関西学院大学 |
昨年は「日本一」を目標に掲げ、ライスボウル初制覇を遂げた。関西学院大学の歴史を振り返ってみても特徴的なシーズンだったと言える。それでも、リーグ戦に絞ると必ずしも磐石な体制ではなかった。第2節では近畿大学に第4Q同点に追いつかれるなど、本当に大丈夫かというほど攻守ともバラバラの試合が続いた。攻守メンバーが固まったのはシーズン終盤になってからで、シーズンを通して成長していったチームだった。 さて、今春の関西学院大学を数試合見たが、弱点を明らかにしたり、いろいろな選手に経験を積ませるという意味合いの試合が多く、ベストメンバーで臨んだ試合が鹿島戦だけということもあって、攻守ともまだまだ本当の姿が見えてきていない。おそらく今年も昨年と同様の状態でシーズンに突入してリーグ戦序盤は基礎固め時期に当てるのだろう。したがって春を終わった段階での関西学院大学を語っても仕方がないところがあるのだが。 QB#16尾崎率いるオフェンスゲインするプレーは、春序盤に見る機会があったQBスクランブルと、OL#70金、#71蔵谷、#57大橋らの作り上げたホールを突くRB#33杉原、#3大谷、#7岸の中央突破ランが主になる。これにWRへの長短パスが絡めばいいオフェンスチームになるのだが、春の段階ではQBとレシーバーがしっくりとした関係になっていなかった。レシーバーとしてはWR#80中林、#25杉田、TE#89東井、#88松本、#85宗助、と名が挙がるので、後は、ひと夏を越えて投げ手と受け手の関係がどこまで向上したのかを秋シーズンの楽しみに残しておきたい。 春の試合で印象に残っているプレーはRB#3大谷へのパスだった。ただ、昨年春もRB三井からのフリーフリッカーを見せながら秋は使う機会がなかったのか判らないが実戦では登場する機会はなかった。 K#15中野のPATおよびFGは京都大学戦での5連続FG成功が示すように安定感が増してきた。 ディフェンスでは、DL#58西村、#52佐岡、LB#53財満、#5平郡、#34田中、DB#22田尻、#29河合と名が挙がる。特にLB#5平郡の守備範囲の広さとプレーの見極め判断力は秀逸で、西宮ボウルなどいろいろな試合でソロタックルを決めていたのが印象に残る。LB#34田中も守備範囲が広くスピードもありDLLBと併せてラン守備は完璧だろう。 ただ、第3列のパス守備には大きな課題が残る。日本体育大学戦、京都大学戦とも長短パスにヒヤヒヤしたように、時々抜かれることがある。今年の関西学生でパッシングチームを挙げるとすれば、第2節に対戦する同志社大学と最終節の立命館大学だが、このあたりが今シーズンのカギを握ることになりそうだ。 さて、各ポジションごとに名前をあげてみると、核になる選手がLB#34田中以外は昨年のメンバーと大きく変わっていないということに気付く。昨年の主力が残ったところはレベルを維持しているだろうが、まだ新戦力が登場していない。 この中でもかろうじて見えてきた新戦力は、QB#10出原、WR#84五百川あたりだろうか。それでもQB#10出原は大きくプラスゲインするときもあれば大きくマイナスするときもあって安定感の向上が課題と思う。関西学院大学スタッフの下でどのように変貌してくるのかも今シーズンの楽しみの一つである。 今年の関西学院大学のスタイルは、オフェンスはQB#16尾崎のキープやランプレー主体、ディフェンスもランプレーは簡単に止めることが出来るだろう。ただパスについては、攻撃ではQBWR間を充実させるのは必須事項だが、その時期と精度によって試合展開・シーズン展開は大きく異なってくるに違いない。また、パス守備についても不安が残る状態でシーズンインすることになりそうだ。 シーズンインの段階で全能力を発揮できないのは別に関西学院大学に限ったことではない。しかし、意識的にピークをずらしているような感じさえ受けてしまう。