわけだが、これが今年の大きな目標の一つになりそうだ。 ただ一つオフェンスで気になることと言えば、バックアップQBである。おそらく#12池野がその一番手になるのだろうが、そのパフォーマンスをしっかりと見る機会が少なかった。おそらく秋リーグ戦の序盤戦は登場する機会が多いだろうから楽しみである。 ディフェンスもDL#90飾磨、#92紀平、#93森、#56平井、LB#99八木、#5西、#47宮口と昨年の鉄壁メンバーが残りながら新しい世代がそこに加わるという世代交代が為された。DBは小路など抜けた穴が大きいが、#4高橋、#34長田を筆頭に、横浜ボウルで大活躍した#25早瀬、#27福島、#13三宅、#17黒田と、オフェンス同様に人材の層が厚い。 それでも今春の近畿大学戦・早稲田大学戦ともQBのキーププレー(オプション・ドロー)で大きくゲインを奪われていた。立命館大学ディフェンスのスピードを逆手にとったドローやカウンター攻撃が有効になることがあり、過去にも何回かこのようにして立命館大学ディフェンスが攻略された時期があった。今年はLB#99八木、#47宮口、#5西などLB陣がどのように対応するのか、楽しみである。そして、もしこの裏プレーにさえもディフェンスが反応するようになってしまうと攻め手側は万事休すとなってしまう。 今年の見所の一つは、昨年から今春にかけて大差の試合ばかりが続いたことによる「モチベーションの維持」状態である。それを量る上でもリーグ戦前半の試合内容は興味深い。 そしてもうひとつは、昨年、リーグ戦序盤の緻密な戦い方の練習結果を本番で披露することもなくライスボウルまでも簡単に勝ち上がってしまったことで、「せっかく練習したのにムダならば今年はもう・・」なんていう雰囲気になってしまっていないだろうか、という点である。リーグ戦前半は、今年も大量得点差の試合になる可能性がありそうだが、そこを得点を挙げるだけの試合にしてしまうか、昨年と同様にタイムアウトや2ミニッツのオフェンス組立を練習するのか。今後(今シーズン終盤戦の意味もあるが、来年以降のという意味も含めて)の立命館大学の方向が見えてきそうな興味深いシーズン序盤である。 今年も接戦は少ないだろうが、それでも過去に何回か接戦になっている相性の悪い「長居球技場で行う近畿大学戦」とか、少なくともあと1試合以上は面白い競った試合になると予想している。立命館大学が初の関西連覇に挑戦する2003年シーズンがいよいよスタートを切る。 |
近畿大学 |
昨年は4勝3敗で同率3位という結果を残した。関西学院大学と京都大学に勝利したが神戸大学と甲南大学に黒星を喫し、そして、今春も観戦した金沢大学戦、立命館大学戦、専修大学戦の3試合とも接戦という昨秋のリーグ戦の続きを見ているような展開だった。観戦している立場から見ればどの試合も接戦になってくれるので面白いのだが、この不安定さがなくならないと優勝候補にはならない。今秋のリーグ戦で立命館大学に勝利したとしても、どこかの黒星のおかげで単独優勝ならずなどということも十分にありえる。 オフェンス陣容は関西学生でもトップクラスであり、ランパスマルチの華麗なオフェンスを繰り広げる能力を有する。QBには最終学年の#3安倍が座り、RBにはUBTB兼任で#35土手下、さらにTB#7樋口、#31美濃辺が健在で、さらに金沢大学戦ではパワー系のRBに#40中東が登場してきた。 レシーバーには、昨年もパスターゲットだったWR#82三谷に#16大峠、#83北川、#6長谷川、TE#4橋本という新しい長短パスターゲットが加わり、春からプレーアクションパスがTEへ通るなど大活躍だった。OLには#51松島、#66佐倉、#57塩澤が健在で立命館大学ディフェンス相手に互角以上の対決を繰り広げていた。 QB#3安倍のバックアップとしては、金沢大学戦後半に出場した産大附属高校から進学したQB#10岡と、さらに東邦高校出身のQB#12春日井も控えている。卒業によってメンバー交替したポジションにも次の世代が順調に育ってきていて、もしかしたら昨年よりもポテンシャルは高いかもしれない。層の厚さも関西学生トップクラスである。 