昨年のシーズンも極論かもしれないが結果としてリーグ戦全勝だっただけに過ぎないという見方も出来る。もし序盤で黒星を喫してしまっていたら果たしてあの関西学院大学はあっただろうか。 同じような状況でシーズンを迎える今年、序盤で黒星を喫するということは確率的には低いことかもしれないが、それでもパニックになって今年の力を発揮しないままシーズンを終えるという最悪パターンもあり得る。アメリカンフットボールの一ファンとしては避けてほしい想定なのだが、一方で、こういう経験をさせておかないと、年々ゆっくりとした仕上げになってしまうのを危惧する。 こんな状態でDIV1チャンピオンを関西学院大学に与え続けていては、リーグ戦の盛り上がりに欠けるし、関西学院大学自体の力も衰えてしまう。DIV1の発展のためには、昨年の第2節近畿大学戦のようにシーズン序盤から関西学院大学を本気にさせるチームが必要だ。 試合日程を眺めながらいろいろなチームの戦力分析を行っていると、関西学院大学のウィークポイントと、あるチームの長所が見事にはまるチームがあるのだが...。 |
立命館大学 |
QB#18高田によるショットガンオフェンスも今年で3回目のシーズンを迎える。立命館大学のショットガンは、一発ロングゲイン的なオフェンスではなく、WRへのショートパスやRBへのショベルパス、ドローなどによる小刻みにドライブするオフェンスである。リーグ戦序盤の試合では1回で抜けてTDになってしまうシーンがあるが、それは相手との力関係で止むを得ないことであり、あるべき姿はドライブする時間消費型のオフェンスである。 さてオフェンスのキーマンQB#18高田は、西宮ボウルやNEWERAボウルなどで見せてくれたようにQBのパス/ラン・スクランブルの判断力は過去2年に比べるとかなり向上しているようだ。さらにレシーバーには昨年後半から頭角を現してきたWR#19冷水に、#11木下、#9西川と揃う。どのレシーバーもスピードがありコース取りもいいし、リバースやフリーフリッカーもこなす器用な選手である。 ランプレーではRB#32野本、#3齋藤によるハンドオフラン・スクリーンパス・HBカウンターランと、こちらもプレー種類が多い。相手ディフェンス側から見れば、キャリアがスクリメージを抜ける前に仕留めることができるディフェンス能力が必要だが、これだけ多彩な攻撃手段に対抗できるディフェンスチームはそうそういないだろう。 OLにはC#64尾本、#52松葉を筆頭に長身重量級が存在する。もっとも春の近畿大学戦ではOLがまったく押せていなかったのだが、その後の神戸ボウルでは松下電工相手に健闘したという情報も得ている。どちらが本当の姿なのか。 一方のディフェンスは、西宮ボウルで大活躍だったDL#56平井をはじめ#90飾磨、LB#5西、#99八木、DB#13小路、#4高橋とパワーサイズとも超大学級の核となる選手が揃っている。個々の能力なら関西学院大学を上回っていると言ってもいい。今後は核となる選手の周辺に如何に肉付けをしていくかだが、人材豊富な立命館大学のことだから誰かが頭角を現してくることだろう。 気になるポイントを挙げるとすれば、昨秋も感じたのだが、第3列のパスディフェンスである。パスインターフェアなど不必要な反則の多かった昨年だが、今年は如何に。その中ではDB#13小路のスピードが救いとなるか。 春の段階から攻守とも核となる選手がそろっていて、やりたいことの形も見えている。今年のDIV1で春の時点では立命館大学が一歩リードしているのは間違いない。「春の時点で」という条件がつくのは、春しか見ていないからではなく、DIV1の他の7校と立命館大学では秋終盤に向けての成長カーブの描き方が大きく異なるためである。 はっきり言ってしまうと、立命館大学は春の時点から大きな上乗せ分がないまま秋終盤を迎えるのが最近の傾向である。他の学校が時間の経過とともに大きく変化してくるのとは異なっている。そして昨年一昨年はシーズン終盤に京都大学や関西学院大学に追いつかれての黒星となった。他校から見れば大きく変化しない分だけ戦略を立てやすいチームと言うこともできる。 パワーとスピードを前面に押し出したアメリカンフットボールが得意な反面、緻密な戦い方が苦手なチームで、そこを克服しないと関西学院大学に勝利できないことは過去3年の結果が示している。 今年のリーグも序盤戦はパワーとスピードで大勝で乗り切ってしまうのだろう。前半4戦で黒星を喫する可能性は低い。問題は戦術的攻略策を必要とする後半戦で、京都大学戦、相性の悪い近畿大学戦、秋3連敗中の関西学院大学戦がキーポイントになるのは言うまでもない。 今年もパワー&スピードスタイルオンリーで行くのか、それとも、ルールの把握・時計の止め方・タイムアウト行使どころなどなど、知的なアメリカンフットボール部分での上乗せ分が存在するか。ポイントはここにある。 後半戦への準備の意味でも、リーグ戦序盤の戦い方に工夫が必要だ。選手スタッフ含めてチーム一丸となった、第4Q残り2分・タイムアウト残り2回・自陣からのTDドライブを見たいのだが...。 |
京都大学 |
関西学生優勝回数9回の京都大学だが、1996年を最後に関西チャンピオンの座から遠のいている。過去を遡ってみると最も長い期間は1976年優勝から82年優勝まで5年を要したという記録がある。つまり、もし万が一、今年も逃してしまうようなことになれば、最長記録を塗りかえてしまうことになる。と悲観的なコメントから入ったが、これは、ここから話を盛り上げていくためのテクニックである。 今春の京都大学の試合では注目すべき点が2点あった。一点目は、昨秋の段階で今年の正QBだろうと思われていた川並が、ケガのためか最後まで姿を見せなかったことである。そして登場してきたQB#80佐竹が春シーズンを通して大きく成長していったことである。もうひとつが、試合でもパス練習に多くの時間を割いたことにある。特に東京大学戦と神戸大学戦では積極的にパスを投じてきた。かならずしも成功率は高くはなかったがQB・レシーバーともに実戦で得るものは大きかっただろう。 今年のオフェンスは、QBが佐竹になるのか川並になるのかで少しは異なってくるだろうが、小さなゲインをコツコツと積み重ねてドライブするオフェンスになりそうだ。ドライブオフェンスの要はRB陣にあり、UB#31大住、#32大木TB#33池上と中央突破ランの担い手も豊富である。スーパーアスリート#24近藤も要所ではRB位置に存在する。 課題となっているレシーバーにも、WR#9仲田、#48四方、#81小寺、TE#98東とターゲットは存在する。ひと夏を超えて、また、実戦を通して、QBレシーバー間の信頼関係を築くことができるか。両者の成長していく姿を楽しみに見ていきたい。 一方のディフェンスだが、こちらは昨年以上にメンバーが揃っている。4月に長浜で観戦した立命館大学戦の時点ですでにポイントを突いた集まりのいいメンバーが揃っていたのが、ある意味では驚きだった。 DL山中の姿も今春は見ることがなかったが、DL#90浦上・#99高谷の存在が大きい。さらに、DE/LBに起用される#24近藤の勘のいい動きは芸術的ですらある。そしてNEWERAで見つけたLB廣岡のアグレッシブな突っ込みはDE/LB#24近藤・LB#16中村と併せると相手オフェンスには非常に厄介な存在になるだろう。 第3列には守備範囲の広いDB#14金氏、20山本が控えている。東京大学戦の後半にショートパスに対するディフェンスでLBDBのコンビネーションの悪さを感じたこともあったが、どのようなメンバー構成だったのか完全には把握していないので参考程度に。 ところで、西宮ボウルで関西勝利に大きく貢献した京都大学のキッカー&パンターが、そのまま秋の京都大学勝利の立役者に成り得ると感じた。