スペシャルチームではパンター#6長谷川、キッカー#5青木の飛距離、コースとも正確になってきた。専修大学戦ではK#5青木のFG2本で勝利している。ただしパントやフリーキック後に大きくリターンされてしまうという不安定さも残る。 ところで近畿大学の「不安定さ」だが、オフェンスの好不調の波が大きいことが直接の原因と考えられる。今春善戦した立命館大学戦でもRB土手下のランプレーが止まってしまうとパスもランも全てダメという状況になった。こんな状態で出るQB安倍のスクランブルランはオフェンス手詰まりのシグナルであり、判りやすいオフェンスは昨年までと同じだった。 RB#35土手下を止められた時の次の手段は何なのだろうか。ランではなくパス、それもショートレンジのクイックスクリーンなどWRTEを駆使したパスプレーをメインに据えて、3回に1回をランプレーとして、さらにその3回の1回をボールキャリア土手下、というように取って置きのプレーは最後に残しておくべきと思う。ボールキャリーの振りをして相手ディフェンスをだます、土手下を囮にして他のキャリーを使うフェイクプレーが決まると面白い。 ディフェンスはDL#8中村、#68泉森、LB#2中里、DB#18西村、#5青木、#25安藤という昨年からのメンバーが多く残り、またDB#14須田、LB#55井上という新しいメンバーも加わり鉄壁ディフェンスは今年も健在である。特に青木は判断良い動きで守備範囲が広く、2,3列の要としてLBDB兼任で活躍している。 しかし今春の立命館大学戦では対ショットガンディフェンスとしてLBの動きが中途半端だった。特に試合が均衡状態のままハーフタイムを迎え、もしかしたら・・・とスタジアムの期待が高まった試合後半になってからの守備が課題である。一昨年と昨年の関西学院大学戦、一昨年の立命館大学戦とも、第4Qで近畿大学が1TD差以内でリードしている状況でのディフェンスは、いつも腰が引けていた。この状況でも変わらないディフェンス・攻めのディフェンスができれば本当に鉄壁ディフェンスなる。それだけの素地は備えている。 今年のリーグ戦は、第1節が甲南大学戦、そして第2節は神戸大学と続く。昨年と順番は逆だが、ともに昨年黒星を喫したチームでありこの2敗がなければ・・という敗戦だった。どちらも近畿大学が簡単に圧勝できるような相手でもないが、大差完勝で雪辱するようなことがあれば、一気に優勝候補の仲間入りである。しかし、ここで返り討ちに合うようでは昨年の二の舞以下になってしまう可能性も秘めている。 |
京都大学 |
今春京都大学の試合を観戦したのは、5月に行われた関西学院大学との試合のみである。6月ぐらいにもう一試合を観戦してみたかったのだが、私が観戦に行ける適当なカードが無かったのが、残念である。 昨年の京都大学は4勝3敗という結果を残したが、一昨年あたりと比較するとかなり力を蓄えてきたという印象があり、手強いチームになってきたと思う。立命館大学戦ではリーグ最小の31失点に抑えこみ、関西学院大学戦では第4Q終盤まで6−7の僅差の試合を展開した。近畿大学戦は最終節だったこともあってチームの勢いがそのまま出てしまったが、もしリーグ戦中盤での対決だったら結果は変わっていたかもしれない。 オフェンスはQB#4川並率いるランパスオフェンスだが、昨年からのメンバーがそのまま残っているのが強みである。特にRB陣の充実振りはすばらしい。#2高見、#32大木、#33池上のパワーランナースピードランナーが揃う。今春の関西学院大学戦では、OL#66椿、#58高橋、#72吉村、#79表、#63辻野など京都大学らしい100k超重量の大型選手が走路をきれいに切り開いたところへの中央突破ランが連続してきれいに決まっていた。QBのキーププレーに意外性が少ないのだが、それは多彩なRB陣によるプレー種類で補っている。パスは、TE#89東、WR#81小寺、#82鋤崎、#34飯田への長短パスが飛んでいく。 今年のオフェンスは、おそらくランプレーを中心にしたパワープレーで臨み、ランドライブで時間消費をしながら、ときどきパスを混ぜるという構成になりそうだ。