「走る・投げる」と同等以上に「蹴る」でも十分に試合をコントロールできることを見せつけてくれたのが、神戸大学戦であり西宮ボウルだった。優位なフィールドポジションを確保するP#14金氏と、確実なキックを蹴るK#28西は、今年の関西学生No1のK&Pと言ってもいいだろう。 P#14金氏のパントは微妙なところでサイドラインを切ったり止まったりで、相手オフェンスに常にエンドゾーンを背負った厳しいポジションの攻撃を強いる。その結果相手はFD更新もままならない。京都大学オフェンスは何回かに1回はは敵陣からの攻撃権を得るので最悪でもK#28西が確実にFGを決めて3点をゲットできる・・・これを繰り返せば・・・と、勝利へのストーリーを容易に組み立てることができる。 したがって、今年の京都大学の試合展開は、P#14金氏の絶妙なパントと強力ディフェンスで相手を奥深くに釘付けにし、巡ってきたチャンスに最悪でも3点ゲットしていくというロースコアの試合展開になりそうだ。東京大学戦神戸大学戦とも相手エンドゾーン付近までドライブしながら得点できないという歯がゆいシーンもあった。佐竹&川並のパスオフェンスが炸裂すれば言うことはないのだが、それはそれ。現状のスタイルでも確実に勝利できていることの方に目を向けたい 。 K#28西の存在が大きくクローズアップされて3年目、さらに、このキック力とディフェンス力を生かして少ないチャンスを得点に結びつけるという勝利パターンも3年4年目となり、藤田コーチが復活したとなればれば、そろそろ今年は・・の予感もするのだが。 |
近畿大学 |
昨年はLB中心にディフェンス主導チームから始まって、徐々にオフェンスも波に乗っていったシーズンだった。結果的には3強に3敗だったが、関西学院大学戦では第4Qに同点に追いつき、立命館大学戦では第4Qに一度はリードを奪うなど内容的には大躍進の年だった。それを踏まえて今春の試合を楽しみにしていたところがあった。 実際には5月の立命館大学戦と6月の専修大学戦の2試合だけを観戦したのだが、この1ヶ月間でも攻守ともすっかりと雰囲気が変わってしまっていて、どれが本当の近畿大学の姿なのかよくわからないところが多いというのが今春の印象である。 オフェンスは立命館大学戦でQB#3安倍が登場、専修大学戦ではQB#16大峠だった。(QB大峠は背番号が16番に変わったようだが、個人的には字面的に尖った感じを与える14がいい。#16の前任者だった綾部は丸みと重心の低い16が似合っていた。)#3安倍はランパスマルチオフェンスを組み立てられそうだが最後はランに重きを置く。一方の#16大峠は以前はどちらかと言うとパッシングQBタイプだったが今春の試合ではランプレーでもゲインしていた。 QBを複数擁しているチームが他にもいくつかあるが、近畿大学の場合も#3安倍と#16大峠では少しタイプが異なるのでどちらを起用するかでオフェンスの組み立て方が変わってしまう。両QBともに良いところがあるので難しいところだが、秋シーズンはQBをどちらか1名に絞るのか、試合毎/相手の弱点に併せて使い分けてくるのか、それとも前後半で分担するのだろうか。近畿大学はチームとして、全選手・4回生幹部・チームスタッフ全員が納得のいく起用方法を決めてくることだろう。 バックス陣では、最終学年となり西宮ボウルでも大活躍したRB#99杉田がマルチプレーヤーとして大活躍しそうだ。RBとしては中央突破で大きくゲインできるパワーと眼力がすばらしい。またTEやFL位置でのショートパスターゲットにもなる。反対側に位置するTE#31金子とのコンビネーションは、ディフェンス側から見れば厄介な布陣になりそうだ。 RB陣は春の時点で#99杉田以外が目立たなかったのだが、#20土手下、#39大坪が揃っている。UB#90杉田の中央突破と、TB#20土手下、#39大坪のオープンプレーを巧妙に仕掛けることができれば、面白いオフェンスチームになる可能性を秘めている。 パスレシーバーは、昨年の松永があまりにもスパーレシーバーだったので後任者は何かと比較されて辛いところだと思うが、それでもWR#81中川、#82三谷という次代のレシーバーは存在する。立命館大学戦ではTE#31金子クイックパスターゲットとなり、#27鉾山もレシーバーとして起用された。タレント的には豊富なので、あとはQBWR間の安定性向上だけが課題である。 ディフェンスは、春の時点では布陣が固まっていないように見えた。DL##65古巻、LB#33中川、#2中里、#43西川、DB#5青木、#25安藤、#26中路、と昨年からのメンバーが健在なのだが、だれがどこにLBなのかDBなのかDLなのかポジションが一定しなかった。立命館大学戦ではQB高田のショットガンからのパスに大量失点してしまったが、専修大学戦では一転して積極的な攻めのディフェンスとなって対応できていたように思う。ディフェンスもたった1ヶ月で大きく変化している様子が伺えた試合だった。 ただし、キッカー不在だけはどうにも避けられそうにない印象を受けた。昨年はK&P行田が距離と滞空時間を稼ぐきれいなパントを蹴り、FGも精度よく決めることが出来ていた。その後継者が、いない。 立命館大学戦では#3安倍がパンターを兼任し、専修大学戦では#25安藤がパントを蹴っていたのだが、蹴るのが精一杯という感じだった。専修大学戦のハーフタイムに行田が#3安倍と#25安藤をコーチしていたのが印象に残る。ひと夏を超えて、だれがどこまで成長してくるのだろうか。楽しみにしていることのひとつである。 さて今年の近畿大学だが、オフェンスはQB含めRB・WR・TEともアスリートが揃っている。ランもパスもプレー種類は多そうなので、相手ディフェンスにとって厄介なオフェンスになるのは間違いない。 OLがパスには壁を作りランにはホールを開けるということを正確に繰り返し、バックス陣もあたりまえのことを冷静着実にこなせば、昨年以上の成績を残す可能性は十分にある。 ディフェンスについても、春はポジションが固まっていなかったり、パスディフェンスの甘さが見えたりもしたが、こちらもアスリートが揃っている。ポジションが固まり、前に出る攻めのディフェンスに姿を変えていけば、昨年以上に手強いチームになるだろう。 例年近畿大学は三強に匹敵するだけのアスリート選手が揃っていて、今年も例外ではない。あとは個々の能力を如何に試合で発揮できるか、チーム全体が同じ方向に力を集中できるかだけのことだと思う。選手・スタッフ・幹部が一丸となったチーム作り、そしてオフェンス・ディフェンスが互いに盛り上げるような雰囲気になれば、5勝以上を達成することも夢ではない。 前年4位を経ての今年のリーグ戦は、前半に中位校と戦い後半に三強との対決を控える。前半戦に白星を挙げることが必須の年だけに、シーズンインの段階でどれだけチームがまとまっているか。第一戦、神戸大学との戦いがもっとも重要である。 |
神戸大学 |
今春は同志社大学戦、京都大学戦ともロースコアの試合を繰り広げた。オフェンスの得点能力が低いとかディフェンスが堅実だとも言えるが、別の見方をすれば、どのチームを相手にしても自分のペースに持ち込める力強さがあるとも言える。 今年のオフェンスで特筆すべきは、オフェンスの要となるQBが新人になったことだろう。同志社大学戦と九州大学戦ではQB#33大崎(3年)と#10江端(2年)の両名をほぼ交互に起用していた。#33大崎はどちらかと言えばパスよりはラン中心で、#10江端はパスのほうが・・・というのが春の試合を見ての印象だった。 神戸大学は、昨年までも同学年のQB吉野と林を上手に使い分けてきた。