したがって、昨秋今春とも何回かあったような3連続パス失敗で時計が回らないまま攻撃権を相手に渡してしまうシリーズは、チームのテンポを悪くする原因になる。 さらに、昨年から続いているバックス陣のハンドリングの悪さによるファンブルロスト・ターンオーバーも同様に攻撃権を渡してしまうことになり心配な点である。だが、今年はオフェンス全般に気掛かりなことが少ないので秋にはこのあたりもしっかりと修正されることだろう。 ディフェンスは関西学院大学戦で#97近藤がDEに戻ってきて#92高谷、#19大鋸、からなるDLの破壊力が増した。この布陣は立命館大学と並んで関西学生トップクラスである。一昨年近藤をDEに起用しながら昨年はILBにコンバートした。他のポジションメンバーとの兼ね合いもあるか、一昨年のDLの活躍が鮮明に記憶されていることもあって今年はDE近藤をみたい。そのLBには#5伊藤、#51池口が揃っている。そして、DBには#14金氏キャプテンとともに#11廣岡、#23松浦が座る。ただし課題はパスディフェンスで、WRとのスピード競争やDBとのバトルに長けたWRを相手にしたときに追走するようなシーンがあるかもしれない。 今年の京都大学のスタイルは、オフェンスがランプレーによる時間消費を行い、ディフェンスは強力DLによって相手チームを圧倒するという形になりそうだ。おそらく相手チームがラン主体のオフェンスを展開するならばロースコアの展開で試合コントロールも可能な攻守メンバーである。しかし、クイックパスでLBDB陣の領域に攻め込まれるようだと春の試合を見る限りでは少し不安が残る。そういう意味でも今年の京都大学の命運を左右するのはDB陣と言っても良いかもしれない。 今春の関西学院大学戦ではオフェンス優位ディフェンスも互角以上に渡り合っていながら黒星を喫してしまい、結果的には対関西学院大学戦連敗のままである。これがモチベーションを維持する上でも役に立つ。今秋は力強い京都大学の攻守を見ることが出来そうで非常に楽しみなチームである。 第1節は神戸大学との対戦であり、どちらかと言えば苦手な相手ではあるが、ここを確実に白星につなげることが出来れば、今年の京都大学は関西学生リーグにとって面白い存在になりそうだ。 |
神戸大学 |
今春観戦した神戸大学の試合は5月の同志社大学戦のみである。6月には九州大学戦などもあったのだが日程的にも残念ながら観戦に行けなかった。さらに、その同志社大学戦では怪我人によるのか何かは不明だが、そのメンバーの多くが控え選手で構成された試合だった。正直なところ来年の神戸大学を考えるには十分に参考になった試合だが今秋の神戸大学の試合を占う上では何の参考にもならない。したがって、今年の神戸大学を考える上で参考になるのは昨秋のリーグ戦での試合内容まで遡らなければならない。 オフェンスは、今春の試合では2年生QB#12村上が登場したが、やはり#10江端がメインになるのだろう。RBには#33大崎、#32森、#39宮川が揃う。そしてOLは#77藤原、#65河原などの大型かつ重量級が揃いランプレーを支えている。 オフェンスの組立はおそらくランパス均等になるだろう。そのパスターゲットにはWR#9村上がいるが、TEWRとも人数的に人材不足という気がする。 ところでQB#10江端はどちらかといえばパスが得意と見受けられる。近年の神戸大学オフェンスと言えばオプションがメインだったので昨年の試合は新鮮に見えた。パスにランプレーが加わりさらにオプションキープが飛び出るというのが近年の神戸大学オフェンススタイルだが、QB2年目でどのようなオフェンススタイルになるかは興味深い。 ディフェンスはDL#73池渕、#92家入、#99別府、#52中西、LB#6肥田、#55岩田、DB#17吉村、#37野村、#25矢野川と揃う。DLは昨年中盤から徐々に力をつけてきて充実している。2,3列は特に昨年のインターセプト王DB#17吉村など、アグレッシブな動きをするメンバーが揃い、ボールキャリアへのよりは素早いのが特徴である。 昨年は神戸大学創立100周年記念として6月に京都大学との試合を行ったので、ある程度の参考にはなったのだが、今年は今年の神戸大学の姿がまったく見えてこない。