特に昨年は、吉野をTBにも配置するという両名の特徴を最大限に生かした起用方法をみせてもらい、さすが神戸大学と感動を覚えたシーズンだった。今回は学年が異なる2名だが、どのように使い分けるのだろうか。見守りたい。 毎年優秀なRBを排出する神戸大学は今年も多彩な陣容を誇る。エースランナーTB#22坂東を筆頭に、#4西澤・#30上原・#39宮川・#32森など人材豊富。特にボールを持った瞬間からトップスピードに乗れる#32森の存在はプレー種類を広めるという意味からも頼もしい存在になりそうだ。さらにリターナーとしての#22坂東にも期待できる。 ランプレーを支えるラインには例年以上に大きなサイズの選手が揃っていて、同志社大学戦ではラインの押しだけでランゲインできた。今年のOLRB陣もリーグ戦中で大きく成長していくことだろう、楽しみにしているポイントの一つである。 ところがパスオフェンスは、QBのパスコントロールやレシーバーの安定性などで少し課題がありそうという春の印象だった。TE#85萩原の復活とQB−WR#7竹山、#9村上間のコンビネーションの完成を待ちたい。 ディフェンスは、ラインにはこちらもサイズの大きい選手が揃った。さらにLBは#55岩田・#41山本というアグレッシブな選手の存在は信頼できる。京都大学戦同志社大学戦とも相手にドライブを許したが、それでもレッドゾーン付近からは地力で盛り返すシーンを何度も見た。課題は第3列が昨年のメンバーから大きく変わったことによるパスディフェンスだが、時が経てば穴が埋まると信じる。 リクルートに制約を受けやすい国立大学にあってここ数年攻守とも大型の選手をそろえることに成功している。なおかつ、毎年秋2ヶ月だけで確実に大きく成長するチームである。だから、春に課題が多いほうが神戸大学を見ていく楽しみが増える。 きっと今年も攻守の潜在能力は高いのだろう。あとは、どの時期に顕在化するかだが、願わくば、その成長カーブを1ヶ月前倒しにしてほしいところだ。今春は6月の段階で京都大学と0−9の接戦を演じている。この結果を踏まえると例年以上に序盤から期待できそうだ。 第1節は近畿大学、第2節は京都大学と戦う。両相手ともどちらかと言えばスロースターターなので、戦い方によっては2連勝スタートも。 |
甲南大学 |
西宮ボウルやNEWERAボウルではOL#51斎藤やTE#88吉田など個人を見ることは出来たが、今春甲南大学の試合を観戦したのが大阪産業大学戦だけなので、なんともコメントしにくいところがある。 その大阪産業大学戦ではQBに吉田を起用していたが、池垣の負傷などによる特例なのだろう。ただ特例であっても来年以降のQB候補の登場が少しはあってもよかったのではという印象を受けた試合だった。 さて、昨年の試合などから考えると今年のオフェンスはQB#10池垣のオプションがメインプレーになるのだろう。RB#33近藤・#2油井によるTフォーメーションからの中央突破カウンタープレーなどをきっかけに、WR吉田へのパスがオフェンスの攻撃パターンとなりそうだ。 ディフェンスは昨秋最終戦だった立命館大学戦の印象が強烈に残っている。バックスには#42山本がアグレッシブな指揮をとっていたのが印象に残った試合だが、さて今年はいかに。 昨年は4位扱いでリーグ戦スタートして、終わってみると入れ替え戦の一歩手前になってしまうという残念なシーズンだったが、今年はそれをバネにして復活してくることを願います。 春の結果は春のことであって、実際の姿が見えなかったということを裏返して見れば、対戦相手は甲南大学の攻守に対してまったく情報がない手探り状態ということである。こういう状況にあって第1節京都大学・第2節近畿大学という試合順は、考えようによっては悪くない試合順かもしれない。開幕戦でどのような姿で登場してくるのか、楽しみにしています。 |
同志社大学 |