アメリカンフットボールは相手の戦力を分析して強みと弱みを把握し、それに合わせて自チームの戦い方を組み立てていく。しかし今年の神戸大学の姿がまったく見えてこない以上対策の立てようがない。そういう意味ではもっとも脅威なチームである。 開幕戦は宝が池で京都大学と対戦する。春に姿を見せなかったことで京都大学側には対抗する手段がない。第2節以降に対戦するチームならばこの試合をスカウンティングすればある程度の傾向は掴めるだろうが京都大学だけは違う。春に姿を見せなかったのはこのリーグ戦第1節の試合を優位に展開することを目的とした大きな仕掛けだったのかもしれないと考えれば、アメリカンフットボールらしい取り組み方である。 開幕戦京都大学戦のあとは近畿大学、関西学院大学、立命館大学と続く。神戸大学にとってはおそらく最も苦手とする立命館大学が第4節であることも日程的には取り組みやすい。 京都大学戦で勢いに乗り、毎年、好ゲームを繰り広げる近畿大学戦を第2節に、そして、昨年あわやのシーンまで追い詰めることが出来そうだった第3節関西学院大学戦という日程である。チームの勢いが途切れることなくシーズンに突入できることで、夏の練習からストーリーが立てやすい。勢いに乗ればリーグ戦の主役に躍り出ることも可能だ。まずは、開幕戦宝が池球技場に登場する神戸大学の雄姿は必見である。 |
甲南大学 |
今春の甲南大学の試合は、5月の関西大学戦の1試合しか観戦していない。その試合もオフェンスディフェンスとも今年の主力メンバーになるであろう数名が出場しなかったこともあって、神戸大学と同様に今年の甲南大学の姿ははっきりとは見えていないのが現状である。 昨年のリーグ戦を踏まえて今年のオフェンスを予想すると、QBに#5大西がRB#31増田、#2富田、#22松本、そしてエースレシーバには関西学生を代表するレシーバー#88吉田、#6松本が座る。 走れるRBが複数名いることでランパスのバランスの良い攻撃を組み立てることが可能である。昨年秋のリーグ戦後半にはテンポの良いオフェンスを展開していた。オフェンスバックス陣は大きくメンバー交替していないこともあってコンビネーションと言う点では昨年以上だろう。 しかし、関西大学戦では#5大西がRBとして登場し、QBには#12今川だったこともあり、今年のオフェンス構成がはっきりと見えてこないこともあって、開幕戦は楽しみである。 ディフェンスもDL#90浅堀、#69山田、LB#42山本、#28石川、#17舳ほかポテンシャルの高いメンバーが昨年から残っているのが強みである。 今年の開幕戦は近畿大学が相手となる。昨年は3ー0とFG1本だけだったが勝利した。今年のチームの全容が見えてこないが、この試合をどのように繰り広げるか、攻守の持ち味が出るような試合になると今シーズンが楽しみである。 |
同志社大学 |
昨年は最上級生が選手スタッフ合わせて4人という少しいびつな選手層だったが、その4年生のリードもあって入替戦を経てDIV1に残留した。今春観戦した神戸大学戦含めて2試合ともサイドラインに並ぶ選手がとても多く、今年以降の同志社大学には期待できる。 今春観戦した神戸大学戦と慶応義塾大学戦でのオフェンスは少ないチャンスを確実に得点に結びつけたという試合であり、ロングパス/ランというビッグゲインが出れば得点できるという内容だった。QB#8水野のパスターゲットはWR#80野原、#83要、#87久世、TE#89池内、#4天野など。そしてRB#91長谷川、#31澄川、#33小佐井の中央突破ランにRB#1永冨のスピードランがある。このオフェンスバックスの陣容は昨年と変わらないので安心して見ていられる。特にRB#1永冨のランプレーはタックルが甘いとビッグゲインにつながり一発TDとなりやすい。 ところで同志社大学の得点は、システマチックな組み立てられたオフェンスというよりはバックス陣の個人技に依存しているようなところがある。小さいなゲインを繰り返してFD更新を繰り返すというロングドライブがほとんど見られないのは、連続して相手ディフェンスを圧倒するようなラインの押しが続かないのかもしれない。神戸大学戦では拮抗したライン戦を披露したが関東遠征した慶応義塾大学戦でもラインが押し勝ったとは言い難い。夏を越えて秋にどのようなOLが登場してくるか楽しみである。 ところで、個人技を否定しているわけではなく、そのプレーが確実に決まるような試合組立をすればいい。1回のビッグプレー個人技を出すためにそれまでの捨てプレーが相手ディフェンスにとってフェイクになればいい。そのためにはオフェンスのプレー順などが見どころになる。バックス陣にはアスリートが揃うので侮れない。さらに慶応義塾大学戦で50ヤードのFGを決めたK#2山下のキック力も楽しみである。 同志社大学のディフェンスはDL#13原、LB#3丸山、#2山下、#47西内、DB#26仲田、#22篠宮と新しいメンバーも加わったが基本的には昨年の布陣と大きくは変わらない。ただし、昨年とメンバーは変わっていないとはいえ、まったく同じようなことにはならないとは思うが、今春の神戸大学戦、慶応義塾大学戦とも守備の力を計るには相手オフェンス側の問題が多くて参考にならない。試合を観戦していないが5月初旬に行われた立教大学も大差勝利していることもあって守備の課題は浮かび上がってこなかったのではないか。春の段階で課題を抽出するための試合を増やしてもよいと思う。 今年の同志社大学の特徴は、昨年の4年生が少なかったこともあって今年の攻守はほぼ昨年のメンバーで構成されていることである。コンビネーションを作り直す必要が少なく、昨年の結果を踏まえてのレベルアップは容易である。オフェンスが試合をコントロールできるような展開の試合になれば面白い。 |
関西大学 |
昨年の入替戦で悲願のDIV1復帰を果した関西大学だが、復帰までのみちのりはかなり険しかった。99年の入替戦でDIV2に降格すると、2000年の入替戦では近畿大学に試合終了間際に逆転され、2001年も同志社大学と第4Q終了間際までもつれる試合を展開しながらDIV1復帰ならなかった。そして、3回目の入替戦となった昨年に大阪産業大学を下してようやくDIV1に復帰することになったが、今年の選手は4年生も含めて全員がDIV1初体験となる。こういう状態で春のシーズンを迎えたが定期戦で法政大学に完封勝利して注目を集めた。私が今春観戦した試合は、甲南大学戦、早稲田大学戦、関西学院大学戦の3試合である。 オフェンスはQB#8碇が先発し途中で#1堤が登場するというのが私の観戦した試合でのパターンだった。バックスはRB#3松田、TE#81岩田と揃う。そしてDIV1トップクラスのスピードを有するRB#22中西とWR#17大谷の存在が大きい。この両名はキック時のリターナーとしても出場するのでビッグリターンやリターンTDなどの可能性もある。 さらに甲南大学戦ではK#6西口が飛距離50ヤードのロングFG成功を成功させており、そのキック力は接戦では大きな意味を持ちそうだ。 ただし、オフェンス全体が両名頼みなところもあって相手チームのマークも絞られやすいところが苦しい。さらにQBのパスコントロールが不安定なことと中央付近のランプレーもライン戦で相手を圧倒できるほどではないこともあって、連続してドライブするという攻撃スタイルにならない。どちらかと言えば単発のビッグプレーで掴んだチャンスをモノにできるかという試合になりそうだ。RB#22中西とWR#17大谷をどのように生かすか、オフェンスの組立が見どころである。 ディフェンスは特に、LB#31河田、#4大林、#9吉村、DB#42長谷川等、スピードのある選手が多い。詰めあがるスピードはある。関西学院大学戦では前半を1TDのみに抑えこんだことと、後方待機気味の2,3列が前に詰める姿勢を感じたことは、秋シーズンに向けて良い方向にありそうだ。 冒頭にも書いたように今年のメンバーはDIV1での試合経験がない。早稲田大学戦はディフェンスも崩壊してしまったが、翌週の関西学院大学戦では前半をほぼ均衡した試合を行っている。勝敗的には第3Q逆転TDを奪われた後のキックオフでのファンブルロストで試合が決まってしまった。それがなければ違った結果になっていたかもしれない。特にこの試合はディフェンスから試合を作っていく感触をつかめたと言う点でも価値のある試合だった。 今年のリーグ戦をDIV1のスピードに慣れるのに使い切ってしまうのか、それとも春の試合(甲南・関西学院・早稲田戦)でDIV1のスピードを把握した上で、一段上を見て登場するか。ここの違いでリーグ戦終了段階での順位とか勝敗も大きく変わってくる。来年以降のための今年のリーグ戦ではなく、今年のための今年のリーグ戦を見てみたい。 |