今春の試合は、神戸大学戦のみの観戦だった。この試合で接戦だったにもかかわらず6月の慶應大学戦で大差になってしまったのはメンバー的な理由か環境的なものか、それともそういうものなのかは、観戦していないので判らない。 オフェンスは、最終学年QB#7前川の復帰が待たれるところだが、昨秋今春と指揮をとったQB#8水野が実質的にチームを引っ張ることになりそうだ。QB#8水野によるオフェンスは、オプションランありパスありと変幻自在のランパスオフェンスを繰り広げることができる布陣である。ランではショートゲインを積み重ねる時間消費型になり、パスではマジックハンドレシーバWR#83要の存在が大きい。これを支えるOL陣の充実ぶりも加わった豊富なプレースタイルは、春の段階からランパスを繰り広げたという点からも関西トップクラスに匹敵するといっても過言ではない。 UB#91長谷川、TB#20畑山によるIからのオプションや、Tからのカウンターオプションというランプレーに、昨年から頭角を現してきたWR#83要に#82久世、TE#89池内というショートパスからロングパスまで能力の高いターゲットが揃っている。このランパスマルチのオプションオフェンスは、ディフェンス側からみればかなり対応しにくい面倒な相手になる。 ディフェンスではLB#2山下、#3丸山、#9西川が、そして、第3列にはDB#26仲田が控える。攻守とも4年生が少なく3年主体のチームだが、それでも、核になる選手が揃った骨格のしっかりしたチームである。 慶應大学戦で不調だった理由は不明だが、時々、まったく雰囲気の違った試合になってしまうという捕らえどころのないチームという印象もある。しかし、今年のオフェンス陣容はかなりいい線いっていると思っているので、私的には序盤戦の台風の目になり得るチームの一番手と踏んでいる。 今年のチームがシーズン前半戦をどの試合にターゲットを絞り込んでいるのかは判らないが、昨秋の京都大学戦では緊張した試合を繰り広げていたように京都大学戦は得意としている雰囲気なので今年もターゲットに成り得るのだろう。しかし、今年は第2節関西学院大学戦でQB#8水野−WR#83要のホットラインをきっかけにパスから切り崩していくという攻めも十分に考えられそうだ。 第2、3節、私は、指折り数えて同志社大学の試合を楽しみに待っています。 |
大阪産業大学 |
QB#5藺牟田も最後の年を迎えることになった。ランパスにセンスいいプレーを見せてくれることも多く、特に今年のNEWERAでは膠着気味だった試合を彼のパスによるTDドライブで一気に盛り上げてくれた。オプションQBとしてもキープやオープンピッチがきれいに決まることもある。そのピッチターゲットとしてRB#40瀬川、#2磯脇、#31吉住が揃う。 パスでは、ロングターゲットにWR#82前川(1年)がQB#5藺牟田の信頼できるパートナーとして春から大活躍だった。昨年からショート〜ミドルターゲットの地位を確立しているTE#84大西との長短パスは、オプションとのフェイクと組み合わせることでディフェンスしにくい組み合わせになりそうだ。QB#5藺牟田は調子に乗ると視界も広がったいいオフェンスを繰り広げることができるので、いい雰囲気になれば楽しみである。 ただ、オフェンス自陣からのロングドライブすると反則罰退となって結局エンドゾーンに届かないというシーンを何度も見た。この循環を打破する方法が必要だが、持久力改善か、一発ロングゲインをするか。 ディフェンスは、主将DL#58石丸を筆頭にLB#17長野、CB#8森碕、#21植木が揃うが、春の広島大学戦で1年生を起用していたように若いチームになりそうだ。 DIV1も96年から7年目を向かえ、入替戦を何度か経験しつつもDIV1に定着してきている。一方で97年から秋リーグ戦だけで15連敗中という記録も続いている。今年はリーグ戦で久しぶりの白星をゲットできるか期待できる部分も多い。 |