関西学院大学 |
8月のお盆の時期になると「今シーズンの展望」を考えるのが私の年中行事になっている。昨秋の試合を思い起こし、そして春の試合で見たことを加えて今年のDIV1はどんな試合になるのだろう。いろいろなことに思いを巡らせていて、頭の中が関西学生各チームの選手やプレーのことでいっぱいになる。 このチームのQBならばとかRBならばとか、それぞれはどんなことを考えながらプレーするのだろうかとか。各節の展望や観戦記を書くときもそうだが、それぞれの選手スタッフは何を考えてどうするだろうということに思いを巡らす。ディフェンスを考える時も同様で、このチームのDLならば、LBならば・・・・と考えていく。 ここでILBというポジションについて説明すると、ILBのIはインサイドの意味で、DLのすぐうしろにいるLBのなかでもその中心に位置する。つまりディフェンス全体の中央のポジションである。 ILBは、オフェンスのQBがOLのすぐうしろにいてオフェンスの中心であるように、ディフェンスの司令塔という重要な役割を担ったポジションである。その具体的な仕事は、LBの前に位置するDL陣の動きを見、そして左右に位置するOLB(Oはアウトサイド、つまり外側のLB)にはRBのオープンランやショートパスに対する指示を出す。後方に位置するDB陣にも気を配りながら、ワンプレー終わるごとにベンチサイドを向いてコーチと次のプレーの準備を行う。そして、オフェンスのセットの状態を見て瞬時にDLやLBに細かい修正指示を出す、など多岐にわたる。そしてこの修正指示がディフェンスの成否に大きく関わり勝敗の行方を大きく左右することからも、ディフェンスの司令塔のとしての重要さを判っていただけると思う。 今春の関西学院大学の試合は、日本大学・日本体育大学・京都大学・明治大学・関西大学の5試合を観戦した。そして今春ディフェンスメンバーで試合に出場していた時間が最も長かったのは、正確には統計を取っていないがおそらくILB#5平郡君である。 今春のDLは#90石田、#95今東、#58庭野、#44田頭などが登場したが多くの選手に経験を積ませるという意味もあるのだろう、メンバーは固定されなかった。さらにLBには#45清水、#32朝山、#39近藤などが出場し、関西大学戦では1年の市村、柏木、生田も投入された。そして、いつもその中心にいたのがLB#5平郡君だった。 日本大学戦ではショットガンオフェンスに対してはDLとDBに5人ずつを配して、パスを投げさせないか、投げさせたとしてもショートゲインに留めようとするディフェンスの布陣を敷いた。前5人と後5人の中間位置にいたのがLB#5平郡君であり、10人の配置を確認しつつ、LBとしてQBスクランブルとショートパスをケアしていた姿があった。 ディフェンス全体に気を配りながら試合をコントロールしつつ、そして、今年の関西学院大学ディフェンスの姿をを作り上げていったのだろう。 関西学院大学のディフェンスが対戦相手である7校のオフェンスと向かい合った時に、苦手な対戦校があるとすればどんなオフェンスチームで、得意とする対戦校は・・・。 その時にLB#5平郡君はどのように動くのだろう、そして、ディフェンスチームをどのようにまとめていくのだろう、そんなことを考えていた8月16日の夜、テレビのニュースで平郡雷太君の訃報を知った。 関西学院大学ファイターズの皆さんにお願いがあります。私たちはNEWERABOWL以降の彼の姿を知りません。 しかし、関西学院大学ファイターズの中には、それがあるはずです。LBとして、ディフェンスの中心選手として、平郡君がやってきていること。 それを、彼がやりたかったことを、関西学院大学ファイターズが私たちに教えてください。お願いします。 平郡雷太君のご冥福をお祈りいたします。 |